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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科15巻2号

1980年02月発行

雑誌目次

視座

臨床と基礎

著者: 野村進

ページ範囲:P.103 - P.103

 最近各大学で基礎教室の充実が問題となつている.戦後医学部卒業生は基礎を志すものが減少し,そのため大学の基礎教室は医学部卒業生以外の人々で支えられているのが現状である.勿論学問の進歩にともなつて基礎医学の研究分野もますます分化し,薬学部や理学部,さらに工学部などの卒業生が,その方面の専門家として基礎医学の研究にたずさわるようになり,そのこと自体が決して悪いとは思われない.実際に米国においても基礎医学者にはM. D.は殆んどおらず,Ph. D.が大部分を占めている.ただ私ども医学者は,基礎的研究は終局的に臨床につながるものと確信している.この点が医学部卒業生でない研究者に欠けているとすれば,事は重大である.米国をみても基礎医学と臨床との関連づけが決して密ではないといわれている.ゆえに将来医学部卒業生が基礎教室にふえて,層を厚くすることが望まれる.
 約25年前の日本整形外科学会では,その演題の大半が臨床的発表であり,基礎的研究は極めて少なかつた.当時の日本外科学会をみると,生化学,ホルモン,生理,病理,などの基礎的研究が多く,その広さと深さに驚いたものである.その頃の整形外科では,臨床的研究,あるいは臨床と直結した基礎的研究以外は問題としない傾向があつたように思う.所がどうだろう.1昨年京都での第14回SICOTでは,同時に第1回SIROT(International Research Society)がもたれ,整形外科に関する基礎的研究の発表が盛大に行われた.また昨年の第52回日本整形外科学会でも,臨床研究と基礎的研究の発表の会場を意識的に分ける試みがなされ,将来整形外科学会でも基礎分科会を分離独立する準備が行われた.このように整形外科においても基礎的研究は盛となり,これにたずさわる整形外科医の増加と共に,研究内容もより高度に,より広範囲になつてきている.ゆえに今日では臨床的研究でなければ研究でないと考える整形外科医は少なくなつてきた.

論述

脊椎奇形と合併する他の体部異常について

著者: 渡辺秀男 ,   加藤実 ,   太田和夫 ,   森竹財三 ,   小野村敏信

ページ範囲:P.104 - P.114

はじめに
 先天異常が複合して現れる事の多い事はよく知られている事実である.従つて先天性(後)側彎症例の診療においてもこの点は特に留意されるべき点であると思われる.しかし脊椎奇形と合併する他の体部異常の詳細についてはこれまでに必ずしも明らかにされていない.そこで我々は催奇物質を投与した母ratより得られた奇形椎を有する胎児について検索し,また自験および文献上に報告されている先天性側彎症例について合併異常の内容を検討した.更にその結果をもとに奇形椎と合併する種々の異常について発生学的な考察をも加えた.

老人の脊柱変形の分析

著者: 有田親史 ,   小林郁雄

ページ範囲:P.115 - P.122

はじめに
 姿勢に関する報告は多いが,これを客観的に分析した報告は少ない.姿勢には静的姿勢と動的姿勢があるが,静的姿勢をとらえようとした場合,類型化された型として姿勢をとらえるのが簡明である.Staffelの分類が広く用いられてきたのはこのためである.
 姿勢は胎生期,乳児期,幼児期と変化するが,起立,歩行とともに頸椎前彎,胸椎後彎,腰椎前彎のpatternができ上り,それ以後は種々の環境因子により影響をうける.この点より老人の姿勢は人の終局的な姿を示すものである.今回私達はほぼStaffelの分類に準じて,X線学的に老人の脊柱変形を詳細に分析し,それぞれの姿勢の特徴を検索し,併せて筋電図学的な検討を加えた.

Riemenbügel整復不能例の予後について

著者: 楫野学而 ,   中川正 ,   猪田邦雄 ,   花木和春 ,   大石幸由 ,   佐藤啓二 ,   松井順一 ,   吉橋裕治

ページ範囲:P.123 - P.130

はじめに
 乳児先天股脱の治療成績は,従来行われてきたLorenz法に代りRiemenbügel法30)(以下R. B.法と略す)の普及により,初療時年齢の低下とともに著しく向上してきたことは周知の事実である.R. B.法により乳児先天股脱の大部分の症例は容易に整復され,その予後も良好であることも異論のないところである.しかしながら少数ではあるがR. B.法では整復されない症例の存在することも忘れてはならないことであり,これら症例の治療および予後についての検討もまた乳児先天股脱治療の上で重要な問題である.R. B.法では整復不能であった症例についての報告は少なからず行われているが,保存療法を主体とした長期の経過観察に基づく治療成績についての報告2,3,6,8,10,27〜30)は少ない.
 当教室においても昭和39年以降,R. B.法およびOver-head Traction法(以下O. H. T.法と略す)13)による保存的療法を主体とする治療体系により一貫した先天股脱の治療を実施し,優れた成績を得てきた7,17,18)(第1図).

先天股脱の機能的療法

著者: 岩崎勝郎

ページ範囲:P.131 - P.137

はじめに
 先天股脱に対する機能的療法の原点ともいうべきRiemenbügel法(以下Rb法と略)の整復のメカニズムは,従来,Pavlik15),Mittelmeier13),坂口17,19)らによつていわれていたような筋力の作用によるものではなくて,Rb装着下での下肢の重量が非常に大きな役割を演じていることはすでに報告してきた11).このことはPavlik以来の機能的療法の概念の再検討をせまるものであり,今後はこの整復理論にもとづいた新しい機能的療法の確立が望まれる.本論文ではそのような観点からの先天股脱に対するRbを中心とした機能的療法のあり方と,それらに関するいくつかの問題点につきのべる.

膝関節の外側支持機構症候群の吟味

著者: 三倉勇閲 ,   伊勢亀冨士朗 ,   冨士川恭輔 ,   戸松泰介 ,   竹田毅

ページ範囲:P.138 - P.150

はじめに
 膝の靱帯損傷のなかでも内側側副靱帯の損傷は前後十字靱帯や半月損傷との組合せで検討され,数多くの研究報告がなされている.
 一方膝の外側の損傷は症例の少ないこともあつてか比較的等閑視されているが,われわれは外側の損傷をたんに外側側副靱帯のみでなく,外側構成体全体の損傷として考慮すべきであることを提言してきた.

検査法

脊椎外傷に対するcomputed tomographyの応用

著者: 秋田徹 ,   大木健資 ,   音琴勝 ,   広瀬彰

ページ範囲:P.151 - P.157

はじめに
 Computed tomographyは1972年,英国で実用化されて以来わが国においても広く普及しつつあり,特に脳内出血,脳梗塞,脳腫瘍,頭部外傷などの頭部疾患におけるその有用性は高く評価されている2)
 1974年以来,whole body CT scannerが出現し,整形外科領域においてもspondylotic myelopathy,後縦靱帯骨化症,脊椎腫瘍,脊髄腫瘍,diastematomyelia16),syringomyelia3),atlanto-axial instability4)などの,脊椎1,8),脊髄疾患5,9,17)をはじめ種々の疾患の横断面の形態観察に応用されてきている7,11,14,15)

臨床経験

頸椎上関節突起における特異な骨棘像の検討

著者: 池田清 ,   武内章二 ,   大橋勉 ,   尾崎邦宏 ,   安福嘉則 ,   竹内正信

ページ範囲:P.158 - P.160

 頸椎の退行性変化は,椎体辺縁や椎間板部に高頻度に認められるが,椎間関節における骨棘像などは平素頻繁に見られるものではない.また頸椎椎間関節の変形性変化は,椎間板のそれにくらべ,比較的上位頸椎に好発するとされている1)
 最近われわれは,項部痛を訴える42歳の主婦で,頸椎側面レ線像上第6頸椎上関節面後方に上向きの小骨棘が見られ,骨軟骨性外骨腫をも疑われ紹介された症例(第1図)を経験し,この機会にかかる変化について他の多数例のレ線写真や屍体標本を調査した結果,これは必ずしも稀な所見ではないことがわかつたので,その頻度や組織像などについて報告する.

急激な重度対麻痺で発症した高齢者胸椎椎間板ヘルニアの1治験例

著者: 太田実 ,   柴崎啓一 ,   藤村祥一 ,   大谷清

ページ範囲:P.161 - P.164

 胸椎椎間板ヘルニアは比較的稀な疾患であるが,他の部位のヘルニアに比べて診断,治療の面で難渋することが少なくなく,かつ当該部に脊髄があるだけに早期の診断と治療の必要性が大きい.我々は最近,急激な重度対麻痺をもつて発症した高齢者胸椎椎間板ヘルニアの1例を経験し,前方除圧,椎体固定を行い,良好な結果を得たので報告する.

低位脊髄円錐を合併したspina bifida occultaの1例

著者: 小柳博彦 ,   四方実彦 ,   清水光一郎 ,   森英吾 ,   渡辺秀男

ページ範囲:P.165 - P.168

はじめに
 Spina bifida occultaは,レ線学的によく見受けられる異常であるが,我々は,皮膚異常を合併し,排尿障害を来たすようになり,手術時,低位脊髄円錐と,仙骨部脂肪腫を認めた1例を経験したので,報告する.

D-ペニシラミンの副作用

著者: 森重登志雄 ,   藤森十郎 ,   亀山三郎 ,   吉野槇一 ,   内田詔爾 ,   村瀬研一

ページ範囲:P.169 - P.172

はじめに
 関節リウマチに対するD-ペニシラミンの有効性については異論のないところである.しかし,反面その副作用の頻度,ならびにその重篤度は著明である.今回,我我はD-ペニシラミンの副作用の種類,頻度,発症時期,発症時投与量,投与法,そしてその対策について自験例を中心に調べたところ,若干の興味ある知見を得たので報告する.

Crush syndromeに伴うDICの1治験例

著者: 永吉洋次 ,   岩切清文 ,   小林邦雄 ,   徳久俊雄 ,   和田文雄

ページ範囲:P.173 - P.177

はじめに
 最近,各科領域でDIC症候群に関する報告が多数みられるようになつたが,外傷・多発骨折・ショック・火傷等を取り扱う機会の多い整形外科領域でのDICに関する報告は,今,なお少ない.今回,我々はcrush syndromeの治療中に著明な出血傾向を示し,ヘパリン治療等により救命しえたDICの1例を経験したので報告する.

膝蓋骨無腐性壊死の1症例

著者: 山上剛 ,   明穂政裕 ,   稲田治 ,   山本吉蔵 ,   前山巌

ページ範囲:P.178 - P.181

 膝関節痛を主訴として来院するもののなかで,その原因を膝蓋骨にもとめうる症例が比較的多い.従来本邦には少ないとされていたchondromalacia patellaeは,そのなかでも特徴的なものと思われる.このような疾患は,膝蓋大腿関節に対する興味のたかまりによつて,今後ますます増加するものと考えられる.
 今般,われわれは膝蓋骨の無腐性壊死と思われる1症例を経験したので,その臨床経過,検査所見,手術所見および病理組織学的所見とともに,文献的考察を加えて報告する.

胸壁から胸腔内に発育したlipoblastomatosisの1例

著者: 姥山勇二 ,   後藤守 ,   山脇慎也 ,   宮川明 ,   平田保

ページ範囲:P.182 - P.184

緒言
 脂肪芽細胞腫症(lipoblastomatosis)は,乳幼児に発生する稀な腫瘍でありその報告も少ない.病理組織学的にも,脂肪腫や脂肪肉腫との鑑別をはじめ不明な点が多かつた.しかしChung & Enzingerの報告以来1),その臨床病理学的性格はかなり明確なものとなつた.本邦においても吉田,遠城寺の報告12)をはじめとして最近ではこの腫瘍に対する認識がひろまつている.私達は左側胸部に発生した腫瘍が局所再発をきたし,胸腔内に発育した1歳4ヵ月男児のlipoblastomatosisの1例を経験したので報告する.

横紋筋肉腫と扁平上皮癌の合併した1症例

著者: 木次敏明 ,   梁瀬義章 ,   山室隆夫 ,   南風原英之 ,   中嶋安彬

ページ範囲:P.185 - P.189

はじめに
 右大腿横紋筋肉腫に右鼠径部扁平上皮癌を合併した比較的珍らしい症例を経験したので報告する.

上腕骨遠位端に発生したbenign chondroblastomaの1例

著者: 小野講三 ,   清水光一郎 ,   森英吾 ,   岡田茂 ,   四方実彦

ページ範囲:P.190 - P.193

 Benign chondroblastomaは初めKolodony10),Ewing3),Codman1)らによりgiant cell tumorのvariantと考えられていたが,Jaffe and Lichtenstain7)がこの名称を与えて以来,独立疾患として扱われている.今回我々は他に報告のない上腕骨遠位端に発生した本腫瘍を経験したので報告する.

上腕骨骨幹部骨折に対する装具療法の経験

著者: 三谷晋一 ,   白野明 ,   福沢玄英

ページ範囲:P.194 - P.199

はじめに
 私共は,アルミ軽合金による2本の支柱と肘接手に,メッシュ状の合成線維の布でカフをつけた上肢装具を考案し,1976年より,上腕骨骨幹部骨折に対する固定法として試みて来た.現在までに本法を行つた症例は7例にすぎないが,今のところ,比較的満足すべき結果を得ているので,その方法を紹介するとともに成績について報告する.

最近経験した原発性副甲状腺機能亢進症の4例

著者: 北城文男 ,   中島雅典 ,   田平史郎 ,   山中健輔 ,   井上博 ,   稗田寛 ,   栗田茂二朗 ,   森松稔

ページ範囲:P.200 - P.206

緒言
 我々は最近3年間骨病変を来たした原発性副甲状腺機能亢進症の4例を相ついで経験したので報告する.

脛骨に発生したdesmoplastic fibromaの1例

著者: 朝井哲二 ,   木野義武 ,   服部順和 ,   米田実 ,   花木和春 ,   親川勝 ,   原田敦 ,   水谷陽子

ページ範囲:P.207 - P.211

 1958年,Jaffe12)は,稀な骨原発の良性線維性腫瘍として,腹壁に好発するdesmoid tumorに組織所見が似ている5例をまとめ,これらを,desmoplastic fibromaと命名することを提唱した.
 今回,我々は病的骨折により発見された本疾患の脛骨に発生した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

カラーシリーズ 義肢・装具・2

義肢・装具の製作と材料

著者: 鋤園栄一

ページ範囲:P.98 - P.101

 わが国における義肢,装具の製作技術や,使われる材料は,最近の工学技術と化学の進歩によって,めざましい変化を遂げつつある.その代表的な義肢が工学関係では,骨格型義肢(skeletal type)のmodular prostheses(部品の接続によって組立てられる義肢)であり筋電義手(myoelektrisch Hand)に代表され,化学的な材料面では,合成樹脂(plastics)や,炭素繊維(carbon fiber)である.しかしこの材料や技術も使い方を誤ると,その効果を十分に発揮することができない.われわれ義肢装具技術者は,欧米を始め国内でも多くの講習会や研修会を通じて正しい材料の使い方と製作技術の平均化を目標として今日にいたっている.また,一方では労働省の技能検定によって製作技術の評価もなされ少なくともレベルアップに連がっている.そこでこの機会を通じ実際面での製作方法と,材料の使用法についてその一部を紹介する.
 まず義肢,装具を作るために大切な2つのポイントは,採型と組立である.一般的には,適合(fitting)と,軸位(alignment)といわれている.ソケットやカフの適合(socket and cuff fit)を決定づける工程を次のように分析する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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