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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科15巻4号

1980年04月発行

雑誌目次

視座

己所不欲,勿施於人

著者: 土屋弘吉

ページ範囲:P.353 - P.353

 手術カンファランスでは,受持医は自分の患者が手術の適応に該当することを力説し,手術の方法なども比較説明し,同席者を納得させなければならない.受持医は何とかしてカンファランスを通過させたいから,一所懸命になつて手術の必要を述べ立てる.
 手術の理由が,患者の疾病を癒し,その苦痛を取除き,社会復帰にプラスするものであれば,手術適応として申し分ないわけである.その場合手術の結果の改善の見通しも確信のあるものでなければならないし,また手術に対する患者の同意がなければならないことは当然である.

論述

頸椎椎弓切除時の後側方固定の試み

著者: 宮崎和躬 ,   中井徹 ,   真鍋克次郎 ,   玉木茂行 ,   東正一郎 ,   松田文秀

ページ範囲:P.354 - P.362

はじめに
 第51回日本整形外科学会総会にて,頸部脊椎骨軟骨症の術後1年以上経過した椎弓切除術例105例中追試可能例90例の術後成績を報告し,これらの症例と術後1年以上の頸椎後縦靱帯骨化症の椎弓切除術例129例の術後成績を比較検討したが,前者は有効以上75.2%,後者で86.8%と両者の間に成績の差が10%以上もあつた.
 さらに,頸部脊椎骨軟骨症の90例中頸椎の不安定性の有無について検索できた症例は77例で,それらのうち術後不安定性増強例は13例16.9%となり,これら13例中3例が術後成績の悪化例であつた.これは全悪化例6例のうちの50%に当る.このように,頸椎症性脊髄症の椎弓切除術症例において,術後の不安定性増強の有無が術後成績を左右する大きな要因の一つである.とくに,頸部脊椎骨軟骨症においては,頸椎の運動性が減少している頸椎後縦靱帯骨化症と比べて,頸椎の運動性が大きい上に,不安定性の要素が加わつて,術後の頸髄に悪影響を与えるために,頸椎後縦靱帯骨化症より成績が低下しているのでないかと報告した.

ペルテス病の早期治療と予後について

著者: 松本幸博 ,   稲松登 ,   金原宏之

ページ範囲:P.363 - P.369

はじめに
 ペルテス病の予後を決定する因子としては,従来より発症年齢,骨頭壊死の程度,Catterallのいわゆる“head at risk” factors等があげられ種々検討されて来た.
 しかし,発症後治療開始までの期間が予後に如何なる影響を及ぼすかに関した詳細な報告はほとんど見当たらない.

大阪市身体障害者更生相談所における切断および義肢処方の実態

著者: 大久保衞 ,   島津晃 ,   市川宣恭 ,   星千富 ,   川田嘉二 ,   越川亮 ,   木下孟

ページ範囲:P.370 - P.377

はじめに
 近年,各方面で福祉政策の充実がさけばれるなかで,切断者に対する福祉においても様々な問題点が指摘され,検討が加えられてきた.日本の現状は,欧米諸国と比較するまでもなく,当事者である切断者はもとより,医師やその他の関係者にとつて,必ずしも満足すべきものではない.特にリハビリテーション施設の不足や,煩雑な義肢支給体系,義肢・装具の部品の規格化や品質管理,あるいは製作技術者の技術水準や地域格差の問題など,多くの課題をかかえている.しかもこれまで,それらを検討する上で基礎資料となるべき切断者あるいは義肢に関する実態調査は,一部の地域をのぞき,必ずしも十分に行われてきたとはいえない.大阪市においても,残念ながらこの種の調査はほとんど行われていない.それは制度的に,切断者や義肢処方に関する情報が,統一された機関によつて管理されることがなかつたためと考えられる.
 大阪市においては,昭和31年(1956年)に身体障害者更生相談所が設置され,それ以後,身体障害者手帳(以下手帳と略す)の交付を希望して来所した切断者,および身体障害者福祉法(以下身障法と略す)により処方・支給された義肢に関する記録については,同所において管理されるようになつた.

下肢長管骨骨折に対する重複キュンチャー髄内釘固定法

著者: 三谷哲史 ,   奥島平八郎 ,   真崎祐介 ,   蕪木初枝 ,   吉井新一

ページ範囲:P.378 - P.389

はじめに
 大腿骨,下腿骨などの長管骨骨折に対する手術的療法の中で,キュンチャー髄内釘固定法は,多くの利点を有しながら,器械設備の問題や,殊に閉鎖的にこれを行うことの技術的な困難さから,必ずしも一般的な方法とはいい難いようである.
 われわれは最初,下腿骨骨折の髄内固定の固定力不全のものに対して,補強の意味でもう1本の釘を追加して,容易に目的を達し得たことから,太い釘1本の固定よりも,むしろ最初から細いものを2本組み合わせて打入することを思いたち,まず下腿骨,ついで大腿骨,さらには数例の上腕骨に対して,いずれも閉鎖的にこの重複キュンチャー釘法を試み,簡便でやさしい方法であるとの確信を得たので,本法の概要を報告する.

シンポジウム CTと整形外科

新画像技術CTの展望

著者: 舘野之男

ページ範囲:P.390 - P.396

はじめに
 「CT」という略語が医学界の流行語になつてから今年ではや六年,その間,CTにも様々な分化が生じて,XCTだ,RCTだ,UCTだ,ICTだ,NMRCTだとさらに未熟な略語が横行し,その上,RCTはECTと言つた方が良く,ECTはSCTとRCTに分類できる,などと議論される.
 これらの話は,CT(COMPUTED・TOMOGRAPHY),つまり物体の断層像をコンピューターを用いて計算・再構成する技術が,X線のみならず,超音波その他,種々なエネルギー場に適用され,医学利用の可能性のあることが認識されるようになつたことに関係している.ちなみに,XCTはX線を,RCTはラジオアイソトープを,UCTは超音波を,ICTは低周波および高周波インピーダンスを,NMRCTは核磁気共鳴を,SCTは単一ガンマ線を出すアイソトープを,PCTはポジトロン放射アイソトープを,それぞれ用いたCTを意味する.なおもつと大きい分類としては,エネルギーを透過させてデータを得る各種CTを,TCT(TRANSMISSION CT)と総称するのに対比して,アイソトープCTは,ガンマ線が人体内部から放射(EMISSION)してくるのを利用するので,ECTと呼ばれる.

CT診断の基礎と臨床—特に整形外科医のために

著者: 馬場博己 ,   松浦啓一

ページ範囲:P.397 - P.403

はじめに
 通常の単純X線撮影は三次元の構成をしている人体を透過したX線の吸収度を二次元のフィルム上に濃淡の差で表わすために,重複効果による混迷をさけることはできない.またX線による断層撮影は,立体構成の一断面を平面フィルム上に表わしているが,フィルム記録方式には,そのコントラスト描出能に限界があるため,組織間の微妙な吸収度の違いを表現することは困難である.人体の輪切り像を得る回転横断撮影法は,本邦においては高橋2)により完成,実用化されたが,前記の点では更に劣化された像しか得られなかつた.しかしながらここに述べるコンピュータ断層撮影法(以下CTと略す)と同じ理論より成立しているものである.CTは細いX線ビームを用いることにより散乱線の関与を少なくし,X線検出器に精度が高く,かつ広いダイナミックレンジをもつ測定器を使い,電子計算機によつて精度のよい再構成処理を行うことにより,人体の断面を二次元として表わし,微妙な組織間の吸収度の差を表現できるところに,従来のX線撮影と大きな違いがある.

脊椎疾患のCT像—読影の基礎と診断価値について

著者: 佐々木正 ,   田中秀之

ページ範囲:P.404 - P.413

 近年導入されたコンピューター断層撮影装置CT(computed tomography)1,2)の普及は目ざましく,脳疾患をはじめ主として内臓器の検索に用いられてきた.最近では,整形外科領域のCTによる検索も広く行われるようになりつつあるが,その診断的価値と限界について,十分に検討されているとはいいがたい.本稿では,脊椎疾患に対するCT像読影の基礎について述べ,次に,脊椎疾患のCT像を供覧し,CTの応用価値について述べる.対象は,1977年10月よりEMI Scanner CT5005/12を用いて検索を行つてきた脊椎疾患280例である(第1表).

脊椎・脊髄疾患へのCTの診断的応用—特にmetrizamide CTの診断的価値について

著者: 永瀬譲史 ,   井上駿一 ,   村田忠雄 ,   宮坂斉 ,   梅田透

ページ範囲:P.414 - P.421

はじめに
 Computed tomography(以下CTと略す)は1973年Hounsfield4)により脳病変の新しい診断法として報告され,その後Ledley5)らにより全身用CTスキャナーが開発されて以来めざましい発展をとげている.今日,CTは各分野において臨床的応用がなされており,脊椎外科領域においても諸家1,3,6,12)により本法の有用性が論じられてきている,著者らは1977年1月より各種脊椎疾患に対しCTを行い本法が体軸横断面での脊椎骨性病変を明瞭にとらえ得る有用な検査法であることを確認している.しかし,脊椎外科においては骨性病変のみならず脊髄そのものの位置,病的状態を正確に把握することが最も重要であるにもかかわらず,現在のplain CTでは困難であつた.そこで著者らは,現在当教室において頸椎より腰椎にいたる万能の水溶性造影剤として使用されているmetrizamideによるmyelographyの施行後にCTを行い脊椎のみならず脊髄を同時に撮像し非常に有用な情報を得,いわばcord monitoringとして手術術式の選択,侵襲路の決定に大いに役立つているのでその概要を述べ御参考に供したいと考える.

股関節疾患へのCTの診断的応用

著者: 岡正典 ,   田中清介

ページ範囲:P.422 - P.429

はじめに
 股関節疾患の病像を把握するにあたつてその病変の拡がりと関節の適合性を正確に診断することが必要であるが,従来の単純レ線検査では水平面における病像の把握が不充分であつた.我々は正常股関節および各種股関節疾患において,病変の特に前後方向への拡がり,大腿骨頭の寛骨臼による被履性あるいは適合性等に注目して水平断層横断所見を検討したので報告する.

膝関節疾患におけるCT像

著者: 光安知夫 ,   吉田光男

ページ範囲:P.430 - P.441

はじめに
 Computed tomography(以下CTと略す)は1973年Hounsfieldらによつて臨床応用されたのが始まりである,その後全身用CTが開発されて以来整形外科領域でも主に脊椎疾患,骨軟部腫瘍に応用され,その有用性について報告されてきている.しかし膝関節におけるCTの応用についての報告は少ない.
 また一方,膝関節疾患における検査法としては関節造影,関節鏡という検査法があり,それらの普及,改良によつて膝内障における診断も著しく向上してきている.しかしこれらの検査はいずれも患者にある程度の侵襲を与えるものである.われわれはnon-invasiveな検査法であるCTを使用して膝関節疾患の診断の可能性を追求する目的で研究を行い,CT診断の実用性,限界等について検討を加えたので報告する.

カラーシリーズ 義肢・装具・3

義手

著者: 中島咲哉

ページ範囲:P.348 - P.351

 わが国で交付される義手は,身体障害者福祉法(昭和24年制定)の補装具交付基準に規定された名称・型式・価格が,すべてにおいて基本になっている.他の労災や年金などの区分で交付される場合や,自費で作った場合でも,この交付基準が準用されている.
 交付基準には,義手を次のように定めてある.

整骨放談

備州長久の刀

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.442 - P.442

 ここに重厚な気品を湛えた一振りの刀がある.白木の鞘に収まつた二尺一寸の大刀で,備州長久の銘がある.南北朝末期の作であるという.その白木の鞘の表には「第7回武徳会青年演武会柔道優勝者」とあり,裏には「明治三十七年 嘉納治五郎」と墨書されている.
 私はこの刀が京都の研師のもとへ出されるのをお世話したに過ぎないのであるが,整形外科の大先達である伊藤老先生がこの刀を得られた経緯をおききして大変感銘を受けた.そして,この刀が研ぎ上げられて私を通して老先生に返されるために大学の私の部屋へ持つてこられた時,私はその美しさと感銘を全教室員に披露したい気持をおさえる事ができなかつた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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