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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科15巻5号

1980年05月発行

雑誌目次

視座

人工関節手術と生体防禦

著者: 広畑和志

ページ範囲:P.451 - P.451

 先賢は生体内に異物を入れることを極力避け,止むを得ない場合にはできるだけ小さいものにとどめた.生体における異物反応と感染の脅威を肌で感じていたからであろう.人工関節手術は大きな無生物を生体内に終生置いて機能させる点では,整形外科手術の歴史の流れを変えた画期的なものといえる.それに因んでlate infectionとかdeep infectionのような耳新しい術語は無為に抗生物質の助けを借りていた整形外科医に術後感染を再認識させたものである.Bioclean roomの設立はその一つのあらわれである.この中で行われる手術の感染率が低下したことは否めない.
 ペニシリンが市場に現れた時も術後感染の予防に劇的な効果があつた.その後生体防禦反応や術後感染について無関心であつたのか優れた抗生物質は次々に生れた耐性菌のため早々と市場より消えている.今,人工関節置換に際して,術前・術後に長期間抗生物質を投与するのが常識となつている.抗生物質を使用しなかつた関節置換に感染率が低いという皮肉な研究成果が内外で報告されている.抗生物質を投与していても安全でないことを示唆し警告の意味で興味深い.同じようにbioclean roomで甘んじて手術をすれはば感染率が低くなるとは思えないが,その需要が多くなつたことはasepticの再認識の点で評価されよう.

シンポジウム 先天股脱の予防

先天股脱の予防—歴史・実証・実践・展望

著者: 石田勝正

ページ範囲:P.452 - P.460

はじめに
 先天股脱の予防という言葉が,古くからしばしば用いられてきた.そして著者らも先天股脱の予防を強調している.それでは古くからいわれている予防と著者らの強調している予防とどこが異なるのか,これを明確にする必要がある.そのためには先天股脱研究の歴史を述べねばならない.ここに歴史をとりあげたのは先達の業績を単に回顧するためではなく予防についての考え方がどのような歴史的背景のもとで生れてきたかを説明するためである.
 第1図は,予防の考え方の変遷をシエーマにしたもので,この図を念頭に本文を読んでいただきたい.

常滑市を中心とした先天股脱の予防活動

著者: 山田順亮

ページ範囲:P.461 - P.466

はじめに
 1975年4月,日整会において石田1)が先天股脱の予防について発表して以来,本邦において次第にその予防についての見識が普及し,また先天股脱も徐々にではあるが減少しつつあるように思われる2,3,4)
 われわれも1975年5月以来,石田の理論に基づいて愛知県常滑市を中心として先天股脱の予防運動を開始し,その内容については,第23回日本小児保健学会5)・第13回日本新生児学会,第51回日整会6)・第27回東日本臨床整形外科学会・第53回中部整災会などを通じて逐次発表してきたが,4年近くを経た現在,その普及がほぼ完成されたものとなり,著しい成果が得られたので,われわれの実践方法について詳細に述べるとともに,それに伴つて生じた筆者自身の感じた2・3の問題点についても述べてみたい.

乳児神経学からみた先天股脱

著者: 篠田達明

ページ範囲:P.467 - P.472

はじめに
 二足歩行をいとなむ人類にとつて,先天性股関節脱臼は,古来より,人びとをくるしめてきた,もつとも重要な難疾患のひとつである.
 しかしながら,近年,京大石田勝正講師の提唱する『生直後からの自然肢位・自由運動育児による先天股脱の予防』という,きわだつてすぐれた理論と実践の成果によつて,乳児の股関節脱臼は,その発生をいちじるしく減少させることが可能となつてきた.このことは,わが国の整形外科史上,まさに画期的な業績として位置づけられるものであり,石田講師をはじめとする京大グループならびにこの活動をささえた関係者の熱意と努力にたいし,ふかい敬意をささげるものである.

先天股脱と斜頸姿勢—特に予防の見地から

著者: 和田昇 ,   村田豊 ,   久下章 ,   井形高明

ページ範囲:P.473 - P.478

はじめに
 先天性股関節脱臼の新生児検診における見逃し例の報告は諸家によりまちまちである.そして,これら見逃し例の発生要因として二つの事が検討されてきた.一つには検診法そのものによる問題である.すなわち,検診の最も一般的な指標であるclick signの発現率がその手技や新生児の生後日数,状態などに左右され易いという点である.二つには見逃し例の判定の問題である.すなわち,臼蓋形成不全と亜脱臼を明確に区別したり,治療の要否を決定するのに難渋する場合が多く,実際上,これらのことが医師の経験にまかせられているという点である.また,Riemen-bugel法の普及やその適応の拡大なども要治療例を増加させてきたふしがあつた.
 この間,山室,石田らによつて新生児の下肢伸展位の危険性や自然肢位,自由運動育児の重要性が強調され,予防法が実践にうつされるにつれて,click signのみならず見逃し例の著しい減少が多々報告されるようになつており,上述した問題の大部分は解決されたかにみえる.我々もオムツや着衣など新生児の育児環境の改善や母親の予防に対する啓蒙を積極的に実行することによつて,諸家の報告とほぼ同様の好結果を経験している(第1図).しかしながら,いまだにみられる見逃し例を検討すると,ただ単に,click signの見逃しやオムツ等の問題のみで解決できない面もあるように思われる.

症例検討会 骨・軟部腫瘍20例

〔症例1〕左腸骨腫瘍(Mesenchymal chondrosarcoma)

著者: 松崎昭夫 ,   高岸直人 ,   岩崎敬雄 ,   葉山泉 ,   諫山照刀 ,   岩崎宏 ,   菊池昌弘

ページ範囲:P.479 - P.482

 患者:31歳男子.昭和52年10月頃より左股関節部痛を主訴とし,某病院で治療を受けていた.しかし痛みがとれず,53年1月中旬他の2病院を受診したが骨に異常なしと診断された.53年1月末来院,左腸骨窩の手拳大腫瘤を認め直ちに入院をすすめた.事情により遅れ3月30日当科入院.入院時腫瘤は明らかに増大していたが自覚症状は特に変つていなかつた.血液一般,血液生化学検査,尿検査には異常を認めなかつた.単純レ線写真で左腸骨と重なつた不定形,軟らかな石灰化陰影が見られたが(第1-1図),血管造影では異常を認めなかつた.CT像では左腸骨内側に大きな腫瘍が認められ(第1-2図),腸骨に接する部分より腫瘍内に向うような石灰化像が認められた.53年4月24日切除術施行.腸骨内側に沿つて剥離を進めると,筋の下に被膜に包まれたような表面平滑,弾性軟の多結節性腫瘍が腸骨と連なつて認められた.一部に筋との癒着を認めまた腫瘍に接する筋の一部が浮腫状,蒼白になつた部分を認めた.健康な骨部を充分含めて切除.腫瘍は12×10×7cmの大きさで切割には一部ノミを要した.

〔症例2〕膝関節腫瘍の1例(Synovial sarcoma)

著者: 岡田聰 ,   吉田憲一 ,   明松智俊 ,   広畑和志 ,   水野耕作 ,   川井和夫 ,   謝典穎

ページ範囲:P.482 - P.485

 患者:29歳,女.主訴:左膝関節の疼痛と腫脹.53年11月,走つた直後に左膝関節の疼痛,腫脹および熱感をきたしたが,安静により消褪した.1ヵ月後に再び同様の症状が出現したため神大整形外科を受診した.左膝蓋上部に腫脹があり,弾性軟で触診上では滑膜の肥厚を思わせた.関節穿刺により血性穿刺液が得られた.X線像(第2-1図)では,大腿骨の下部前面から膝蓋骨上方にかけて手拳大の軟部腫瘤の陰影が存在し,腫瘤部に一致して大腿骨前面に圧迫像および軽度の硬化像を認めた.また,大腿骨の下部には骨破壊像もみられた.膝部の色素性絨毛結節性滑膜炎を疑い手術を施行した.手術時,膝蓋上方の腫瘤は手拳大で,一部被膜に覆われ,割面は灰白色調,全般にmyxoidで非常に軟かく,一部にわずかに砂粒状の硬結物を触知し得た.また所々に斑点状の出血巣が散見された.腫瘤の中心部にはcysticな空隙が多数存在し,ごく少量の透明液を容れていた.軟かいmyxoidな腫瘍組織が大腿骨果間前面より骨を破壊し骨髄内へ侵入していた.摘出腫瘍組織の病理組織学的検索で悪性腫瘍と診断し,54年3月9日,股関節離断術を施行した.術後4ヵ月の現在,経過良好で再発や転移巣は発現していない.

〔症例3〕左股関節痛(Chordoid tumor)

著者: 恒吉正澄 ,   篠原典夫

ページ範囲:P.485 - P.488

 患者:57歳,男.
 臨床経過:昭和52年11月,誘因なしに左股関節痛を生じる.昭利53年11月,疼痛が強くなり,整形外科医にて椎間板ヘルニアとして治療をうける.昭和53年8月中旬,殿部腫瘤に気づく.昭和53年9月,他医にて胃病変を指摘され,9月20日,当科を初診する.入院時,左殿部に成人頭大の硬い腫瘤をふれる.皮膚とは癒着はなく,骨との間に可動性はない.検査成績は著変なく,既往疾患もない.単純レ線では左側の坐骨が完全に消失している.血管造影ではhypervascularityとencasementが目立ち,悪性腫瘍が考えられる.試切後,同年10月26日,臼蓋部以下を切断した.腫瘍は坐骨より発生し,直腸,膀胱と強く癒着していた.腫瘍は13×11×11cmで,割面は灰白色で,著明な粘液状を呈していた.昭和54年4月,右腋窩リンパ節,その後胸壁,腹壁皮下に転移を来たしたが,その他の臓器には著変を認めない.

〔症例4〕左下腿後面の腫脹と疼痛(Extraskeletal Ewing sarcoma)

著者: 水島睦枝 ,   伊藤慈秀 ,   那須亨二 ,   田村宣夫

ページ範囲:P.488 - P.490

 患者:21歳,男.工員.主訴:左下腿後面の腫脹と疼痛.1977年9月頃より左下腿後面の腫脹と疼痛を来たし,次第に増強したため,7ヵ月後に本院受診.翌月に左腓骨を含めて下腿腫瘍の摘出術施行.4ヵ月後に手術創部再発を来たし,大腿切断術施行.初発症状から1年10ヵ月目の現在,再発・肺転移なく経過良好.経過中下腿皮膚に急性炎症所見なく,全身状態良好で,発熱・白血球増多症・血沈亢進もなく,他の骨やリンパ節転移もない.
 初診時X線写真では,軟部腫脹に一致する腫瘤影と矢印の部に顆粒状石灰沈着を認め,腓骨骨幹部は頸骨側の骨皮質肥厚と軽度の骨膜反応を示したが,骨髄内の変化は不明瞭であつた(第4-1図・左).肉眼的に腫瘍は筋肉内にあり18×7×8cmで770g,ほぼ紡錘状を呈し,腓骨の前部を除いて腓骨をとり囲み,黄〜灰白色,充実性,硬で,線維性隔壁に富んだ多結節状を呈し,周囲筋層との境界は明瞭.腓骨を含む割面では,軟部腫瘍は骨皮質に密接しているが,骨髄内への侵襲は不明瞭(第4-1図・右).

〔症例5〕右上腕骨骨腫蕩(Malignant mesenchymoma)

著者: 森本兼人 ,   湯本東吉 ,   平川訓己 ,   稲田治 ,   前山巌

ページ範囲:P.490 - P.493

 症例は60歳男性.昭和51年11月右肩関節痛を覚え,同年12月右肩を打撲してより同部の疼痛腫脹を来たした.昭和52年1月末某病院で右上腕骨の骨腫瘍と病的骨折の診断をうけ同年2月2日当科に紹介され入院した.
 家族歴,既往歴に特記すべき事はない.

〔症例6〕背部軟部腫瘍(Leiomyosarcoma)

著者: 後藤守 ,   山脇慎也 ,   姥山勇二 ,   宮川明

ページ範囲:P.493 - P.496

 患者:46歳,男.
 臨床経過:昭和53年2月右背部に鶏卵大の無痛性腫瘤に気付いた.放置するに増大するため同年6月某医受診.軟部腫瘍の診断で6月8日手術.大きさは15×15cmで組織診断でsarcomaと判明したため当科紹介された.6月23日(術後2週目)手術部に6×5cmの腫瘤を触知.血管造影にて悪性腫瘍の所見を得たため7月4日再度手術にて腫瘤を切除した.術後局所に放射線治療を行うと同時にADMの全身投与を開始したが,9月5日左肺に直径1.5cmの転移巣が2コ出現した.ADM治療を継続したが左肺転移巣は増大し,更に11月5日右肺にも直径1.0cmの転移巣が3コ出現した.昭和53年12月7日増大した左肺転移巣の切除術を施行.以後CQを投与していたが右肺転移巣も増大してきたため,昭和54年3月6日右肺転移巣の切除術を行つた.現在新たな転移巣もなく患者は健在である.

〔症例7〕脊髄硬膜外腫瘍(Maligriant lymphoma)

著者: 富田勝郎 ,   野村進 ,   真鍋昌平 ,   島巌 ,   宗広忠平 ,   中村孝 ,   野村忠雄 ,   清水俊治 ,   山田義夫 ,   松原藤継

ページ範囲:P.496 - P.500

 患者:26歳,男性.主訴:両下肢不全麻痺.
 現病歴および現症,経過:昭和52年4月頃より腰痛を認め,53年4月よりparaparesisに陥り当科入院となつた.レ線像で第12胸椎右椎弓根部の骨破壊像を認めたので(第7-1図a),癌の転移の有無を検索したが見当らずmyelographyで第11胸椎レベル以下の完全ブロック像を認めたので(第7-1図b)椎弓切除術を行つた.腫瘍は第10胸椎から第3腰椎レベルの硬膜外後面を覆うように拡がり,第12胸椎右椎弓根を圧迫性に破壊しつつ傍脊柱筋群に浸潤するhour-glass shapeを呈しており完全切除は不可能であつた(第7-1図c).術後取り残し部位を中心に6,000radsのCo60照射,化学療法を行つた.術後1年3ヵ月の現在神経症状の改善なく病状の進展も認めない.臨床検査成績に異常なく原発巣も未だ見当らない.

〔症例8〕側頸部に発生した軟部悪性腫瘍

著者: 福間久俊 ,   増田祥男 ,   別府保男 ,   広田映五 ,   宮本包厚 ,   板橋正幸

ページ範囲:P.500 - P.503

 患者:79歳,男性.
 主訴:左側頸部腫瘤.

〔症例9〕右殿部,大腿軟部腫瘍(Osteosarcoma)

著者: 松岡正治 ,   武内章二 ,   常田昌弘 ,   長沢博正 ,   安藤英樹 ,   赤星義彦 ,   宮下剛彦 ,   下川邦泰 ,   尾島昭次

ページ範囲:P.503 - P.506

 患者:46歳,主婦.
 既往歴:21歳で胞状奇胎の手術をうけた.

〔症例10〕左大腿部の悪性線維性組織球腫

著者: 古屋光太郎 ,   網野勝久 ,   青木望 ,   川口智義 ,   和田成仁 ,   荒井孝和 ,   北川知行 ,   福住直由 ,   町並陸生

ページ範囲:P.506 - P.509

 患者:45歳,男性.
 主訴:左大腿部腫脹.

〔症例11〕右脛骨骨腫瘍

著者: 檜垣昇三 ,   竹山信成 ,   立石昭夫 ,   今村哲夫 ,   町並陸生

ページ範囲:P.509 - P.512

 患者:29歳,女子.
 主訴:右下腿痛.

〔症例12〕左脛骨腫瘍(Malignant fibrous histiocytoma)

著者: 須田昭男 ,   渡辺好博 ,   茨木邦夫 ,   寺嶋一夫 ,   今井大 ,   笠島武

ページ範囲:P.512 - P.515

 患者:49歳,男性 主訴は左下腿の疼痛および跛行.昭和53年7月左下腿を打撲して以来,歩行時の疼痛が続くため,某医を受診,X線写真で左脛骨の異常陰影を指摘され当科に紹介され,同年8月10日入院.入院時検査成績は,中等度の血沈亢進,RA陽性のほか異常が認められなかつた.単純X線写真で脛骨の中枢側骨幹端から骨幹部に石灰化を伴う多房性の骨透明巣がみられ,骨皮質の一部に破壊像がみられたため,悪性腫瘍が疑われた(第12-1図).しかし,骨透明巣の辺縁は硬化像を伴い比較的境界明瞭であるため,chondromyxoid fibroma,軟骨腫などの良性腫瘍も否定できなかつた.99mTcによる骨シンチグラフィーで腫瘍に一致して,hot regionがみられた.アンギオグラフィーでtumor stainとearlyvenous feedingがみられ,悪性腫瘍または血管系の腫瘍が疑われた.昭和53年8月15日左下腿の前内側部にみられた母指頭大の腫張部から生検を行つた結果,malignant hemangiopericytomaと診断された.アドリアマイシン,5Fuの持続動注後,膝上で切断した.発症約1年後の現在,転移もなく健在である.

〔症例13〕右脛骨腫瘍(Malignant fibrous histiocytoma)

著者: 角南義文 ,   武智秀夫 ,   田仲俊雄 ,   湯本東吉 ,   橋本公夫

ページ範囲:P.515 - P.516

 患者:39歳,男性,内科医.
 主訴:左脛骨の異常陰影.

〔症例14〕左脛骨腫瘍(Malignant fibrous histiocytoma)

著者: 津村重夫 ,   鳥山貞宜 ,   小林定夫 ,   藤田敏光 ,   松島健治 ,   後藤典彦 ,   館浦征児 ,   川野寿 ,   桜井勇 ,   登坂朗 ,   大畑正昭 ,   遠藤英利

ページ範囲:P.516 - P.518

 患者:14歳,女.
 主訴:左膝関節痛.

〔症例15〕左大腿骨腫瘍(Osteosarcoma)

著者: 高木克公 ,   北川敏夫 ,   本田五男 ,   内賀島英明 ,   岩政輝男

ページ範囲:P.518 - P.520

 患者:27歳,男性,会社員.
 主訴:左大腿部疼痛.

〔症例16〕軟骨由来と思われる悪性腫瘍の1例(Mesenchymal chondrosarcoma)

著者: 浜口謙蔵 ,   荻原義郎 ,   鶴田登代志 ,   山際裕史 ,   大萱稔

ページ範囲:P.521 - P.523

 39歳,男性.昭和51年4月頃左下腿外側中下約1/3に有痛性の腫瘍が生じた.同年7月19日某院にて腫瘍摘出術が行われた.昭和54年1月頃同部に再発を思わせる腫瘍が生じ,同時に左肺野に転移像が見られたため,昭和54年1月17日入院した.
 入院時所見:左下腿外側中下約1/3に長径約6cmの楕円形の軟かい腫瘤が触れ,その中に小指頭大の硬結があつた(第16-1図).圧痛,熱感,発赤はなく,鼠径部のリンパ節にも特に腫大せるものはなかつた.血液生化学検査は特に異常はなかつた.

(症例17)右大腿軟部腫瘍

著者: 品川俊人 ,   牛込新一郎 ,   南郷明徳 ,   加藤寿太郎 ,   片場嘉明 ,   長田博昭

ページ範囲:P.523 - P.525

 患者:41歳,男性.
 臨床経過:昭和53年8月,右大腿後面に小児手拳大の腫瘤に気付くも放置.同11月検診で胸部X線上異常陰影を指摘され,54年1月当院を訪れた.同2月転移性肺腫瘍の診断で左肺下葉切除を受けたが,大腿部腫瘤は生検のみで終つた.術後消化管出血とこれによる貧血が認められ,同2月胃部分切除を受けた.その後局所の放射線治療と抗癌剤投与を受けた後,同4月大腿部腫瘤を摘出した.この時点では13×14×16cmの大きさとなつていた.現在中等度血沈亢進以外著変なく経過している.

〔症例18〕右前腕部軟部腫瘍

著者: 薄井正道 ,   石井清一 ,   佐々木鉄人 ,   八木知徳 ,   井須和夫 ,   松野丈夫 ,   井上和秋

ページ範囲:P.525 - P.527

 患者:7歳,女児.
 主訴:右前腕部軟部腫瘍.

〔症例19〕右アキレス腱部軟部腫瘍(Clear cell sarcoma)

著者: 青沼章文 ,   大野藤吾 ,   小坂芳守 ,   安田寛基

ページ範囲:P.528 - P.529

 患者:37歳,男性.
 主訴:右アキレス腱部の疼痛と腫脹.

〔症例20〕右前腕軟部腫瘍(Schwannoma)

著者: 稲葉博司 ,   伊井邦雄

ページ範囲:P.530 - P.532

 患者:51歳,女性.
 現病歴:3年前に右前腕の腫瘤に気づき,以後徐々に増大してきたが,特に自覚症状はなかつた.

臨床経験

Subungual exostosisの4例

著者: 渡辺勝利 ,   加藤正

ページ範囲:P.533 - P.537

 Subungual exostosisは指趾の末節骨末端に発生する単発性良性の骨腫瘍で,部位の特殊性により,皮膚科領域からの報告は多いが,整形外科領域からは少ない.
 われわれは本症の4例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

カラーシリーズ 義肢・装具・4

義足(股義足,大腿義足,膝義足)

著者: 武智秀夫 ,   長島弘明

ページ範囲:P.446 - P.449

I.股義足
1.Saucer型ソケット
 股関節離断が理想的に行われておれば,断端にあまりふくらみがない.ソケットはこの断端に対応するように皿状になっており,肩吊りバンドを必要とする.ソケットと断端の運動で,股関節の運動を代償する.現在新らしい切断者には全く用いられず,従来から用いていた切断者に用いるにすぎない.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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