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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科15巻6号

1980年06月発行

雑誌目次

視座

救急センターにおける整形外科医の関与の度合は?

著者: 猪狩忠

ページ範囲:P.547 - P.547

 New York Orthopedic HospitalのProf. McLaughlinの著書"Trauma"を読んでから整形外科学の講義からtraumatologyをはずして,別の講義時間を設定していたのであるが,近来救急医学といわれ,primary care medicineといわれる医療,教育の必要性の認識の高まりと,厚生省方面の意向もあり,われわれの大学においても,岩手県高次救急センターの設立,経営の一切をお世話することになり,改めて私共の大学病院で取り扱つているいわゆる三次救急に該当する患者数を洗い直してみたのである.
 年間数10,000〜12,000人の時間外診療と学内診療科で取り扱つた患者のうち,ICU,CCUなり,緊急手術を必要とした症例は昨年一ヵ年間で785例を数えたのである.そのうち内科系では脳硬塞,脳出血,脳動脈瘤などが125,心筋硬塞,狭心症など80で,外科としては消化器出血60,イレウス40症例および脳動脈瘤の一部が主で,整形外科の側で災害災害と騒いでいる外傷のうちで三次救急として処置すべき骨折は15例,外傷性切断12例,脱臼骨折7例などで,三次救急診療として処置すべき総患者数の5%にすぎないことが判つた次第である.

論述

環椎破裂骨折について

著者: 小林慶二 ,   須田公之

ページ範囲:P.548 - P.557

 1920年,Jefferson7)が環椎骨折について自験例と過去の報告を総括して以来,すでに200例近くの症例が報告されている.この論文中で彼は頸椎に長軸方向の外力が加わつた時,頭部から伝達された外力と下位頸椎から伝達されたその反作用外力とが合力となつて環椎側塊を外側へ拡大する方向に働き,その結果,環椎後弓骨折が惹起されると推論している.この力学的解析は高く評価され,その後,前弓と後弓が骨折し側塊が外側へ転位する型の骨折がJefferson's fractureあるいはbursting fracture(破裂骨折)と呼ばれるようになつた.
 従来はこの破裂骨折も後弓単独骨折と同様に保存的に治療されていた.1970年,Spence et al. 14)はこの骨折で見られる環椎側塊の側方転位が環軸関節の安定性に最も関与している横靱帯の断裂を伴うことに注目し,屍体による実験から側塊の側方転位の程度によつて保存的療法と観血的療法のいずれかを選択する試みを行つている.彼の研究以後欧米でHan5),Zimmer19),O'Brien12),Moati11)ら,本邦で鈴木15)らによるその治療面に関する追試が相次いでなされている.しかしSpencc et al.の実験を裏付ける臨床報告は少なく,諸家によつて治療方法もまちまちで,いまだ確立されたものとはなつていない.

骨・軟部原発性悪性腫瘍に対する化学療法の効果とその問題点—特にVCR+MTX+ADR療法について

著者: 古瀬清夫 ,   森芳紘 ,   稲田治 ,   豊島良太 ,   森本兼人 ,   益永恭光 ,   明穂政裕 ,   前山巖 ,   龍原徹 ,   田渕二三枝

ページ範囲:P.558 - P.574

 骨・軟部原発性悪性腫瘍に対する従来の治療方法は骨原発性悪性腫瘍には切・離断術が,軟部原発性悪性腫瘍には摘出術が採用され,そのためにこれらの悪性腫瘍患者の多くは血行性に肺転移をきたして死亡している.
 近年,アドリアマイシン(ADR)やメソトレキセート(MTX)の抗癌剤が主として骨肉腫を中心にして使用されるようになり,その有効性が報告されている.しかしながら,それらの抗癌剤の効果は個々の腫瘍によつても異なり,また個々の腫瘍に対するこれらの抗癌剤の併用方法もいまだ十分な解明はなされていない.

変形性股関節症の自然臼蓋形成について

著者: 平井和樹 ,   加藤哲也 ,   伊藤邦臣 ,   増田武志 ,   深沢雅則 ,   薄井正道

ページ範囲:P.575 - P.579

はじめに
 わが国における変形性股関節症は,先天性股関節脱臼,臼蓋形成不全等に伴う二次性のものが大多数をしめている.レ線学的にその経過を辿つていくと,関節症変化のほとんど認められない前関節症から骨破壊が高度で関節裂隙が消失した末期に至るまで,種々の像を呈してくる5)
 変形性関節症の病期が進行するに伴い種々の場所に骨棘が形成されてくるが,骨頭および臼蓋の骨棘の形成はいずれも外側よりも内側においてより早期に始まり,増大する傾向がある.また股関節は他の関節に比較してその形成が著明であるように思われる.
 骨頭および臼蓋に骨棘が形成された症例の中で,われわれは臼蓋嘴部にあたかも臼蓋形成術を施行したような骨棘が形成されている症例を時々経験することがある(第1図).

ステロイドホルモンの長期関節内および局所注入の副腎皮質機能に及ぼす影響について

著者: 三河義弘 ,   丹羽権平

ページ範囲:P.580 - P.586

はじめに
 整形外科領域においては,諸種炎症性疾患に対してステロイド剤(以下「ス」剤と略す)を使用する機会はきわめて多い.腱鞘炎に対しては腱鞘内に,関節周囲炎に対しては関節周囲局所に,関節症および浸出性関節炎には関節内に,粘液嚢炎には嚢内に,上腕上顆炎では局所に,神経炎,神経痛にはブロックとして,これら無腐性炎症の局在性炎症鎮静化のために使用している.「ス」剤としては,水溶性剤を使用することは少なく,できるだけ局所に局在してのlong actingな作用を求めるため,懸濁性剤を使用することが多い.この際,体液中に「ス」剤の使用全量が移行して全身作用を現すとは考えられず,内服剤や水溶性剤を全身的に使用する場合と異なつている.また使用間隔も,内科的に血中濃度の維持を問題とする場合と異なつて,局所の消炎を目的としているため,一定期間局所にとどまり,消炎作用を示せば事足りる整形外科疾患に対する使用では,その副作用の検討の視点も自ら異なり,その結果もまた異なるであろうことは推測できる.

先天性股関節脱臼におけるRiemenbügel法整復のメカニズム

著者: 安藤御史 ,   竹光義治

ページ範囲:P.587 - P.593

はじめに
 乳児先天性股関節脱臼(以下乳児先天股脱と略す)の保存的治療は軟骨骨頭を可能な限り愛護的に整復障害因子を除去することであろう.初期治療法として広く用いられているRiemenbügel法(以下R. B.法と略す)においても,なお整復不能例や骨頭に障害を残す例が決して稀ではない.これらを解決するためには,いまだ不明の点の多いR. B.法による整復のメカニズムを解明することが必要と考えられる.R. B.法の整復のメカニズムの解明のためには,乳児先天股脱の整復障害因子がなんであるかを検討しなければならない.R. B.装着による自然整復とは整復障害因子が自然に除去され骨頭が寛骨臼内におさまることであり,整復障害因子がどのように除去されて行くかを解明することがR. B.法の整復メカニズムそのものだからである.

臨床経験

化膿性脊椎炎の経験

著者: 里見和彦 ,   大谷清 ,   満足駿一 ,   柴崎啓一

ページ範囲:P.594 - P.600

はじめに
 化膿性脊椎炎は従来よりその発生は脊椎カリエスに比し稀とされている.特に抗生物質の発達した今日,その特徴的とされている臨床症状を示さない例が増え,その診断,治療に難渋することが少なくない.最近,われわれは過去10年間に経験した化膿性脊椎炎21例につき検討を加えたので,若干の文献的考察とあわせて報告する.

Bleomycinにより興味ある経過を辿つた軟部好酸球肉芽腫の1例

著者: 高木治樹 ,   山室隆夫 ,   梁瀬義章

ページ範囲:P.601 - P.605

 軟部好酸球肉芽腫—いわゆる木村氏病—は,1909年片山3)が本症をMikulicz病として報告して以来,本邦では現在に至るまで主に皮膚科・耳鼻科領域にて約350例の報告がなされている.しかし,整形外科領域での症例報告11,18,19)は,その好発部位の関係上散見されるにすぎない.また,本症の原因・本態については未だ模索の域を出ず,種々の治療法が試みられている.
 われわれは最近,右上腕に巨大な腫瘤を形成した本症の1例を経験し,Bleomycin infusionを行つたところ,興味ある経過を辿つたので,若干の文献的考察を加えて報告する.

上肢における血管腫

著者: 米延策雄 ,   多田浩一 ,   栗崎英二

ページ範囲:P.606 - P.610

はじめに
 血管腫は頭・頸部に好発する他に,全身の諸組織内に発生することはよく知られている.また,上肢の軟部良性腫瘍の中でも比較的よくみられるものの一つである.このように罹患部位が多岐にわたるため,各科で扱われ,種々に分類されている,一般的には病理組織学的所見にもとづいた分類が用いられているが,腫瘍の浸潤度や予後の判定といつた面では必ずしも有用でない.
 われわれは,昭和36年より昭和53年までの18年間に,大阪大学整形外科において扱つた上肢血管腫37例を術後の機能を中心として調べ,成績に影響する因子について検討した.

胸椎の多椎体に発生したfibrous dysplasiaの1手術例

著者: 渡辺俊彦 ,   大谷清 ,   柴崎啓一 ,   満足駿一 ,   藤村祥一 ,   中井定明 ,   森雅文

ページ範囲:P.611 - P.617

 数ある脊椎病変のうち,椎体の脆弱化のため,病的骨折を併発し,脊髄麻痺を起こす疾患は,その手術的適応も含めて,治療に難渋する場合が多々ある.その代表的なものとして,転移性脊椎腫瘍,myeloma等の悪性原発性脊椎腫瘍,骨巨細胞腫等の良性脊椎腫瘍,さらには老人性骨粗鬆症,Paget病,そして副甲状腺機能亢進症などが挙げられる.しかし,一般には余り知られていないが,四肢長管骨に好発するfibrous dysplasia(以下F. D.と略す)も時に脊椎に発生し,病的骨折を併発し,対麻痺の原因となり,その治療に苦慮することがある.
 この度,われわれは第6胸椎から第9胸椎の4椎体に及ぶF. D.を,前方より病巣掻爬,椎体固定を施行する機会を得た.F. D.の脊椎発生は文献上,稀なものとされているが,polyostotic typeではその14%に脊椎病変をみたという報告もある8).また第8回脊椎外科研究会においても,新たに5例報告されたことより7,21),さほど稀なものではないと考えられる.今回われわれはF. D.椎体発生例の一手術例を得た機会に,本例の報告と共に過去の文献報告例より,F. D.脊椎発生例について考察を試みた.

末梢神経に多発したschwannomaの1例

著者: 二井英二 ,   佐藤誠 ,   荻原義郎 ,   鶴田登代志

ページ範囲:P.618 - P.621

 末梢神経に発生する神経鞘腫は,そのほとんどが単発性で,多発することは比較的稀である.最近われわれは,右腋窩部および左上腕部の2ヵ所に発生した1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

False negative bone scanを呈した上顎洞癌の骨転移の1例

著者: 若菜一郎 ,   植松邦夫 ,   福地稔 ,   湊川徹

ページ範囲:P.622 - P.627

緒言
 99mTc燐酸化合物による骨scintigraphyは骨を鮮明に描出し得ることから最近では整形外科領域において,その診断上,重要な役割を果しており,特に癌の骨転移の診断1,3,16,18)には有用とされている.しかし,明らかに腫瘍の骨転移が存在するにもかかわらず,骨scintigram上,異常を呈さないいわゆるfalse negative scan例についての報告4,19)がみられている.最近,われわれは上顎洞癌の骨転移をきたし,false negative scanを呈した1例を経験したので若干の考察を加えつつ,ここに報告する.

小児上腕骨外顆骨折の偽関節形成に対する骨移植術の経験

著者: 村田紳悦 ,   渡辺好博 ,   茨木邦夫 ,   小野勝雄 ,   佐本敏秋 ,   浜崎允 ,   三浦競郎 ,   原田順二 ,   高橋信英 ,   須田昭男

ページ範囲:P.628 - P.632

 小児の上腕骨外顆骨折の偽関節形成は,重大な機能障害のない場合が多く,また手術によつても骨癒合を得られなかつたり,かえつて肘関節の運動障害をひき起こすこともあるので,放置する方がよいという意見が多い2,5,6,9,10,12)
 しかし一方偽関節形成を放置することによつて,外顆骨片の成長障害をきたして,外反変形および外側への不安定性が増強し,将来尺骨神経のfriction neuritisを招来する可能性が指摘されている1〜12,14〜16).また私たちの経験例で患肢に力が入りにくく,体育の授業で鉄棒や飛び箱ができないという訴えに遭遇している.そこで私たちは,この小児の上腕骨外顆骨折の偽関節に対し積極的に骨移植術を行い,良い結果を得ているので,その経験を述べてみたい.

オステオポイキローシスの1家系3症例

著者: 小林明正 ,   真角昭吾

ページ範囲:P.633 - P.636

 Osteopoikilosisは管状骨の骨端から骨幹端にかけて,あるいは扁平骨の海綿質内に円形〜斑点状の小さな硬化病巣が散在する遺伝性疾患である.本疾患は無症状に経過するため,捻挫や打撲などの外傷を機会にして偶然に発見されることが多い.したがつて報告例も少なく,比較的稀な疾患とされている.
 ここに報告する14歳女性の発端者も両膝関節痛を主訴として来院し,偶然にもX線所見上斑点状の骨硬化像を見いだしたものであり,さらに家族の調査を行つた結果,全く無愁訴の母親と兄にも同一疾患を認めた.

学会印象記

第18回先天股脱研究会

著者: 松永隆信

ページ範囲:P.637 - P.640

 今回は応募演題11と少数ではあつたが,別表のごとく,難治な股・膝関節脱臼合併例,新生児・乳児初期の治療,先天股脱予防に関連した問題,補正手術ならびに整復障害と,それぞれ意義ある演題が集まつた.本会の主旨に沿つて発表,討論に十分な時間がとれるよう企画できたのは幸いである.以下,発表,討議の要約を述べる.
 1.同側に先天性膝関節脱臼を伴つた先天性股関節脱臼の1例……………北海道大 加藤 博之

カラーシリーズ 義肢・装具・5

義足(下腿義足,Syme義足,足根中足義足)

著者: 川村次郎

ページ範囲:P.542 - P.545

I.下腿義足(below-knee (B. K.) prostheses)
 1959年にPTB下腿義足が発表されて以来,下腿義足は大きく変った.大腿コルセットと膝継手をもち,ソケットの底が開いたままになっていて断端とは接触していないオープンエンドソケットを用いる従来型下腿義足はしだいに減少してきている.一方PTSやKBMのような新しいタイプの義足もその後発表されてきた.ここではPTB下腿義足を現在の標準の義足としてとらえ,他をその変形(variants)とする考え方4)にもとづいて説明する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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