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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科15巻7号

1980年07月発行

雑誌目次

視座

同種骨移植の発展を

著者: 西尾篤人

ページ範囲:P.649 - P.649

 移植の歴史では骨移植は皮膚移植と共に最も古くから,また最もしばしば行われてきた手術の一つである.皮膚移植が自家移植以外ほとんど成功していないのに反し,骨移植ではPoncetが1887年に脛骨偽関節に他人の母趾の趾節骨の移植に成功して以来,1907年にはLexerは脛骨肉腫の患者の脛骨中枢端を腫骨と共に切除し,死体から採取した脛骨を関節面を含めて移植し,6年後に変形性膝関節症が起こつたが移植には成功し,その後も同種骨移植は盛んに行われている.もちろん骨移植で成績が最もよいのは自家骨移植であるが,患者自身の腸骨や脛骨から採取するにしても,移植骨の大きさ,形,量に制限があり,同種骨や人工産物にたよらなければならない場合が多い.私達が使用している同種骨は他の患者の手術時に不用になつた骨をいわゆる"銀行骨"として貯蔵して使用している.昭和28年に九大では天児民和教授が米国からdeep freezerを購入され,冷凍骨として保存され,その良好な使用成績を昭和34年に発表されている.その後昭和45年に凍結乾燥器を購入し,無菌的に-70℃の真空乾燥室で乾燥し,徐々に温度をあげながら二次乾燥,密栓して室温で保持する.

論述

いわゆるSterno-Kosto-Klavikuläre Hyperostose(Köhler)の成因とその病態について

著者: 川上俊文 ,   豊島良太 ,   古瀬清夫 ,   山本吉蔵 ,   前山巌 ,   高木篤 ,   藤井一利 ,   茂理春光

ページ範囲:P.650 - P.658

 鎖骨の内側部が硬化・肥厚し,鎖骨と第1肋骨の間に異常骨形成を呈する疾患は,1974年園崎19)がその4例を報告し,その後,胸肋鎖骨間骨化症と命名した.一方,1975年には,Köhler10)らがSterno-Kosto-Klavikuläre Hyperostoseと命名し,一つの独立した疾患として報告した.また若月ら26)(1963),佐々木16)(1967),加藤ら4)(1968),熊谷ら12)(1973)により類似症例が骨髄炎として報告されているが,未だ確立された疾患として認められるにはいたつていない.われわれは,最近類似した疾患の一例において,左鎖骨より無芽胞嫌気性菌Propionibacteriumを検出し得たので,その症例を詳細に報告するとともに,さらにわれわれの経験した他の4例を含めて文献学的考察を行つた.その結果,本疾患は単に胸骨・第1肋骨・鎖骨の異常骨化にとどまらず,掌蹠膿疱症・脊椎炎と深い関連があることが明らかになつたので報告する.

若年者の脊柱側彎症における腰部愁訴の検討

著者: 小林健一 ,   辻陽雄 ,   篠遠彰

ページ範囲:P.659 - P.665

 腰痛の原因は多岐にわたるが2,14),現在においてもなお,原因の明らかにされない,いわゆる腰痛症はかなりの数にのぼる.
 慢性腰痛を主徴とする疾患の大多数は,脊柱の変性過程を基礎としたもの14,15)であるが,今回いわゆる腰痛症の原因解析に一つの手掛りを得る目的から,これら変性を一応除外しうる10歳代のもののうち,主に腰仙部の側彎変形ないしは力学負荷の異常があると考えられる軽度側彎患者について,腰痛の実態を調査しX線学的検討を加えるものである.

先天性絞扼輪症候群について—先天性切断との比較

著者: 斎藤裕 ,   石井清一 ,   三浪三千男 ,   薄井正道 ,   村松郁夫 ,   荻野利彦 ,   三宅

ページ範囲:P.666 - P.670

緒言
 先天性絞扼輪症候群(以後C. C. B. S.と略す)は,絞扼輪4)にacrosyndactyly7,14),切断,リンパ浮腫などを合併した独立した四肢奇形である(第1図).この奇形の成立機序を解明するための実験的研究は多いが5),手指の原基形成がほぼ完了した時点で,何らかの障害が加わつた場合に形成されるとする考えに意見は一致している13).一方,外表奇形として四肢の切断が主病変である奇形は先天性切断(以後C. A.と略す)と呼ばれている.この奇形は,developmental arrest(Patterson)9),limb bud arrest(Glessner)3),transverse deficiency(Swanson)11)などと表現されるように,四肢そのものが形成されてこない状態である.したがつて,C. C. B. S.にみられる切断と,C. A.は明らかに区別されるべきものであるが,その鑑別がまぎらわしい場合にも遭遇する.発現機序の異なる両奇形において,切断という現象にのみ目を向けた場合,両者の特異性を明確にしようとしたのがこの研究の目的である.

境界領域

弾力線維の成熟と性ホルモンの影響

著者: 四方実彦 ,   山室隆夫 ,   竹田俊男

ページ範囲:P.671 - P.680

はじめに
 近年,結合組織(骨,靱帯,腱,血管,皮膚,その他)を構成する主な線維性成分である膠原線維(collagen),弾力線維(elastin)に関する生化学的,形態学的な研究の進歩は著しいものがある,結合織に影響を与えるものには,外部からの機械的刺激,加齢,ホルモン,外傷,炎症などの病的状態,放射線や紫外線などの物理的要因などがある.またglucoseaminoglycan(GAG)含有量の違い,それによるmechanical propertyの変化,線維間,細胞間相互のinteraction,細胞基質あるいは線維成分の異常に基づく,先天的,後天的な種々の疾患が注目をあび,多方面からの研究がなされているがelastinに関しては生理的あるいは病的状態の基礎的な知見についてまだ不明な部分が多い.先天股脱の発症要因として,内分泌性の関節弛緩に関する研究の一部として浜ら12)はWistar系ラット股関節包靱帯のcollagenについて形態学的,生化学的に詳細な検索を行い報告した.一方われわれは同じくWistar系ラット股関節包靱帯を用い,生理的な弾力線維形成,弾力線維成熟過程,弾力線維含有量およびこれらにおよぼす各種内分泌環境の影響などについて実験的に研究した.特に従来の酢酸ウラニール,クエン酸鉛染色では無構造で染色されなかつたelastinをVIH-LC染色を用いることにより明瞭に染色しその微細構造を観察することができた.

手術手技

上位胸椎椎体侵襲法とその適応

著者: 大谷清 ,   樋口正隆 ,   渡辺俊彦 ,   中井定明 ,   藤村祥一 ,   満足駿一 ,   柴崎啓一

ページ範囲:P.681 - P.687

はじめに
 上位胸椎はその解剖学的特徴から前方椎体侵襲の比較的困難な部位である.同部にも他の脊椎と同様に脊椎カリエスなどの椎体炎症,椎間板症,後縦靱帯骨化症,脊椎腫瘍などが発生するが,きわめて稀であるため上位胸椎に手術的侵襲を加える機会が少ないことは幸いである.しかしながら,これら少ない疾患のなかには,保存的治療に全く抵抗するものや,脊髄麻痺を合併し,しかも重度麻痺にまで発展するものもある.これらに対しては前方椎体侵襲による手術的治療法に治癒の期待を託すのみである.

検査法

コンピュータ断層撮影法による上腕骨捻転角の計測

著者: 鳥巣岳彦 ,   光安知夫 ,   佐々木信 ,   姫野信吉 ,   原田博文 ,   中山彰一

ページ範囲:P.688 - P.691

 人体の関節の中で最大の自由度を有する肩関節は,これに直接関与する筋肉のみならず,脊柱をはじめ肩関節の近位および遠位の関節や筋肉群が,互いに協調し合つてはじめて三次元での円滑な運動が可能である2,16).われわれは肩関節の運動のメカニズムを解明するため,正常人と頸髄損傷患者のX線学的ならびに筋電図学的検討を行つているが15),一連の研究過程において安静位における機能解剖の重要性を再認識した.
 上腕骨には解剖学的に一定の後捻があるが,一般に上腕骨頭軸と滑車軸のなす角度を上腕骨捻転角と呼んでいる.この捻転角は系統発生学的のみならず個体発生的にも差異が存在し,しかも人種間でさえも角度が異なるといわれている4,9,12).そこで今回はコンピュータ断層撮影法を用いてこの上腕骨捻転角の計測を行つたので,その臨床的意義を含めて報告する.

装具・器械

脊髄造影法と造影剤回収用針の工夫

著者: 島利夫 ,   池田清延 ,   四十住伸一 ,   山本信二郎

ページ範囲:P.692 - P.694

はじめに
 陽性造影剤による脊髄造影は,脊髄疾患の診断には最有力かつ不可欠のものであり,全身のCT scanが普及しつつある現在でも,その地位を譲るものではない,陽性造影剤のうち,水溶性造影剤は,改良が加えられてはいるが,痙攣,発熱などの副作用のため一部のものしか使用承認許可はおりていない.一方非水溶性造影剤は,一旦クモ膜下腔に注入されると,それは完全に吸収されることが少なく,そのまま放置されると,クモ膜に滴状に捕捉されて炎症反応を生ずることがあるのみならず,後のレントゲン検査,CT scanに著しい支障をきたす.したがつて検査の終了後には,注入された造影剤の除去が必要である.陽性造影剤の回収は,痛みを伴つたり,頻々困難なことがあり,この原因は,ルンバール針刺入の方法と,針の構造にあると考えられる.著者らは,脊髄造影を確実に行うための手技・撮影装置とともに,新しく造影剤回収用に工夫したルンバール針について述べる.

臨床経験

脛骨に発生した旁骨性骨肉腫1例の電顕的観察

著者: 太田信夫 ,   望月一男 ,   加藤正 ,   川井範夫 ,   平野寛

ページ範囲:P.695 - P.698

はじめに
 旁骨性骨肉腫は比較的稀な腫瘍で1951年GeschickterとCopelandがparosteal osteomaとして始めて記載した5).それ以後いくつかの報告によりこの腫瘍は旁骨性に発育し,局所再発性が強く,骨肉腫と比べ遠隔転移は少なく予後もよいことが知られてきた.従来この旁骨性骨肉腫と鑑別される疾患として,骨外骨肉腫,骨軟骨腫,骨化性筋炎,骨肉腫などが挙げられている4),近年,旁骨性骨肉腫に関して臨床的,および病理組織学的にいくつかの報告が見られるが6,8),電顕的には十分解明されていない.今回われわれは,再発を繰り返すうちに悪性度を増し,やむなく切断に至つた脛骨近位部に発生した旁骨性骨肉腫の1例を光顕ならびに電顕的に検索したので報告する.

上位頸椎部に発生し著しい骨破壊を示したhemangioendotheliomaの1治験例

著者: 安福嘉則 ,   赤星義彦 ,   池田清 ,   西本省三 ,   長沢博正

ページ範囲:P.699 - P.702

 頸椎部に原発するhemangioendotheliomaの報告はきわめて稀であるが,われわれは椎骨動脈周囲に発生し,第3頸椎を破壊吸収した症例に対し,根治手術を行い,良好な成績を得たので考察を加えて報告する.

骨原発悪性線維性組織球腫の1例

著者: 光田健児 ,   西法正 ,   砂辺完和 ,   米良博光 ,   宇井嗣郎 ,   金子仁

ページ範囲:P.703 - P.707

はじめに
 骨に原発した悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma)は,最近注目されている疾患の一つであり,本症に関する論文も多く見られるようになつてきたが,私達は本症の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

頸椎黄色靱帯石灰化により脊髄圧迫症状を呈した1例

著者: 上徳善也 ,   原田斉

ページ範囲:P.708 - P.712

はじめに
 われわれは,頸椎4〜5,5〜6,6〜7間の黄色靱帯内に燐酸石灰を含む3対6個の腫瘤を生じ脊髄症状を呈した稀な一症例を経験したので報告する.

結核性腱鞘炎による手根管症候群の1例

著者: 根本孝一 ,   久保井二郎 ,   小林祥悟 ,   伊藤恵康

ページ範囲:P.713 - P.716

 現今,手の結核性腱鞘炎は比較的稀な疾患であつて報告は少ない.一方,手根管症候群は,多くの報告があるが,結核性腱鞘炎を原因とするものの報告はほとんどみられない.今回,われわれは結核性腱鞘炎による手根管症候群の症例を経験し,手術によつて良好な成績を得たので報告する.

月状骨ならびに月状骨周囲脱臼に同側の橈骨小頭脱臼を合併した症例

著者: 浜田勲 ,   佐藤愛二 ,   若林詔 ,   松下睦 ,   高木治樹

ページ範囲:P.717 - P.720

はじめに
 月状骨ならびに月状骨周囲脱臼は手根骨脱臼の中では最も多い外傷であるが,両方の脱臼が同時に生じることは少なく,さらに同側の橈骨小頭脱臼を合併した症例を経験したので報告する.

Methotrexate大量療法による骨悪性腫瘍の治療経験

著者: 荻原義郎 ,   尾池徹也 ,   鶴田登代志 ,   神谷斉

ページ範囲:P.721 - P.726

緒言
 骨肉腫の治療成績は多くの研究者の努力にもかかわらず長い間低迷を続けていたが,1970年代に入るとadriamycin(ADR)が骨肉腫に有効であるとのことが多くのauthorによつて報告され始めた3)
 一方では1967年Djerassiがmethotrexate・citrovorum factor(MTX・CF)療法を発表し,1972年にはJaffeがmetastatic osteosarcomaにこの療法を用いた経験を報告した11).これらに引き続いてADR,MTXの組み合わせや,さらに多くの薬剤との併用が骨肉腫に対し多くの施設で試みられるようになり骨肉腫に対する治療成績は大きく改善されてきた.Sutowらは骨肉腫に対して種々の化学療法のregimenの変遷を経て1973年にMTX大量療法を骨子としその他の薬剤とのcombinationによるCOMPADRI-seriesを発表した23).さらに彼は1977年日本癌治療学会でCOMPADRI-seriesによる骨肉腫の治療成績は3年生存率79%であるという結果を報告した.

カラーシリーズ 義肢・装具・6

体幹装具

著者: 大井淑雄

ページ範囲:P.644 - P.647

 腰痛疾患や背痛疾患の保存的治療法の一つに装具療法がある.脊椎に用いられる装具を体幹装具spinal braceまたは脊椎支持装置trunk supportという.脊椎用装具に限らず装具にはその根本的な目的として4つの点があげられる.New York University Medical CenterのInstitute of Rehabilitation MedicineにおいてDeaverの提唱したものでもっともなじみが深いものである.つまり①変形の防止prevent deformity,②変形の矯正correct deformity,③体重の支持support body weight,それに④不随意運動の抑制(固定)control involuntary movement(fixation)である.四肢や体幹の装具はいずれもこの4つの項に関連があって作製されるのであるが,強調される項がいろいろである.
 体幹装具のふつうの型のものは①の要素を少し含み③④が主な目的といえるであろう.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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