icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科16巻10号

1981年10月発行

雑誌目次

視座

医療福祉機器の標準化

著者: 加倉井周一

ページ範囲:P.917 - P.917

 福祉機器の標準化というテーマに取組んだそもそもの動機は,義肢・装具の部品のネジのサイズの不統一などメーカーにより互換性のないことがユーザーにとつて大変不便であるという単純な発想からきたものである.標準化・規格化という言葉を耳にするとまず寸法規格が頭に浮かび,多様な障害者のニーズ,とくに身体的特性に対応できないのではないかという恐れが先立つ傾向にあつたことは否定できない.けれども国が支給する補装具の性能・耐久性・安全性・信頼性を高めようとする目的からすると,標準化を行う過程で機器または部品の品質・性能を見直すことにより材料の選択・製作工程・デザイン等についてよりよい製品への開発につながる数多くのヒントを与えてくれることを知つた.
 整形外科の領域でも先人の努力によりさまざまなsurgical implantが用いられており,これらの器具がなければ今日の治療体系は考えられないといつてもよい.ところでわが国ではこれらimplantに対する法的規制について調べてみると,いわゆる薬事法で定義する医療用具(厚生大臣が指定するもの)は原則として日本工業規格(JIS)の適応を受けることになつているが,役所のなわばりもあつて現実には何ら対応がなされていないのが実状である.

論述

低血圧麻酔下,自家血輸血による脊柱側彎症手術

著者: 小熊忠教 ,   金田清志 ,   樋口政法 ,   野原裕 ,   佐藤栄修 ,   藤谷直樹 ,   本間信吾 ,   後藤康之

ページ範囲:P.918 - P.926

はじめに
 多量の出血が予測される手術で,出血量を著明に減少させ得れば,手術は遙かに容易となる.さらにこの際,同種輸血が不要であれば,輸血による種々の合併症発生は皆無である.通常,脊柱側彎症手術,特に後方固定術時の出血量は多量で輸血を必要とする.この出血量をいかに減少させ,合併症なく手術を終了させるかについては,現在まで種々の検討がなされてきており,手術操作,術中体位,麻酔,その他の因子に関して改良の加えられてきた歴史ともいえる8).Goldsteinら5)が初めて低血圧麻酔下のHarrington手術を報告して以来,多数の追試がなされてきた3,10〜13).その結果,低血圧麻酔は術中出血量を40〜50%減少させ,術野を明瞭とするうえ,合併症発生がほとんど無く,極めて有用であると評価された.しかし,Harrington手術では出血量の著明な減少にも拘わらず,McNeil11)は平均1,380ml,熊野ら10)は平均1,100mlの同種輸血を必要とした.

人工膝関節置換術—2.手術成績と適応について

著者: 山本純己 ,   八野田実

ページ範囲:P.927 - P.933

はじめに
 1972年,私たちはhingeを使わないタイプの人工膝関節置換術について最初の報告10)を行つた.以来,数回の改良を加えて,1975年以後は岡山大型(児玉・山本型)MarkIIを用いている.Mark IIの手術成績については,すでに頻回の検討を行い,安定した成績をえるようになつたことを報告11,12)してきた,また,勝部4),板橋8),松井ら5)もMark IIの成績についての報告を行つている.
 今回は1975年から1979年までのMarkII手術例132関節につき,術前の関節の病態によつて,どの程度の病変なら,どの程度の術後成績へ到達可能か,また期待できるかについて推計学的に分析と検索を行つた.その結果をもとにして,人工膝関節置換術の適応について,現在,合意をえられている事項につき検討してゆきたい.

いわゆる腰痛症の解析(第2報)—Devemopmental Ballnooning of the Discについて

著者: 吉岡勉 ,   辻陽雄 ,   西能竑 ,   高野治雄 ,   浦山茂樹 ,   松井寿夫 ,   西能正一郎

ページ範囲:P.934 - P.940

はじめに
 成長期あるいは青年期健常人における腰椎単純X線像特に側面像において,椎体椎間板の接点すなわちいわゆるdisc-vertebral borderの形態にはいくつかの注目すべき特徴的所見が散見される.すなわち何等の骨萎縮像を示す事なく椎間腔がレンズ状に異常に膨隆している所見,すなわちballooned disc,種々の形のSchmorl結節,およびSchcuermann様所見などが注目される(第1図).
 このうちScheuermann病,Schmorl結節に関する報告は古くから比較的多くみられるが,骨の病的変化を全く伴わないballooned discに関する文献上の記載は僅かにScott4),Horváth2)の報告ならびに辻5,6)の記載をみるにすぎない.

若年性関節リウマチに見られる股関節のX線像

著者: 石川斉 ,   司馬良一 ,   大野修 ,   広畑和志

ページ範囲:P.941 - P.948

はじめに
 若年性関節リウマチ(以下,JRAと略す)に見られる骨,関節のX線変化はその発症年齢,病型及び病勢,さらには関節炎の罹患部位により異なり,一定したものがない.特に幼少時より股関節に病変が波及すると,関節炎のために不良肢位の拘縮を来たして日常生活動作(ADL)上大きな支障を来たす事が多い.
 Ansell1)によれば,JRAで股関節に炎症が波及すると5年から10年たてば約40%のものに何らかのX線変化があるとされている.幼少時の股関節の炎症性変化は臼蓋の形成不全を起こしepiphysisの扁平化及び早期の癒合がおこり,頸部での正常な発育が阻止される傾向にある.そこで神戸大学整形外科を受診したJRA患者の股関節のX線変化を検討し,何らかの特徴的変化があるか否かについて調査した.

手術手技シリーズ 脊椎の手術・2

腰椎椎間板ヘルニアに対する後方術式—Love法

著者: 河端正也

ページ範囲:P.949 - P.961

はじめに
 Love法という術式名は,必ずしも国際的に通用しているものではない.正確には,hemi-semi-laminectomyと呼ぶべき術式である.従来腰椎椎間板ヘルニアに対しては,laminectomyまたはhemilaminectomyが行われていたが,1938年J. G. Loveは或る男性患者の手術に際して,椎弓間黄靱帯の切除だけで髄核ヘルニアの剔出を終了することができた6).以来Loveは,患部の椎弓間黄靱帯,さらに必要に応じてその上下椎弓の部分的切除によるヘルニア剔出を推賞してきた.彼はこの術式をpartial laminectomyと呼んでいるが7),我国では一般に"Love法"と呼ばれている.国際的にはFenestration,開窓手術が一般的である.この術式ではLoveも述べているように,椎間関節は確実に温存されなければならない.

手術手技 私のくふう

移植のための腓腹神経採取法とその神経束パターンについて

著者: 光嶋勲 ,   山田敦 ,   波利井清紀

ページ範囲:P.962 - P.967

 神経移植は,四肢末梢神経の損傷や顔面神経の再建において最も多用される手技の一つである.これらの場合,donorとして用いられる神経には,前腕内(外)側皮神経,橈骨神経知覚枝,外側大腿支神経,腓腹神経,大耳介神経などがある.このうち腓腹神経は,最も一般的に使われる神経であるが,その性状,採取法,採取後の後遺症について詳しく述べた文献は少ない.われわれは,過去約50例の顔面神経麻痺及び四肢の神経損傷の治療に腓腹神経移植を施行してきたが,今回われわれの経験より,その採取法,性状,及び後遺障害について若干の知見を得たので,考察を加えて報告する.

境界領域

頸椎後縦靱帯骨化患者の性ホルモン定量(第1報)—殊にEstrogenとの関係

著者: 岡田征彦 ,   茂手木三男 ,   藤田隆一 ,   池田勝 ,   田部秀山 ,   梅田嘉明

ページ範囲:P.968 - P.975

はじめに
 頸椎後縦靱帯骨化(以下OPLL)は,1960年教室月本の報告を嚆矢とするが,以来本骨化に対する関心が高まり,更には最近の診断技術の進歩により発見率も高くなり今や稀な疾患ではなくなつた.しかしOPLLの発生及び増大機序に関しては尚不明な点も少なくなく,その背景には局所因子の他に全身性骨化因子が存在することは疑いのないところであるが,この点については未だ解明されていない.
 我々はOPLLの発生及び骨化増大機序を知るべく頸椎柱のみならず脊柱全体の静動力学的な面および動物実験的にも検索を行い,すでに数回に亘り報告して来た2,12,16,17).また先に我々は全身性骨増殖因子の一つと考えられているヒト成長ホルモン(HGH)について検討したが,OPLLの骨化増大とHGHとの間には直接の関連性を裏付けるデータは得られなかつた,今回は教室藤田の動物実験で蛋白同化ホルモンを投与した32羽の家兎のうち5羽の家兎に病理組織学的に骨棘とは趣を異にした所見が得られたところからOPLLと性ホルモンとの関係に着目してOPLL患者について種種の性ホルモンの定量を行い,いささかの知見を得たので文献的考察を加えて報告する.

臨床経験

円板状半月骨化の2症例

著者: 冨士武史 ,   新名正由 ,   山岸正明 ,   下村裕 ,   中川智之

ページ範囲:P.976 - P.982

 膝半月骨化は比較的稀な疾患で,その成因もはつきりしていない.最近われわれは外側円板状半月骨化の2例と,外側円板状半月前方に接した骨化の1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

陰嚢皮膚弁による肛門部皮膚欠損の修復

著者: 生越英二 ,   村上哲朗 ,   多原哲治 ,   保野浩之 ,   馬庭昌人 ,   冨永積生 ,   倉科彰夫

ページ範囲:P.983 - P.988

はじめに
 脊損患者の看護上,褥創予防は最も大切であることはいうまでもない.しかし不幸にしてこれが一度発生するとはなはだ難治性であつて,看護・治療上非常にやつかいな問題となる.最近良好な血行を有する筋肉皮弁を用いて褥創を治療する方法が報告されている.今回われわれも長年,難治性の坐骨部褥創につながる肛門部皮膚欠損に悩んでいた両下肢完全麻痺の1例に対して陰嚢皮膚弁を用い,また坐骨部褥創に対してはConway法に準じて手術を行い,満足すべき結果を得たので報告する.

足関節に発生した色素性絨毛結節性滑膜炎の1例

著者: 大平修 ,   竹野正幸 ,   北川敏夫

ページ範囲:P.989 - P.992

はじめに
 Pigmented Villonodular Synovitis(以下P. V. S.と略す)は比較的稀な疾患であり,その大部分は膝関節に好発し,次いで股関節に発症する.本症が足関節に発生した例は本邦でも稀で,今までに我々が調べ得た範囲では自験例を含めて8例にすぎない8,9,12,15,16).最近我々は足関節に発生したP. V. S.を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告すると共に,電子顕微鏡学的検索も行つたので併せて報告する.

大腿骨骨頭単独骨折の1例

著者: 宮本繁仁 ,   串田一博 ,   井上哲郎

ページ範囲:P.993 - P.996

はじめに
 外傷性股関節脱臼に合併する大腿骨骨頭骨折の報告は散見されるが,骨頭単独骨折の報告は少なく,稀なものとされている.今回我々はこの稀な症例を経験する機会を得たので報告する.

きわめて稀な橈骨頭前方脱臼を伴つた尺骨頭掌側脱臼の1例—前腕のbipolar dislocations

著者: 阿部均 ,   木内準之助 ,   小林慶二

ページ範囲:P.997 - P.1001

はじめに
 我々は,最近橈骨頭前方脱臼を伴つた尺骨頭掌側脱臼のきわめて稀な症例を経験し,観血的治療により治癒させ得たので報告する.

下肢の過成長を伴つた膝関節滑膜血管腫の1例

著者: 田中昭彦 ,   長谷斉 ,   伴真二郎 ,   山下文治

ページ範囲:P.1002 - P.1006

 膝の腫脹を主訴とする患者は日常よく見られるが,膝関節滑膜血管腫は比較的まれで診断に難渋する事が多い.私たちは下肢の過成長を伴う膝関節滑膜血管腫を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

肘頭窩に発生した滑膜血管腫の1例

著者: 内藤二郎 ,   中村純 ,   松下績 ,   柏木大治 ,   岡田聰

ページ範囲:P.1007 - P.1011

はじめに
 滑膜血管腫は比較的稀な疾患と考えられている.最近我々は肘頭窩に発生した滑膜血管腫の一例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

足根管症候群の2例

著者: 園田万史 ,   藤田直己 ,   丸野博敏 ,   藤田久夫

ページ範囲:P.1012 - P.1016

 種々の部位でのentrapment neuropathyの中で,足根管症候群は稀な疾患の一つである.最近,我々は2例の本症を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら