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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科16巻11号

1981年11月発行

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視座

医学の進歩と整形外科の立場

著者: 荒井三千雄

ページ範囲:P.1019 - P.1019

 われわれの卒業した昭和26年頃は,まだポリオの流行が続いていて,当時,少壮の飯野教授はその手術に情熱を注いでおられた.各種の腱移行術や,絹糸,ナイロン,テトロンなどを用いた人工腱,人工靱帯など多様な手術が盛んに行われ,中には理解しがたい手術もあつたが,いずれモノグラフを執筆されることと思い,その実現が待たれていた.それから2,3年して,ソークワクチンの投与が始まるや,ポリオの発生は劇的に終息し,医学の素晴しい進歩に驚嘆したことは忘れられない.当然,ポリオ後遺症の手術も漸減し,この問題は自然に解決されるに至つている.
 この偉業が,整形外科とは全く無関係に成し遂げられたことは,標題に掲げたような整形外科の立場についていささか疑念を産み,今も頭から消えないでいる.最近ではリファンピシン出現後の骨関節結核の治りの良さにも同様な傾向が窺えるし,また関節リウマチでも,病因の解明や薬物療法の進歩によつて,観血的治療の多くが不要になる可能性もある.骨肉腫に対する整形外科医の悪戦苦闘にもかかわらず,5年生存率の向上はごくわずかにすぎないが,将来,悪性腫瘍の画期的な治療法が出現して,飛躍的な進歩をもたらすこともありえよう.しかも,残念ながら,整形外科がこれらの進歩に主導的役割を演ずる可能性はきわめて少ないと思われる.

論述

CT診断を応用した骨腫瘍の治療—特に広範切除術について

著者: 葉山泉 ,   高岸直人 ,   松崎昭夫 ,   諌山照刀 ,   足達裕 ,   桜井日出也 ,   原正文 ,   白石元英 ,   小野庸 ,   宮内貞一 ,   橘寛 ,   吉田光男 ,   内村正英

ページ範囲:P.1020 - P.1030

 骨腫瘍の広範切除術は巨細胞腫などの浸潤性の良性骨腫瘍や軟骨肉腫などの悪性度の低い悪性骨腫瘍に行われている.しかし,近年のADM,MTXの大量投与法の開発により骨肉腫などの悪性度の高い悪性骨腫瘍に対しても患肢を温存した広範切除術が行われるようになった6,12,17).昭和52年以来,われわれは骨・軟部腫瘍の診断にCTを併用しているが,骨外軟部腫瘤や血管増生の少ない軟骨肉腫の軟骨性腫瘤なども描出可能であり,その立体的位置関係を容易に認識できるようになつた20,22).すなわち,CT診断により腫瘤の局在状態を正確に認識することは術後の組織欠損の程度と機能再建への考慮を可能にするものであり,治療方針の決定に有用である22,23).われわれのCT診断を応用した骨腫瘍の広範切除術と機能再建について報告する.

人工膝関節についての考え方—その型と適応

著者: 西法正

ページ範囲:P.1031 - P.1039

はじめに
 人工膝関節はWalldius16)型(1951)に始まる蝶番型の長い歴史から,一転してgenometric型(1971)に代表されるいわゆる関節面型に移行したが,最近ではこの中間ともいうべき非蝶番型で,しかも十字靱帯を含めて顆間部も置換するsemiconstrained型が盛んに用いられるようになつた.
 蝶番型の特徴は,膝関節にとつて最も大切な支持性に優れることであるが,金属同志の組み合せによる摩耗粉の集積,蝶番軸の摩耗破損,上・下が連結しているための遊脚期や屈曲時のひつぱり出し作用,外力に対する緩衝作用の無いことなどは,蝶番型の避けられない欠点である.

シンポジウム 特発性大腿骨頭壊死

特発性大腿骨頭壊死の自然経過

著者: 井上明生 ,   高岡邦夫

ページ範囲:P.1040 - P.1046

 特発性大腿骨頭壊死(以下IANFと略す)の中には,急速にcollapseの進行する例から,長年月,疼痛などの症状も軽微で,レントゲン像においても進行しない例まで,その病像はさまざまである.それら経過が異なるということは治療方法に関係することであり,中には治療せずに放置してもよい例が存在する.
 このようなIANFの予後を規制する因子は何かということを明らかにする目的で,IANFの自然経過について検討を加えた.

特発性大腿骨頭壊死症の病理組織所見と病期分類

著者: 船山完一 ,   大内郁夫

ページ範囲:P.1047 - P.1056

I.はじめに
 成人の特発性大腿骨頭壊死症について,生検および摘出大腿骨頭の光顕レベルにおける病理組織学的観察から,その基本的な病像を述べ,合理的な病期の分類におよびたい.
 大腿骨頭の無菌(腐)性骨壊死症(aseptic bone necrosis:以下ANと略す)は,いろいろな場合にみられるが,大別すると,

特発性大腿骨頭壊死の疫学・成因

著者: 二ノ宮節夫

ページ範囲:P.1057 - P.1062

 特発性大腿骨頭壊死は古くから知られた疾患であるが,近年,患者数の増加とともに注目され,股関節外科に占める比重も次第に大きくなりつつある.昭和50年から厚生省のいわゆる難病研究班の一つとしてとりあげられ,我が国における実態が次第に明らかとなつてきた.従来,特発性大腿骨頭壊死は大腿骨頸部骨折,股関節の脱臼・骨折などの外傷や放射線治療に続発するもの,潜函病におけるものなど,明らかな原因に続発する二次性骨壊死を除外した,原因不明のものをさしている.しかし,特発性大腿骨頭壊死といわれるなかにもアルコールの愛飲やステロイドの使用などの既往を有する例が数多く,また,病像もやや異なつているので,これらをアルコール性大腿骨頭壊死,ステロイド性大腿骨頭壊死として分けて考える傾向にある.前記研究班の疫学調査もステロイド非使用群(アルコール愛飲者を含む)とステロイド使用群に大別して検討したので,これに基づいて述べる2)

大腿骨頭壊死に対する血管束移植

著者: 保利喜英

ページ範囲:P.1063 - P.1072

I.はじめに
 骨の虚血性変化に起因する疾病に対し,新たな血管系を直接導入し,治療しようと試みることは,極めて自然な発想に基づくものであると思われる.
 このような考えのもとに,基礎的実験2,3,4,7)を行い,血管束の移植により,壊死骨を再生できるという確信を得た.その実験結果を基盤として,大腿骨頭壊死,Perthes病,kienböck病,Preiser病,外傷後の距骨壊死などの治療に,また巨細胞腫や骨髄炎の掻爬後に生じた骨欠損部に対する骨移植の際に,血管束移植を臨床応用した5,6)

大腿骨頭壊死に対する回転骨切り術

著者: 杉岡洋一 ,   香月一朗 ,   佛淵孝夫 ,   范廣宇

ページ範囲:P.1073 - P.1085

I.大腿骨頭壊死治療に大腿骨頭回転骨切り術を考案した理由
 1.従来の治療法の批判
 1)保存的治療法:病巣が小範囲で荷重部が温存されているものや,極めて短期間に修復を完了する不完全虚血の例外的な症例5,8)を除いて免荷等の保存的治療では陥没等の変形の防止は不可能で,多くは関節不適合による不安定性と機能障害,疼痛を訴え二次性変股症へと進展する.牽引下においても関節面の陥没を防止し得ないことは臨床上よく遭遇する事例である.

特発性大腿骨頭壊死,特に第III期に対するカップ関節形成術

著者: 広畑和志 ,   司馬良一

ページ範囲:P.1086 - P.1094

はじめに
 昭和41年から昭和56年までの15年間に特発性大腿骨頭壊死9例14関節にカップ関節形成術を施行した.追跡調査結果よりほぼ満足する成績を得たのでそれを紹介して適応や手技について若干の考察を加える.

大腿骨頭壊死に対する各種人工股関節手術の適応

著者: 山室隆夫 ,   奥村秀雄

ページ範囲:P.1095 - P.1103

はじめに
 大腿骨頭壊死に対する手術術式には種々のものがあるが,術式の選択は患者の年齢・性別・職業・合併症・骨頭壊死の範囲・骨頭陥没の程度・臼蓋軟骨の変化など多くの因子を総合的に判断した上で決められなければならない.その内でも特に年齢と骨頭陥没の程度は手術術式の選択に決定的な影響を与える.一般に60歳以上の高齢者であれば,術後のリハビリテーションが約1ヵ月余で終了するCharnleyの全人工股関節置換術が適応となるであろうし,比較的若年層で骨頭陥没の程度が軽微なものは専ら前方回転骨切り術が適応となるであろう.また,高齢者で全身状態のよくない症例では臼蓋軟骨の破壊がほとんど無ければ,Mooreの人工骨頭置換術でも十分に目的を達成することができる.
 手術術式の選択の上で最も難しいのは50歳以下の比較的若年層でしかも骨頭陥没の著しい症例である.特に20〜30歳台の若年者で骨頭が著しく陥没してしまつている症例においては数十年後に起こりうる問題に対しても対処しうるような見通しをもつて手術術式を選択しなければならないと思う.本文ではわれわれの約40例の手術経験を基にして,大腿骨頭壊死に対する各種の手術術式の適応について考察を加えてみたい.

手術手技シリーズ 脊椎の手術・3

腰部脊柱管狭窄症の手術手技—広範椎弓切除術を中心に

著者: 片岡治

ページ範囲:P.1104 - P.1115

 腰部脊柱管狭窄症(lumbar spinal stenosis:以下LSSと略す)の手術法の第1選択であり主役をなすものはwide laminectomy(広範椎弓切除術)である.したがつて手術手技に関してはこれを中心にのべるが,各病型により手技上の詳細は異なるので各病型の特徴を熟知して対処せねばならない.本症の国際分類は第1表に,各病型は第1図に示す.

臨床経験

28歳男子の第4腰椎に発生した単骨性骨Paget病の1症例

著者: 伊藤邦俊 ,   大野藤吾 ,   山根友二郎 ,   長島健治 ,   肥後良夫

ページ範囲:P.1116 - P.1122

 骨Pagct病は,欧米諸国では多数の報告例があり,頻度はかなり高いとされているが,本邦では少なく,しかも一般に30歳以下は極めてまれであるとされている.
 最近我々は,28歳男子の第4腰椎に発生した単骨性骨Paget病と思われる一例を経験したので,本邦の症例を統計し,若干の考察を加えて報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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