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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科16巻12号

1981年12月発行

雑誌目次

視座

急がれる卒後教育体制の確立

著者: 渡辺好博

ページ範囲:P.1125 - P.1125

 最近開業医の先生から苦情が来た.ある開業医に治療を受けていた患者が,病状が思わしくないので大学病院を受診したところ,大学の若い医師に「こんな非常識な治療を受けたとは」というような事を言われ,その開業医が訴訟されそうになつたというのである.若い医師の発言にも思慮深さが要求されようが,非常識な治療を行つていた方にも問題がありそうである.
 現在開業する場合,日本の医師法では何科を標傍しても自由とされている.外科を専門として何年も大学または総合病院に勤務していた医師が開業する場合,整形外科も標傍することが多い.患者は整形外科の専門医なのかそうでないかの判別を看板からだけでは不可能である.

論述

脊椎分離症における分離椎弓摘出非固定術の術後10年以上の遠隔成績

著者: 伊藤忠厚 ,   白井康正 ,   中川俊 ,   布施和康 ,   赤堀俊兵

ページ範囲:P.1126 - P.1134

はじめに
 脊椎分離症,辷り症に対する椎弓摘出術または椎弓切除術の多くはposterior or postero-lateral fusion17,19〜22)と併用して行われているが,手術例の10〜20%の患者は術後の症状の改善がかんばしくないと言われている.1950年代になって脊椎分離症,辷り症に対して椎弓切除非固定術がWoolsey23)(1954),Gill8)(1955),Todd and Gardner18)(1958),Guilleminet(1961),Cedell3)(1961)らにより行われた.その後Gill(1965),Amso2)(1970),Cedell4)(1970)らにより手術後の遠隔成績が報告され,術後の愁訴に関しては良好な結果が得られている.
 脊椎分離症の愁訴に関するmechanismは種々の説が報告されている.すなわちGillは分離部の線維性軟骨組織による脊髄神経の刺激によるものとし,Adkins1)は分離部の異常可動性が脊髄神経を刺激し,二次的に炎症,癒着を起こしたためと報告している.

骨・軟部腫瘍のステロイドホルモンレセプター

著者: 小島伸三郎 ,   浜田秀樹 ,   栗崎英二 ,   水島哲也 ,   小野啓郎 ,   吉岡順朗 ,   佐藤文三 ,   松本圭史

ページ範囲:P.1135 - P.1144

はじめに
 骨・軟部腫瘍の治療においては,外科的に切除する事が原則であるが,悪性腫瘍では腫瘍発見時にすでにmicrometastasisを起こしている事は定説であり42),早期からの全身的な治療が必要である.現在各種制癌剤が使用され効果を挙げているが,その副作用は大きく,今後の研究が望まれる.また良性腫瘍の中でも,骨巨細胞腫などは手術後の局所再発もまれではなく,適切な術式の選択とともに補助療法の開発も必要である.
 今回私達は,乳癌や白血病等で行われている内分泌療法21,27,28,30,32)が標的腫瘍細胞に特異的に作用し,全身的な副作用が比較的少ない事に注目し,骨・軟部腫瘍での内分泌療法の可能性を検討した.私達は骨・軟部腫瘍のホルモン依存性を調べるため,その方法としてステロイドホルモンに特異的な結合蛋白,即ちホルモンレセプターの検索を行つた.

膝関節固定術について

著者: 武部恭一 ,   竹田谷寛 ,   司馬良一 ,   広畑和志

ページ範囲:P.1145 - P.1152

 炎症や外傷により破壊や疼痛が高度な膝関節あるいは著しい動揺膝に対し,従来より膝関節固定術がよい適応とされてきた.しかし強直によるADL上の不利な点は多く,今日では対象疾患の変化ならびに関節置換術の発達もあり,本手術の適応は以前とは異なり限られたものとなつてきている.
 本院では過去26年間に40症例に膝関節固定術を施行したが,今回それらの症例の追跡調査を行つたので,その結果をのべるとともに,本手術の問題点,また現時点での適応などについて考えてみたい.

シンポジウム 動揺性肩関節

Loose Shoulderの疫学と筋動力学的研究

著者: 遠藤寿男

ページ範囲:P.1153 - P.1160

はじめに
 肩甲帯部の脱力感や肩部の運動痛を訴えて日常の外来を受診する患者の中に,外観上は肩の可動域制限や肩甲帯部の筋萎縮などの異常を認めないが,その肩関節に異常な動揺性を認める場合がある.このようなものをloose shoulderまたは所謂動揺性肩関節(以下動揺性肩関節という)として,その疫学ならびに筋動力学的研究を行つた1,2,10)

いわゆる動揺性肩関節の病態について

著者: 尾崎二郎

ページ範囲:P.1161 - P.1171

はじめに
 いわゆる動揺性肩関節(loose shoulder)には定まつた診断基準がなく病態も明確にされていない.現在loose shoulderとして一般に認識されていることは「不安定なゆるい肩」を総称したものにすぎず,そのなかには病態の異なる多くのゆるい肩が混在し,様々な手術が行われているのが現状で混乱をきわめている.
 著者は,自験例の動態X線像やcineradiographyを用いてloose shoulderの形態および動態について正常肩と比較検討し,さらに烏口上腕靱帯と"rotator interval"の機能不全やglenoid osteotomyから得られた結果からloose shoulderの病態に関する考察を行つた.

動揺性肩関節と大胸筋移行術

著者: 鈴木良平 ,   伊藤信之 ,   桑原弘治

ページ範囲:P.1172 - P.1183

はじめに
 肩凝りや肩関節近傍の疼痛,疲労感,脱力感などを主訴として来院する患者の中に,立位で肩の力を抜かせて上肢を下方に牽引すると,肩関節の下方亜脱臼を起こすものがある.しかもポリオなどのような麻痺は存在しない.遠藤ら1)はこれをいわゆる動揺性肩関節(sog. Schulterschlottergelenk)と命名し,loose shoulderとも呼んでいる.このような症例の中には習慣性肩関節脱臼(不随意性)や随意脱臼(ないし亜脱臼)を示すものもあり,これが主訴であることもある.
 われわれは1975年以来,このような動揺性肩関節のうち,愁訴の強いものに対して,遠藤ら1,2)の提唱した大胸節の肩甲下角への移行術を行つてきた.以下本症の病態ならびに手術成績について述べてみよう.

動揺性肩関節に対するGallie手術

著者: 花村達夫 ,   高岸直人 ,   小野信彦 ,   岩崎敬雄 ,   城戸正喜

ページ範囲:P.1184 - P.1191

はじめに
 動揺性肩関節の中でも,遠藤の分類でⅢ型に属するものや,随意性脱臼に進展したものなど,joint laxityの強い症例の治療はなかなか困難である.上肢を下げているだけで,すでに下方亜脱臼するような機能障害の強い患者には,保存的治療の効果も期待できず,手術適応となるが,いざどのような手術を行うべきかとなると選択に迷うところである.この病態に対して,従来の習慣性脱臼に対しての手術法では無効なことは諸家が指摘している5,12〜13)
 我々は昭和51年以来,このような患者に対して,Gallie法1,7)を中心とした治療を行つてきた.Gallie法は,強固な烏口上腕靱帯の再建を主眼とした,いわばnew ligament plastyであり,術後の肩のstabilityの改善については安定した結果が得られるが,術後の可動制限など機能的な問題,侵襲が大きいなどの欠点がある.

臨床経験

膝関節メニスクスガングリオン(半月板嚢腫)の1例

著者: 松原司 ,   木村浩 ,   広畑和志

ページ範囲:P.1192 - P.1197

 メニスクスガングリオン(半月板嚢腫)の報告例はしばしばみられるが2,6,7,8,11),その成因に関してはいまだ確定した見解はない.今回われわれは左膝関節外側円板半月に発生した嚢腫の一例を経験し,病理組織学的検索を行い,半月板嚢腫の成因について検討したので報告する.

著しい脊柱変形をきたしたDiastematomyeliaの1例

著者: 佐々木晶子 ,   大木勲 ,   増渕正昭 ,   大井淑雄 ,   御巫清允

ページ範囲:P.1198 - P.1203

 近年,各種の脊推,脊髄検査技術の進歩により,いろいろな脊椎および脊髄の異常が発見されるようになり,この方面への関心が高まつてきている.最近著者らは,著しい脊椎変形をきたしたdiastematomyeliaの1例を経験したので多少の考察を加えて報告する.

Bursa iliopectineaの滑膜に発生したchondrosarcomaの1例

著者: 坪山直生 ,   大辻孝昭 ,   藤原祐三 ,   中嶋安彬

ページ範囲:P.1204 - P.1207

 滑膜より発生するchondrosarcomaは稀な疾患であり,その報告例は少ない.われわれは最近,Bursa iliopectineaの滑膜より発生したchondrosarcomaの1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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