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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科16巻4号

1981年04月発行

雑誌目次

特集 Multiply operated back

Multiply operated back—現状と将来

著者: 井形高明

ページ範囲:P.325 - P.325

 脊椎疾患に対する治療医学の動向のなかで,手術の占める位置は依然として重要である.手術療法を採用するに当つては,術前の周到な検討と準備,理想的な手術および注意深い術後管理のどれ一つとして欠くことはできない.これがために掘り下げられた研究の数は枚挙の暇がないほどであり,その成果は格段の進歩を遂げた脊椎手術成績で窺い知ることができる.
 しかし,手術の実際ではsurgical riskを皆無にできているとは限らず,また神経要素への手術瘢痕の絡みや脊椎機能の破綻を抑止しえず,再手術に至る症例を重ねているのも事実である.脊椎外科における80年代の発展を望むにつけ,これまでの成長をふり返つて地歩を固めるのも一策と考える.

総括/第9回脊椎外科研究会—特殊な症例の部

著者: 井形高明

ページ範囲:P.326 - P.327

 脊椎疾患に対しても手術療法を採用するに当つては充分な適応の検討が行われ,手術の実施ならびに術後の管理に万全を期さなければならない.本セクションに集められた演題にはmultiply operated backの要因としての①非隣接型椎間板ヘルニア②いわゆるhidden zoneのヘルニア③残存骨ないし骨新生,さらには④椎体炎症巣の不全郭清の問題がとりあげられた.また腰椎部椎弓切除後の下肢麻痺発生例についても述べられた.いずれにも今回の主題であるmultiply operated backを論議する手始めとしてふさわしい内容の発表ならびに討論が行われ,立派に後続セクションの先立ちの意義をはたしたものと思う.以下,その内容を紹介し印象を加えて報告する.
 まず,演題Ⅰ-1で浜氏(近畿大)は非隣接椎間板に発生したdouble herniaを取りあげた.症例は22歳の男性で過去3年間腰痛を繰り返した後歩行困難を訴えるに至つた.神経症状から右L3〜L5の神経根障害を疑い,後頭下穿刺によるmyelographyを行い,まずL2/3間のヘルニアを診断し,さらにdelayed myelographyでL4/5におけるヘルニアを見出した.

総括/検査所見の部

著者: 平林洌

ページ範囲:P.328 - P.329

 第1席の小田(山口大)は,ヘルニア再手術23例のミエロ所見について述べ,再手術成績と比較した.そのミエロ像を,ヘルニア所見(8例),ヘルニア+癒着所見(8例),癒着所見(7例)の3群に分けた.ヘルニア所見を示した8例のうち,6例は再発であり,再手術後8年の成績は良好であつたのに対し,癒着所見を示した症例では不良であつたという.したがつて癒着所見が主の場合には,再手術の適応か否かを慎重に検討するべきとした.再手術はいずれも後方侵襲によつてなされており,当然の結論と思われた.
 河端(虎の門)は,ヘルニア所見8例の原因は「見逃し」なのか,「郭清不十分」にあるのかと質したのに対し,演者は3例は見逃し,5例は長期後に再発症したため,郭清不十分とした.

総括/Arachnoiditisと椎管狭窄性要因の部

著者: 辻陽雄

ページ範囲:P.330 - P.331

 ここで報告された6題の論文の共通した問題点は多数回手術とくに後方手術症例の術後に発見される髄膜およびその周辺組織の増殖性瘢痕性の病的過程についてである.すなわち,とくに集中的に討議がなされたのはadhesive arachnoiditisといわゆるpostlaminectomy membraneによる狭窄の二点で,その原因,病的意義および予防対策などについてである.
 以下に各論文のキーポイントを紹介しあわせて,論議の内容をまとめることとする.

総括/心因性要因の部

著者: 井上駿一

ページ範囲:P.332 - P.333

 Mulitiply operated back(MOB)における最大の問題点はほとんどの例に何等かの心因性要因を合併している事である.MOBの症例を眼の前にしこの点でいかに対処すべきか苦労する例が多い.多忙な日常臨床において整形外科医側で果して精神科的治療に充分時間的余裕がとれるかどうか? あるいは精神科医にこの種の問題でconsultしても純粋な精神疾患でないため熱意を示さず連繋治療が行われないのではないか? など危惧する事が多い,このセクションではこれらの問題に関しかなり新しい角度より発表が行われたと考える.整形外科医として経験豊富な慶大平林助教授,整形外科医でかつ心身症の問題に特に造詣の深い村山療養所蕪木氏,それに神経内科より矢吹氏(高知県立中央),精神科より井上助教授(千大精神科)の参加を特にいただき計4名の発表が行われた.
 先ず神経内科医である矢吹氏は心因性のいたみと器質的な疾患の慢性化にともなう心因加重を区別し,単なる心因性(ヒステリー性など)のものに対しては"動機づけ"が大切で"行動する姿勢"による疼痛の克服,医師,PT,ナースなどのチームワークが治療上大切である.

総括/再手術例の検討—Love法を中心に—の部

著者: 津山直一 ,   酒匂崇

ページ範囲:P.334 - P.335

 このセクションでは,椎間板ヘルニアに対するLove手術後の多数回手術症例について報告討論された.
 各演者の発表内容の要旨は表のとおりである.対象症例は過去10年〜20年にさかのぼり調査され,手術はほとんどLove法に準じて行われているが,山口大では主に骨形成的椎弓切除が行われ,Love法に比較して不良症例は少ないとの事であつた.再手術の原因としては,ヘルニアの再発,新生,とりのこし,術後の癒着,狭窄,不安定性等が多いが,各施設により不良原因の分析はかなり異なつている.重労働者では不良症例が極めて多いとの意見もあつた(北野病院,松下),手術回数は2回が最も多く,最高は4回が少数あつた.再手術による症状の改善率は明確に述べない人が多かつたが,癒着は不良(北野,茅ケ崎市立),椎間板狭小の著しいあるいは不安定性のある場合は固定術の併用で良好(茅ケ崎,横浜市立大),salvage手術としては後側方固定が良い(虎の門)との意見である.河端氏は,Love手術は安易に行うべき手術ではなく,術前の慎重な検討,適応の厳選,手術手技の熟練等が不良症例を減少すると強調した.

総括/再手術例の検討—初回手術の問題点を中心に—の部

著者: 金田清志

ページ範囲:P.335 - P.337

 このセクションは腰椎疾患が初回手術で成功せず疼痛やその他の症状が残存し,あるいは再発し,その後何度かのsalvage surgeryを受けmultiply operated backとなつた症例における初回手術時の問題点を掘りだし検討するのが目的であつた.大阪大学小野啓郎教授と金田が座長を担当した.
 Multiply operated backとなった原因を7人の演者の報告の中から,(1)術前因子,(2)術時因子,(3)術後因子と大別してみた.

総括/再手術例の検討—術後成績を中心に—の部

著者: 片岡治 ,   中野昇

ページ範囲:P.337 - P.339

 Multiply operated back(以下MOBと略す)の初回手術の術前診断は腰部椎間板ヘルニアであることが圧倒的に多い.他の診断名,たとえば腰椎分離・辷り症で脊椎固定術を行つた例のMOBとなるのは,仮関節形成などが主であろう.しかし,腰部椎間板ヘルニアの術後MOBの場合には,診断の誤り,手術適応の誤り,手術レベルの誤りといつた基本的ミスによるものから,術後の不安定性や神経根癒着,また,診断法であるmyelographyの合併症としてのクモ膜炎など,非常に多岐にわたる原因が考えられる.著者らの担当したセクションは,これらMOBの術後成績を中心に論ずべく計画されたものである.

総括/Salvage手術とその成績の部

著者: 小野村敏信 ,   竹光義治

ページ範囲:P.340 - P.342

 第9回脊椎外科研究会の最後のセッションでは「Salvage手術と成績」の標題のもとに8題の発表がおこなわれた(表),まず最初に各演題の内容を簡単に要約し,最後に一括して行われた討論の焦点をお伝えしたい.
 まず第I席の坂巻氏(川鉄千葉病院)は29例の腰椎再手術例(以下MOBと略)についての術後成績を中心に述べた.初回・再手術とも自院で行われたものは総手術320例中の16例(5%)であるが,再手術は他の病院で行われることが多く,再手術率と一般にいわれるものについての注意を喚起した.術後調査のできた21例では13例になんらかの固定術が加えられているが,good 11例,fair 7例,poor 3例であり,初回手術の成績不良が機械的因子による場合には救済の可能性が大きいと述べた.

Failed spine operationの問題点について

著者: ,   鈴木信正 ,   平林洌

ページ範囲:P.343 - P.347

はじめに
 本日,私はfailed spine operationの問題点について皆様にお話する機会を与えられました.私は毎週,不満足な手術結果の患者を6人診ています.私の体験をおわかりいただくために,この講演を私は2つの部分にわけました.最初のパートでは我々の手術経験のreviewを,そして2番目では皆様と一緒に我々の現在のfailed backの患者に対するアプローチとプランを考えていきたいと思います.

Multiply operated backの原因となつた非定型的腰椎椎間板ヘルニアの検討

著者: 木村浩 ,   栗原章 ,   松田俊雄 ,   片岡治

ページ範囲:P.348 - P.354

 腰椎椎間板ヘルニアの手術成績は一般に良好である1〜4).しかし少数であるが初回手術に失敗し再手術・再々手術を余儀なくされ,その後の治療に難渋することがある5〜7).今後の治療成績の向上をはかるために,腰椎椎間板ヘルニアが非定型的であつたために多数回手術をおこなうことになつた4症例を検討し報告する.
 非定型的腰椎椎間板ヘルニアとして著者らはMacnab8),蓮江9)の論文を参考にし次のものを挙げた.

腰部椎間板症手術後の術後ミエログラムの検討—再手術の適応決定のために

著者: 土方貞久 ,   持田譲治 ,   井口傑 ,   市原真仁 ,   山岸正明 ,   中山喬司

ページ範囲:P.355 - P.364

はじめに
 ヘルニアをはじめとする腰部椎間板症の術後成績不良例の症状は複雑であるためその原因の判定,対策には苦慮することが多く,いきおい脊髄造影,椎間板造影,硬膜外腔造影などの補助診断法に頼ることが多い.
 しかるにひとたび手術侵襲をうけたのちはこれらクモ膜下腔,椎間板,硬膜外腔などにおこる変化はおおきく,上記の補助診断法の読影や,ひいてはその診断的価値も自ら異なるものとなる.

腰部椎間板ヘルニア(主にLove法)に対する再手術法としての前方固定—再手術前ミエロとディスコからみた適応と限界

著者: 戸山芳昭 ,   鵜飼茂 ,   若野紘一 ,   里見和彦 ,   平林洌

ページ範囲:P.365 - P.371

はじめに
 腰椎疾患,特に腰部椎間板ヘルニアは我々整形外科領域における日常診療の中でも,多い疾患の一つといえる.その治療法も各種の保存的療法から,1934年Mixter & Barr2),1939年Love以来の各種の手術的療法も発表されてきたが,現在もなおLove法が主流をなしていることは異論のないところである.また,その手術成績については,国内・外をとわず1000例を越える報告10,22)もみられている.
 しかし術後に愁訴残存や再発を生じ,やむなく再手術に至る症例も少なくない.近時その検討が行われ,原因・対策に関しても議論されてきた1,5,7,8,9,14).当科でも昭和34年以降腰部椎間板ヘルニア再手術例が62例を数えるにあたり,その原因や再手術法に関して報告13)をしてきたが,初回手術に比べ,臨床症状・再手術前検査などの評価は複雑,困難であり,その病態を正確に把握し,病態に最も適した再手術法を決定するのに苦慮することも多い.

腰部癒着性くも膜炎について

著者: 神原幹司 ,   植田百合人 ,   石井元章 ,   横田英麿 ,   岩崎洋明 ,   増原建二

ページ範囲:P.372 - P.377

はじめに
 腰部癒着性くも膜炎の発生については種々の原因があげられているが,本邦においてはまとまつた報告は少ない.日常の臨床において,しばしば遭遇する腰部脊柱管狭窄症7〜9),腰椎椎間板ヘルニア11),馬尾神経腫瘍,腰部打撲などの外傷後などにおいても,癒着性くも膜炎の存在が指摘されているし,われわれも時に経験しているところである.第1図は,定型的な馬尾神経性間厥性跛行を主訴とする腰部脊柱管狭窄症の症例である.第1図aは,水溶性造影剤Diraxを用いての術前の脊髄造影,第1図bは術中air tomeにより黄色靱帯を残し,椎弓のみを切除した時の術中脊髄造影である.第1図cは黄色靱帯をも切除し,後側方の圧迫要素を完全に除いた後の術中脊髄造影である,ここに示したように,硬膜外の圧迫を除去し去つた後でもdural tubeの正常な広がりは得られていない.これは明らかに癒着性くも膜炎の存在を示している.この所見をもとにしてわれわれは6症例の腰部脊柱管狭窄症において,硬膜内の所見を観察したところ,全症例に程度の差こそあれ,癒着性くも膜炎を認めることができた.これに対してmicrodisscctionを行い,その有用性を第53回中部整災学会に報告した.

当院における腰椎椎間板ヘルニア再手術例の検討

著者: 河端正也 ,   滝沢博 ,   三上凱久 ,   鴨川盛秀 ,   大庭浩 ,   土田博和 ,   宗本忠典 ,   藤原稔泰

ページ範囲:P.378 - P.382

 昭和33年6月より同54年12月までに当院で行われた腰椎椎間板ヘルニア手術は,498症例である.再手術例は最終手術術式によつて分類すると,Love法329例(66.1%),laminectomy 118例(23.7%),hemilaminectomy 11例(2.2%),固定術40例(8.3%)である(第1表).これらの症例中,2回以上の手術を受けた.いわゆるmultiply operated back(以下MOBと略す)が47症例あつた.今回は,これらMOB症例につき,再手術原因,術式,その成績などにつき検討したので報告する.

Multiply operated backの検討

著者: 田島健 ,   高橋功 ,   山川浩司 ,   八子理 ,   坂本隆彦 ,   谷良久 ,   鈴木信 ,   沢海明人 ,   作山洋三 ,   伊藤良三

ページ範囲:P.383 - P.391

はじめに
 1934年Mixter & Bar3)により腰椎椎間板ヘルニアがはじめて紹介され,1939年Love1)によりいわゆる"Love法"が発表され,手術侵襲が少なく,その術後成績の優秀性が述べられ,現在にいたるまでLove変法も含めて数多くの追試がなされ,本症の観血的術式の主流をなしている.また一方1954年Verbiest5)により脊椎管狭窄症の概念が紹介され,腰痛,坐骨神経痛に対する考え方,とらえかたが極めて明解となり,本邦においても,諸先輩の努力により,過去10年前と比較しても,その進歩は著しく,診断率は高くなり,手術例も多くなり,我々整形外科医にとつて高頻度の疾患となつている.その故に,多数回手術に移行する症例も増加しているのも事実と思われる.また,手術回数が多い程その結果は不良となるだろう事は想像にかたくない,今回は,multiply operated backの検討から,その初回手術の問題点を中心に,その原因,予防対策について述べたい.

腰椎多数回手術例の検討

著者: 小早川裕明 ,   石川道雄 ,   山下守昭 ,   伊藤晴夫 ,   石田義人 ,   片山直樹 ,   並木保憲 ,   森健躬

ページ範囲:P.392 - P.399

 近年脊椎外科の進歩はめざましく,腰痛,下肢痛を呈する諸疾患に対し,積極的な手術療法を施し,すぐれた成績が一般に得られている.しかしながら,満足な結果が得られず,多数回手術にいたる例も決して少なくはなく,最近,この原因と対策がとみに注目されるようになつた.とりわけ腰痛疾患の中心である腰椎椎間板ヘルニアでは,その手術適応はもとより,手術方法の選択も大きく予後に影響を与えることがある.最も一般的に普及し,かつ,実施されているLove法は,直視下で病態を確認し,神経根に対して除圧を行いうること,手術操作が比較的容易なこと,手術侵襲にさしたる負担がなく,早期の社会復帰が可能なことなど,多くの利点を有してはいるが,手術操作が直接硬膜外腔におよぶことから,術後のlaminectomy membraneによる神経周囲組織の癒着,癒着性クモ膜炎,さらに椎間板組織の変性進行など,大きな問題をもあわせもつている.
 また一方では,これら整形外科的観点からのみでは不十分で,心因的要素も無視できない場合があり,ときとして精神科医との連携も必要となる.多様化した今日の社会では,こうした症例が一層増加傾向をたどるものと思われる.

Multiply operated backの原因と対策

著者: 栗原章 ,   木村浩 ,   松田俊雄 ,   片岡治

ページ範囲:P.400 - P.407

はじめに
 脊椎外科の進歩とともに腰椎,下肢痛を有する患者に対して外科的治療法が広く行われるようになつた.しかし,観血的治療症例の増加とともに1回目の手術成績がおもわしくないために,多数回にわたつて手術をうける症例も増加してきている.そこで,我々は,炎症,腫瘍,外傷によるものを除いた腰部の多数回手術(MOBと略す)症例を分析し,それらの原因と対策について検討した.

腰椎椎間板ヘルニア再手術例の検討

著者: 遠藤哲 ,   井形高明 ,   山本博司 ,   竹内錬一 ,   米沢元実 ,   高田広一郎 ,   長谷川秀太 ,   山岡賢児

ページ範囲:P.408 - P.415

はじめに
 腰椎椎間板ヘルニアは現病歴,神経学的所見および種種な補助診断法によつて比較的容易に診断することができ,また,手術方法および手術成績についても数多くの報告があり良好な成績をおさめている,しかし,現実には術後予期した症状の改善が得られず診断治療の再検討を余儀なくされることも少なくない,また,再手術を行うにあたつても,その手術効果が満足いくものかどうかを推測することは必ずしも容易でなく,術前に十分な手術適応が検討されなければpolysurgeryに移行する恐れがある.医療過誤が問題になりつつある現在,この点の配慮がさらに強調されなければならない.そこで,われわれは徳島大学整形外科教室において再手術を要した症例の手術成績を単一手術例,とくに成績不良例と比較検討し,その原因をさぐるとともに若干の文献的考察を加えて報告する.

Multiply operated backの要因解析とその対策

著者: 加藤之康 ,   井上駿一 ,   村田忠雄 ,   小林英夫 ,   宮坂斉 ,   三枝修 ,   秋田徹 ,   松岡明

ページ範囲:P.416 - P.422

はじめに
 本来1回で済ますべき腰椎手術が多数回を余儀なくされた,いわゆるmultiply operated backの症例はその対策に苦慮することが多い.前回までの手術による局所の癒着や構築上の変化等に加え,症状持続による苦痛は精神的加重となり4),salvage手術を一層難かしいものにしている.従つて初回手術の重要性が指摘されるわけであるが,不幸にして再手術が必要になる場合も少なくない.昭和29年以来25年間に千葉大学整形外科で行つた腰椎手術は804例(脊髄腫瘍等を除く)で,このうち2回以上の手術症例は61例である.しかしこの中には初同手術として金属塊を棘突起間に挿入し制動効果を期待するknowls法や移植骨としてheterograft(Chiba bone)を使用したものなど手術適応,手術手技の面で現在では行われていないものも含んでおり,古い時代のものも一括した要因解析では対策として得られる意味が少ない,そこで筆者は病態の面で脊柱管狭窄の概念が新しく登場し,それらに対する治療法も考慮された最近10年間の症例のみに制限しその要因を調べ,多数回手術例に対する治療方針につき検討した.

Multiply operated backの経験

著者: 中野昇

ページ範囲:P.423 - P.428

まえがき
 腰痛・下肢痛の原因として腰部椎間板変性,腰椎辷り症,不安定椎とそれにともなう脊柱管狭窄などにたいする観血的療法が一般に行われるようになつてきたが,同時に術後成績が芳しくないために再手術を考慮しなければならない場合もある.しかし,再手術の成績は必ずしも良いわけでなく,術前にその結果を予測することができず,対策に苦慮することが多い.昭和41年10月から昭和54年12月までに当院で腰椎に関する再手術を行つた症例は82例であるが,その一部はすでに第46回日整会総会などで報告5,7)している.今回はその後の症例および前回発表した症例のその後の経過について調べたので,結果について報告したい.

Multiply operated back患者の脊椎固定—Spinal instrumentationと後側方固定術

著者: 金田清志 ,   樋口政法 ,   野原裕 ,   小熊忠教 ,   佐藤栄修 ,   藤谷直樹 ,   藤谷正紀 ,   本間信吾

ページ範囲:P.429 - P.437

はじめに
 腰椎椎間板ヘルニアの概念が確立し,手術的治療が行われたのは,Mixter & Barr(1934)15)の報告が最初である.その後この手術は脊椎外科の中で最も一般的なものとなつた.
 脊椎椎後方固定術はAlbeeとHibbsにより1911年にそれぞれ別に発表されている.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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