特集 Multiply operated back
腰椎多数回手術例の検討
著者:
小早川裕明1
石川道雄1
山下守昭1
伊藤晴夫1
石田義人1
片山直樹1
並木保憲1
森健躬1
所属機関:
1東京厚生年金病院整形外科
ページ範囲:P.392 - P.399
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近年脊椎外科の進歩はめざましく,腰痛,下肢痛を呈する諸疾患に対し,積極的な手術療法を施し,すぐれた成績が一般に得られている.しかしながら,満足な結果が得られず,多数回手術にいたる例も決して少なくはなく,最近,この原因と対策がとみに注目されるようになつた.とりわけ腰痛疾患の中心である腰椎椎間板ヘルニアでは,その手術適応はもとより,手術方法の選択も大きく予後に影響を与えることがある.最も一般的に普及し,かつ,実施されているLove法は,直視下で病態を確認し,神経根に対して除圧を行いうること,手術操作が比較的容易なこと,手術侵襲にさしたる負担がなく,早期の社会復帰が可能なことなど,多くの利点を有してはいるが,手術操作が直接硬膜外腔におよぶことから,術後のlaminectomy membraneによる神経周囲組織の癒着,癒着性クモ膜炎,さらに椎間板組織の変性進行など,大きな問題をもあわせもつている.
また一方では,これら整形外科的観点からのみでは不十分で,心因的要素も無視できない場合があり,ときとして精神科医との連携も必要となる.多様化した今日の社会では,こうした症例が一層増加傾向をたどるものと思われる.