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腰部脊柱管狭窄症の病態に関する史的考察
著者: 辻陽雄1
所属機関: 1富山医科薬科大学医学部整形外科学教室
ページ範囲:P.442 - P.452
文献購入ページに移動脊柱管狭窄の概念についての理解は1954年Verbiestの7例の報告86)により本格的となった.すなわち,7例はすべて40歳以降の男性で中部腰椎から下部腰椎にかけてのミエログラムはブロックを示し,かつ起立,歩行によつて下肢症状が増悪し,安静によつて緩解するといういわゆる馬尾神経症候群を示すものであつて,彼はこれらの例におけるX線上にみたspondylosisの所見は病的意義に乏しく,その本体は"developmental"な関節突起形態異常による椎管とくにlateral recess部の狭小であると考えた.
再び1955年Verbiest87)は独自に設計したカリパーを用いた術中椎管の計測を行い,Huizinga35)の正常骨格計測値と比較した結果,椎管の正中前後径も明らかに減じていること(測定値12mm以下が病的)を認め,この"developmental"という概念の正しいことを示す補足所見を明らかにした.術中少数例にみられた黄色靱帯の肥厚肥大は少なくとも病的意義の少ないものとの判断からこの独特の症候群の主因を骨性椎管の狭小においた.
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