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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科16巻6号

1981年06月発行

雑誌目次

視座

身体障害者福祉法の改正問題

著者: 今田拓

ページ範囲:P.551 - P.551

 園田厚相は国際障害者年をきつかけに,ことし中に身体障害者福祉法を,長期展望と国際的視野に立つ新しい障害者福祉施策を盛り込んだ法律に改正する方針を決めた……という最近の新聞報道の示唆している内容は,関係者にいろいろな意味で大きな影響があることを物語つている.その改正の理念は,現在の身体障害者福祉法は,通称"リハビリテーション法"であり,身体障害者が自らの努力によつて職業を身につけ,社会復帰できるようにするねらいをもつているため,自立更生の見込みのない重い障害者の場合,現在の制度では救済できない現状の改善にある.すなわち①障害者が自らの努力で更生できるかどうかではなく,日常生活上の不自由さを改善する.②内臓機能障害者や記憶喪失者など現在,身体障害者とみなされない人たちに対してまで福祉の輪を広げる.③障害者収容の施設づくりと家庭内での介護を充実させる.といつた重点項目が説明されている.

論述

Faces methodの医学的臨床的応用—第1報 股関節評価について

著者: 河野雅行 ,   木村千仭 ,   玉井達二

ページ範囲:P.552 - P.557

 整形外科の分野においては,関節の機能評価は極めて重要な事柄であり,この評価に関するいろいろな試みが検討されている.例えば股関節については日整会基準6)やHarris4)の評価基準があり,これらの基準はpain,ROM,歩行能力,ADLなどそれぞれの項目を点数で表し,これらの総合点によって評価されるようになつている.これらの評価法はいずれも優れた方法であり,われわれも常用している.
 しかし,関節機能を評価する場合,幾つもの項目から成る多次元の変化を,わかり易い二次元的なものに移し変えて変化の特徴を明らかにし,また,観察者の直感に訴え得る方法を検討した.そこで今回は,Herman Chernoff1,2)が提唱したFaces methodをmodifyして,これを医学面の,特に関節機能への応用を試みた.

九大整形外科教室における骨肉腫の長期生存例の検討

著者: 増田祥男 ,   篠原典夫 ,   西尾篤人

ページ範囲:P.558 - P.562

緒言
 近年,骨肉腫の治療成績はAdriamycin,Methotrexateを主とした化学療法の導入により著しく改善され,5年生存率は45%と報告されている1).従来,骨肉腫の予後は早期の血行性肺転移により根治術後1年以内に約80%が死亡しており極めて悲観的であつた.九大整形外科教室においても,1963年前山の報告によれば,5年生存率は6%であり,本邦の1960年代の骨肉腫の治療成績は阿部の報告でも15%に留まつている.われわれはsystematicな化学療法がほとんど行われていなかつた1960年前半までと,術前に主として局所動脈内制癌剤注入が行われてきた1960年後半より1975年までの21年間における骨肉腫の5年以上の長期生存者について予後に影響を及ぼすと考えられる臨床的な諸因子を検討したので報告する.

過去20年間の骨肉腫の治療成績

著者: 藤原祐三 ,   山室隆夫 ,   石井正治 ,   大辻孝昭

ページ範囲:P.563 - P.568

はじめに
 骨肉腫症例に対する治療成績は近年著しく向上し,5年累積生存率が50%をこえる報告12,14,21,24)もみられるようになつた.1960年代終り頃導入されたAdriamycin,1970年代初期のhigh-dose MTX-citrovorum factor rescue13)などの化学療法剤の使用およびその投与法の進歩のほか,術中照射など高エネルギー放射線の応用4,23,27)や肺転移に対する積極的な治療など,種々の方法がとりいれられた結果であると思われる.われわれも,従来行つてきた患肢の切・離断術を主とし,EndoxanまたはMitomycin Cの局所動脈内注入を行うという治療法から一歩を進め,Adriamycinの局所動脈内注入,MTX大量投与,β-tron術中照射,非特異的免疫療法のほか,肺転移に対しても積極的に手術療法を行いつつあるが,このようないわゆるmultimodalな治療法を行うに至るまでの治療成績をまとめておくことは,意義のあることと思われる.
 そこで,今回,京都大学医学部附属病院整形外科に入院し治療をうけた過去20年間の骨肉腫患者を追跡調査した.以下にその調査成績を報告する.

シンポジウム 腰部脊柱管狭窄—ことにdegenerative stenosisの診断と治療

腰部脊柱管狭窄に関する機能解剖学的検討

著者: 蓮江光男 ,   菊地臣一 ,   作山洋三 ,   伊藤司

ページ範囲:P.569 - P.576

 腰部脊柱管の先天的狭小および後天的狭小化という病態は,前世紀末に既に気づかれ始めていたが,1954年Verbiest18)の論文以来注目されるようになり,数多くの研究が発表されている.近年人口の高齢化と相まつて,腰痛や坐骨神経痛の原因の一つとして,広く認識されるに到つた.
 われわれは腰部脊柱管狭窄に関連して,種々の面より機能解剖学的検討を行つて来た.その主な結果を,昭和55年度の日本整形外科学会におけるシンポジウム「胸・腰椎部脊椎管狭窄症の病態と治療」(その2 腰椎部)において発表した4)が,今回はこれらを中心に腰部脊柱管狭窄の形態学的側面について考察を加えてみたい.

脊椎管狭窄症のCT像—脊椎管腔の数学的解析について

著者: 広瀬保 ,   橋本務 ,   川西康之亮 ,   松田英雄 ,   有田清三郎

ページ範囲:P.577 - P.585

はじめに
 脊椎疾患に対するCTの有用性については,多数の研究者15,19)の報告があるが,その定量的解析は少ない.われわれは第53回中部日本整形外科災害外科学会(1979)において,種々の方法を駆使して,腰椎晒骨標本で脊椎管腔の計測の基礎的検討を試み,この解析が可能であることを発表した.この実験結果を踏まえて,臨床所見およびX線像から脊椎管狭窄症と診断した症例に対して,X線像におけるJones値に相当するindexをCT画豫から求めるべく,その定量的解析を試みた.

腰部脊椎管狭窄症手術症例の検討

著者: 栗原章 ,   木村浩 ,   松田俊雄

ページ範囲:P.586 - P.597

はじめに
 腰部脊椎管狭窄症は,現在では広く認識され,それに対する観血的治療法としては,広範椎弓切除術が最もよく行われている.また,この治療成績も,満足なものであるとの報告が多いが,Verbiestの報告を除けばすべて近隔成績である.Verbiestの報告も,その最終結果のみであつて,症状やX線像,さらには,治療成績の推移については述べられていない.
 われわれは,昭和44年以来,本症に対して広範椎弓切除術を主として行つてきているが,その症例数も199例となつている.今回,われわれは,本症に対して行つた広範椎弓切除術症例の症状,X線像,総合成績について経年的に調査,検討を加えた.

腰部脊椎管狭窄—その臨床像と病態

著者: 辻陽雄 ,   伊藤達雄 ,   玉置哲也 ,   野口哲夫 ,   高野治雄 ,   松井寿夫 ,   岡野良文

ページ範囲:P.598 - P.612

はじめに
 腰部脊柱管狭窄の概念は前論文(第16巻第5号442〜452頁)において詳しく触れたように,種々の原因疾患によつておこる脊柱管およびそれに付随する椎間孔などの狭窄という解剖学的異常状態をさす.この狭窄状態は必ずしも臨床症状を発現するものではなく,多くはその上に脊柱構成要素の変性過程や,場合によつては人為的要因が荷重されて馬尾神経症候群という特有な臨床症状を発現する.
 本論文においては主に富山医科薬科大学病院において経験した手術例を中心として,臨床的検討を加え,病態に関する考察を加える.

臨床経験

脊髄硬膜内嚢腫—Neurenteric cyst—の1例

著者: 川上俊文 ,   山本清司 ,   森芳紘 ,   前山巌

ページ範囲:P.613 - P.616

 脊髄腫瘍のなかで,硬膜内嚢腫では類表皮嚢腫・類皮嚢腫が最も頻度が高く,くも膜憩室も報告が増加してきている.
 鳥取大学整形外科学教室では,現在まで41例の脊髄腫瘍を経験し,そのうち硬膜内嚢腫として,くも膜憩室1例,neurenteric cyst 1例を経験した.

4歳男子にみられた乳児指趾線維腫症の1例

著者: 武智秀夫 ,   花川志郎 ,   高田敏也 ,   中山浩 ,   行本陽 ,   山田潤一郎 ,   堤啓 ,   川端健二

ページ範囲:P.617 - P.619

まえがき
 小児に特有の線維腫症のうちで稀とされている乳児指趾線維腫症を経験したので症例を報告するとともに,組織像の特徴について述べ考察を加えたい.

腰部に発生したextraskeletal Ewing sarcomaの1例

著者: 園田万史 ,   岡田幸也 ,   前沢範明 ,   藤田久夫

ページ範囲:P.620 - P.623

 Ewing肉腫は若年者に発症する骨原性の腫瘍として広く認識されている.1969年Tefftらが軟部悪性腫瘍中にEwing肉腫に類似の病理組織像を呈する症例があると指摘して以来,Angervoll & Enzingerはこれをextraskeletal Ewing sarcomaと命名して報告した.
 われわれも腰部に発症したこの腫瘍の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

円回内筋の破格による尺骨神経麻痺の1例

著者: 桶谷由紀 ,   須川勲

ページ範囲:P.624 - P.626

はじめに
 肘関節部における尺骨神経麻痺は,いろいろな機序によつて発症するが。数多くの人たちが,その原因について考察している.すなわち,Mouchet(1914年)のtraction neuritis説,Platt(1926年)のfriction neuritis説,Osborne(1957年),Feindel(1958年)らによつて提唱されたcompression neuritis説の3つに要約されるであろう.原因としては,骨折後の外反射,変形性肘関節症,習慣性尺骨神経脱臼,いわゆるcubital tunnel syndromeなどによるものが一般的である.今回私たちは,円回内筋の破格および,尺骨神経の走行異常による尺骨神経麻痺の稀な1例を経験したので報告する.

膝蓋大腿関節不適合による膝障害に対する膝蓋骨縦骨切り術の経験

著者: 三谷晋一 ,   中野清剛 ,   坂本俊信 ,   陳晃

ページ範囲:P.627 - P.634

はじめに
 われわれは,最近,膝蓋大腿関節(以下PF関節と略す)の不適合が原因と考えられる4症例のPF関節障害に対して膝蓋骨楔状縦骨切り術を試み,今のところ比較的満足すべき結果を得ているので,その方法および術後成績を報告し,若干の文献的考察を加えたい.

99mTc-MDPスキャンによる各種人工膝関節の脛骨骨幹端に対する影響

著者: 亀山三郎 ,   藤森十郎 ,   森重登志雄 ,   川村晴也 ,   吉野槇一 ,   内田詔爾

ページ範囲:P.635 - P.640

はじめに
 ここ10数年の人工膝関節の発達は,目覚しいものがある.
 人工膝関節の構造を大別すると,"軸あり型"と"軸なし型"がある.現在では,ある一部の人達を除いては,ゆるみ,金属症,感染症,骨折などの合併症,ならびにその対策が大変困難であることから,"軸なし型"がよく用いられている.しかし"軸なし型"と一口に言つても種類によつて,その構造は非常に異なつている.特に,脛骨部構造の違いは著しいものがある.脛骨部構造の違いが,挿入された脛骨骨幹端にどのような影響を及ぼしているかを研究することは,人工膝関節の耐久性を知る上に大変有意義であると考え,著者らは術後最低1年以上経つている各種"軸なし"人工膝関節挿入後の脛骨骨幹端の状態を,片足荷重時X線像,ならびに99mTc-MDPによる骨シンチグラムによつて検索した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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