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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科16巻7号

1981年07月発行

雑誌目次

視座

MSWの教育制度に関する提言

著者: 小池文英

ページ範囲:P.643 - P.643

 日本整形外科学会やリハビリテーション医学会ではこれまで関連職種の教育制度の確立について努力し,ある程度の成果を収めた(たとえばPT,OT).
 まだ,義肢装具士の教育制度などの問題が残されているのであるが,私が日頃残念に思つているのは医療ソーシャルワーカー(MSW)の身分・教育制度に関する論議がほとんど出ていないことである.

論述

予後調査からみた若年性関節リウマチ

著者: 石川斉 ,   広畑和志

ページ範囲:P.644 - P.657

はじめに
 整形外科を受診する若年性関節リウマチ(以下JRAと略す)患者は関節炎を主訴とするか,関節の変形や拘縮を来たして日常生活動作(以下ADLと略す)に支障を生じてきたために受診するものが多い.一方,発熱や発疹が主症状であるsystemic typeなどの場合には,始めに小児科や内科を受診することが多いのである.このため発症から幾分遅れて整形外科を受診することになる.従つて,整形外科的には,このような関節炎や関節変形に対してどのような治療をしていくかが最も問題となるところであろう.
 そこで種々の診断基準(8-10)からJRAと診断した神戸大学整形外科でのJRA患者の追跡調査をもとにして本症に対する整形外科的な治療方針について考察を加えたい.

慢性関節リウマチ患者に対する人工関節置換術の効果と影響因子の検討

著者: 小林勝 ,   奥英久

ページ範囲:P.658 - P.664

はじめに
 慢性関節リウマチの重症例では全介助を要するのが普通である.まずこうしたリウマチ患者のリハビリテーションは介助から自立することに目標が設定される.
 上肢の機能障害では理学療法,自助具,スプリントなどの非観血的方法でかなりの改善がみられる.たとえば,上肢動作の障害によつて部分的な介助を要する程度であれば,上記の方法でも自立の可能性が期待される.

変形性膝関節症に対する楔状足底板の効果(第2報)—臨床的評価

著者: 安田和則 ,   加藤哲也 ,   佐々木鉄人 ,   須々田幸一 ,   八木知徳 ,   井須和男 ,   柘植洋

ページ範囲:P.665 - P.672

はじめに
 近年変形性膝関節症に対する保存的治療の一環として,楔状足底板による治療が注目されている.この治療法はかなり普及していると思われるが,その効果に関する客観的評価およびその作用機序の解明はほとんどなされていない.
 著者らは楔状足底板の効果の研究に着手し,先に楔状足底板の作用機序の解明の一端として前額面における静力学的分析を行い報告した6).すなわち楔状足底板上の片脚起立では,下肢全体の空間的位置の直立化および踵骨の外反化が起こり(機能的下肢軸の直立化),その結果膝関節内側関節面にかかる過大な負荷が減少し,また外側側副靱帯や腸脛靱帯などの膝関節外側構成体の過大な張力も減少するということがわかつた.

検査法

Metrizamide (amipaque) myelography

著者: 小林直紀 ,   斎藤由子 ,   宮下次廣

ページ範囲:P.673 - P.680

 近年ノルウェイで開発された非イオン化水溶性脊髄腔造影剤metrizamide(amipaque,アミパーク®)は,その安全性および造影能の良好さにより,脊髄腔造影剤の主流として短期間に全世界に普及している.わが国においても,昭和56年の初めより脊髄腔その他の造影剤として認可され市販されている.本編では,同造影剤の出現した背景について述べ,これによる脊髄撮影の手技について著者らの経験をもとに述べる.

手術

Muscle pedicle bone graftによる股関節固定術(Ranawat法)の経験

著者: 沢海明人 ,   田島健 ,   高橋功 ,   山川浩司 ,   八子理 ,   坂本隆彦 ,   谷良久 ,   鈴木信

ページ範囲:P.681 - P.684

 関節固定術は確実な無痛性,支持性が得られ,また,特に股関節においては腰椎による代償運動が大きく,日常生活上の制限が少ない点で結核性股関節炎や変形性股関節症の治療における意義は大きい.しかし強直不成功例が比較的高頻度に認められ,手技もやや複雑で,必ずしも一般に普及しているとはいいがたい.Davis,Hartleyら1,3)は,muscle pedicle bone graftによる関節固定術の有用性を動物を用いた基礎的実験により明らかにした.またDavis2)は1954年,変形性股関節症患者に対し腸骨から得たmuscle pedicle bone graftによる股関節固定術を行い,良好な結果を得たことを報告した.著者らは,1971年,Ranawatにより報告された術式7)に基づき4例の股関節固定術を経験したので,手術法,本法の利点等について述べる.

境界領域

SLEの骨・関節病変—手のX線像の解析

著者: 成田雅弘 ,   長岡章平 ,   加藤清 ,   松永敬一郎 ,   石ヶ坪良明 ,   千場純 ,   谷賢治 ,   福島孝吉 ,   谷荘吉 ,   岡本連三

ページ範囲:P.685 - P.688

はじめに
 SLEにおける関節痛および関節炎の頻度は高く,Duboisらは89〜92%のSLE患者に出現すると報告している4).しかしSLEに合併症がない限り,その関節症状は周期性で,拘縮や強直を起こすほどの進行性の関節周辺骨破壊は稀であると考えられていた1).一方,骨(しばしば大腿骨頭)にavascular necrosisの起こることが注目されており,当教室のSLE63名のうちでも6名(9.5%)に発症している.今回われわれは手のX線像から,SLEに起こる骨.関節病変を検討し,臨床症状・検査値との相関を検討した.

臨床経験

不全型Marfan症候群の患者に合併せるparaplegiaの1例

著者: 本江卓 ,   伊藤達雄 ,   野口哲夫 ,   玉置哲也 ,   辻陽雄 ,   神代靖久

ページ範囲:P.689 - P.694

はじめに
 胸部に巨大なhemangionaを有し,さらに心血管系および骨格系にMarfan症候群としての特徴をそなえた患者に急性に発症したparaplegiaの一例を経験した.脊髄麻痺の発生原因はTh8-9高位の椎管内骨軟骨腫とTh10-11高位のクモ膜骨化であつた稀有な例であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

掌蹠膿庖症に伴つた骨変化

著者: 千葉勝実 ,   柳沢正信 ,   福田茂 ,   渡辺秀樹 ,   高橋若子 ,   渡部裕子

ページ範囲:P.695 - P.699

はじめに
 掌蹠膿疱症(以下PPPと略す.—第1図—)に胸肋鎖骨間部の異常を伴うことは1967年に佐々木8)が報告して以来相次いで報告され決して稀なものとはいえなくなつた.一方胸肋鎖骨間部以外(たとえば仙腸関節,脊椎など)に骨変化を伴つたとする報告は少ない.私達は過去10年間に骨変化を伴つたPPP患者を8例経験しており再調査により興味ある結果を得たので報告する.

アキレス腱断裂の保存的療法

著者: 佐藤誠 ,   鈴木勝美 ,   今原敏博 ,   安藤啓三 ,   松本寿夫 ,   細井哲 ,   関口和夫 ,   村島隆文 ,   広瀬和久 ,   川井守 ,   藤田邦彦

ページ範囲:P.700 - P.703

 従来アキレス腱断裂は一般的に観血的に治療されてきた.しかし感染,皮膚壊死,知覚障害などの合併症が少なからず発生していた.このような合併症を避けるために,保存的療法が1766年John Hunterにより最初に報告されているが,最近ではGillies3),Lea4,5),中村7)により入院,理学療法期間も短縮され好結果であつたとの報告がある.今回われわれは1975年以来アキレス腱断裂に対して保存的に治療し優れた成績を得たので報告する.

新生児上腕骨近位骨端線離解の1例

著者: 浜田一寿 ,   浜野恭之 ,   高橋正憲 ,   永山悦朗 ,   三笠元彦

ページ範囲:P.704 - P.707

 日常,分娩麻痺は稀ではないが,それと鑑別を要する上腕骨近位骨端線離解に遭遇する機会は少ない.今回われわれは関節造影を行うことにより確定診断し,3年の経過において良好な結果を得た症例を経験したので報告する.
 症例は昭和50年11月30日生まれの男子で,母は23歳の初産婦である.在胎41週,第1複殿位で,分娩に際し上肢解出術およびVeit-Smellie児頭解出術を受けた.

診断困難であった神経症状を伴った結節性動脈周囲炎の1症例

著者: 小林茂夫 ,   鳥居孝昭 ,   斉藤明義 ,   佐藤勤也 ,   鳥山貞宜 ,   下田敏彦

ページ範囲:P.708 - P.710

はじめに
 結節性動脈周囲炎periarteritis nodosa(PN)は全身小動脈の壊死性,炎症性病変を呈する疾患であるが,本邦では約240例が報告されているのみであり,内科領域でも稀な膠原病である.われわれは最近,生前に確定診断を下しえず,剖検により判明した,多彩な神経症状を伴つたPNの一症例を経験したので報告する.

胸部脊椎症性脊髄症の1治験例

著者: 藤井英治 ,   赤坂勁二郎 ,   三笠元彦 ,   市川慎介 ,   山中芳

ページ範囲:P.711 - P.714

 胸椎の脊椎症性変化に起因する脊髄症は,頸椎に比較して稀であり,臨床像も多彩で診断および治療上,問題点が少なくない.最近,われわれは胸部脊椎症性脊髄症の1治験例を得たので,若干の考察を加えて報告する.

広範囲にみられた脊椎管内ependymal cystの1例

著者: 冨士武史 ,   新名正由 ,   内田淳正 ,   山岸正明 ,   下村裕 ,   鈴木実

ページ範囲:P.715 - P.718

 Ependymal cystは脊髄腫瘍のなかでもきわめて稀な疾患で,1938年Hymanが最初に報告して以来現在までに8例を数える.本邦では,1979年都築らが馬尾神経部に発生した1症例を報告しているにすぎない.最近われわれは硬膜内髄外に広範囲に発生し,興味ある脊髄造影像を呈したependymal cystの1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

病的骨折で発見された大腿骨desmoplastic fibromaの1例

著者: 浅野昌育 ,   山田順亮 ,   杉浦勲

ページ範囲:P.719 - P.721

はじめに
 原発性骨良性腫瘍には,一種の発育変異とも考えられるfibrous cortical defect(metaphyseal fibrous defect)や,より腫瘍性の性格をもつているcortical desmoid,non-ossifying fibromaのほか,desmoplastic fibromaやfibrous dysplasiaなどのentityが知られている.これらのうち発生頻度は比較的稀ではあるが,軟部腫瘍としてのdesmoid tumorと類似する特徴のある組織像をもち,骨髄内に原発する線維性骨腫瘍がJaffeによりdesmoplastic fibromaと命名されて以来一つのentityとして確立されている.最近著者らは病的骨折を契機にして発見され,手術を施行した本腫瘍を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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