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検査法
脊髄動脈造影
著者: 唐澤淳1 菊池晴彦1
所属機関: 1国立循環器病センター脳神経外科
ページ範囲:P.800 - P.807
文献購入ページに移動近年X線装置の改良により大容量,小焦点,再現性および操作性に富む装置が普及してきた.これらの条件は,対象血管が細い事,手技が煩雑である事等の脊髄血管造影における困難性を幾分でも解決しつつあるといえる.
脊髄血管造影を歴史的にみると,脊髄動静脈奇形の診断の目的のために発達してきた.当初大動脈造影により太く血流量の多い導入血管を造影していた.しかしこの方法では先の条件を満たさない動静脈奇形は造影されないこと,大量の造影剤が必要な事等の欠点があり,1967年頃からDi Chiroら1),Djindjianら4)により選択的脊髄血管造影,すなわち脊髄動脈へ流入する根動脈を分岐する動脈へ直接カテーテルを挿入して少量の造影剤で造影する方法が開発され,脊髄血管造影は飛躍的進歩をとげた.これにより脊髄動静脈奇形の診断のみならず,脊髄腫瘍,椎間板ヘルニアをはじめ脊椎の退行性変性の診断にも応用されるようになつた.しかし脊髄動脈の造影の恒常性,とりわけ解剖学的にバリエーションの多い後脊髄動脈の造影率はきわめて悪く,脊髄静脈像の診断への有用性も鮮明な像が得にくいため診断に困難を感じることもしばしばある.これらの欠点が現在脊髄血管造影による診断の限界となつている.しかし最近,後脊髄動脈造影,脊髄静脈像8)などの論文が発表されるようになり,脊髄動脈造影の弱点が近い将来解決していくものと思われる.
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