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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科17巻1号

1982年01月発行

雑誌目次

巻頭言

第55回日本整形外科学会

著者: 西尾篤人

ページ範囲:P.1 - P.2

 第55回日本整形外科学会総会を今春(3月28,29,30日)福岡市(福岡サンパレス,福岡国際センター)で開催できますことを会長として非常な光栄に存じます.
 今までに福岡市で日本整形外科学会が開かれましたのは神中正一教授の第22回の総会と,昭和28年に開催されました天児民和教授の第26回総会でありまして,足掛け30年振りに第3回目の日本整形外科学会総会を迎えることになりました.この総会が成功しますようできるだけの努力を払って参りましたが,会員の皆様の温い御後援と御協力をお願い致します.

視座

医学教育の欠陥

著者: 御巫清允

ページ範囲:P.3 - P.3

 私は,故三木教授というまたとない師を得て本当によかったと思っている.三木教授は私を虎の門病院に推挙して下さったが,その赴任に当って,診療病院で腕をみがくこともいいが,いつかは後輩育成のために医学教育に従事しなければならないと言われた.その言葉が頭にあったので,津山教授から自治医大へ行くように言われたとき直ちにおうけしたのであるが,さて医学教育にたずさわってみると,自分が学生であったときのことも思い合わせて,医学教育の欠陥を感ぜざるを得ないが,自分の非力ではどうしようもなく,さっぱり改善されないのをなげいてばかりいる.私の考えをどなたか実行に移してもらえないかと思って「視座」をかりて述べてみたい.
 学生に教えておかねばならぬことはどんどんふえるし,国家試験はどうしても通らなければならないし,という事情もあるが,日本の医師としてどうしても知らねばならないことが教えられていないのはどうしたことであろうか.病院管理学というものはあっても病院建築そのものについては何も教育していないから新しくできる病院は皆,そのときかぎりの個人趣味丸出しのものを,建築設計者の言うなりに作ってしまって,あとでしまった,ということになっていることが多い.病院にとって最も大切な機能の点は誰でも考えるが,安全性については誰も考えないことなどもその一例である.

論述

多数回手術を要した腰部椎間板ヘルニアの問題—そのsalvage手術法について

著者: 鵜飼茂 ,   平林洌 ,   若野紘一 ,   里見和彦 ,   戸山芳昭

ページ範囲:P.4 - P.14

はじめに
 腰部椎間板ヘルニアに対する手術療法は,一般にLove法を中心として多く行われているが,術後に腰痛,下肢痛などの症状を訴え,その結果再手術に至る症例も少なくない.それらが,近時Multiply Operated Back(以下M. O. B.と略す)として注目されていることは周知の通りである.
 M. O. B.においては,将に予防に勝る治療はない.つまり初回手術に際して術前その病態を十分に把握し,M. O. B.を発生させることのないように適切な配慮を払うことがthe bestであることに異論はない.しかし現実にはやむなく再手術を要する症例にたまたま遭遇する.この場合には,術後という悪条件が加わっているため,一層その病態は複雑となる.したがってこの場合にもまずこの病態の把握に努め,second bestとして各salvage法を適応することによって決して再々度の手術には至らないように努力すべきことも当然である.

レクリングハウゼン病に伴う脊椎変形7例の手術経験

著者: 田中豊孝 ,   熊野潔 ,   下出真法 ,   森愛樹 ,   近藤泰児 ,   小島龍也 ,   岡井清士 ,   関寛之 ,   三上凱久

ページ範囲:P.15 - P.22

はじめに
 Recklinghausen病(以下R病と略す)に伴う脊椎変形に対する手術的治療については,R病に特有である骨の脆弱性や,カーブの進行性などにより,必ずしも容易でないとされている.また変形により生じた下肢麻痺に対する治療も,R病に特有の高度の脊椎変形のために,容易ではない.しかるに,本邦においては,R病に伴う脊椎変形に対する手術的治療の報告は意外と少ない.著者らは昭和46年以来,2例の両下肢麻痺を含む7例のR病に伴う胸腰部脊椎変形例に対する手術的治療を経験したので,ここに報告する.なお頸椎部における変形は,胸腰椎における変形に比して,病態,治療法においても,異にすると考え,今回の報告から除いた.

骨肉腫剖検例の検討

著者: 山脇慎也 ,   後藤守 ,   姥山勇二 ,   井須和男 ,   中里哲夫 ,   石井清一 ,   佐々木鉄人 ,   八木智徳

ページ範囲:P.23 - P.31

はじめに
 骨肉腫の予後は,近年著しい改善を示した.この背景因子として,アドリアマイシン(以下ADMと略す),メソトレキセート大量療法(以下HD-MTX療法と略す)を中心とする化学療法の寄与するところが大きい1,6,8,9,10).国立札幌病院および北大整形外科で,これら薬剤を中心として系統的な化学療法を行った42例についてみると,5年累積生存率は45%で,これは,それまでの非化学療法群の18%と較べて著しい改善を示す.さらに,最近の多剤併用例では,70%以上の5年累積生存率が期待され得る6,10).この事実は,井須らの統計的手法による効果判定の試みによっても裏付けられた4)
 一方,剖検肺を中心とした病理組織学的検索でも,化学療法群では肺転移巣の数は少なく,組織学的には変性壊死の傾向が強い8,9,10).これに反して,非化学療法群では肺転移巣は両側多発散在性で,病巣の変性壊死傾向は認め難い場合が多く,組織学的にはviableな腫瘍が肺実質を圧排して増殖している.Micro metastasisも多数認められる10).ここでも抗癌剤の生物学的効果が確かめられる.しかし,一方では強力な化学療法によっても,なお40%前後の症例では3年以内に肺転移をきたして,そのうち75%は死亡している.化学療法によって,転移の形式や病理組織学的所見においても従来の骨肉腫とは違った様子を示す場合もみられるようになった.治療面では,ADMによる心毒性,HD-MTX療法による骨髄抑制,肝,腎障害などの副作用も今後解決しなければならない重要な問題である.

CT像よりみた片開き式頸部椎管拡大術について

著者: 木村功 ,   新宮彦助 ,   山崎堯二 ,   那須吉郎 ,   塩谷彰秀 ,   吉野陽三 ,   大濱満

ページ範囲:P.32 - P.42

はじめに
 頸部脊椎管狭窄症,頸部脊椎症性脊髄症および頸椎後縦靱帯骨化症(OPLL)に対する前方除圧固定法の導入により,その手術成績は飛躍的に向上しつつある.
 一方,広範囲の障害の場合,後方よりの椎弓切除術あるいは椎管拡大術による除圧法の成績も手術器具,手術技術の改善とともに優秀な成績が報告されつつある.

手術手技シリーズ 脊椎の手術・4

脊椎辷り症に対する前方術式

著者: 大木勲

ページ範囲:P.43 - P.50

はじめに
 腰椎辷り症に対して前方椎体固定術が用いられる理由は辷った脊椎を生理的位置に整復して,再び辷り出さない強固な安定した椎体固定が獲得できることにほかならない.このためには,より安全で確実なそして合併症を起こさない手術操作が求められる.

検査法

Spinal CT scan—Part I.頸椎と胸椎

著者: 中川洋

ページ範囲:P.51 - P.56

はじめに
 頭部CT装置の開発が,頭蓋内疾患の診断法に,非常に大きな変化と進歩をもたらしたように,全身用CT装置の普及も,脊椎脊髄疾患の検査法に新しい分野を切り開いた.
 最近のCT装置即ち第3世代や第4世代のCTでは,数秒間で,スライス幅が薄く,かつ解像力の高い画像が得られるようになり,CTの信頼度がかなり向上した.

臨床経験

第1中足骨に生じたbenign chondroblastomaの1例

著者: 早乙女紘一 ,   鶴見信之

ページ範囲:P.57 - P.60

はじめに
 Benign chondroblastomaは比較的稀な原発性軟骨性骨腫瘍であり,53年までに全国骨腫瘍登録一覧表によれば98例登録されている.最近われわれは本症の1例を経験したのでその臨床所見を述べるとともに,病巣はaneurysmal bone cystのごとく漿液血性の液が貯留し嚢状になっていたので,若干の考察を加え報告する.

右大菱形骨の骨結核と思われる1症例

著者: 岡田幸也 ,   島崎和久 ,   森本一男

ページ範囲:P.61 - P.64

はじめに
 右母指CM関節部痛を主訴として来院し,病理組織学的に右大菱形骨の結核と思われる症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

馬尾部に発生した多発性神経鞘腫の1例

著者: 川口篤 ,   白岡格 ,   中野謙二

ページ範囲:P.65 - P.68

はじめに
 脊髄に腫瘍が多発することは比較的稀で,Lombardi8)3.8%,Camp2)4%らの報告があるが,半数以上はRecklinghausen病に伴うものであり,診断,治療に関して,難渋するものの1つに数えられている15).最近,われわれは,Recklinghausen病に伴わない馬尾部多発性神経鞘腫の1例を経験し,若干の知見を得たので報告する.

マルファン症候群に伴う側彎症について

著者: 冨士武史 ,   岡田孝三 ,   小島伸三郎 ,   小野啓郎 ,   天野敬一

ページ範囲:P.69 - P.73

I.序言
 マルファン症候群は,くも状指趾,水晶体脱臼,心血管奇形を特徴とする常染色体性優性遺伝を示す疾患で,全身の結合組織に病変を生ずる.本症候群に合併する脊柱側彎症は40〜60%といわれており,その側彎は進行性で,かつ早期から可撓性が低下し,予後は不良とされている.今回われわれは,10例の脊柱側彎を伴う本症候群を経験し,臨床症状,側彎の程度,進行,カーブパターンなどにつき検討を加えた.その結果,側彎の進行には2つのタイプがあると推察されたので報告する.

興味ある両側大腿骨骨頭辷り症の1例

著者: 安福嘉則 ,   松永隆信 ,   武内章二 ,   栄枝裕文 ,   赤星義彦

ページ範囲:P.74 - P.79

 左側は稀な外後方辷りを呈し,右側は偶然,症状発現前より経過が観察された両側大腿骨骨頭辷り症の1例につき報告する.

Sacral Extradural Intra-adiposal Cystの1症例

著者: 増田和人 ,   四方実彦 ,   樫本龍喜 ,   山室隆夫 ,   南風原英之

ページ範囲:P.80 - P.84

はじめに
 Extradural cystの概念には種々の仮説があるが,今回Spina bifida occultaに伴うCongenital lipomatous tissue中に発生したSacral extradural intra-adiposal cystを経験したので報告する.

遠位上腕二頭筋腱皮下断裂の2例

著者: 野村泰央 ,   村上新二郎 ,   福沢玄英 ,   本田一成

ページ範囲:P.85 - P.87

はじめに
 上腕二頭筋腱皮下断裂は,ほとんどが近位端の長頭腱断裂で,遠位端断裂は,本邦において非常に稀である.われわれは,介達外力により生じた遠位端断裂の2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

整骨放談

総入歯の落し話

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.88 - P.88

 入歯のうちでも,自分の歯が一本でも残っていれば,これが支えとなって,入歯の緩るみがおこりにくいが,総入歯となると支えがないので,ガタガタして,よろしくない.
 歯の丈夫さと寿命とが大体平行するらしく,90歳過ぎでは総入歯は当然のように思うが,80歳代の元気な人には総入歯は少ないようである.だから歯は普段から大切にして,なるべく抜歯などしないようにと皆んなに推めている.私のように50歳そこそこで,上,下とも総入歯にしたなどは長寿の資格を放棄したようなものである.上の方の入歯は何とか上顎に具合よくへばり着いているが,下の力は適合は悪くて,長時間はめておくと直ぐ潰瘍をつくるので,食事にのみはめて,終ると直ちにはずして,ポケットに仕まい込むことにしている.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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