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論述
骨肉腫剖検例の検討
著者: 山脇慎也1 後藤守1 姥山勇二1 井須和男1 中里哲夫1 石井清一2 佐々木鉄人2 八木智徳2
所属機関: 1国立札幌病院北海道地方がんセンター整形外科 2北海道大学医学部整形外科
ページ範囲:P.23 - P.31
文献購入ページに移動骨肉腫の予後は,近年著しい改善を示した.この背景因子として,アドリアマイシン(以下ADMと略す),メソトレキセート大量療法(以下HD-MTX療法と略す)を中心とする化学療法の寄与するところが大きい1,6,8,9,10).国立札幌病院および北大整形外科で,これら薬剤を中心として系統的な化学療法を行った42例についてみると,5年累積生存率は45%で,これは,それまでの非化学療法群の18%と較べて著しい改善を示す.さらに,最近の多剤併用例では,70%以上の5年累積生存率が期待され得る6,10).この事実は,井須らの統計的手法による効果判定の試みによっても裏付けられた4).
一方,剖検肺を中心とした病理組織学的検索でも,化学療法群では肺転移巣の数は少なく,組織学的には変性壊死の傾向が強い8,9,10).これに反して,非化学療法群では肺転移巣は両側多発散在性で,病巣の変性壊死傾向は認め難い場合が多く,組織学的にはviableな腫瘍が肺実質を圧排して増殖している.Micro metastasisも多数認められる10).ここでも抗癌剤の生物学的効果が確かめられる.しかし,一方では強力な化学療法によっても,なお40%前後の症例では3年以内に肺転移をきたして,そのうち75%は死亡している.化学療法によって,転移の形式や病理組織学的所見においても従来の骨肉腫とは違った様子を示す場合もみられるようになった.治療面では,ADMによる心毒性,HD-MTX療法による骨髄抑制,肝,腎障害などの副作用も今後解決しなければならない重要な問題である.
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