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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科17巻12号

1982年12月発行

雑誌目次

視座

骨腫瘍の分類と骨肉腫の定義

著者: 大野藤吾

ページ範囲:P.1191 - P.1191

 最近,骨腫瘍について,問題があると考えている事項がいくつかある.骨腫瘍の分類,骨肉腫の定義,動脈瘤様骨嚢腫の診断,骨肉腫の治療,骨腫瘍登録の充実化などいくつかが問題となるが,ここでは骨腫瘍の分類と骨肉腫の定義について,最近私が考えていることを述べたいと思う.
 まず骨腫瘍の分類であるが,1972年FeldmanとNormanが骨原発性の悪性線維性組織球腫(以下MFHと略す)の報告をして以来,骨原発のMFHは年々増加している.これはもちろん,腫瘍の頻度が高くなったのではなく,このような診断の頻度が高くなったためである.しかるに現在我々の使っている骨腫瘍の分類にはMFHはない.もともと分類などというものは全く人為的なもので,時代とともに新しい知見の出現に対応し変化していくべきものである.

論述

悪性軟部腫瘍の根治的広切法についての検討

著者: 川口智義 ,   和田成仁 ,   真鍋淳 ,   磯部靖 ,   古屋光太郎 ,   網野勝久 ,   松本誠一

ページ範囲:P.1192 - P.1206

 悪性軟部腫瘍の広範囲切除手術(以下広切術と記す)は腫瘍を周囲健常組織を含めてen blocに切除し,局所の根治性と患肢機能をできるだけ温存しようとする手術法である.本邦では腫瘍の根治性をうるためにどの程度の周囲組織を切除すればよいかについての検討がいまだ十分につくされておらず,切除範囲のguide lineも示されていない.そのため,従来行われてきた所謂広切法の局所再発率は高く,とうてい根治的治療法とはとらえ難いものである.私達は過去9年間広切法で根治性を得るためには周囲の健常組織をどの程度切除すればよいかについて手術材料の所見とfollow up dataを比較検討してきた.その結果,徐々に手術法を改良し,最近ではほぼ満足すべき手術成績が得られるようになった.一方,このような根治的な広切術の確立にあたっては,術前診断の著しい進歩も見逃すことはできない.そこで本稿では,広切法で根治性を得るための手術手技,その手術成績および手術に必要な術前診断法などについて,私達の考えを述べる.

脊柱側彎症に対するanterior instrumentation surgery—114例の経験と成績

著者: 大谷清 ,   西川雄司 ,   長谷斉 ,   中井定明 ,   藤村祥一 ,   満足駿一 ,   柴崎啓一

ページ範囲:P.1207 - P.1216

 脊柱側彎症に対するanterior instrumentation surgery(以下AISと略す)のそもそもの歴史は,1964年Dr. A. F. Dwyerの発表が嚆矢となることは有名である1,2).その後1975年,Dr. K. ZielkeはDwyer法を改良した方法としてVentrale Derotations-spondylodese(VDS)を紹介している6).この間AISは十数年間の歴史のもとで急速の進歩をもって普及してきた.今日,この手術はほぼ完成されたといっても過言ではないと思う.
 我々は1973年4月にDwyer instrumentation(以下DIと略す)の第1例を施行した5).以来1981年末までに114例のAISを経験してきた.10年足らずの短い経過であるが,この間に我々の経験のみをみても確実な進歩がみられてきた.自験114例の成績を評価し,我々の本手術に対する変遷をたどってみた.

腰部脊柱管狭窄症の黄色靱帯について

著者: 細川昌俊 ,   芦田多喜男 ,   坪山寿郎 ,   齋藤聖二 ,   佐々木正

ページ範囲:P.1217 - P.1225

 腰部脊柱管狭窄を文字通りに解釈すれば,国際分類にも見られるように,いろいろの原因によって脊柱管を狭小化している状態であろうが,この文字にとらわれ過ぎてあらゆる原疾患を含めてしまうと,いろいろな病態が想定され,共通した病態解明の手掛りをとらえ難くなるおそれがある.たとえdevelopmentalに脊柱管が狭小であっても,椎間板ヘルニアが発症に主役を演じているものは治療法も異なるであろうし,脊椎後方ないしは後側方の二次的な骨性変化を伴わない単なる辷り症は臨床症状も異なるであろう.従って,それらは従来通りの病名で取り扱うべきであると考える.
 これを腰部脊柱管狭窄症として臨床的な疾患群として取り扱う意義は,共通した臨床症状を呈し,共通した治療法が適応されることにあり,この共通した病因を追求しようとする立場から,degenerative typeの黄色靱帯について述べる.

三次元下肢アラインメントから見た変形性膝関節症の病態について

著者: 姫野信吉 ,   姫野忠彦 ,   姫野礼吉

ページ範囲:P.1227 - P.1234

はじめに
 変形性膝関節症(以下膝OA)においては,前額面における内反変形のみならず,水平面における回旋変形をも加わった,複雑な三次元下肢アラインメントの変化をおこしてくることは,近年次第に注目されるようになってきた.しかし,計測の困難さのために,現在にいたるも充分な解明が得られたとは言い難い.
 著者らは電算機を援用した,二方向立位下肢レ線像を用いる三次元下肢計測システムを開発し,膝OAのアラィンメントの変化を観察してきた.その結果,膝OA例には,平均約20°の下腿内捻が認められること,この器質的内捻は,股及び膝関節における各々10°ずつの機能的外旋で代償されていることを確認した3).ここにおいて約20°の器質的内捻が,どのようにして生じてきたのか,即ち,膝OAの原因として,当初から存在していたものなのか,それとも膝OAの結果として二次的に生じてきたものであるのかという点は,未確認に留まった.

検査法

経皮的血中酸素分圧測定法

著者: 河井秀夫 ,   露口雄一 ,   行岡正雄 ,   多田浩一

ページ範囲:P.1235 - P.1238

はじめに
 末梢循環動態測定には,皮膚色の観察,皮膚温の測定,プレチスモグラフィー,流速検知法(電磁血流計,超音波血流計)などがある.それぞれの方法は,主観的なこと,反応時間の遅いこと,測定部位が限定されること,簡単にできないことなど一長一短がある.
 われわれはHuchら1)が開発した経皮的血中酸素分圧測定法に注目し,末梢循環動態の把握に有用であることを認めたので紹介する.本法は未熟児の酸素療法および呼吸管理のために開発され,重症治療室(ICU)などでも一般的なモニター法として使用されてきている.

臨床経験

掌蹠膿疱症に伴った骨関節炎—HLAからみた本症の側面

著者: 石井良章 ,   河路渡 ,   塩原哲夫 ,   長島正治 ,   八木田旭邦 ,   相馬智

ページ範囲:P.1239 - P.1244

はじめに
 掌蹠膿疱症に骨関節の異常を伴うことは,本邦では佐々木(1967)4)が鎖骨骨髄炎の合併を記載したのに始まり,報告例は近年とみに増加している.以後多くの研究により,本症の臨床病態はしだいに明らかにされつつある.
 しかし本態,病因は未だ全く不明のため,免疫学的アプローチによりこれを解明しようとする試みがなされて来た.HLAの検討もこの1つで,従来AおよびB抗原を中心に検索が行われ,特にB27の陽性率に関心が払われて来た.今回我々はB抗原も含めて,A,B,C,DRの4種類の抗原を検討し,若干の知見を得たので報告する.

Cleidocranial dysplasia—3代10名に発症した1家系報告とその遺伝的考察

著者: 渡部健 ,   杉浦保夫

ページ範囲:P.1245 - P.1254

はじめに
 鎖骨・頭蓋骨異形成症cleidocranial dysplasiaは,在来,dysostosis cleidocranialis,dysostosiscleidocranialisと呼ばれてきた疾患そのものであるが,1979年発表の先天性骨系統疾患国際命名法International Nomenclature of Bone Dysplasiasでは,この名称が正式に採用されている.本症は 1)鎖骨の先天性完全欠損もしくは,不完全欠損,2)頭蓋縫合・泉門の開存を主変化とする疾患で,常染色体性優性遺伝疾患として知られている.
 今回,著者等は本症の典型症例,男子9歳例を経験し,この患昔を発端者とし,家系調査を行ったところ,この家系においては常染色体性優性遺伝形式を示して3代にわたって,10名の罹患者があることが判明したので,その大要を報告し,主として日本文献について詳細に検索し,特に遺伝学的見地より考察を加えて発表する.

両側踵骨隆起摧裂骨折の1例

著者: 山元功 ,   石崎仁英 ,   大吉清

ページ範囲:P.1255 - P.1259

 踵骨骨折は日常よくみられるが,その中で踵骨隆起摧裂骨折は稀である.著者らは両側踵骨隆起摧裂骨折に右膝蓋骨下端裂離骨折を合併した稀な1例を経験したので,発生機序に考察を加えて報告する.

先天性膝関節脱臼の5症例

著者: 藤井正和 ,   鈴木清之 ,   白旗敏克 ,   笠間公憲 ,   飯田勝訓 ,   高橋文一 ,   中島公和 ,   栗岩純

ページ範囲:P.1261 - P.1265

 先天性膝関節脱臼は比較的稀な疾患であるが,著者らは最近,5症例7関節,Drehmann分類1)によるI度3関節,II度4関節を経験し,いずれも保存的療法で良好な成績を収めることができたので報告する.なお,これらのうち,3症例は現在,歩行中であるが,その経過についても併せて報告する.

双生児にみられたmicrogeodic disease

著者: 井上五郎 ,   紫藤徹郎 ,   原田敦

ページ範囲:P.1267 - P.1271

 Microgeodic diseaseは1970年にMaroteauxによってはじめて報告された疾患で,現在までに30例あまりの報告があるが,双生児への発生例はない.今回,私たちは一卵性と思われる7歳男子双生児に発生したmicrogeodic diseaseを経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

ガングリオンによる肩甲上神経麻痺の1例

著者: 三浪三千男 ,   中下健 ,   山崎潤 ,   石井清一 ,   薄井正道

ページ範囲:P.1273 - P.1276

緒言
 肩甲上神経の単独麻痺は本来少なく,従ってその報告も散見するに過ぎない.とくにガングリオンの圧迫による本神経の単独麻痺は文献的に2例の報告をみるのみである.最近,われわれは38歳の男性に本症を経験し,ガングリオン切除によって治癒せしめたので報告する.

筋性斜頸,脊柱側彎症を伴った胎児性アルコール症候群と思われる1例

著者: 徳橋泰明 ,   永田善郎 ,   田中豊孝 ,   浅田美江 ,   君塚葵 ,   坂口亮 ,   北住映二

ページ範囲:P.1277 - P.1280

 近年,新しい胎児病として,社会的に問題になっているものに,母親の妊娠中のアルコールの飲用により生じる胎児性アルコール症候群がある.最近,我々は筋性斜頸,脊柱側彎症を伴った胎児性アルコール症候群と思われる1例を経験したので報告する.

脊髄円錐部に発生した先天性皮膚洞を伴った類皮腫の1例

著者: 後藤英隆 ,   田島健 ,   山川浩司 ,   坂本隆彦 ,   沢海明人 ,   岡亨 ,   朝比奈章悟

ページ範囲:P.1281 - P.1285

緒言
 脊椎管内に発生する類皮腫および類表皮腫は,比較的稀なものとされるが,我々はその中でも稀な先天性皮膚洞を伴い,脊髄円錐部に発生した類皮腫の1例を経験したので,若干の考察を加え報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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