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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科17巻2号

1982年02月発行

雑誌目次

視座

科学記事

著者: 星野孝

ページ範囲:P.93 - P.93

 つい先日,ある週刊誌の取材陣の一人から電話があった.最近の子供の骨が弱くなっている原因について意見を聞かせて欲しいというのである.この問題は去年の日本整形外科学会で,土屋会長がパネルディスカッションとしてとりあげた問題である.そのときの指定発言で述べたように,現代っ子の骨が栄養学的見地からみて昔の子の骨より弱くなっているとは私には到底思えない.国民栄養統計をみても,国民の栄養摂取量はカルシウム,蛋白を始め,向上している.もし一歩ゆずって骨が昔にくらべて弱いという事実があると仮定するならば,それは「骨の構成要素が,その配向と質量が変化することによって,外力に機能的に適応する」というWolffの法則に基づいた「筋の活動の低下(そのよい例が児童の塾通い)による骨形態の劣弱化」傾向ではないだろうか,また世上よく問題となる食品添加物の問題については,鍵っ子など特殊の環境にあって偏食の傾向の格別強い児を除けばほとんど問題にならないはずであると,要旨以上のような意見を述べたところ,「階段の三段目からとび降りたら骨折した子がいるというではありませんか」と追求の手をゆるめない.「そんな特別な子は昔もおりました」と答えて,とにかくケリをつけた.果たせるかな,別冊として送られてきた週刊誌には私の意見は一つも引用されておらず,整形外科領域以外の方達の談話ばかりがのっていた,引用をしていないにもかかわらず,月末には取材謝礼を送ってきたところはさすがに一流誌と感心したが,同時に雑誌の科学記事を読むにあたって批判的精神を常に失ってはならないことを痛感した次第である.

論述

Marfan症候群に伴った脊柱側彎症

著者: 若林詔 ,   四方実彦 ,   森竹財三 ,   山室隆夫 ,   太田和夫 ,   樫本龍喜

ページ範囲:P.94 - P.102

はじめに
 剥離性大動脈瘤,心弁膜疾患,水晶体脱臼などの心血管系および眼系異常と,長身痩躯,蜘蛛状指趾,胸郭変形,脊柱側彎などの骨格異常をきたす疾患は,1896年Marfan1)が,四肢,指趾の細長い特殊な体型の1例を報告したのに基づき,Marfan症候群と呼ばれている.本症は家族性に見られることが多く,遺伝性全身結合織疾患といわれている.本症に伴う脊柱側彎は特発性側彎症に似てはいるが,進行性が強く,重症例が多いとされている.
 今回われわれはMarfan症候群に見られた脊柱側彎の15例について検討したので報告する.

骨肉腫の肺転移:その増殖と進展の特異性と治療成績

著者: 関保雄 ,   福間誠吾 ,   沢田勤也 ,   石田逸郎 ,   田中文隆 ,   高田典彦 ,   桑原竹一郎

ページ範囲:P.103 - P.109

はじめに
 骨肉腫の肺転移には,その他の悪性腫瘍の肺転移とは異なった特徴を見ることができるが,肺転移の成立,転移巣の増殖と進展の様相は,原発腫瘍の生物学的性状に由来すると考えられる転移巣の態度,さらに転移の場である肺の構造と機能の特徴によって規定されるとしてよいであろう.
 骨肉腫の肺への転移が,これらの因子によって修飾され,特異性を表現するか,さらに肺転移巣に対する治療計画に及ぼす役割について,臨床的な立場から検討するとともに,骨肉腫肺転移に対する外科治療の適応と成績について考察を加えた.

骨塩分布像(度)による骨萎縮度の評価

著者: 林泰史

ページ範囲:P.110 - P.117

緒言
 骨萎縮度を正確に評価する方法の開発は,代謝性骨疾患の治療法の開発にも直結するため,臨床医の待望するところである.現在,臨床的に用いられている骨萎縮度評価方法は大別すると,テトラサイクリン二重標識法をも含めた骨組織形態計測法1),レ線フィルムから骨濃度や骨皮質幅を計測するレ線学的計測法2),放射性元素からの線束の吸収されたエネルギーから骨密度を計算する骨塩分析法3)などがある。前2者の評価法は三次元に存在する骨密度の変化を平面で認識し,それを一次元に数量化しようとするもので,後者は三次元の骨萎縮をある直線に沿って評価し数量化するものである.
 数量化された骨萎縮度は,症例の経時的変化の分析や群間比較をする際などには都合が良く利用価値が高いが欠点もある.欠点の1つは数量化された骨萎縮値から萎縮の程度が把握しにくいこと,また骨萎縮を招来している原疾患や骨萎縮の性質,特徴が表現しにくいことである.また欠点の3番目は骨萎縮が何らかの治療や投薬に反応して治癒傾向に向ったとき,すなわち骨吸収から骨形成への折り返し点が数量化された骨萎縮値からは認識しにくいことである。

スポーツによる脊髄損傷

著者: 長谷斉 ,   藤村祥一 ,   満足駿一 ,   柴崎啓一 ,   大谷清

ページ範囲:P.118 - P.124

はじめに
 近年,スポーツに対する関心がますます深くなり,小中高校生はもとより一般社会人から高年齢者層まで老若男女を問わず,各人が積極的にスポーツ活動に参加するようになってきている.一方,それに呼応するかのようにスポーツ(ここで述べるスポーツとはプロスポーツから健康を目的としたレクリエーションまでを含んだ広い意味でのスポーツ活動をさす)による外傷にも多くの関心が払われるようになった.
 スポーツ外傷の中では脊髄損傷の占める比率はきわめて少ないが,この疾患の性格上取り扱いはとくに重要である.また本外傷が決して特殊な状況によってのみ発生するものではなく,比較的身近なスポーツ活動によっても青少年層を中心に中壮年者にも及んでいることは,単に医学的な問題にとどまらず社会的にも重大な問題を投げかける.

特発性側彎症の彎曲進行について—disc wedgingの意義

著者: 白石英典 ,   公文裕

ページ範囲:P.125 - P.131

はじめに
 文部省条例により昭和54年から学校検診に脊柱側彎症がとりいれられて以来,一般の人々にもかなりその名が知られるようになった.しかしながら特発性側彎症に関しては,その原因はもちろんのこと,予後に関してもいまだ不明である.1972年M. H. Mehta3)は乳幼児特発性側彎症にかぎり,1枚のレントゲン写真からRibb Vertebral Angle Distanceを指標として,その予後を検討したところ約80%の的中率であったと報告している.しかし学童期および思春期特発性側彎症の予後に対する的確な指標にはならない.脊柱側彎症の70〜80%を占める特発性側彎症の治療において,Cobb法により20°以上の彎曲であれば現在ほぼ全員にMilwaukee Braceを主とする保存的療法が行われている.しかし進行しない側彎もあるが,実際にこれを見極めるのは容易ではない.1枚のX線写真からその側彎が進行性のものか,非進行性のものかを判定するために,disc wedgingを検討した.その程度により特発性側彎症の予後が推定できるのではないかと考え,"Disc Index"を案出して臨床的研究を行った.もしこれが特発性側彎症の予後判定の指標になれば,早期治療の効果を高めるであろうと考えたからである.

検査法

超低圧用プレスケールによる足底圧測定—とくに,靴をはいた歩行時の圧について

著者: 山根友二郎 ,   田中広光 ,   吉田清和 ,   林一徳

ページ範囲:P.132 - P.138

はじめに
 足部の変形により歩行異常,胼胝や潰瘍形成など多くの問題を生じるが,これには足底部に加わる圧の異常が大きく関与していることが少なくないと考えられる.また,足部の変形を少しでも矯正しようとして靴型装具などが用いられるが,このために,靴に足を合わせるようなことも少なくない.このことは新しい潰瘍の形成など不測の事態を生ずる原因となる.したがって,靴をはいて歩行する際に足底部に加わる圧を知ることは,足部変形の治療上きわめて大切なことである.
 足底部圧測定に関しては,従来,墨汁法やミラーを用いた足圧痕やストレンゲージを用いての足底圧測定など多くの工夫1,2,6)があるが,繁雑であったり,特殊な知識や器械を要するなどのため,その臨床応用の範囲はきわめて限局されたものである.超低圧用プレスケールを用いた方法は簡易で,誰にでも,どこでも使用できる利点があるので,臨床的に有用であると考え,その方法と臨床応用について報告する.

臨床経験

腱反射の逆転を伴ったdevelopmental stenosisによると思われる頸部脊柱管狭窄症の1例

著者: 町田英一 ,   丸山公 ,   根本純一 ,   鳥居孝昭 ,   友保洋三 ,   佐藤勤也 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.139 - P.143

緒言
 腱反射の逆転reflex inversionとは,ある反射が消失し,その拮抗筋あるいは隣接する筋の反射が保たれているか,亢進する時にみられる特別な反射現象である4)
 頸部脊柱管のdevelopmental stenosisによる頸髄障害は,1964年Hinkらが提唱した概念であり,発生学的な異常により頸部脊柱管が狭いために,発育の過程で脊柱管と脊髄との間に余裕が無くなり,特別な原因なしに,もしくはわずかな骨棘や軽度の外傷などにより頸髄障害を起こしてくることをさしておりHinkは,神経学的に意味のある異常neurologically significant anomalyとしてとらえている3)

非蝶番型人工膝関節(Total Condylar Knee)置換術用骨切除ガイドの考案と使用結果

著者: 木下勇 ,   森本博之 ,   岩崎一夫 ,   田岡博明 ,   井形高明 ,   長岡勇 ,   成瀬章

ページ範囲:P.144 - P.147

I.はじめに
 人工膝関節置換術はhinge型における問題点の検討から,1970年代に入ってpolycentric型,geomedic型,Freeman-Swanson型,Kodama-Yamamoto型などをはじめ多種多様のnon-hinge型が相ついで開発,報告されてきた.そして現在では特殊な症例を除けば適応の第一選択にはnon-hinge型が採用されるべく意見の一致をみている.
 これらnon-hinge型人工膝関節の適応に当っては,手術手技の細部では個々の機種によって異なる点もあるが共通せる重要なポイントは的確な骨切除にもとづく下肢alignmentの調整にある.

局所再発からみた骨腫瘍性疾患

著者: 加藤貞利 ,   後藤守 ,   山脇慎也 ,   姥山勇二

ページ範囲:P.148 - P.152

緒言
 いわゆる骨腫瘍性疾患(tumorous conditions of bone)に属する,単発性骨嚢腫(solitary-bone cyst以下S. B. Cと略す),動脈瘤様骨嚢腫(aneurysmal bone cyst以下A. B. Cと略す),線維性骨異形成(fibrous dysplasia以下F. Dと略す),エオジン好性肉芽腫(eosiophilic granuloma以下E. Gと略す)の4つの疾患は,その性状が腫瘍に類似するために良性骨腫瘍として扱われている1).これらの疾患に対する治療法としては,病巣の切除や掻爬および骨移植術などの外科的治療が一般に行われる.しかし局所再発をきたしやすく,このことが治療上の大きな問題点となっている.今回,著者らは,骨腫瘍性疾患82例を分析し,その臨床像を把握した.また術後の局所再発に関しては,それに関与すると考えられる種々の因子のうち,特に手術方法とレ線でみる病巣の大きさ,その形状という観点から,再発の問題を検討した.

足根トンネル症候群の2例:神経電図による検討

著者: 鈴木信治 ,   石川健史

ページ範囲:P.153 - P.157

はじめに
 神経走行部の解剖学的変化により,関連する末梢神経にneuropathyを生ずることはよく知られている9).後脛骨神経の絞扼神経障害をきたす足根トンネル症候群は脛骨内果後下方に生ずる.最近われわれは,ganglionによる足根トンネル症候群の2例を経験し,神経電図による検討を行ったので報告する.

右手月状骨に発生した骨内ガングリオンの1例

著者: 丸野博敏 ,   藤田直己 ,   園田万史 ,   藤田久夫

ページ範囲:P.158 - P.161

はじめに
 Ganglionは,通常,四肢の腱鞘,靱帯あるいは,関節包より発生する軟部腫瘍として日常しばしば経験する疾患である.
 しかし骨内に発生するganglionは稀であり,本邦では,19例の報告をみるにすぎない.特に手根骨での発生は稀である.

脊髄くも膜下腔に広範播種性転移をきたした頭蓋内malignant astrocytomaの1剖検例

著者: 福士明 ,   今村義典 ,   鎌田義正 ,   原田征行 ,   川岸利光

ページ範囲:P.162 - P.166

I.はじめに
 頭蓋内に発生したastrocytomaが脳脊髄液(以後CSF)を介して,脊髄くも膜下腔に播種性に転移することは文献上散見できる.今回われわれも同様な症例を経験し,臨床上および剖検上興味深い所見が得られたので,その臨床病理的検討と若干の文献的考察を行った.

脊椎に転移した極く稀な胸腺原発と思われるカルシノイド腫瘍の1例

著者: 布田由之 ,   川上純範 ,   山本明子 ,   河野浩太 ,   福住直由

ページ範囲:P.167 - P.171

 前縦隔部腫瘍で胸腺原発と考えられるカルシノイドは稀な疾患である.その転移についてはカルシノイド腫瘍全体でも骨の転移例はほとんど報告がない.
 われわれは今回稀な胸腺原発と考えられるカルシノイド腫瘍を経験し,しかも胸椎に転移して脊髄を圧迫,脊髄症状を呈した症例を経験したので報告する.

軽微な外傷により四肢麻痺をきたした頸椎後縦靱帯骨化症の1剖検例

著者: 山口和正 ,   瀬良敬祐 ,   舌間憲土 ,   高須賀良一 ,   弓削大四郎

ページ範囲:P.172 - P.176

 1960年,月本が後縦靱帯の骨化症例を報告し,それ以後,後縦靱帯骨化症(以下OPLLと略す)の報告は数多く,潜在的にも多くの者に本疾患が存在すると考えられている.外傷を機会に症状が出現したり増悪するのも本症の特徴の一つであるが,ほとんど無症状のままで経過し,突然四肢麻痺をきたした報告例は未だ少ない.われわれは最近,軽微な外傷により完全四肢麻痺となり,さらには呼吸麻痺をきたして死亡した症例を経験したので,症例の紹介とともに,剖検にて興味ある2,3の所見を得たので報告する.

金製剤中止症例に対するD-ペニシラミンの治療成績

著者: 亀山三郎 ,   藤森十郎 ,   森重登志雄 ,   川村晴也 ,   小野恵都子 ,   吉野槇一

ページ範囲:P.177 - P.180

はじめに
 金製剤とD-ペニシラミンは,関節リウマチに対し,大変有効な薬剤であるが,一方,両剤とも副作用の頻度は高い.何らかの副作用,または無効により,金製剤の投与を中止している症例は少なくない.このような症例にD-ペニシラミンを投与した場合,投与継続が可能であるか,そして効果的であるかどうかは,大変興味深いところである.
 今回,著者らは,金製剤中止症例に対し,D-ペニシラミンを投与したところ,期待した以上の良い治療成績を得たので報告する.

四肢麻痺発作と寛解をくり返した頸部硬膜外血管腫の3例

著者: 中村敬彦 ,   蛯谷勉 ,   本間隆夫 ,   安川敬一郎 ,   中村滋 ,   羽場輝夫 ,   間庭芳文 ,   八木和徳 ,   五味淵文雄

ページ範囲:P.181 - P.187

 急激に四肢麻痺または対麻痺をきたす疾患の中でも,硬膜外血管腫は比較的まれで,特に頸椎部に発生した硬膜外血管腫の報告は,国外では散見されるが11,14,16),本邦での報告は著者が調べ得た限りでは蒲原の1例のみである.今回われわれは四肢麻痺発作と寛解を繰り返す症例を,angiography,myelographyにて診断し,en-bloclaminectomyにより椎弓とともに血管腫も摘出し,組織学的に硬膜外血管腫と確定しえた3例を経験したので報告する.

双生児に発生したペルテス病の2例

著者: 藤井英世 ,   鈴木正比古 ,   秋山典彦 ,   宝積豊

ページ範囲:P.188 - P.191

 最近我々は,双生児に発生したペルテス病の2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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