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臨床経験
手の短小指屈筋皮弁移行の1例
著者: 生田義和1 杉田孝1 若狭雅彦1
所属機関: 1広島大学医学部整形外科学教室
ページ範囲:P.601 - P.604
文献購入ページに移動筋肉が何本かの動静脈系によって栄養され運動神経によって支配されていることは古くから解剖学の常識ではあるが,主栄養血管と神経を茎として残し,筋肉の働きを移行して失われた運動を回復させようとする考え方には,大胸筋を肘屈曲に用いるClark法(1946)胸鎖乳突筋を肘屈曲に用いるBunnell法(1951),小指外転筋を母指対立に用いるHüber-Littler法(1921,1963)7)などがある.これらの手術は,前腕末梢部における腱移行術と同様の方法と考えられがちであるが,最近行われている遊離筋肉移植3)の考え方と臨床への応用に関して理論的根拠と刺激を与えたという意味で大きな差がある.また遊離皮弁移植(free flap transfer)の臨床応用1)と発展2)は,筋肉や皮膚の血行をもう一度見直す引きがねにもなり,筋肉皮弁移植(musculo-cutaneous flap transfer)の臨床的応用の普及8)へと発展していった.筋肉皮弁そのものの臨床応用は1968年のOrticocheaの報告6)が最初であるが,最近のmicrosurgeryの進歩による組織移植の一般的興味は,有茎とか遊離とかをあまり厳密に規定しない,もっとdynamicな組織移植へと発展している4).
本論文で発表する症例は,手のintrinsic muscleのひとつである短小指屈筋を皮膚とともに移行したものである.
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