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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科17巻7号

1982年07月発行

雑誌目次

視座

悪性骨腫瘍の早期診断

著者: 鳥山貞宜

ページ範囲:P.633 - P.633

 最近はテレビドラマなどで原発性悪性骨腫瘍患者が主人公として取り扱われることがあるためか,われわれの病院に入院している患者もアドリアマィシンの赤い色をみて自分の病気がどんなものであるかを知り,治療上都合のよいこともありまた悪い点もある.原発性悪性骨腫瘍がドラマになるのは,主人公が若い人で,患肢を切断しても結局は死亡するとの悲劇的な設定のためであろうが,実際には骨肉腫でも5年間生存率は30%以上に達するほど治療成績は向上している.
 この悪性骨腫瘍の治療成績を向上させるためには,適当な抗腫瘍剤の選択,新しい抗腫瘍剤の開発も重要であるが,われわれの所で治療を受けて死亡した患者をふり返ってみると,もう少し早く治療を始めることができればあるいは助かったかも知れないと思われる例が少なくない.

論述

骨補塡材としての合成水酸アパタイト—細粒と自家骨混合移植

著者: 東正一郎 ,   山室隆夫 ,   三河義弘 ,   中村孝志 ,   塩出速雄

ページ範囲:P.634 - P.642

緒言
 外傷や骨腫瘍摘出後,炎症・変性疾患の治療後などの骨欠損に対して,従来より自家骨移植が用いられ良好な成績をおさめている.しかし,骨欠損が広範な場合,自家骨移植にも量的な限界があり,また採骨部の変形なども無視できないことがある.このような広範囲骨欠損の対策として,冷凍保存同種骨移植,キールボーンなどの処理異種骨,アルミナや骨セメントなど,種々の試みがなされている.中でも同種骨移植については,ボーンバンクの設置など,実現性を帯びてはきているものの,移植の際の免疫反応や,骨誘導性の維持など,まだまだ研究の余地が残されており,しかも,人間の生体や死体から大きな骨塊を切除するということが,我が国の社会通念上,にわかに許容されるとは言い難い.キールボーンなどの処理異種骨は,臨床でも使用されてきたが,周囲の骨形成も遅く,理想の骨代用材にはほど遠い11).アルミナは,生体親和性にすぐれているが,周囲の骨形成を促進することはなく10,17),さらにアルミナのように固いものが半永久的に体内に残存することも新たな問題を呼ぶことになろう.骨セメントにいたっては,悪性腫瘍の骨転移巣摘出などの姑息的手術後に用いられる場合がほとんどである.
 さて,近年,骨ミネラルの研究により,骨ミネラルに近似した水酸アパタイトCa10(PO46(OH)2(以下HA)が合成されるようになり,主として口腔外科,整形外科の領域で注目を集めている.HAは,1)骨ミネラルに近似し,2)骨親和性にすぐれ,3)骨と直接結合して新生骨形成に良好な「場」を与えることが多くの研究者により報告されている。私達は,HAの細粒を,自家骨移植を補う,あるいは単独に用いる骨充塡材として,臨床応用できる可能性をみるため基礎的実験を行い,いくつかの興味ある所見を得た.さらに,骨盤部に発生した巨大な骨腫瘍に対して,HA細粒を自家骨と混合して用いた臨床経験20)を得たので報告する.

ゲンタマイシン混入骨セメント・ビーズによる骨髄炎の治療

著者: 矢島弘嗣 ,   糸原弘道 ,   金森行男 ,   増原建二 ,   長鶴義隆 ,   塩見俊次

ページ範囲:P.643 - P.651

はじめに
 骨セメント(polymethylmethacrylate)は,整形外科領域において,人工関節置換術の際にprosthesisの固定材料として広く使用されてきた.一方,1970年にBuchholzら1)は,重合した骨セメントからmonomerが放出される事実に着目し,骨セメントに抗生物質を混入すれば,抗生物質が持続的に長期間放出されるのではないかと考え,エリスロマイシンとゲンタマイシンを骨セメントに混入し,股関節全置換術に使用した結果,術後感染の著しい減少をみたと報告した.その後,本法は術後感染の予防対策として,Hessert3)(1970),Wahligら13)(1972),本邦においては木下5)(1973),南平ら8)(1974),吉野ら17)(1977)により種々の抗生物質について,実験的・臨床的報告がなされた.一方,1974年Klemm6)により化膿性骨髄炎などの治療目的としても本法が有用であることが示唆された.それは,病巣掻爬後の欠損部に,ゲンタマイシンを混入した骨セメント・ビーズを充填し,ビーズより遊出するゲンタマイシンにより骨髄炎を治癒せしめるという,それまでにない全く新しいタイプの化学療法であった.そして,Wahligら14,15)(1976,1978),Vécseiら12)(1981),住田ら11)(1979)により,その臨床的有用性が確認されている.
 今回われわれは,閉鎖性局所持続洗浄法によって十分な効果が得られなかった難治性の化膿性骨髄炎3例を含む合計4症例に対して,ゲンタマイシン混入骨セメント・ビーズを使用し,良好な結果を得たので,それらの症例を中心に文献的考察を加え報告する.

北海道における骨肉腫の年次分布(第3報)

著者: 井須和男 ,   後藤守 ,   山脇慎也 ,   姥山勇二 ,   石井清一 ,   佐々木鉄人 ,   薄井正道 ,   八木知徳

ページ範囲:P.653 - P.659

はじめに
 現在推測されている骨肉腫の病因論のひとつにウイルス説がある.動物実験ではウイルスによる骨肉腫の発生がみられている2,13).またヒトの骨肉腫においてもウイルスの関与を示唆する報告がなされている3,8,11,12,17).骨肉腫の発生にウイルス感染が大きな影響をもっている可能性を推論するためには,骨肉腫の発生分布に地域的または時期的な集積性を証明することが重要な根拠を与えることになる.われわれは,以上の観点から過去2回にわたって北海道の骨肉腫の発生状況を報告してきた6,7).いずれの観察でも,骨肉腫の発生には集積性はないという結果に終わっている.しかし,その観察期間と症例数が充分でなかったところから,まだ結論を得るにいたっていない.今回は,観察期間を昭和35年より昭和54年までの20年間に延長することによって,北海道における骨肉腫の地域的時期的集積性の有無に何等かの結論を得ようとした.

骨病変への201TI(タリウム)シンチグラフィの基礎的,臨床的検討

著者: 梅田透 ,   高田典彦 ,   保高英二 ,   井上駿一 ,   遠藤富士乗 ,   山本日出樹 ,   有水昇 ,   川名正直 ,   松岡理

ページ範囲:P.661 - P.669

はじめに
 骨シンチグラムは骨病変の検出,病変の範囲の描出に優れているものの,良性骨病変にも集積を示し現在,悪性病変との鑑別(質的診断)は困難といわれている.今回われわれは,骨病変の質的診断向上のための補助診断法として,心筋イメージング核種である201Tl-chloride以後201Tlを骨病変に応用し,その有用性と限界について99mTc-MDP骨シンチグラムと比較し基礎的,臨床的検討を行った.

老人の大腿骨頸部骨折に対する手術適応—全身状態からの考察

著者: 須藤容章 ,   光野一郎 ,   種部直之 ,   田縁千景 ,   岡田温 ,   藤田仁

ページ範囲:P.671 - P.678

はじめに
 老人の大腿骨頸部骨折は日常診療においてよく遭遇する疾患であるが保存的に治療するか,観血的に治療するかということになると異論のあるところである.しかし一般的な大勢としては観血的療法,早期離床,社会復帰というのが有力のように思われる13,14)
 観血的療法にあたり,その老人が麻酔および手術的侵襲に耐えられるか,また手術によって余命を短縮させるのではないかという懸念がある.一般外科においては高年者に対する手術適応に関して,術前から術後の経過を予測する種々の試みがなされてきた.例えば,原田のrisk点数表示法4),卜部の5段階老化分類法28),林の動脈硬化度指数分類法6)等がある.これらの方法は一般外科領域ではよく用いられているが眼底所見の分類が必要であるばかりではなく,心臓の運動負荷テストが必要であり,大腿骨頸部骨折の老人に対しては無理な面がある.そこでわれわれはもっと簡単な安達のpoor risk基準1)に準じて(表1),われわれの症例を分類し(表2),術前の検査結果から予後を推定しようと試みた.

臨床経験

内反凹足に対する矯正骨切り術の検討—Dwyer calcaneus osteotomyとmidtarsal V-shaped osteotomyの併用例について

著者: 引野講二 ,   加藤哲也 ,   佐々木鉄人 ,   須々田幸一 ,   八木知徳 ,   門司順一

ページ範囲:P.679 - P.687

はじめに
 1743年,Andrey1)が"bolt foot"と凹足を記載して以来,凹足に関する原因・病態に関して,多くの研究がなされ,特に20世紀初期には詳細に調べられた.しかし,その病態を明確に定義づけることは困難であった10).現在では,凹足とは長軸方向に対し異常に高いアーチを持った足をいい,同時に前足部の内転と後足部の内反を伴い"cavovarus"とも言われている,長軸アーチの挙上ば足の短縮を起こし,中足骨頭に圧が増大し,その足底側に胼胝を形成し,変形の強いものでは起立時,中足骨頭部痛をきたしたり,靴による趾背や足背部の圧迫痛を訴えるものもある.伸筋腱は相対的に短くなり,足趾の鷲指変形を呈するようになる.またアキレス腱の緊張により足関節の背屈制限をきたし,しばしば尖足変形を合併し,その場合は症状は著明となりやすい.
 従来われわれは保存的治療法で改善のみられない重症な内反凹足に対して,Lambrinudi手術や三関節固定術を行ってきた2,21,22,31).これらの方法では,変形は矯正されるものの足根骨間の関節強直のため柔軟性の失われた板状の足になり,さらに隣接関節の関節症が大きな問題となる.

腰椎に発生したAneurysmal bone cystの1例

著者: 四方実彦 ,   北大路正顕 ,   若林詔 ,   琴浦良彦 ,   中村孝志 ,   山室隆夫 ,   中嶋安彬

ページ範囲:P.689 - P.694

はじめに
 Aneurysmal bone cystはJaffe, Lichtensteinにより命名されて以来,比較的稀な良性骨疾患として近年症例報告が増加してきている.脊椎は長管骨に次いで本疾患の好発部位とされているが,本邦における腰椎発生例の報告はきわめて少ない.われわれは第3腰椎棘突起,椎弓,椎体に及ぶ広範な広がりをもった本疾患の1例を経験し,それに対して病巣廓清,骨移植,Harrington instrumentation 併用脊椎固定術を行ったので若干の文献的考察を加えて報告する.

骨変化を伴った腱鞘巨細胞腫

著者: 志鎌明大 ,   井上哲郎 ,   岡田雅仁

ページ範囲:P.695 - P.699

 一般に軟部腫瘍が骨を侵蝕することは,比較的まれであるが,手指における軟部腫瘍は良性腫瘍であっても,解剖学的特徴,腫瘍組織の関係から,骨を侵蝕することは少なくない.
 今回,われわれは,腱鞘巨細胞腫のうちX線的な骨変化をきたした2症例につき,若干の文献的考察を加えて報告する.

Polymyalgia rheumaticaの1例

著者: 石川浩一郎 ,   田中孝明 ,   田村和弘

ページ範囲:P.701 - P.705

はじめに
 Polymyalgia rheumatica(リウマチ性多発筋痛症)(以下PMR)はヨーロッパ諸国に多く,種々の名称で報告されているが1,39),1957年Barberにより初めて現在の病名が用いられた.この疾患は高齢者に多く,肩甲帯・骨盤帯の疼痛,血沈の高度促進,副腎皮質ステロイド剤が著効を示すことなどの特徴を有している.また,しばしば側頭動脈などの巨細胞動脈炎を伴うことでも知られている.本邦では,1967年,金久らによりはじめて報告されているが14),極めて稀と考えられていた.しかし,ごく最近になり認識が高まったためか症例報告が増える傾向にある.われわれも典型的なPMRで側頭動脈炎を伴うと考えられた1例を経験したので,若干の文献的考察とともに報告する.

頸椎に発生し,脊髄症状を呈した骨軟骨腫の2例

著者: 冨士武史 ,   山下和夫 ,   岡田孝三 ,   米延策雄 ,   小島伸三郎 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.707 - P.714

 骨軟骨腫は長管骨骨幹端部に好発する良性骨腫瘍であるが,その脊椎発生は比較的稀である.今回我々は,頸椎に発生し興味ある脊髄症状を呈した単発性骨軟骨腫を2例経験したので,若干の考察を加えて報告する.

習慣性肘関節脱臼の2例

著者: 宇賀治行雄 ,   樋口雅章 ,   杉木繁隆 ,   中条正博 ,   馬場久敏 ,   菅原洋一郎 ,   紺谷悌二 ,   篁俊男

ページ範囲:P.715 - P.718

 習慣性肘関節脱臼の報告はきわめて稀であるが,最近我々は外傷性脱臼後の内側側副靱帯および関節包の弛緩が原因と思われる肘関節の習慣性脱臼の2例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

Flail chestを伴った胸椎脱臼骨折の治療経験

著者: 高木道人 ,   和田野安良 ,   関寛之

ページ範囲:P.719 - P.722

 最近,われわれはflail chestを伴った胸椎脱臼骨折に対し,ハロー骨盤牽引装置を用い,脊椎脊髄損傷の管理と同時に,胸骨にネジを刺入してハロー骨盤牽引装置のuprightにこれを固定して胸郭の外固定を行い,呼吸管理も容易に行えた症例を経験したので報告する.

腰仙部神経根奇形の1例

著者: 松田康孝 ,   野坂健次郎 ,   安田清 ,   清水光一郎

ページ範囲:P.723 - P.726

 腰仙部神経根奇形の報告は稀である.最近われわれは,腰部椎間板ヘルニアの手術に際し,腰仙部神経根奇形を認め,術前施行したメトリザマイドミエログラフィーと術中所見の間に興味ある所見を得たので若干の文献的考察を加えて報告する.

Freeman-Sheldon症候群と思われる5例

著者: 林靖邦 ,   君塚葵 ,   木内哲也 ,   浅川美江 ,   坂口亮 ,   北住映二 ,   宮地直恒

ページ範囲:P.727 - P.733

 1938年整形外科医Freemanと小児科医Sheldonが特有な顔貌,頭蓋,手指の屈曲拘縮と尺側偏位,先天性内反足を示した2例をCranio-carpo-tarsal Dystrophyとして報告した.以来本症はFreeman-Sheldon症候群と呼ばれている.われわれは過去3年間,この症候群と思われる5例を観察したので,若干の考察を加え報告する.

きわめて稀な母指内転筋と長母指屈筋腱の二重破格例

著者: 北山吉明 ,   川上重彦

ページ範囲:P.735 - P.739

 長母指屈筋腱の解剖学的破格の報告は比較的稀である.最近,母指内転筋の破格と橈側列形成不全を合併した長母指屈筋腱の破格例を経験したので,症例を報告し若干の文献的考察を加える.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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