文献詳細
文献概要
視座
老人医療について
著者: 中野昇1
所属機関: 1中野整形外科医院
ページ範囲:P.743 - P.743
文献購入ページに移動昭和33年ケンタッキーダービーで有名なルイヴィル大学に留学していたある金曜日の夜,若い夫婦が大腿頸部骨折の老人を連れてきた.手術の必要があったので入院させたが,よろしくと言って帰ったきり自分達の親であるその老人を見舞にきたことはなかった.当時の日本では戦争に負けたといってもこのようなことは考えられなかったので,驚くとともにアメリカの友人に日本ではこのようなことはないと自慢したものである.しかし,最近では家族で旅するからその間入院させてほしいとか,冬の間だけでも入院させておいてと,入院が必要でないほどの些細なことでも大げさに言ってくる人がいる.また一方ではいわゆる大きい老人病院を作り,入院させ,なかなか退院させない病院がある(医者以外の経営者が多いが).田舎で自分の息子と住んでいた義父が老人性痴呆で老人病院に入院したが,はじめあった意識も薬のため次第になくなり,朝夕点滴され,しまいに褥瘡ができたので退院さぜるように言ったら,何かあっても診てやらないと言われ,死亡するまで同じような治療(?)を受けながらその病院に人院していた。親を大切にするという考えがあったり,老人を金儲けの対象から除外する考えがあれば我国の老人医療ももう少し変ってきているのではないだろうか.
掲載誌情報