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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科17巻9号

1982年09月発行

雑誌目次

視座

教育と研修

著者: 伊藤忠厚

ページ範囲:P.855 - P.855

 最近私は,日本学術会議の教育問題特別委員会とか厚生省医療関係者審議会の臨床研修部会などに出席して,議論をしたり,意見をまとめなくてはならない場合が多いためか,従来,教育という言葉を漠然と捉えていたことに大きな反省を感じている.
 真の教育というのは,夫々個人の天性の能力を眠らせておかずに,これを開発させることであって,それには,その時期,或は最もよい方法がとられなくてはならないと言われている.

論述

膝関節内前十字靱帯再建術(Jones法)の遠隔成績

著者: 高橋秀裕 ,   安達長夫 ,   越智光夫 ,   永山五哉

ページ範囲:P.856 - P.863

はじめに
 1968年Slocum20)に始まる回旋不安定膝の論議は枚挙にいとまがない.特に前十字靱帯機能不全に起因するanterolateral rotatory instability(以下ALRI)に関しては,その病態はほぼ確立された感があり,手術法も種々発表されている.すなわちpivot shift repair10),Ellison法9),Losee法12),biceps transfer2,13)などの回旋制御を目的とした関節外再建術,およびこれに関節内再建を併用する関節内外再建術15)などがあり,我々も最近では,これらの術式を,症例に応じて使い分けている.
 一方,これらの再建術は膝関節の重要な支持組織を用いるため,その機能の消失や低下は免れないとの考えから,腱移植,あるいは人工腱などの研究も復活しつつある.

肩関節の安定化機構について

著者: 姫野信吉 ,   津村弘 ,   川井忠彦 ,   竹内則雄

ページ範囲:P.865 - P.871

はじめに
 肩関節は,「筋肉の海に浮んでいる」と形容されるように,豊富な筋・支持組織に包まれた関節で,上腕骨頭と,これに比して小さく浅い臼蓋から構成される.このような構造は,人体関節中最大の可動域を許容する反面,関節の安定性が損われやすい危険がある.
 本報告の目的は,ともすれば失われがちな肩関節の安定性を保持するためのメカニズム,とりわけrotator cuffと呼ばれる周囲筋の役割を,力学的見地より明確にすることである.

誌上討論

幼児期先天股脱(遺残性亜脱臼)に対する骨盤骨切り術と大腿骨骨切り術

著者: 寺山和雄 ,   山田勝久 ,   香川弘太郎 ,   石田勝正 ,   坂口亮 ,   岩崎勝郎 ,   上野良三 ,   井村慎一 ,   黒木良克

ページ範囲:P.873 - P.886

はじめに
 1981年3月31日,第54回日本整形外科学会において,幼児期先天股脱(遺残性亜脱臼)の治療に関するパネルディスカッションが行われた.寺山と山田はこの討議の司会を担当させられたが,当初,会長から頂いた題名は「骨盤骨切り術か大腿骨骨切り術か」であった.この問題は先天股脱研究会その他で長い間討議されてきたもので,ある人は好んで骨盤骨切り術を採用し,ある人は好んで大腿骨骨切り術を採用しており,それぞれに主張すべき点があり,ある程度の対立点がある.しかし両者は症例の病態に応じて適宜に選択して用いられるべきもので,二者択一的に全く対立すべきものでもないところから,題名を「骨盤骨切り術と大腿骨骨切り術」に変更して頂いた.骨盤骨切り術か大腿骨骨切り術かという白黒をはっきりつけるような議論であれば参加者あるいは読者にも理解しやすいと考えられるが,微妙な使いわけとなると単なる言葉による表現では理解し難い点も多いと考え,討議は症例を中心に具体的質問を設定して,個々のパネリストの考え方を理解してもらう方針とした.
 この報告は学会のパネルディスカッションをもとに,まず各パネリストにそれぞれの主張したい点を簡潔にまとめて頂き,総括的事項に関する4つの質問に対する回答および当日討論に使用した症例のスライドを各パネリストに送って司会者の設定した質問に対する回答を改めて提出して頂き,それらをまとめたものである(寺山).

手術手技シリーズ 脊椎の手術・9

腰椎疾患のInstrumentation Surgery

著者: 金田清志

ページ範囲:P.887 - P.896

はじめに
 種々な腰痛ないし坐骨神経痛疾患に対し,腰椎あるいは腰仙椎固定が行われている.より確実な固定性を獲得するため,従来いくつかの内固定implantsの応用が試みられてきたがあまり一般化しなかった.Kingのmetal screw fixationは,Boucher, Pennal et al. と引きつがれたがその後発展せず,Wilsonの片側棘突起のplate固定も固定性に問題があった.Roy Camilleはscrew & plate systemを発展させ広汎に応用している.Attenborougのspringもその後の報告がない.Harrington instrumentationは本来,脊柱側彎症の矯正固定に発案されたものであり,限局性の腰仙椎固定ではhookやrodのサイズや調節性に問題がある.Knodt rodは装着性の難点と1椎間固定に応用し難い点がある.著者はHarringtonとKnodtのアイディアを発展させた新しい腰椎—腰仙椎固定用のhook & rod systemのimplants(北大式instrumentation)を作成し,過去7年間に200例をこえる使用経験を重ね頻々報告してきた3〜6).ここに著者の常用している腰椎および腰仙椎部のInstrumentation Surgeryを記述する.なお現在最も頻度の多い腰仙椎固定のanterior instrumentationは応用し得るものが確立されていない.

境界領域

Ankylosing HyperostosisのX線学的検討—OPLLとOSSLを中心に

著者: 桜田和之 ,   大本秀行 ,   杉基嗣 ,   中村克已

ページ範囲:P.897 - P.903

はじめに
 Ankylosing Hyperostosis of the Spine(AH)には後縦靱帯骨化(OPLL)をはじめ,他の靱帯骨化が多く認められることは従来より報告されており,Resnickら9)はDiffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosis(DISH)という概念を提唱している.脊柱靱帯骨化の報告は,臨床上重篤な症状を呈すOPLLなどは数多くあるが,AHを母集団とした報告は少ない11)
 今回われわれはOPLL成因解明の一助として,脊柱靱帯骨化を多く合併するAH128例を調査し,OPLL,棘上靱帯骨化(OSSL),椎体窩溝を中心に検討し,考察を加える.

臨床経験

Salter手術後の骨盤変形の検討

著者: 加藤貞利 ,   加藤哲也 ,   伊藤邦臣 ,   増田武志 ,   深沢雅則 ,   山根繁 ,   多胡秀信

ページ範囲:P.905 - P.910

緒言
 Salter骨盤骨切り術は,主として幼児期の臼蓋形成不全に対して用いられる手術である1).しかし,術後に骨盤の変形をきたす場合があり,臨床的に問題となることも少なくない.骨盤変形の原因の一つに数えられる腸骨翼の成長障害は,腸骨apophysisに加えられる手術時の侵襲に起因すると考えられている.腸骨翼の外側への張り出しが障害されれば,外見上の醜形を呈するばかりではなく,中殿筋付着部の面積の減少にともなう中殿筋筋量の低下および中殿筋の生力学的な効果の減少を招くことになり,結果として中殿筋不全の状態を生ずることが考えられる.今回,著者らは手術方法,すなわち腸骨apophysisに対するapproachの方法によって骨盤変形の程度に差異が生ずるか否かを調査した.さらに,手術時年齢あるいは術後経過観察期間によって骨盤変形の程度に変化がみられるのかどうかを併せて検討した.

2度の術後再発に対しステロイド注入で著効がみられた孤立性骨嚢腫の1例

著者: 中村孝文 ,   水田博志 ,   森沢佳三 ,   原田正孝 ,   北川敏夫 ,   大島隆志

ページ範囲:P.911 - P.915

 1973年イタリアのScagliettiが孤立性骨嚢腫内にメチルプレドニゾロンアセテートを注入し96%に効果をみたのに始まり,以後本邦でも同様の報告を散見するようになった.しかし術後再発例に本法を施行しその経時的変化を詳しく観察した報告は,我々が渉猟した範囲では見あたらなかった.
 今回我々は1度目は同種骨,2度目は自家骨と,2回にわたり掻爬,骨移植を施行するも再発をくり返した症例にデポメドロールを注入し著効が得られたのでその経過を文献的考察を加えて報告する.

肩に発生した非外傷性骨化性筋炎の1例

著者: 大橋義一 ,   腰野富久 ,   藤原克彦

ページ範囲:P.917 - P.922

はじめに
 骨化性筋炎は外傷性や神経因性に生じるものが多く,非外傷性に生じるものは少ない.非外傷性骨化性筋炎は,その経過,X線所見,および病理組織所見が傍骨性骨肉腫と類似することから,正確な診断が必須である.
 われわれは,比較的稀な右上腕骨近位部に生じた非外傷性骨化性筋炎の1例を経験し,その発生過程をX線像に腫瘤がみられない時期より経時的に観察し,摘出により良好な結果を得たので報告する.

カルチノイド腫瘍の脊椎転移に対して観血的治療を施行した1症例

著者: 安川幸廣 ,   原田征行 ,   近江洋一 ,   森山明夫 ,   林篤 ,   藤哲 ,   川嶋順蔵 ,   中野恵介 ,   坪健司 ,   西尾美栄子 ,   松本健一 ,   大熊達義

ページ範囲:P.923 - P.926

 カルチノイド腫瘍は,欧米諸国に比べて本邦ではかなり頻度が少なく,また本腫瘍の80%は悪性であり,肝,肺,骨などに転移するとされている.
 最近われわれは,気管支カルチノイドの脊椎転移による脊髄麻痺をきたした極めて珍しい症例に観血的除圧を行い著しい改善を示した1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

片麻痺患者に併発した橈骨頭前方脱臼および尺骨頭掌側脱臼の1例

著者: 榊原弘喜 ,   猪飼通夫 ,   隈部泰男 ,   高田外男 ,   久米廣和 ,   田橋省司

ページ範囲:P.927 - P.931

 老人人口の増加に伴い,脳血管障害のリハビリテーション必要患者は増加の一途をたどっている.片麻痺の合併としての関節脱臼は弛緩性麻痺状態における肩関節がよく知られている.その他の関節脱臼に関する報告は少ない.今回われわれは,非常に稀な近位および遠位橈尺関節脱臼を合併した痙性片麻痺患者を経験したので,その発生メカニズムの検討を加え報告する.

外傷性腓骨筋腱脱臼の1例

著者: 渡辺省二 ,   梅田真一郎 ,   清水俊治

ページ範囲:P.933 - P.936

 腓骨筋腱脱臼は,1803年にMonteggiaが,バレエダンサーに発生したものを報告したのに初まり,本邦においては,斎藤1)が,1935年に報告している.臨床上は,それほど稀とは思われないが,その症例報告数は,比較的少ないと言える.腱の脱臼は,上腕三頭筋腱,指伸筋腱腓骨筋腱,前,後脛骨筋腱などで報告があるが,とりわけ,腓骨筋腱に多いとされる.また,北田ら3)が,1977年に分類している様に腓骨筋腱脱臼には,先天性脱臼と後天性脱臼があり,後者はさらに外傷性のものと非外傷性のものに分けられる.
 われわれは,この後天性外傷性腓骨筋腱脱臼例を1例体験し,これに対し,Ellis-Jones変法を実施し良好な結果を得ると共に,その発生に関し,いささかの知見を得たので,文献的考察を加え報告する.

軟部組織石灰化および血管腫を伴ったgeneralized enchondromatosis:12年間の経過

著者: 貝原信紘 ,   光安元夫 ,   范廣宇 ,   香月一朗 ,   佛淵孝夫 ,   高岸憲二

ページ範囲:P.937 - P.940

 Ollier病の病変は両側性に認められることが多いが,通常,非対称性で病変の程度は統一性を欠き,さまざまな骨化段階を示す病変が不規則に認められることが特徴的な所見である3,6,9,11).また脊椎や頭蓋に変化のないことが通例である.他方,generalized enchondromatosisは1978年Sprangerら8)により命名された新しい疾患で,病変は全身性かつ対称性に存在し,骨化障害の程度もほぼ同じ段階を示し,脊椎や頭蓋にも病変が認められるものである.今回,われわれはSprangerらが提唱したgeneralized enchondromatosisと思われる骨変化を呈し,かつ,軟部組織石灰化および血管腫を伴った症例を経験したので,12年間におよぶX線経過に若干の文献的考察を加えて報告する.

ビタミンD抵抗性クル病に骨巨細胞腫を合併した1例

著者: 井口哲弘 ,   矢野悟 ,   稲松登 ,   金原宏之

ページ範囲:P.941 - P.945

 クル病は種々の骨変化をおこすことが知られている.今回われわれはビタミンD抵抗性クル病の経過中に,骨巨細胞腫を合併した1例を経験した.臨床経過ならびに骨病変を中心に,検討を加えて報告する.

骨粗鬆症に対する1α-(OH)D3の効果

著者: 山本吉藏 ,   前山巌 ,   岸本英彰 ,   塩谷彰秀 ,   山根実 ,   白根一 ,   岡廸夫

ページ範囲:P.947 - P.955

はじめに
 Osteoporosisは色々な因子が関与して発症する骨障害で,その病態は未だ十分に解明されておらず,Riggs(1979)28)によればmultifactorial disordersと表現されている.それらのなかには,人種,性,食事性Ca・P摂取量の違いもあれば,ホルモン,特に,エストロゲン,上皮小体ホルモン,ビタミンDなどもその重要な因子と考えられている.これら病因の解明と平行して,これ迄,臨床的に色々な方法で治療が試みられてきた.
 近年,新しい知見としてosteoporosisとビタミンD代謝異常との関連が明らかにされ5,6,29),血中1,25-(OH)2D3レベルの低下がosteoporosis発症の一因であることが示唆されて以来,活性型ビタミンDがその治療に試用されるようになった.

ファベラ症候群について

著者: 武部恭一 ,   石川斉 ,   広畑和志

ページ範囲:P.957 - P.962

 ファベラは腓腹筋外側頭に存在する種子骨であり,本邦でもYano21),大井11),Kojima8)らによる解剖学的調査の報告が古くよりみられる.しかし一般には,その臨床的意義は小さいと考えられており,臨床上問題となることはまれである.1977年Weinerら20)はファベラにおける鋭い疼痛,限局した圧痛,膝伸展時痛の3症状がみられる症例をファベラ症候群として報告した.
 我々も最近ファベラが膝部痛の原因となったと考えられ,彼らのいうファベラ症候群と思われる症例を経験したので,その臨床症状ならびに病態などにつき検討を加え報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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