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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科18巻1号

1983年01月発行

雑誌目次

巻頭言

第56回日本整形外科学会を開催するにあたって

著者: 森益太

ページ範囲:P.1 - P.2

 昭和57年3月30日から第56回日本整形外科学会会長の任務を向う1年間勤めさせて頂くこととなり,学術集会を58年4月11日〜13日の3日間を期して,京都市左京区宝池,国立京都国際会館にて,第21回日本医学会総会整形外科分科会として開催すべく計画をすすめております.この準備は,約1年有余ばかり前,予め副会長に就任した時点からスタートしたため,どうにか恙なくその道のりをたどっています.本学会は会員1万人を超えんとする大学術団体に成長せんと致していますが,内科学会や外科学会に比べると会員数はなお少なく細分化傾向も現時点では研究会単位のものが大部分にとどまり,独立した学会として分離したものは殆んどない現状なので,規模内容共に本邦で最も充実した権威ある学会の一つとして,設立以来58年の歴史と伝統にふさわしい意義ある学術集会を開催し,且つ無事にこれを終了する事を念願致しています.
 本会は第21回日本医学会総会に引き続いての3日間の学術集会として開催されるのでありますが,前回の大阪での医学会総会分科会としての整形外科学会は15年前,有原康次先生が大阪で,それに遡って大阪での整形外科学会総会(学術集会)は水野祥太郎先生が,更に遡って清水源一郎先生が主催されました.

視座

認定医制度発足に望む

著者: 上村正吉

ページ範囲:P.3 - P.3

 昨年の第55回日本整形外科学会総会で長年懸案となっていた日整会認定医制度とその規約も承認されて,中央ならびに地区資格認定委員会も活動を開始した.第1回の認定では経過措置による認定医が今年3月の理事会で決定され,また同時に研修施設の認定も行って今後の研修医の研修に空白を作らないように配慮されている.誠に時宜をえた計画と敬意を表するものである.ところでこの制度が発案されて今日に至るまでには紆余曲折があったことは日整会員で知らぬ者はないはずである.従ってこの制度の創設の是非は既に多く論ぜられての総会議決であるのでここで論ずるつもりはない.しかしいよいよ認定医が決定し認定医制度が歩み始めると,また多くの問題が浮上してくるであろう危惧はなしといえない.その二,三について触れてみる.
 この制度の目的は整形外科の進歩に即応して整形外科医の学識ならびに技術の向上を図り整形外科医療の向上に資しもって人類福祉に貢献するとある.認定医となられる方々は恐らくこの目的に向って努力されるであろう.そうなると認定医の社会的評価は高まるであろうが,現今の評価はすべて金という世の中である.

論述

悪性軟部腫瘍の術後照射について

著者: 姥山勇二 ,   後藤守 ,   山脇慎也 ,   井須和男 ,   桜井智康 ,   晴山雅人 ,   西尾正道 ,   酒匂健

ページ範囲:P.4 - P.11

はじめに
 悪性軟部腫瘍の治療にあたって留意しなければならないことのひとつに,局所再発の防止がある1).外科的治療においては,腫瘍の周囲健常組織を含めて腫瘍を除去する広範囲切除術が,局所再発の防止や四肢の温存の面からも好ましい術式である1,9,12).しかし現実には,主要血管,神経などの関係から広範囲に切除ができない場合もしばしば経験する.広範切除ができず,局所再発が懸念される手術例に対し我々は,術後に放射線治療を行い再発の予防を行った4).今回我々が行っている悪性軟部腫瘍の術後照射について,その結果ならびに問題点について報告する.

Compartment syndromeの早期診断と治療における筋内圧測定の有用性

著者: 飯塚正 ,   田中弘美 ,   土居通泰 ,   黒沢尚 ,   菅原暁 ,   高取吉雄 ,   夏山元伸

ページ範囲:P.13 - P.18

緒言
 Volkmannが100年ほど前に上・下肢の阻血性拘縮について報告12,13)して以来,その誘因・原因・診断および治療について多くの報告がある2).その病態生理に関してもいくつもの説があるが,現在のところ,閉鎖された空間の内圧亢進状態が持続することにより,筋や神経組織が阻血性壊死に到った結果と考えられている.この内圧亢進状態を英米では主にCompartment syndromeと称していることは周知の通りである3)
 このCompartment syndromeは種々の原因によって起こり得ること,およびその病態生理を知っていることは私達臨床家にとって大切なことだが,最も重要なことは確実で客観的な診断方法により,時期を逸せず早期に除圧術を施行し未然に悲惨な結果を防止する事である.

Infrapatellar Extensor ApparatusのAntero-proximal Advancementによる膝関節授動術について

著者: 冨士川恭輔 ,   伊勢亀冨士朗 ,   三倉勇閲 ,   松林経世

ページ範囲:P.19 - P.28

はじめに
 大腿骨骨折や膝関節周辺骨折および長期間の膝関節の固定が惹起する膝関節拘縮例は,原疾患に対する手術法や内固定子の改善と進歩により減少したとはいえ,なお後療法に極めて抵抗する重度膝関節拘縮例がしばしばある.このような例に対しては,従来から固有関節腔と大腿四頭筋を中心としたsuprapatellar extensor apparatusのreleaseまたは延長を主体とした関節授動術が行われている.しかし,重度の拘縮をきたした膝関節では,時に膝蓋骨が著明に低位を呈することがある.このような例に対して,従来のsuprapatellar extensor apparatusおよび固有関節腔の処置のみで授動操作を行うと,獲得した可動域に比例して膝蓋骨は著しく下垂し,その結果,大腿膝蓋関節のcongruityの破綻とcontact stressの増大などがおこりやすい.また,大腿四頭筋腱の延長の結果,膝蓋骨下極が脛骨前上縁に接触し,これが膝関節の運動性の新たな障害となっている例をみることも少なくない.

筋性斜頸手術結果の分析

著者: 長嶋哲夫 ,   石田勝正 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.29 - P.35

はじめに
 筋性斜頸は自然治癒する率の高い疾患である.その上,最近では篠田12,13,14),笠井9)らによる徒手筋切り術の普及により観血的手術を必要とする症例は減少してきている.しかし,今日でもなお手術を必要とする症例に遭遇することが少なくない.その場合,手術の目的は斜頸位という異常姿勢と頭部の運動制限をなくし再発させないことにある.術後成績の評価には,筋レリーフの消失が一つの目安とされているが,頸部の状態特に胸鎖乳突筋の残存形態には種々の形が見られる.そこで,われわれは当教室において行われた手術の治療成績を胸鎖乳突筋の残存形態に重点をおいて調査し,ここに筋レリーフの形成について屍体解剖学的考察を加えた.

頸部脊柱管狭窄症のX線学的検討—椎体扁平化を中心として

著者: 持田譲治 ,   平林洌 ,   里見和彦

ページ範囲:P.37 - P.45

はじめに
 頸部脊柱管の固有の前後径が,頸部脊髄症発症の静的因子として重要な役割を持つ事はすでに多数報告され,検討されている.
 われわれもX線所見による形態的特徴について検討してきたが,その中で若年期に発症し急激な四肢麻痺を呈した頸部脊柱管狭窄の4症例についてはすでに本誌に報告した6)

膝関節前十字靱帯損傷の臨床的診断法について

著者: 史野根生 ,   倉田陽一 ,   川崎崇雄 ,   広瀬一史 ,   井上雅裕 ,   後藤一平 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.47 - P.51

はじめに
 膝関節の前十字靱帯は,近年,回旋不安定性(rotatory instability)の重大さが認識されるに及んで,その機能が重視されるようになり,前十字靱帯損傷に対する修復術や再建術が盛んに行われるようになった.
 しかしながら,治療の点はともかく,診断面で,古典的な前方引き出し徴候と前十字靱帯のintegrityが必ずしも相関せず,本徴候のみで前十字靱帯損傷の診断を行うことは,少なからず無理がある.一方,関節造影や関節鏡では手技が煩雑で侵襲が大である点を容認するとしても,描写力や視野に限界があるだけでなく,しばしばその緊張(即ち,機能を有しているか否か)を把握するのに困難を感ずることが多い.

手術手技シリーズ 脊椎の手術・11

上位頸椎後方固定術の手術手技

著者: 菅野卓郎

ページ範囲:P.52 - P.62

はじめに
 上位頸椎の先天性奇形や外傷,またリウマチをはじめとする炎症性疾患などの病変が臨床的に重大な障害をもたらすことはよく知られている.それらに対して,後頭骨から環軸関節部に行われる固定術がしばしばきわめて有効な治療手段となる.上位頸椎の固定術には大別して後方侵入法と前方経口侵入法とがあり,それぞれの症例に応じてこれらのいずれかが選択されることになる.また同じ後方固定術においてもいくつかの方法があるが,それらのほとんどがワイヤー締結,骨移植,あるいはそれらの併用によるものである.今回は私自身が平素行っている環軸関節後方固定術と後頭骨上位頸椎固定術についてその手術手技の要点をのべることにする.

整形外科を育てた人達 第1回

Ambroise Paré(1510-1590)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.64 - P.67

はじめに
 整形外科学を今日の状態にまで育ててきた人は決して少なくない.又,整形外科と言う言葉は,Nicolas Andry(1658-1742)が1741年に「L' Orthopedia」を著した時に始まるのであるが,それまでは今日で言う整形外科治療を全く行っていなかったのではない.むしろ昔の外科は主として四肢の外傷・疾患を取扱ってきたのである.換言すると,整形外科医療はAndry以前からあったと考えるべきである.此処で思い出すのは次の話である.大正10年頃,東大の田代義徳教授が九大の住田正雄教授に,日本整形外科学会を結成したいと相談に来られたが,その時住田教授は,外科は昔から主として四肢の外傷,疾患を取扱ってきたが,最近の外科は内臓外科に重点が移ったので四肢の外科を軽視する傾向もあるため我我こそ外科の伝統を守り,外科学会の指導力を強めるべきで新しい学会の必要はない,むしろ内臓外科の研究者が内臓外科学会を結成して外科学会から出て行くべきと言われ,田代教授の提案を拒否せられたと聞いている.

検査法

脊柱側彎(肋骨隆起)の測定法の比較検討

著者: 見松健太郎 ,   笠井勉 ,   下村勉 ,   渡辺敏枝 ,   湯口真弓 ,   村地俊二

ページ範囲:P.69 - P.74

はじめに
 文部省通達9)により学校検診に脊柱側彎症が重視されるようになってから,各地から種々の検診方式や,それに関連した検査機器が提唱されている.背面高差計10,13),角度計12,13),モアレカメラ11),シルエッター5),低線量X線撮影装置11),レーザートルソグラフィ4)などがそれである.これらの機器はそれぞれの地域で利用され報告されているが,機器間の相互関係を調べた文献はさがし得なかった.学校検診における現場の利用者にとっては,どの機器を選択したら良いか迷うところであり,また我々にとっても比較できる参考資料が必要なことがある.そこでこれらのうち,入手できた数種の測定機器を用いて,同一症例の同一部位を測定し,その測定値を比較検討した.

Lumbar approachによる頸椎部Amipaque myelography

著者: 瀬上正仁 ,   国分正一 ,   石井祐信

ページ範囲:P.75 - P.83

はじめに
 従来,頸椎部myelographyの造影剤として,油性のMyodil(iophendylate)が広く用いられていた.他方,1971年にデンマークで開発された新しい水溶性造影剤Amipaque(metrizamide)の臨床応用が,その後,北欧を中心として精力的に行われていた.昭和56年1月に,そのAmipaqueが,わが国においても販売されることになった.
 ところが,以前より癒着性クモ膜炎をめぐる医事紛争等の問題を抱えていたMyodilの販売元は,そのAmipaqueの販売開始を機に,Myodilの販売を中止してしまった.その結果,第一線の整形外科医は,長年慣れ親しんできたMyodilからAmipaqueへの転換を余儀なくされ,日常の診療に少なからぬ混乱が生じている.最近の雑誌「整形外科」(32巻8号,13号)に掲載された,「老兵は消えるのみ……か?」,「Myodilがなくてお困りの方へ」(診療余卓欄)の記事は,そうした事情を物語っていると言えよう.

臨床経験

Factitious Lymphedemaの1例—作為的な右上肢リンパ浮腫

著者: 中原治彦 ,   露口雄一 ,   河井秀夫 ,   多田浩一

ページ範囲:P.85 - P.88

 Lymphedemaにはその原因として,①Milroy's disease等congenitalなもの,②venous obstruction,③post operation or radiation,④filariasis等のparacytic diseaseなどがあるが,最近我々は,"factitious"すなわち作為的な上肢絞扼により生じたと思われるリンパ浮腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

Carbon fibreを用いた陳旧性前十字靱帯損傷再建術の経験

著者: 木村友厚 ,   新名正由 ,   下村裕 ,   鶴純明

ページ範囲:P.89 - P.92

 陳旧性膝靱帯損傷の再建には,腱,靱帯などの他に,Dacron,Teflon,Silicone2,7,9)をはじめとする種々の人工材料が試みられているが,なお十分とは言えない.
 近年,Jenkinsら4,5)によってcarbon fibreによる腱,靱帯の置換が報告されて以来,carbon fibreの持つ組織親和性,靱帯再生能などが注目され,臨床応用されるに至っている.

乳児化膿性股関節炎を疑った血友病Aの1例

著者: 岩森洋 ,   安達長夫 ,   杉田孝 ,   上田一博

ページ範囲:P.93 - P.95

 血友病は血液凝固因子の欠乏による出血性疾患で,重症例では関節内に自然出血をきたすことがある.一般に,関節内出血は関節運動が活発となり,歩行を開始する満1歳前後より出現する場合が多く,乳児期での発生は稀である.また,急性関節内出血は疼痛のほか,腫脹,発赤,局所熱感などを伴うため化膿性関節炎と誤まられることがあり,特にいまだ血友病と診断されていない乳児例では,その診断は困難なものと思われる.
 私達は乳児化膿性股関節炎を疑われて入院し,採血部位からの止血が困難なことより,偶然血友病Aによる関節内出血と判明した症例を経験したので,若干の考察を加え報告する.

長管骨に病変をきたしたsarcoidosisの1症例

著者: 森修 ,   森沢佳三 ,   竹野正幸 ,   水田博志 ,   北川敏夫 ,   福山紘 ,   宮崎正方

ページ範囲:P.97 - P.100

 Sarcoidosis(以下「サ症」と略す)は,多臓器に非乾酪性類上肉芽腫を形成する疾患で,両側肺門リンパ節の腫脹,肺,皮膚,限病変をみる事が多い.しかし骨に病変をきたすものは稀であり,その中でも長管骨に病変をきたした例は本邦では未だ報告されていない.最近,我々は左脛骨,左膝蓋骨及び左尺骨に病変をきたした「サ症」の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

下腿中央部筋間に発育した稀なガングリオンの1症例

著者: 殿谷隆一 ,   遠藤哲 ,   村瀬正昭 ,   浜崎美景

ページ範囲:P.101 - P.103

 ガングリオンは日常よく遭遇する疾患の一つである.そのため受診時に診断と治療方針が直結することが少なくない.今回われわれは膝関節に発生したと考えられるガングリオンが下腿中央部の筋間に発育し,筋肉内腫瘍を思わせた稀な症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

遠位大腿二頭筋腱皮下断裂の1例

著者: 横畠由美子 ,   神保真理子 ,   櫛田和義 ,   福沢玄英

ページ範囲:P.105 - P.107

 アキレス腱をはじめとして腱の皮下断裂は日常の臨床で時に遭遇する外傷であるが,大腿二頭筋腱の皮下断裂はきわめて稀である.
 今回われわれは,介達外力により生じた遠位大腿二頭筋腱皮下断裂の1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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