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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科18巻11号

1983年10月発行

雑誌目次

視座

助手について

著者: 泉田重雄

ページ範囲:P.1019 - P.1019

 ここで助手と言うのは手術の助手のことである.昔,外科・整形外科未分化時代,整形外科の手術の時,熟練した外科医に助手をしてもらうより,未熟でも整形外科医に助手をしてもらう方が手術がしやすいと感じたことが屡々あった.手業では外科医の方が遙に勝る筈なのに,こんな風に感じたのは心構えの問題であったであろう.
 岩原寅猪慶大名誉教授は御存知の通り,日本の脊椎・脊髄外科の開拓者の一人である.私は幸にして,先生の助手を随分務めさせていただいた.ゴツイ,大きな手で,円鑿鉗子を持って,aerotomを愛用される現世代の方には想像もつかぬ程素早く,手際よく椎弓切除をされたのが今でも目に浮かぶ.そんな時に折にふれて考えた助手の任務・心構えについて述べてみたい.

論述

膝蓋骨亜脱臼症候群—CT像による膝蓋・大腿関節の検討

著者: 八木知徳 ,   佐々木鉄人 ,   須々田幸一 ,   門司順一

ページ範囲:P.1020 - P.1029

はじめに
 膝蓋骨が亜脱臼位にあるため膝蓋・大腿(patellofemoral:PF)関節痛が生じたと思われる若年患者の一群がある.片岡10)のいう膝蓋骨不安定症や,再発性または習慣性脱臼,Trillat21)のいう膝蓋骨亜脱臼症候群の症例で,通常膝蓋骨は軽度外側へ偏位しており,X線軸射像で膝蓋骨の亜脱臼が明らかになる.
 習慣性膝蓋骨脱臼の分類に関しては定説がなく,膝蓋骨が外側転位のみを示す,いわゆる亜脱臼の診断は容易ではなかった.しかし最近福林4)はX線軸射像(skyline view)で,小林12)は二重造影X線像で容易に膝蓋骨亜脱臼が診断できることを報告し,診断法はじめその病態や概念がようやく明らかになりつつある.また従来思春期児童の膝関節痛で原因不明とされてきたものの中に,本疾患も含まれていると考えられる.特に本疾患と膝蓋軟骨軟化病の関連については最近注目を集めており,興味深い問題である.

上腕骨外上顆炎の検討

著者: 西島雄一郎 ,   山崎安朗 ,   東田紀彦

ページ範囲:P.1031 - P.1036

はじめに
 上腕骨外上顆炎は,日常よく遭遇する疾患であるが,その病態については,いまだ正確には把握されておらず,種々論議されている4,5,8,11,15).したがって,その治療法も,画一的でなく,保存的治療として,安静に加えて,圧痛点へのステロイド局注,各種塗布,貼布剤の使用,筋力強化療法,温熱療法等があり,手術療法として,外側上顆筋起始部切離術14,16),短橈側手根伸筋切除術11),神経剥離術等8,15),種々の術式が提唱されている.一般的に,本疾患に対しては,圧痛点へのステロイド剤局注により,おおかたの症例は改善するが,数回の注射で改善しない症例も多数あり,これらの症例には,手術的療法が必要となろう.
 われわれは,上腕骨外上顆炎の病態を把握するため,経験した症例の集計的観察を行い,ステロイド局注治療を行った症例に対して,アンケート調査により,ステロイド治療の効果を検討し,更に,最近行っているNirschl11)法について述べる.

シンポジウム 四肢軟部腫瘍

軟部腫瘍の診断—特に術前診断上の血管造影,CTの価値について

著者: 中馬広一 ,   篠原典夫 ,   増田祥男

ページ範囲:P.1037 - P.1045

はじめに
 軟部腫瘍は,安易にmarginal incision,open biopsyが行われやすく,再発または悪性の診断で急いで追加広範切除を施行する場合が多い.しかし,治療成績の向上のためには,注意深い症例の検討及び治療計画を立てて,安易な摘出,生検を避けることが重要である.現在の放射線診断機器では,組織診断まではとても望めないが,補助的診断法として治療計画を立案する上で大きな位置をしめていると考えられる.今回は,主に血管造影法とcomputed tomographyの所見を整理し,その有効性と限界について検討した.

四肢悪性軟部腫瘍の治療成績—滑膜肉腫14症例の治療経験

著者: 保高英二 ,   高田典彦 ,   梅田透

ページ範囲:P.1047 - P.1055

はじめに
 悪性軟部腫瘍はその特徴として発生頻度が低いこと,組織型が多彩でありさらに組織亜型も含めて治療を考えねばならぬこと,発生部位が全身にわたり他科の専門分野で治療されることも多いことなどがあり,なかなか統一した適切なる治療法が確立されていない.
 悪性軟部腫瘍の治療法については局所の制圧と遠隔転移の予防が重要である.局所の制圧,局所再発の予防という意味ではとりわけ外科的治療が最も重要な治療のポイントであり,広範切除術が第1の選択となることが多い.しかしながら,広範切除術そのものの概念が諸家によって異なり現在のところ完全なる統一した見解が得られていない.

軟部悪性腫瘍の治療成績—特に制癌剤化学療法と手術併用の意義について

著者: 武内章二 ,   赤星義彦 ,   今井秀治 ,   葛西千秋 ,   西本裕

ページ範囲:P.1057 - P.1066

はじめに
 近年,軟部悪性腫瘍に対する診断,治療の研究は著しく進み,その治療成績も向上してきた.しかし軟部悪性腫瘍は同一組織型であっても,局所腫瘍の大きさや浸潤度により,予後は著しく異なる.特に安易な姑息的手術により,遠隔転移あるいは局所再発を来たし,二次的切断術を行うなど,その機能的損失も極めて大きい.
 治療成績の向上をはかるためには,原発巣を完全に除去し,局所再発を防ぐと共に,肺転移をいかにして防止するかにかかっている.したがって診断と同時に初期治療からの系統的治療方針を確立することが極めて重要である.

四肢軟部悪性腫瘍の分類と予後

著者: 松本寿夫 ,   杉山修一 ,   荻原義郎 ,   鶴田登代志

ページ範囲:P.1067 - P.1073

緒言
 軟部悪性腫瘍は,発生頻度自体が低い上に発生母床が多岐にわたるため,種々の科で治療されており,また個々の症例の組織像が非常に多彩であるため,治療,予後等に関しての種々の仕事の発達は遅れていた.しかし近年ようやく多くの外科医,病理学者が一体となっての努力が実を結び,この部門での学問が推進されるようになってきた.
 今回われわれは,当教室及び関連病院にて診断され,治療された四肢軟部悪性腫瘍症例について,その予後に関し調査検討したのでその概要を報告する.

四肢軟部悪性腫瘍の予後と治療方針

著者: 石田俊武

ページ範囲:P.1075 - P.1083

まえがき
 軟部悪性腫瘍の予後は,1950〜60年代の報告に比べて5,9),近年の報告では数段よくなっている6〜8).しかし個々の症例に対する治療の具体的な方法となると,なお暗中模索な面が多い.従って予後をさらによくしようとすれば,同じ腫瘍内で,予後のよかった症例,悪かった症例を比較検討し,さらにまた軟部悪性腫瘍間でも互いに比較検討した結果から,取るべき治療方法を探すのが常道手段である.そこで,現在までに治療してきた自験例についてその予後および予後に影響を与えたと思われる因子について検討し,その結果をもとに治療方法について考察を加えた.なお軟部腫瘍のうち,特に議論の対象になりやすいのは悪性腫瘍であるので,軟部悪性腫瘍のみを検討の対象とした.

手術手技シリーズ 脊椎の手術・16

後縦靱帯骨化症および頸部脊椎症に対する前方侵襲法—亜全摘法について

著者: 平林洌 ,   里見和彦 ,   若野紘一 ,   鈴木信正

ページ範囲:P.1085 - P.1096

I.歴史
 Bailey and Badgley(1960)によれば,椎間板摘出兼前方固定術は1952年にL.C.Abbottにより初めて行われていたというが,頸部椎間板症に対する手術法として,その地位が確立されたのはSmith and Robinson(1957)とCloward(1957)以来である.
 本邦においてもこれらの手術法は,1960年代には頸椎損傷を含めて広く繁用されるようになった10,11,13,14).われわれも1962年以降これらの術式を行ってきたが4〜6),1964年にはこれらから発展して頸椎損傷に対して,損傷椎体の両側縁を残してこれをほぼ並全摘し,上下の2椎間を固定する椎体亜全摘法を行った.

境界領域

脛骨粗面前方移行術による膝蓋大腿関節の接触の変化について

著者: 中村信也 ,   福林徹 ,   村上俊

ページ範囲:P.1097 - P.1102

はじめに
 膝蓋大腿関節に由来する疼痛は膝蓋大腿痛Patellofemoral painと総称される.従来は脛骨大腿関節特に半月板に由来する疼痛に重点がおかれてきたが膝蓋大腿痛も劣らず相当数有すると思われる.Meachimは屍体膝の観察で膝蓋骨変性は10歳代よりみられ高齢者では100%近く存在し遙かに予想を上回る結果であったと報告している11).Ficatは膝蓋大腿関節特有疾患をMalalignment syndrome(膝蓋骨脱臼),Patello-femoral arthrosis(変形性関節症),Patello-femoral arthralgiaの3群に分けている.Patello-femoral arthralgiaは欧米で「膝内障」の意味合いで用いられるが特にchondromalaciaだけを指すことがある.Ficatはこの群にさらにexcessive lateral pressure syndrome(ELPS),reflex sympathetic dystrophyを加えている6).しかし膝蓋大腿関節の疾患は明確に分類できず互いに入り混っている面があり,定義は各人によって少々異なり混乱しているのが現況である.これらの疾患は全て原因不明であるが,膝蓋骨と大腿骨の関節不適合性を基因とするmechanical failure説が強い.

整形外科を育てた人達 第9回

Albert Hoffa(1859-1908)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1104 - P.1108

 Albert HoffaはStromeyerによって開発された整形外科を近代化しドイツ的整形外科の基礎を造成したと言っても過言ではあるまい.彼の指導を受けた多くの整形外科医が近代のドイツ整形外科を確立したからである.
 彼は南アフリカのKapokolonicに1859年5月31日に誕生した.父はドイツ人の医師Dr. Moritz Hoffaで,出身地はKasselである.教育は祖国で受けることになりAlbert Hoffaは7歳になってから父の郷里であるKasselの小学校に入り,この町で勉学を続け19歳で高校を卒業し,医学を学ぶ決心をしてMarburgとFreiburg大学で勉強をした.1883年に医師試験に合格してFreiburg大学のProf. Hermann Maas(1842-1886)の助手に採用された.ここで"Bleiniereについて"という鉛中毒に関する論文でDoktorとなっている.その後Maas教授がWürzburg大学に移ったのでHoffaも一緒に移った.ところが不幸にしてMaas教授は1886年に44歳の若さで急死した.その後任にProf. Karl Schönborn(1840-1906)が選ばれた.

臨床経験

腰椎麻酔後に対麻痺を生じた馬尾神経腫瘍の1症例

著者: 長谷川幸治 ,   山田順亮 ,   榊原健彦

ページ範囲:P.1109 - P.1112

 われわれは腰椎麻酔後に対麻痺を生じた馬尾神経腫瘍の1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

脊髄腫瘍の手術中にみられた悪性高熱症の1例

著者: 亀井邦孝 ,   鈴木信治 ,   遠藤誠一

ページ範囲:P.1113 - P.1116

 悪性高熱症(malignant hyperthermia,以下MHと略す)は整形外科領域の手術に際し高頻度に発症し,一旦発症すれば致命的な結果を招くことが多いといわれている.今回,私たちは,脊髄円錐部神経鞘腫の術中に典型的なMHを発症し,幸いにも救命し得た1例を経験したので報告する.

いわゆるGuyon管症候群の2症例

著者: 清水富男 ,   武部恭一

ページ範囲:P.1117 - P.1120

 上肢における尺骨神経のentrapment neuropathyとしては,肘部管症候群と尺骨神経管症候群とがあげられる.このうち低位尺骨神経麻痺をもたらす尺骨神経管症候群,いわゆるGuyon管症候群についてはその報告は少なく,また末梢神経障害としても,その頻度は低いようである.本邦および諸外国における報告例ではその原因疾患の第1位はガングリオンである.今回われわれは外傷および職業を原因として発症したと考えられる尺骨神経管症候群2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

大腿四頭筋腱に骨化を生じたjumper's kneeと思われる症例

著者: 小松満 ,   東野修治 ,   久米守 ,   原子健 ,   柿崎寛 ,   増岡昭生 ,   野呂秀司

ページ範囲:P.1121 - P.1124

 近年スボーツ医学の発展に伴いスポーツ選手の膝関節障害が注目されている.
 1973年Blazinaはスポーツ選手の膝周囲の疼痛の原因が膝蓋靱帯あるいは大腿四頭筋腱にあるものをjumper's kneeと総称し詳細に報告した.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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