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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科18巻2号

1983年02月発行

雑誌目次

視座

足持ち3年と新しい治療法

著者: 西法正

ページ範囲:P.111 - P.111

 我々の入局当時先天股脱のギプス固定が毎週何例かあった.新人は足持ち専門である.足持ち3年は当然のことでありその間に整復の仕方やギプス包帯のこつを覚えた.
 1963年から64年のことであるが,Walldiusは蝶番軸の止め金の工夫や人工膝関節実用化での苦労話をし,人工股関節はテフロンとの組み合せで苦闘していた.Charnleyは既にH. D. P.と骨セメントで成功していた頃であるが,私は寡聞にしてそれを知らなかった.Küntscherは髄内を介しての閉鎖式骨切り術器械を得意になって紹介してくれたし,Judetの天才的な手術はとても他人には真似られないと驚嘆させた.脚長差に対して長身のデンマークでは骨端癒合術が,身長の小さいスペインでは脚延長術が行われ,アメリカでは股関節も膝関節も依然cup形成術が盛んであった.各国各様であり,また教科書でしか紹介されていない手技が現存しているのにも驚かされた.それらは優劣というよりむしろ好みと伝統に培われた独自の治療法というべきものであった.

論述

単殿位と先天性筋性斜頸

著者: 鈴木茂夫 ,   山室隆夫 ,   藤田仁

ページ範囲:P.112 - P.119

はじめに
 1838年Stromeyer15)は,いくつかの症例を報告して,先天性筋性斜頸(以下,筋性斜頸)が外力の強く働いた分娩の後に発生しやすいことを指摘した.
 Fisher4)によれば,その後約50年間にわたって,Stromeyerの提唱した分娩外傷説に異論を唱える学者はいなかったという.分娩時の外力が筋性斜頸発生に関与していることを示唆する報告は,今日に至るまで絶えることがない3,5,8,11,13,17)

大腿骨遠位骨幹端に生ずる骨皮質欠損・不規則像—実態ならびに臨床的意義

著者: 杉浦勲 ,   杉山晴敏 ,   渡部健 ,   小早川雅洋 ,   石川忠也 ,   浜田敏彰

ページ範囲:P.121 - P.136

はじめに
 日常臨床において膝部のX線検査をする機会は多く,特に骨発育の旺盛な小児・学童期のX線像読影に際し,大腿骨遠位骨幹端に嚢腫様小骨透明巣や骨皮質の糜爛・不規則像をみることは稀ではない.かかるX線陰影を呈す骨病変に対する関心は1940年代より徐々にたかまって,その実態解明への努力は欧米において放射線医を主体に病理医や整形外科医などによりそれぞれの立場から続けられ,各種の名称のもとに続々と見解が示され,実態が明らかになってきたが,反面専門家として議論が偏向しがちで内容が噛み合わないまま多種多彩なsynonymとして集約される現況で,一般的には混乱傾向すら感じられる(表1).
 著者も1960年以来名大病院骨腫瘍クリニックにおいて,研究課題の一つとして積極的に症例を重ね本病変の病態解明に努力してきた.

良性軟骨芽細胞腫の電子顕微鏡的研究

著者: 三井宜夫 ,   宮内義純 ,   増原建二 ,   丸山博司 ,   江見葉子 ,   増田須美代 ,   小西陽一

ページ範囲:P.137 - P.144

はじめに
 良性軟骨芽細胞腫は若年者の長幹骨骨端部に好発する比較的稀な腫瘍であり,組織起源が明らかでないことから多くの興味がもたれている.われわれは本腫瘍の3例について電顕的に検索する機会を得たので報告するとともに,組織起源に関して若干の考察を加えた.

手掌動脈弓の臨床的意義の検討—先天奇形手と正常手の血管造影所見

著者: 加藤貞利 ,   石井清一 ,   荻野利彦 ,   森田穣 ,   篠原正裕

ページ範囲:P.145 - P.153

緒言
 上肢先天奇形の血管は,その走行や形成に異常を伴う場合が少なくない.血管造影により血管の状態を把握することは,治療に際して役立つばかりではなく,上肢先天奇形の発現様式や分類を考える上にも興味あることと思われる.さて,Singer5)は上肢の血管の発達を五段階に分けて想定し,血管の異常像の成立過程を発生学的に説明している.しかし,手掌動脈弓の形成過程に関しては詳しい分析はなされておらず,浅掌動脈弓および深掌動脈弓の異常像の臨床的意義は,まだ不明である.今回著者らは上肢先天奇形における手掌動脈弓の形態の異常を分析し外表奇形との関連性を検討した.その際,奇形を伴わない上肢の血管造影所見との比較を行った.

急性外傷性関節血腫に対する関節鏡の診断学的意義

著者: 菅井博哉 ,   加藤公 ,   尾池徹也 ,   伊藤晴夫 ,   白岡格

ページ範囲:P.155 - P.158

 急性外傷性関節血腫の病態には種々雑多のものがある.なかには重篤な機能障害を残すものがあるが,単なる血腫として治療されることがある.受傷前の関節機能を回復させるには,当初より正確な診断と治療計画をたてる必要性がある.近年DeHavenらにより早期の関節鏡の重要性が強調されており5),我々も急性外傷性関節血腫の患者に関節鏡を施行し,レ線,関節造影と比較検討し,早期の関節鏡検査の必要性を痛感した.

高位脛骨骨切り術におけるinterlocking wedge osteotomyについて

著者: 緒方公介

ページ範囲:P.159 - P.164

 内反型の変形性膝関節症においては,脛骨の膝関節における外方亜脱臼,およびそれに伴うQ-angleの増加と膝蓋・大腿関節症を認める症例が多い.このような症例には,外反骨切り術を行い荷重軸を内側より外側へ移動させると同時に,膝蓋・大腿関節のアラインメントをも矯正することが要求される.一方症例の多くは老人であることから,術後できるだけ早く日常生活へ復帰させることが重要で,そのため早期の骨癒合が得られる術式が求められる.
 著者は,これらの点を加味した術式(interlocking wedge osteotomy)を考案し,1980年以来30例以上の症例に本術式による高位脛骨骨切り術を行ってきた.本術式では,切骨部の接触面積および安定性を増大させ,また脛骨粗面の前方移動も同時に行うことができ,短期間の試みではあるが満足すべき結果が得られているので報告する.

手術手技シリーズ 脊椎の手術・12

頸肋および斜角筋症候(thoracic outlet compression syndromes)に対する手術手技

著者: 米延策雄 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.165 - P.173

はじめに
 胸郭の出口における主要神経・血管束の圧迫に伴う上肢の神経症状と血行異常とが治療対象になる.しかし元来,胸郭出口症候には曖昧な点が少なくない.手術が効を奏するためには確実な診断と患者の選択が前提となる.そのために必要なステップを今一度挙げておきたい.手術手技には特別なものはなく,慎重かつ入念にさえ行えば間違いはない.むしろ診断と患者の選択が問題である.

座談会

わが国における脊椎外科の歩み—近藤鋭矢先生を囲んで

著者: 近藤鋭矢 ,   山田憲吾 ,   山室隆夫 ,   井上駿一

ページ範囲:P.174 - P.186

 井上 私,編集子の1人として一言最初にごあいさつ申し上げます.きょうは,近藤先生,山田先生,土曜日のおくつろぎのところ,どうもありがとうございます.本日はわが国における脊椎外科の大先達で開拓者でございますところの近藤先生と山田先生を中心にして,京都学派といいますか,そういうところから見たわが国の脊椎外科の歩みについて,ただいまから座談会を開かせていただきたいと思います.
 日本の整形外科医は,ただいま9,000人を突破したようでございます.先般,脊椎外科研究会が東京でございましたが,実に七百数十名の方が集まりました.共同演者の方々まで入れますと,大体3,000人近くになります.それくらいたくさんの整形外科の方が脊椎外科を熱心に勉強しておられるわけです.又,今日の日本の脊椎外科において扱う範囲は頸椎から腰椎までのあらゆる領域で本当に研究が活発でございます.外国では他にこういった国はないように思います.本日はそういった世界に誇るべき脊椎外科を戦前,戦中そして戦後とっくり上げていただき脊椎外科一筋に歩んでこられました近藤先生を中心として,又その愛弟子でもある山田先生に進行役をお願い申上げ,文献などには出ていないような貴重なお話がこれから伺えるものと楽しみにしております.

整形外科を育てた人達 第2回

Nicolas Andry(1658-1742)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.188 - P.191

 Orthopediaの新しい言葉を作り,これを上下2冊の書物として発表した今日の整形外科の創始者はNicolas Andry(1658〜1742)である.1658年,Andryはリヨンの貧しい商人の子供として生まれた.そしてリヨンのDes Grassin学校に学び,その後同校の教師をしていたが,更に学問をしたいと考え32歳で医学研究に着手,1693年に35歳でReimes大学に入り,その後パリ大学に移り1697年には論文を提出して医師の資格をとり,1701年43歳で内科の助教授となった.更に1712年には54歳で内科の教授となり,Journal des scavansの編集員となっている.1724年,66歳の時,遂にパリ医科大学の学長に選ばれた.これまではAndryは比較的に順調な経過をとって来ている.彼は非常に積極的で遠慮なく自己の意見を述べるので,支持者も少なくなかったと思われる.しかし学長となると彼の性格は色々と批判を受けた.
 当時Andryは内科医として研究に専念して,寄生虫の研究成果も発表しているが,小児の疾患にも関心を示し,栄養にも又小児の骨格にも研究を拡げて行った.

手術手技 私のくふう

広背筋移行による肘屈筋形成術

著者: 平山隆三 ,   柴田稔 ,   梅藤千秋

ページ範囲:P.193 - P.198

はじめに
 筋腱移行による肘屈筋形成術には種々の方法があり,残存筋筋力にもよるがSteindler法あるいはSteindler 変法が第1に考慮される.しかし術後の合併症としての肘屈曲拘縮,回内拘縮の残存はさけ難い2).Schottstaedt(1955)4),Zancolli(1973)5)らによる広背筋をbipolarとして上腕に移行し肘屈筋筋力再建をはかる方法は細心な手術操作を必要とするが,術後の屈曲拘縮,回内拘縮の残存も少ない.Musculocutaneous flapとすれば,筋肉,皮膚同時欠損の機能再建にも利用できる.今回経験したmuscle flap(M flapと略す),musculocutaneous flap(M-C flapと略す)の症例を中心に主として手術手技につき詳述する.

追悼

片山良亮名誉教授

著者: 天児民和 ,   佐藤孝三 ,   室田景久

ページ範囲:P.199 - P.202

 11月13日の早朝,伊丹教授より電話があり,何事かと受話器をとったが,伊丹教授の声も沈痛で片山教授の逝去を知らせて頂いた.50年の長い間親しくして来た友人の死はしばらく茫然とした.
 片山さんは私より4年年長であるが,未だ整形外科が新しい分科として医学界に頭を突き込んで来た当時であったので,片山,岩原,三木,天児の4人は学問上では激しく討論しても私的には仲よく手を取り合って整形外科を専門分科として医学界に強固な土台を造るために努力し,私的には親しく交友して来たのである.此の団結が整形外科が分科として発展して来るのに役立ったと思っている.京都のSICOTの成功も整形外科学会の強い団結によるものと私は信じている.勿論三木教授はSICOTも見ずに早く他界してしまった.今又片山教授が去って行った.私も寂寞の情を抑えることが出来ない.

検査法

CTによる腰椎椎間板ヘルニアの診断

著者: 長谷川徹 ,   渡辺良 ,   山野慶樹 ,   川部直己 ,   野口耕司

ページ範囲:P.203 - P.210

はじめに
 Cmputed tomography(CT)は,整形外科領域においてもさまざまな臨床的応用が報告されているが,特に脊椎外科領域において本法の有用性が認められるようになっている.Williamsら10)はbulging annulusとherniated nucleus(髄核ヘルニア)との鑑別が可能であると述べており,大久保ら7)も椎間板ヘルニアのCT像に言及しているが,一般的にはCTによる腰椎椎間板ヘルニアの診断はむずかしいとされている.今回われわれは,臨床的応用が困難とされていた腰椎椎間板ヘルニアに対しCTを施行し,その診断的価値について検討を加えたので報告する.

臨床経験

脊椎に発生したOsteoid osteomaの3例

著者: 宮崎憲太郎 ,   富田勝郎 ,   千葉英史

ページ範囲:P.211 - P.215

 Osteoid osteomaは下肢長管骨に好発し,脊椎の発生は比較的稀であるが,本邦でも時々報告がある.今回我我は脊椎に発生したosteoid osteomaと思われる3症例を経験したので,脊椎発生例の臨床的特徴を中心に報告する.

Periosteal benign osteoblastomaの1例

著者: 山口栄 ,   岩瀬育男 ,   柳沢正信 ,   高橋功 ,   渡辺真 ,   井上和郎

ページ範囲:P.217 - P.220

 Benign osteoblastomaは,比較的まれな骨腫瘍であるが,なかでもperiosteumに発生する例は極めてめずらしく,本邦において未だ詳細な報告を見ない.今回,我我はperiosteal typeのbenign osteoblastomaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

腫瘍類似の下腹部腫瘤をきたした放線菌症の1例

著者: 林泰一 ,   上尾豊二 ,   山室隆夫

ページ範囲:P.221 - P.224

 放線菌症は全身の内臓臓器あるいは皮膚に硬塊,膿瘍と瘻孔を形成する疾患であるが,特殊な硬結を生じることで特異とされている.私達は9ヵ月間にわたって右鼠径部から下腹部にかけて硬結腫瘤を生じ,手術にて放線菌症と診断し,完治せしめた症例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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