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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科18巻3号

1983年03月発行

雑誌目次

視座

整形外科医とリハビリテーション

著者: 中村裕

ページ範囲:P.227 - P.227

 国の施策である一県一医大構想が実現し,急速に医師の数が増えつつある.やがてくる医師過剰時代について関係者の間で真剣にとりざたされるようになってきた.民衆が自らの判断でよりよい医師を選択できる時代になった.私共整形外科医もぼんやりできない時代が遠からずくる.
 さて,我々四肢を主として取り扱う医師にとって,リハビリテーション(以下リハビリと略す)の概念と自分に関係のある分野のリハビリ技術の必修は絶対必要である.約20年前,九大天児民和名誉教授の命をうけ,リハビリ医学会を創設すべくその準備に努力した.当初は多くの整形外科関係者によりスタートしたが,現在,整形外科医で日本リハビリ医学会の会員でない人が多いのは悲しいことである.我々日本整形外科学会もやっと昭利57年第55回の総会で認定医制度の発足を決め,昭利58年春より発足する.一足先に昭和56年より日本リハビリ医学会により64名の専門医ならびに認定医が決められた.両学会共に専門医制度がスタートしたことは誠に喜ばしい限りである.

論述

双生児の特発生側彎症に関する検討

著者: 小熊忠教 ,   金田清志 ,   越前谷達紀

ページ範囲:P.228 - P.235

はじめに
 特発性側彎症の病因は未だ不明である.しかし,近年,Wynne-Davies26),Riseborough21),Cowell2),Plais20),De George4),Filho7),船津10)らによる特発性側彎症の疫学調査によって,本症では家系内発生頻度の高いことが明らかとなった.一方,人間に対する遺伝と環境の影響を知るための有用な一方法として,従来,一卵件と二卵性双生児を比較する研究が多方面で行われてきた.特発性側彎症の双生児研究は,1875年にGalton12)が初めて報告して以来,多数の報告がある1,5,6,8,11,13,19,20,22).しかし,これらの報告中,卵性鑑別が血液型判定により正確になされたのは,Fisher8),Gaertner11),Roaf22)の3報告にすぎない.さらに一歩譲って卵性鑑別が正確であると仮定しても,Gaertner, Roafを含め,ほとんどの報告は,一卵件双生児の症例報告である.したがって,これら文献から双生児例を拾い集めて検討しようとすると,一般集団に比較して,一卵性双生児の占める割合が二卵性双生児に比べて著しく高くなり,しかも,類似した双生児のみが集められることになる.その結果,一卵性双生児と二卵性双生児の比較検討にさいし,正確性を欠いてしまう.

骨・軟部腫瘍におけるCT

著者: 磯辺靖 ,   川口智義 ,   和田成仁 ,   松本誠一 ,   真鍋淳 ,   金田浩一 ,   古屋光太郎 ,   網野勝久

ページ範囲:P.237 - P.246

はじめに
 近年,骨軟部腫瘍の診断と治療において,CT検査が応用される機会が多くなっている.しかしこの領域でのCT検査の診断能力とその限界とについては必ずしも充分な検討がなされているとはいえない.今回我々は自験症例のCT所見を検討し,骨軟部腫瘍診療におけるCT検査の有用性と限界を評価した.

人工膝関節脛骨部品固定法の力学的検討—セメント充満固定法について

著者: 星野明穂 ,   奥村信二 ,   森田定雄 ,   相川孝訓 ,   古屋光太郎 ,   山本晴康

ページ範囲:P.247 - P.254

 人工膝関節手術は近年多くの改良がなされてきているが,その適応,デザイン,固定法等にまだ問題を残している.なかでも脛骨部品のlooseningは懸念される問題のひとつであるが,いまだに有効な解決法を見出し得ないのが現状である.われわれも各種の人工膝関節を経験し現在ではKinematic型を用いて手術を行っているが,脛骨部品を固定する関節面下の海綿骨は極めて脆弱なことが手術時に多く認められる.現在のsemi-constrained型人工膝関節脛骨部品の多くは脛骨骨及質のみではなく,一部は海綿骨で荷重伝達されるデザインをとっているが,はたしてこのような脆弱な海綿骨にセメント固定しても十分な固定強度が得られるであろうか.そこでわれわれは脛骨骨髄腔内の海綿骨を除去しセメントで充満する固定法を考案し,その固定法と従来の固定法を比較検討するため強度試験を行い脛骨部品固定法の問題点に検討を加えるとともにその臨床応用について報告する.

巨指症—治療と経過について

著者: 露口雄一 ,   米延策雄 ,   河井秀夫 ,   川端秀彦 ,   多田浩一

ページ範囲:P.255 - P.262

はじめに
 手・足のmacrodactylyは非常に稀な病態であり,文献的には約300例が報告されているにすぎない.また,その原因や神経との関連性についても不明であり,治療法も種々報告されているが最終的には切断される例も多い.
 われわれも過去20年間に22例のmacrodactylyを経験したが,今回,手術治療を行った例を中心に報仕し,macrodactylyの経過,治療について検討した.

症例検討会 骨・軟部腫瘍11例

症例1—腹壁軟部腫瘍の1例

著者: 堤啓 ,   川端健二 ,   森芳茂 ,   三村六郎 ,   土井謙司 ,   佐々木義信

ページ範囲:P.263 - P.265

 患者:51歳,男性
 病歴:作業中にドラム罐が下腹部にあたり,20日後に自発痛,圧痛のある腫瘤が同部に発生しているのに気付いた,半年後の昭和56年10月当科を受診し,10月30日手術を受けた.手術前後の諸検査では下腹壁の腫瘤以外に異常所見を認めなかった.

症例2—背部軟部腫瘍

著者: 板橋正幸 ,   廣田映五 ,   山道昇 ,   福間久俊 ,   別府保男 ,   西川耕平

ページ範囲:P.265 - P.268

 症例は,43歳,男性,1980年暮れ,左上背部腫脹と疼痛に気付き,1981年8月某院にて切除術を受けた.当時手術所見では,腫瘍は7cm大一部偽被膜を有し,皮下組織からは剥離容易,深部は僧帽筋筋膜と癒着していたとの事である.その組織診では悪性腫瘍,線維肉腫疑いとされた.術後放射線治療を施行したが,2ヵ月後,腫瘍は局所再発,1982年2月当院にて再腫瘍切除術を行った.

症例3—右上腕軟部腫瘍

著者: 中島伸夫 ,   五島岸子 ,   築舘一男 ,   竹内純 ,   中村隆昭 ,   柴田義盛 ,   前田秀明 ,   鈴木章八 ,   長嶋誠 ,   下村尚一

ページ範囲:P.268 - P.270

 症例:83歳男性,19歳のとき列車事故のため左大腿切断をうける.家族歴には特記すべきものはない.
 1981年6月初旬,右肘部皮下の腫瘤に気付き海南病院を受診する.6月下旬,腫瘤の部分切除をうけた.腫瘍は真皮深層を占め,大きさ2×2cmの結節状であった.8月5日,残りの腫瘍が全摘出された.5×4×3cmの軟部組織を占める灰白色髄様,境界明瞭,易出血性の腫瘍であった.組織学的には悪性リンパ腫が疑われた.11月初旬,橈骨神経麻痺をきたした.また同時期に再発した腫瘍を切除した.12月初旬,右上腕筋群を浸潤し右橈骨神経をとり囲む小児手拳大の再発腫瘍を切除した.12月下旬,右腋窩部の皮下あるいはリンパ節に再発した腫瘍に対して5回目の手術を行った.1982年1月初旬,右腋窩部の腫瘍は大人手拳大となり,1月下旬よりオンコビン2mg,エンドキサン500mg,プレドニン30mgを投与し,4クールにて腫瘍は消褪した.しかし4月中旬,右肘部および上腕の皮膚,皮下組織,右腋窩に腫瘍が再発し6回目の手術を行ったのち前回と同様の化学療法によって腫瘍は認められなくなった.

症例4—12年間の経過を示した左手関節腫瘍

著者: 森本一男 ,   吉岡裕樹 ,   岡田聡 ,   三村恵子

ページ範囲:P.271 - P.273

 症例:68歳,主婦.病歴:12年前頃より左手関節背側の腫脹と疼痛があり,7年前に受診するも骨に異常なしと言われて放置していた.4年前頃から症状が増強し,X線で骨の破壊を認め,53年8月末に当科に紹介された.入院時,左手関節に腫脹,軽度熱感,運動制限等を認めた.全身状態良好で,軽度血沈亢進の他に検査所見に異常はない.X線で左手根骨及び中手骨に多発性の骨吸収像と周辺部の骨増殖及び硬化がみられた.悪性腫瘍を考え生検を施行した.生検時,弾性硬で黄色調の腫瘍組織が,皮下組織から骨にまでびまん性に浸潤し,周囲組織との境界は不明瞭であった.組織像でMFH等の可能性が考えられたが最終診断には至らなかった.
 いずれにしても悪性腫瘍であり,患者の意向で抗癌剤投与にて経過観察していたが,次第に局所症状が増強し,56年9月,切断を目的に再入院した.再入院時の局所所見は腫脹が著明で,手関節と手指の運動は殆んど障害され,X線像での骨の破壊が更に進行していた(図1).一般臨床検査では白血球軽度増多の他に異常はなかった.前腕中央部で切断術を施行したが,現在まで局所再発や転移はなく,経過良好である.

症例5—右大腿軟部悪性腫瘍

著者: 津田暢夫 ,   田中宏和 ,   小西宏昭 ,   岩崎勝郎 ,   鈴木良平

ページ範囲:P.273 - P.275

 患者:70歳,男
 病歴:昭和55年5月,右下腿の疼痛とシビレ感を訴え,11月には下腿以下の麻痺を生じた.翌年10月,腫瘤が徐々に増大してきたので長崎大整形外科を受診した.初診時,右大腿後方は腫脹し深部に12×20cm大,弾性硬,境界不明瞭な分葉状腫瘤を触知した.術前の血管造影では腫瘤に一致して新生血管の増生がみられ,血管の蛇行・圧排・途絶像やtumor stainなど悪性を思わす所見がみられた(図5-1).10月下旬,軟部悪性腫瘍として腫瘍を摘出し,再発防止の目的で局所に5,000rad術後照射し,全身的に抗癌剤を投与した.現在,術後約9カ月経過したが局所再発や転移はみられない.また,転移性腫瘍の疑いもあるので原発巣の検索を行ったが現在まで発見されていない.

症例6—胸骨骨腫瘍

著者: 真鍋淳 ,   川口智義 ,   和田成仁 ,   磯辺靖 ,   北川知行 ,   町並陸生 ,   古屋光太郎 ,   網野勝久 ,   池内宏 ,   前田義博

ページ範囲:P.276 - P.278

 症例:34歳,男性,郵便局員
 現病歴:昭和50年頃,胸骨部にギクッとする痛みが出現したが,3〜4日で軽快した.昭和53年頃,胸骨の膨隆を同僚に指摘された.その頃より時々,胸骨の痛みを生じるようになったが,湿布にて軽快していた.昭和56年5月,近医を受診し,レントゲンにて胸骨の異常を指摘され,6月に東京逓信病院を受診した.同院外来にて経過観察の後,精査の目的で12月に入院したが,12月17日,骨腫瘍の疑いにて当科へ紹介された.

症例7—肋骨腫瘍

著者: 高木正之 ,   高桑俊之 ,   牛込新一郎 ,   田中潔 ,   吉山武寿 ,   茆原博志 ,   渡辺昭彦 ,   佐藤豊 ,   中田幸之介 ,   長田博昭

ページ範囲:P.278 - P.280

 症例:13歳,女性
 主訴:左背部痛
 病歴:昭和55年6月,左背部痛が出現した.昭和56年2月,同部に腫瘤を触知したため,当院整形外科を受診した.血液生化学検査では特に異常所見はなかったが,X線像(図7-1)で左第10肋骨の骨融解性の破壊像と,第9肋骨下縁の圧迫,侵食像及び軟部腫瘤陰影がみられた.同年3月,open biopsy(図7-2)で小型円形細胞からなる腫瘤で,豊富なglycogenを有し,鍍銀像で蜂巣様構造がみられた.年齢,レ線像,組織像からEwing sarcomaと診断され,放射線療法を開始したが,6,000radにても著効を示さないため切除にふみきった.手術は左第9,10肋骨と胸椎9,10左横突起を含めた胸壁切除を施行した.手術後1年3ヵ月経過した現在,患者は再発のきざしなく健在である.

症例8—左鎖骨腫瘍

著者: 千木良正機 ,   矢端信義 ,   宇田川英一 ,   坂田則行 ,   町並陸生

ページ範囲:P.281 - P.283

 症例は10歳男性.昭和56年2月に左鎖骨部を打撲し疼痛および腫脹が出現した.マッサージ等を受けていたが悪化傾向を認めたため近医を受診し,数回の穿刺にて血液が採取されたため当科を紹介された.初診時臨床所見では左鎖骨部に5.0×7.5cmの腫瘤を触れ,皮膚はわずかに茶色味を帯び,静脈怒張もみられた.硬度は弾性軟で鎖骨との可動性は認められなかった.又表面は比較的平滑で周囲との境界も明白であり波動様の抵抗を触れた.左鎖骨上窩は触知不能であるがリンパ節腫大は認めない.血沈値の亢進,CRP陽性およびAl-Pの軽度亢進が認められた.単純X線にて鎖骨骨折と著明な仮骨形成を証明し,病的骨折又は穿刺による骨髄炎を疑った.入院安静および抗生物質投与によって症状の軽快がみられないため4月13日に試験切除を行い,左鎖骨原発と思われる灰白色充実性で比較的軟らかな腫瘍を確認した.腫瘍割面は灰白色で所々に毛細血管と思われる赤色点が混在しており,軟らかく細胞に富んでいると考えられた.その後行った67Gaスキャンでは病巣部への取り込みはあるものの他部位への集積は確認できなかった.以後Adriamycinを中心とした化学療法および放射線療法を行ったが,皮下転移結節の形成および肺転移形成を認め10月7日に死亡した.

症例9—幼児右環指骨腫瘍

著者: 安藤正 ,   高橋定雄 ,   高見博 ,   櫛田和義 ,   加藤明 ,   粟山節郎 ,   渡辺正紀 ,   黄川昭雄 ,   橋本敬祐 ,   福島弘毅

ページ範囲:P.283 - P.286

 患者:3歳,女児
 2歳4ヵ月頃,感冒症状を前駆に右環指が腫れ近医受診.その後数回,同部の腫脹と消退を繰返し,昭和54年2月12日当科を初診した.右環指は軽度腫脹し,発赤,熱感,疹痛,運動制限はなかった(図9-1a).X線所見は基節骨に不規則な骨硬化像と橈側の骨膜反応,骨皮質の一部破壊がみられた(図9-1b).54年5月18日,open biopsyを施行した,皮下組織には著変なく,骨膜下に白色不透明なやわらかい組織がみられ,骨皮質を一部破り骨髄腔にも充満していた.炎症,腫瘍を疑ったが,組織診断が確定しないまま来院しなくなり,2年間蓮見ワクチン療法を行っていた.
 56年5月初旬,急に環指が腫れ再び来院.右環指は著明に腫脹し,赤褐色,弾性軟で,軽度の発赤,熱感,疼痛があった(図9-2a).

症例10—骨腫瘍

著者: 前田昌穂 ,   水野耕作 ,   広畑和志 ,   岡田聡

ページ範囲:P.286 - P.289

 患者:28歳男性
 主訴:右大腿遠位部の鈍痛

症例11—多発性骨腫瘍

著者: 須田昭男 ,   渡辺好博 ,   高橋信英 ,   朝比奈一三 ,   高橋知香子 ,   笠島武

ページ範囲:P.289 - P.293

 患者:64歳,女性
 主訴:左股関節痛および腰痛

整形外科を育てた人達 第3回

Georg Friedrich Louis Stromeyer(1804-1876)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.294 - P.297

 AndryがL'orthopediaを出版して欧州の医学会に新しい風が流れた.Andryは元来内科医で専ら保存的療法にて治療しようとしたが,軽い変形は治るものもあるが,重度の変形は簡単には保存的療法では治らないものが多い.これを外科的に手術をして矯正しようとしても,手術創が化膿して重い症状を呈することも少なくなかった.19世紀の初めにJacques-Mathien Delpech(1777-1832)はOrthomorphieと称してOrthopediaと同じ考えで変形の予防と治療を行っていたが,手術をしないでは矯正できない変形が多いので,内反足に対してアヒレス腱を切断して矯正していたが,皮切をすると化膿は避けられず生命の危険も生ずることもあり,Delpechは手術に失敗した患者から射殺せられている.又内反足でも高度の変形で歩行も障害せられているものは切断をして義肢で歩行していた人もいた.しかしこの切断で死亡する人もあった.そこで外科的に変形を矯正する方法に興味深く眺めていた人にStromeyerがいたのである.Georg Friedrich Louis Stromeyerは1804年Hanoverに生れた.

座談会

救急センターにおける整形外科の役割

著者: 鳥山貞宜 ,   岩田清二 ,   平沢精一 ,   黒田重史 ,   三好邦達

ページ範囲:P.298 - P.308

 近年,交通・労働災害などの増加に伴い,救命センター,救急医療センターなどの施設が開設され,かなりの実績をあげてきている.一方,外傷は重複化,多発化する傾向にあり,関係各科の緊密な協力なくしては,患者の十分な回復は望めない.生命維持の治療を第一義と考えるのは当然としても,患者の早期社会復帰という観点からすれば,治療初期の段階で整形外科が果たす役割は決して小さくはない.
 この座談会は,1982年5月29日,東京で開かれた第4回関東整形災害外科学会において好評を博したパネルディスカッション「救急センターにおける整形外科の役割」でパネリストをつとめられた諸先生にお集りいただき,お話し合いいただいた.

装具・器械

変形性膝関節症に対する旭川医大式膝装具について

著者: 小野沢敏弘

ページ範囲:P.309 - P.313

 変形性膝関節症(以下膝O. A.)で従来の保存的療法の限界を越えながら,患者の手術への不安や意欲の欠如等の理由から観血的療法が行えない場合が多い.このような症例に対して従来は,漫然とステロイド関注が行われる場合が多かったが,当科では昭和52年以来,膝装具の開発を行い改良を加えた結果,現在は治療成積も安定し当科の膝O. A.治療法の一環として確立しているので報告する.

臨床経験

硬膜内へ脱出した腰椎椎間板ヘルニアの1例

著者: 浜田茂幸 ,   荻野洋 ,   川津伸夫 ,   北野継弐 ,   佐々木哲 ,   満田基温 ,   藤原桂樹

ページ範囲:P.315 - P.319

 椎間板ヘルニアが,硬膜外腔に脱出・遊離した例は,しばしば見られるが,今回,我々は第3〜4腰椎間の椎間板ヘルニアが硬膜内へ脱出し,馬尾神経腫瘍様症状を呈した極めて稀な症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

B群溶連菌による新生児化膿性骨髄炎の1症例

著者: 岡田幸也 ,   藤井英夫 ,   土居忠史 ,   樫本新 ,   中島道子

ページ範囲:P.321 - P.325

 B群溶連菌はStr. agalactiaeと呼ばれる牛の乳房炎の原因菌であり,人にはほとんど病原性がないと考えられていた.ところが1961年Hoodら9)により周産期の母子感染症における,この菌の重要性が指摘されてより,特に米国において1970年以降B群溶連菌による新生児感染症の報告が相継いでいる3,10).それに伴い新生児化膿性骨髄炎の起炎菌としても,注目を浴びており,今後その報告も増加してゆくものと考えられる.
 今回,生後29日女児のB群溶連菌による右上腕骨化膿性骨髄炎の症例を経験したので報告する.

血清コレステロール値が正常値を示した多発性腱黄色腫の異常増殖と考えられた1症例

著者: 木次敏明 ,   児玉芳重 ,   坂田勝朗 ,   松下巌 ,   竹田俊男 ,   滋野長平 ,   村田喜代史

ページ範囲:P.327 - P.331

 血清コレステロールが,正常値を示した多発性腱黄色腫の異常増殖と考えられた一症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

頸椎前縦靱帯骨化により嚥下障害をきたした1症例

著者: 陶山哲夫 ,   中村茂 ,   井口晶雄 ,   田渕健一 ,   藤原将登

ページ範囲:P.333 - P.337

 椎体前縁に骨性増殖をきたし,脊柱の強直にいたる症例はまれに報告をみるが,異常な骨性増殖をこより隣接器官の圧迫症状をきたす例は極めて少ない.私達は頸椎前縦靱帯の骨性増殖により嚥下困難をきたし,手術により軽快した1症例を経験したので報告する.

踵部皮膚欠損に対するLateral Plantar Pedicle Flapの1例

著者: 高橋啓介 ,   山内茂樹 ,   野村進 ,   吉村光生

ページ範囲:P.339 - P.341

 足底踵部は最も体重負荷がかかる部位であり,厚い角化層を持った皮膚と,皮膚に垂直な多くのfibrous septaを有した厚い皮下組織から成り立っていて,荷重歩行に都合よくできている.したがってこの部の皮膚欠損の再建には,良好な知覚の存在と十分に荷重にたえられることを考慮する必要がある.従来はこの部の再建には,遊離植皮や下腿よりのcross Ieg flapなどによる方法が行われてきたが,それらの方法では.厚い角化層と皮下のクッション性に欠けていて,潰瘍を反復したり,疼痛があったりして,十分満足できる結果が得られなかった.1954年Miry Mir6)はcross legを利用して,健側の非荷重部の皮弁にて再建するfunctional graftを発表して,正常に近い皮膚を再建したが,長期間の固定を要し,良好な知覚も期待できなかった.近年microsurgeryの発達により,free flapやsensory free flapも用いられているが,やはり知覚の回復に時間を要している.
 今回我々は,短指屈筋を利用した筋肉皮弁(lateral plantar pedicle fiap)による再建術を行い,良好な結果を得たので報告する.

追悼

高瀬武平先生を悼む

著者: 井村慎一

ページ範囲:P.342 - P.343

 高瀬武平学長は去る昭和57年11月21日福井医科大学附属病院開院を目前にして72歳で病没されました.
 先生は明治43年9月17日,金沢市郊外三谷村の農家の長男として生れ,幼少の頃父親を失い苦学しながら金沢第三中学校,旧制第四高等学校を経て昭和11年金沢医科大学(金沢大学医学部の前身)を卒業されました.その後金沢医科大学第一外科に入局され,第一外科在局中先生の恩師である元国立がんセンター総長故久留勝先生の学士院賞受賞業績である脊髄痛覚伝導路の研究や胃癌の前癌状態の研究に指導的役割を演じて来られました.

Knud Jansen教授の追憶

著者: 天児民和

ページ範囲:P.344 - P.344

 去る十月ISPO(lnternational Society of Prosthetics and Orthotics)からJansen氏の死去の報を受けた.詳しいことは全くわからなかったが,最近やっと少し詳しい情報を得たので日本の整形外科学会の諸兄にも御知らせしたい.Jansen氏は1982年8月1日に亡くなられた,氏は1913年の御誕生で本年69歳である.
 1938年Copenhagen大学を卒業して,一応外科を学ばれたが市の整形外科病院で整形外科の修練を始めた.1944年に血液凝固阻止剤Dicumoralの研究でDr. Ph.となった.1951年には整形外科部長となり,その勉強振りによって頭角を見わし1970年にはCopenhagen大学の整形外科の教授に任ぜられた.その頃より国際的な活動が始まり,まずISPOを組織して7年間会長として会の強化発展に努力せられた.日本に対しても協力を求められ,1972年のSICOTがIsraelのTel Avivで開催せられたとき私に対しISPOに対する日本の協力の不足を訴えられ,私も熱意に動かされしばらく日本のISPO会員増強に力を入れたこともある.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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