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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科18巻4号

1983年04月発行

雑誌目次

特集 上位頸椎部の諸問題

頭蓋頸椎移行部奇形におけるCTの診断的価値

著者: 宮坂和男 ,   井須豊彦 ,   阿部悟 ,   竹井秀敏 ,   金田清志 ,   都留美都雄

ページ範囲:P.387 - P.393

緒言
 頭蓋頸椎移行部奇形は,診断上の盲点となり易く,しばしば脱髄変性疾患,脳血管障害,時にはヒステリーなどと誤まられる事がある.複雑な脳神経の配列,錐体路の交叉などの延髄—脊髄移行部の解剖学的特徴20)に加え,厚い側頭骨陰影は一般単純撮影,断層撮影ばかりでなく,造影検査での詳細をも障害する原因となる.
 Computed Tomography(CT)は非侵襲的,且つ高い密度分解能をもつ検査法として,脳神経疾患の診断に広く利用されて来ており,更に,脊椎・脊髄疾患,及び頭蓋頸椎移行疾患にも5,7,10〜14,17),その適応が拡げられて来ている.特に最近のCT scannerの解像力は,頓に向上して来ており,本報告では,主に高解像力CTを用いた頭蓋移行部奇形の診断について検討する.

小児の環軸関節固定術の検討

著者: 小林慶二 ,   平林洌 ,   藤村祥一

ページ範囲:P.395 - P.402

はじめに
 小児の頸椎疾患はまれで,外科的侵襲を加える機会は少ない.しかし小児では環椎と軸椎は先天性奇形や外傷の好発部位であるし,atlanto-axial rotatory fixation(以下AA. R. F.と略す)は小児に非常に多いことから環軸関節の固定術が適応されることは少なくない.
 脊椎固定術を行う場合,小児では脊椎自体が小さいこと,成長の途上にあること,代償機能が旺盛なことなどの特徴があるし,術前後の処置に患児の協力が得がたい難点があり,手術適応,手技,術前後の管理,固定が脊椎の成長に及ぼす影響など成人とは別の配慮が必要となる.また回旋運動の最も旺盛な環軸関節を固定した場合に頸椎の運動性や隣接椎間への影響においても成人とは違ってくることが考えられる.

上位頸椎奇形について—神経症状を中心として

著者: 藤井英治 ,   平林洌 ,   若野紘一 ,   鈴木信正 ,   里見和彦 ,   小林慶二

ページ範囲:P.403 - P.411

はじめに
 頭蓋頸椎移行部は,発生学的に複雑な過程を経る部位であるため14,16),腰仙椎移行部と同様に先天奇形の好発部位である.奇形の形態は多様で,しかも重複して生じることが多い.また奇形に伴う臨床症状は,必ずしも奇形高位と一致するとは限らず,しかも症候も多彩なため,診断および治療に難渋することが多い.
 著者らは,慶応義塾大学整形外科で昭和45年から56年までの12年間に経験した上位頸椎奇形72例の神経症状を中心に検討し,発症機序について考察を行ったので報告する。

頭蓋頸椎移行部奇形の臨床的検討

著者: 島崎和久 ,   正田悦朗 ,   原田俊彦 ,   中林幹治 ,   池田正則 ,   藤田直己 ,   松田俊雄 ,   木村浩 ,   広畑和志

ページ範囲:P.413 - P.420

はじめに
 頭蓋頸椎移行部は発生学的にみると非常に複雑な発生形態であることや,この部で神経管の閉鎖が最も遅れることなどから,種々の奇形が発生しやすい部位である.しかし奇形の存在が必ずしも臨床症状を呈するわけではなく,無症状のまま生涯を終える場合も少なくないが,いったん神経症状を来した症例では,漸次増悪すると言われている19).頭蓋頸椎移行部は整形外科と脳神経外科との境界領域であり,ともすればX線読影に当っても見過ごしやすい部位である.臨床症状も頸部脊髄症状を主体としたり,脳神経症状のみを呈する場合もあり,頭蓋頸椎移行部奇形に対する正しい認識がないために内科的神経疾患や精神疾患として治療を受け,神経症状がかなり進行してから外科的治療を受ける場合も少なくない.従って,我々整形外科医にとっても充分認識しておくべき疾患である.
 頭蓋頸椎移行部奇形には表1に示すようなものがあるが,今回は我々の教室における症例をもとに,頭蓋底陥入症,先天性第2・3頸椎癒合(以下C2/3癒合と略す),環椎奇形について,頻度,臨床像,並びにこれらの奇形のもつ臨床的意義について検討した.

Syringomyelia—14例の検討

著者: 三井公彦 ,   井上駿一 ,   千賀啓功 ,   板橋孝 ,   大塚嘉則 ,   礒辺啓二郎

ページ範囲:P.421 - P.428

はじめに
 Syringomyeliaは,脊髄内にSyrinxを形成し,脊髄の腫大を来たす疾患で,更に,このsyrinxは,多くのものが第四脳室,くも膜下腔とも交通している(communicating type).その病因としては,1965年のGardnerの発表以来,頭頸移行部奇形(Arnold-Chiari奇形など)に基づく髄液還流の異常が考えられている6)
 本症の治療成績は,単なる椎弓切除術のみでは不良であったが,1965年Gardnerが自説に基づき,後頭下開頭及び中心管塞栓術を行い,飛躍的に良好な結果を報告した6).しかし,その後,このGardnerの手術の他に,脊髄切開術(syringotomy),脳室—腹腔シャント4,11),terininal ventriculostomy7)等と種々の手術的治療が行われるようになったが,遠隔成績では,いずれも未だ十分なものとはいえない12,24)

CT像からみた小児atlanto-axial rotatory fixationの病態と機序について

著者: 岡田孝三 ,   米延策雄 ,   冨士武史 ,   小島伸三郎 ,   小野啓郎 ,   天野敬一

ページ範囲:P.429 - P.438

はじめに
 頸部回旋変形は1907年Corner1)が20例の報告をして以来,最近ではWortzmanら(1968)9),Fieldingら(1977)3),本邦でも片山ら(1981)5)のまとまった報告を見る.病態がすべて環軸関節atlanto-axial jointに向けられていることから"rotatory dislocation of the atlas1)","rotatory fixation of the atlantoaxial joint"9),"atlanto-axial rotatory fixation"3)などと名称されている.
 今回我々は頸椎に骨折,先天性奇形などを伴わない小児頸部回旋変形atlanto-axial rotatory fixation(以下AARFと略す)を経験したので,主にcomputed tomography(以下CTと略す)からその病態と機序について述べる.なおAARFが小児に多いことから正常小児のCTとも比較検討する.

Atlanto-Axial rotatory fixationについて

著者: 小林慶二 ,   渡辺良 ,   丸山徹雄 ,   平林洌 ,   藤村祥一 ,   吉沢英造 ,   小林祥吾

ページ範囲:P.439 - P.447

はじめに
 環軸関節が回旋変位した位置で固定され,斜頸位を呈しているものは1977年Fielding3)らが提唱して以来,atlanto-axial rotatory fixation(以下A. A. R. F.と略す)と呼ばれている.大抵の場合,この偏位は自然にあるいは簡単な整復操作で容易に整復され再発をみない.しかし中には長期間,斜頸位が持続したり,いったん整復されても再発を繰り返したり,整復が不能なものがあるし,環軸関節の回旋を制動する骨・関節・靱帯が損傷されるものがあり,これらには厳重な保存的治療や観血的治療を要する.
 われわれはかかる治療に難航した18症例を基にしてその病因,病態,治療法について検討を行ったので報告する.

環軸椎亜脱臼に対する手術症例の検討

著者: 酒匂崇 ,   森本典夫 ,   肥後勝 ,   森園良幸 ,   富村吉十郎 ,   赤嶺卓哉 ,   白坂智子

ページ範囲:P.449 - P.455

はじめに
 環軸椎亜脱臼は,比較的よくみられる疾患で,種々の原因で生じる.脱臼が進行して非整復性となると,麻痺の回復も期待し難くなり,今後,治療上解決されるべき問題が多く残されている.本症の外科的治療の目的は,後方固定あるいは前方固定により,環軸椎間の固定を行い,脱臼の進行を防止し麻痺の回復を計ることにある.
 本症に初めて手術を行ったのは,MixterとOsgood14)であり,C2の棘突起と環椎後弓を絹糸で縛り固定を行い,良い結果を得ている.その後,多くの手術方法が発表されたが,現在ではwiringとbone graftの組合せによる後方固定術が一般的方法となっており,人によっては後頭骨を含めての固定を奨めている.一方,前方固定を積極的に行う人もあるが,経口的前方固定は感染の危険性の大なること,また,前側方アプローチによる前方固定は侵襲が大なることなどより,一般的に広く行われるには至っていない.このように本症に対する外科的治療の目的は環軸椎間の固定を行うことにより,脱臼の進行を防止し,麻痺の回復を計ることである.しかし本症の手術成績についてはまとまった調査報告は少なく,不明な点が多々ある.

環軸椎亜脱臼に対する環軸椎固定術—経口法と後方法との比較

著者: 原田征行 ,   東野修治 ,   近江洋一 ,   森山明夫 ,   中野恵介 ,   植山和正 ,   林篤

ページ範囲:P.457 - P.465

はじめに
 環軸椎亜脱臼は種々の原因で起きる.原因疾患としては先天性疾患,外傷,炎症あるいは腫瘍,RAがある.その治療は第1に原因疾患の治療を行う.環軸椎亜脱臼に対しては保存療法を試みるが,効果がない場合には手術的治療を行う.重篤な脊髄症が存在するときは後方あるいは前方からの脊髄除圧が必要となる.このような例では固定術も併用されることが多いが,脊髄症のない例でも,環軸椎の亜脱臼が増強し将来重篤な脊髄症を来たす恐れのあるもの,環軸椎に不安定性のあるものには固定術が行われる.固定術には前方侵襲と後方侵襲とがあり,それぞれに利点,欠点がある.今回我々は26例29回の環軸椎固定術を行った経験から,前方侵襲と後方侵襲とを比較し,手術法の選択と適応,手術侵襲を検討した.

軸椎歯突起骨折の治療について

著者: 中原進之介 ,   井上周 ,   小西均 ,   山根孝志 ,   住居広士 ,   寺岡俊人 ,   岡部隆行 ,   小川和彦 ,   今井健

ページ範囲:P.467 - P.473

はじめに
 軸椎歯突起骨折は従来比較的稀な骨折とされていたが,近年交通外傷の増加,診断技術の進歩などにより新鮮例,陳旧例ともに数多くの報告がみられるようになり,上位頸椎損傷としては軸椎関節突起間骨折とともに多く,全頸椎損傷中約10%にみられるとの報告14)もあり今や決して稀なものではない.しかし,受傷外力が大きいため,或いは受傷時頭部に外力をうけることが多いため頭部外傷をはじめとした他の大きな合併損傷を伴っていることが多く,通常の頸椎単純X-Pのみではその判読は困難なためしばしば診断が遅れがちである.受傷早期に的確な診断がなされ,整復位での骨癒合が得られれば問題ないがnon-unionになった場合,atlanto-axial instabilityによる上位頸髄障害をきたす危険性が大きい.この軸椎歯突起骨折の新鮮例および陳旧例の治療について私達の38例の経験をもとに検討した.

リウマチ性頸椎環軸関節転位—主として手術的治療の適応について

著者: 河合伸也 ,   服部奨 ,   斎木勝彦 ,   今釜哲男 ,   小田裕胤 ,   中村修二 ,   多原哲治 ,   住浦誠治

ページ範囲:P.475 - P.479

 慢性関節リウマチ(以下RAとする)患者では四肢の諸関節に病変がみられるだけでなく,頸椎においても種種の変化が高頻度に出現することはすでに充分に知られている.頸椎の病変のうちでも,環軸関節部はとくに侵されやすく,しばしば環軸関節の転位が認められる.これらの頸椎の病変によって頸部痛や頸椎運動障害など種種の症状が高頻度に出現してくるが,RA患者では四肢諸関節の障害強く,さらに全身状態の低下をも伴うこともあって頸椎の病変に由来する症状は看過されることが多い.また,環軸関節転位を有する症例では頻度が少ないとはいえ,脊髄の圧迫症状が見られることがあり,RA患者の機能障害に一層拍車をかけることとなるばかりでなく,突然死の危険もあって,環軸関節転位には十分留意する必要がある.
 RA患者における環軸関節転位に対しては多くは保存的に対応するが,頑固な疼痛が持続する場合や脊髄圧迫症状が明らかである場合などでは手術的治療が必要である.しかし手術的治療の決定に際しては脊髄圧迫症状の程度だけでなく,四肢諸関節の障害の状態や全身状態など臨床所見を十分に把握しておき,さらに自然経過をも考慮したうえで,慎重に対応することが肝要である.そこで,ここでは主として手術的治療の適応を考察するにあたり,手術的治療の選択に必要な臨床所見の分析,自然経過の推測,手術施行症例の検討について私達の経験を基として述べることとする.

研修教育講演

先天性環軸椎脱臼の整形外科的対策

著者: 津山直一

ページ範囲:P.348 - P.357

I.頭蓋・脊椎移行部には奇形が多発しやすい1〜4)
 頭蓋底,大後頭孔から上部頸椎にかけての頭蓋脊椎移行部はヒトが佇立姿勢を取るに到る系統発生の最終的段階に発達した部分であるため,種々な奇形や移行形の発生が稀でないことは恰も脊柱と骨盤下肢帯の移行部の腰仙椎移行部と似ている.ことに軸椎(第2頸椎)は終末(第4)後頭椎節(last occipital sclerotome)の尾側半分と,第1および第2頸椎椎節の一部にまたがる三つの椎節から発生し,歯突起は主体が第1頸椎節に由来し,本来ならば環椎(第1頸椎)の椎体に当るものであるが,その尖端の小部分は終末(第4)後頭椎節こ由来し,軸椎椎体と椎弓は第2頸椎節から起こり,この3者が癒合して軸椎が形成されるものと解されている.これらの癒合や原椎節からの分離が不完全であると種々な奇形が生まれ,またその合併が見られることになる.

上位頸椎部異常の神経学

著者: 萬年徹

ページ範囲:P.359 - P.363

はじめに
 上部頸椎の奇形はさまざまな症状をあらわし,神経内科医,整形外科医,脳神経外科医を悩ますことが多い.これは後頭骨,環椎,軸椎の三者は発生学的にみて非常に密な関係にあり,お互いに分離,融合を経てそれぞれ独自の形をとり,さだめられた位置を占めるにいたるのであるが,その過程においていろいろな形の骨奇形がうみだされる.解剖学的にみれば頭蓋頸椎移行部は丁度大後頭孔を境として,上に延髄,小脳が存在し,下に高位頸髄が入っている部分であり,さらに下部脳神経が頭蓋から出てゆくいろいろな孔が存在する.また椎骨動脈も頸椎中を上行して後頭蓋窩に入るのは周知の事実である.それ故,この部分の骨の奇形によって,中枢神経の一部が圧迫をうけたり,変位したり,また椎骨動脈の走行異常による影響をうけたりするにいたる.それ故,臨床症状のみから判断すると変性疾患,腫瘍,時には多発性硬化症などと混同されることすらある.
 本項ではまず実際の症例を挙げ,その臨床像を検討してゆくところからはじめたいと思う.なお症例は東大神経内科のものである.

特別講演

The Arterial Supply of the Odontoid Process

著者: ,   鈴木信正

ページ範囲:P.365 - P.368

はじめに
 軸椎歯突起の血行に関する研究は,Dr. Rothmanの助言によって始められたといえます.というのは,ある時我々が話し合っているうちに,歯突起がどのような動脈系を持っているかについてのこれまでの研究は不完全で誤解に満ちていることに気がつきました.そして,C1-2間の回転運動のため,その血行には特殊な機構が存するにちがいないのではないかと思い至り,研究が始められたからです.
 近年,脊椎損傷に対して臨床上の関心が増すにつれ,正常脊椎の機構と機能に対してより詳細な知識が必要とされることが強調されてきています.脊椎一般的血行に関する研究は数多くありますが,上位頸椎に特徴的な血行に関する詳細な報告は2つしかなく,又,頭蓋頸椎関節部の静脈系に関しては皆無であります.
 ここでは,歯突起周辺で特徴的な動脈系及び静脈系について述べます.

総括

I.基礎,X線診断の部

著者: 酒匂崇

ページ範囲:P.369 - P.370

 このセクションでは,X線或はCTを用い環軸椎部の機能的或は形態的研究が発表された.
 先ず若野紘一氏は25歳より41歳までの成年男子の新鮮屍体より頸椎標本をmotion segmentとして取出し,環軸椎部の荷重時の軸,前後左右方向への変位をストレインゲージを用いload-deformationを測定している.変位の程度をstiffness valueとして表わしており,上位頭椎では靱帯や関節包の制動作用が大で,stiffness値は小で,当部に大きな可動域を有する事実を裏付けている.また,成犬を用いて横靱帯と翼状靱帯を切離し上位頸椎のinstabilityをX線的観察を行っている.翼状靱帯切離より脱臼の程度は一気に大となる事を観察している.

II.Halo-brace,手術術式の部

著者: 小野村敏信

ページ範囲:P.371 - P.372

 このセッションでは上位頸椎に対するHalo-braceならびに手術術式というテーマのもとに,観血的治療手技に関連した8題の発表が行われた.
 原田氏(総合せき損センター)は歯突起骨折を中心とする20例に外固定法としてHalo-braceを用い,2例は保存的に他は観血的に治療して満足な成果を得た経験を述べ,上位頸椎疾患に対するこの固定法の有用性を強調した.原田氏らは頸部の保持をより強固にすると同時に体位の微調整をより細かく行うために,ターンバックルをもつ4本のup-right barによってhaloとbraceを連結して用いている.

III.頭蓋・頸椎移行部奇形の部

著者: 小野啓郎

ページ範囲:P.373 - P.374

 頭蓋・頸椎移行部の奇形は脊椎外科の臨床上になお数多くの課題を残していることが今回の企画でも明らかになった.たとえば,骨格奇形が頭頸部の運動・支持機構をどのように妨げており,その解決はどうあるべきか? 合併する神経系の異常とその診断・治療は如何にあるべきか? 骨格奇形が神経系をさらに危険に陥れる機序には如何なるものがあり,またそのきっかけはなにか? その確実な予防・治療法はなにかといった問題である.
 北尾(横浜市大整形)は歯突起の頭蓋底陥入例3例の治療経験を報告した.いずれも環椎後頭什の先天性癒合をともなうもので身体所見・神経症状にも典型的な異常が確認されている.治療は後頭下減圧術と環・軸椎椎弓切除・硬膜切開からなりいずれにも効を奏したが,1例のみ術後転倒悪化があったという.問題点として後方除圧後の不安定性を指摘している.

IV.上位頸椎奇形の部

著者: 金田清志

ページ範囲:P.374 - P.375

 上位頸椎奇形のセッションで,伊藤(富山医薬大)は,環椎単独の脊椎管狭窄(developmental narrowed canal)による脊髄圧迫でC1椎弓切除で症状寛解のあった1例を報告した.単純X線写真でC1の脊椎管前後径14mm,C2以下は18〜19mmと広く,ADDは5mmあった.演者は上位頸椎に異常を認めない正常男子65人のC1-ringのX線写真上の前後径計測を行い,C1前弓後縁と後弓前縁までは平均37.9mm,歯突起後縁からの脊椎管は平均22.6mm,C2脊椎間前後径平均18.7mmに対し,C1-ring前後径比は121%と述べた.環椎単独でのcanal stenosisで珍しい報告である.森園(鹿児島大)は軸椎の後方要素の先天性欠損の1例を報告した.外傷を契機に偶然発見されたもので左上肢に病的反射の出現があったが,その他には神経学的異常所見はなかった.C2棘突起が肥大しC2/3間にinstabilityがあった.myelogramで異常所見がなかった.大和田(札幌医大)は歯突起欠損を伴ったMorquio's syndromeの3例を報告し,このうち1例ではatlanto-axial instabilityが強く,C2-C3の癒合があり,halopelvic apparatus装着でoccipitocervical (C5) fusionで良好な骨癒合を得,脊髄性痙性麻痺の改善をみた.

V.腫瘍,カリエスの部

著者: 原田征行

ページ範囲:P.375 - P.377

 本セッションの座長を千葉大学井上教授と私がつとめさせていただいた.このセッションは脊椎腫瘍,脊髄空洞症,脊髄腫瘍,カリエスなど,広範な疾患が含まれたため,全体としての討論はできなかった.
 上位頸髄腫瘍については複雑な臨床像を呈けることから診断上の問題がありこの点について各演者からの報告と討論があった.上位頸髄腫瘍,大後頭孔腫瘍の定義についても論じられたが,この部位の腫瘍の診断には脳神経内科,脳神経外科,神経放射線科の協力が必要であり,また頭蓋内操作も多く,手術には脳神経外科の協力も必要であると痛感された.

VI.環軸椎回旋位固定の部

著者: 三浦幸雄

ページ範囲:P.377 - P.378

 上位頸椎における環椎後頭関節,環軸椎関節は解剖学的形態のみならず,機能上にも他の部位とは異なる特性がある.環椎後頭関節は重い頭蓋を2点のわずかな面積のみで支持しているし,その上,前屈後屈が30〜50°の可動域がある.環軸椎関節では左右回旋が全頸椎柱回旋の50%にあたる40〜45°の広範な回旋可動域を有するばかりでなく前後屈運動でも相当の可動域があるので,環軸椎関節では生理にrolling-slidingの併合運動が行われている.

VII.環軸椎亜脱臼の部

著者: 平林洌 ,   津山直一

ページ範囲:P.379 - P.380

 回旋位固定の問題にひきつづいて,このセクションではいろいろな原因によって生じた環軸椎亜脱臼の病態と治療法について討議された.
 第1席の白石(のじぎく)は,アテトーゼ型CP児が本脱臼のために痙直性を示し,これに対しhalo骨盤牽引と後方固定を行った治療難行例を報告した.又,CP児に合併した本脱臼が見逃されやすいことを警告した.
 津山(東大)と大木(自治医大)も,同様の症例を追加し,見逃せば四肢麻痺となりやすいこと,手術では仮関節を形成しやすく,術後には異常運動のパターンに変化が生じること,後頭—環椎間に再脱臼の起こる可能性などを指摘した.

VIII.骨折などの部

著者: 小林慶二 ,   井形高明

ページ範囲:P.381 - P.383

 このセクションでは上位頸椎の骨折を中心とした外傷について報告討論され,井形と小林が座長を担当した.
 上位頸椎外傷は図1のように分類され,その頻度は歯突起と軸椎関節突起間の骨折が多く,今回報告されたものも同様であり,主としてこの2つの骨折について論議された.

IX.リウマチ(X線変化など)の部

著者: 片岡治

ページ範囲:P.383 - P.384

 著者の担当した部門は,慢性関節リウマチ(RA)における上位頸椎の主としてX線所見をテーマにしたものである.8演題のタイトル,所属および演者名は別表のごとくである.演題1と2はRAの環軸関節脱臼のX線学的解析を,他の6演題はRAの上位頸椎病変のX線変化を中心に論じている.
 IX-1の有馬は,2例のRA患者を対象として環軸関節脱臼の動態のX線検索を行い,不安定性はある一定の角度での発生点をもって生じると結論し,これがX線撮影および治療法の指標となると論じた.東山(千葉リハビリ)および杉浦(岡崎市立)は回旋位での不安定性の回旋角との関係,患者姿勢の影響および頭の重心の位置につき質した.

X.リウマチ(装具,手術)の部

著者: 竹光義治

ページ範囲:P.385 - P.386

 研究会最後のsessionではRAによるatlanto-axial subluxation(AAS)とvertical subluxation(VS)に対する保存的,手術的治療の適応と方法,成績,問題点が活発に論じられた.
 X-1.藤原氏はclassical RAで10年以上病歴を有しatlanto-dental interval(ADI)が3mm以上の25症例(5〜10mm 7,10mm以上1),stage 4 13例)に対し頸椎カラーを装着し大部分の症例に疼痛改善が認められ5例に関節癒合が認められた.勿論無効例もありmutilans型や長期ステロイド投与例はX線上も臨床症状も改善は得られなかったが,JRAや全身的癒合傾向のあるものはカラー固定をまず試みてよいと述べた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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