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特集 上位頸椎部の諸問題 研修教育講演
上位頸椎部異常の神経学
著者: 萬年徹1
所属機関: 1国立病院医療センター神経内科
ページ範囲:P.359 - P.363
文献購入ページに移動上部頸椎の奇形はさまざまな症状をあらわし,神経内科医,整形外科医,脳神経外科医を悩ますことが多い.これは後頭骨,環椎,軸椎の三者は発生学的にみて非常に密な関係にあり,お互いに分離,融合を経てそれぞれ独自の形をとり,さだめられた位置を占めるにいたるのであるが,その過程においていろいろな形の骨奇形がうみだされる.解剖学的にみれば頭蓋頸椎移行部は丁度大後頭孔を境として,上に延髄,小脳が存在し,下に高位頸髄が入っている部分であり,さらに下部脳神経が頭蓋から出てゆくいろいろな孔が存在する.また椎骨動脈も頸椎中を上行して後頭蓋窩に入るのは周知の事実である.それ故,この部分の骨の奇形によって,中枢神経の一部が圧迫をうけたり,変位したり,また椎骨動脈の走行異常による影響をうけたりするにいたる.それ故,臨床症状のみから判断すると変性疾患,腫瘍,時には多発性硬化症などと混同されることすらある.
本項ではまず実際の症例を挙げ,その臨床像を検討してゆくところからはじめたいと思う.なお症例は東大神経内科のものである.
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