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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科18巻6号

1983年06月発行

雑誌目次

視座

脊柱後縦靱帯骨化の成因をめぐって

著者: 茂手木三男

ページ範囲:P.583 - P.583

 頸椎後縦靱帯骨化(OPLL)は,1960年教室月本の報告が本邦第1例で,以来20余年を経過した現在では,すでに約5000例の報告があり,ありふれた疾患であるにもかかわらず,本骨化の成因はなお解明されていない.しかしながら,OPLLの成因としては,局所性因子と全身性因子の2つが,複雑に関与していることは間違いないところであろう.
 まず局所性因子としては,剖検例や臨床例の検討から,脊柱の解剖学的あるいは構築上の特性に加えて,これに加わる静的・動的stressが考えられている.

論述

成人三角筋拘縮症の病態と治療

著者: 佐野精司 ,   鳥山貞宜 ,   松崎浩已 ,   近藤正晴

ページ範囲:P.584 - P.590

はじめに
 三角筋拘縮症は,大腿四頭筋についで頻度の高い拘縮症である.そのほとんどが幼・小児期に,三角筋部への筋注によって発症したものである.特異なこととしては,ほかの筋拘縮症でもみられたことであるが,特定地域に集団的発生をみた例が,とりわけ多いことであろう.
 これに反して,成人に達してから発症した三角筋拘縮症は,そのほとんどが1〜2例の症例報告であるため,術後経過の観察期間が短いものが多い欠点をもっている.したがって,本症に関するまとまった詳細な記載については,内外とも寡聞4,5,7)にして知らない.

骨好酸性肉芽腫症について—当科における14例の検討

著者: 薄井正道 ,   松野丈夫 ,   小林三昌 ,   八木知徳 ,   佐々木鉄人 ,   石井清一

ページ範囲:P.591 - P.599

はじめに
 骨好酸性肉芽腫症(以下EG)はLichtenstein16)の提唱以来,Hand-Schüller-Christian病(以下HSC)やLettere-Siwe病(以下LS)とともにHistiocytosis Xとして包括されている.単発性EGの予後は良好とされているが,多発性の場合,HSCへの移行や27),必ずしも良好な経過をとらない症例17,40)のあることも知られている.著者らはこれまでに,尿崩症,眼球突出,地図状頭蓋などのHSCの特徴や,肝・脾腫,皮疹,著しい貧血,出血傾向などのLSに見られる全身症状を伴わず骨に病巣を有するものをEGと考え治療してきた.今回,これら14症例について検討し,本邦および諸外国報告例とともに考察を加え報告する.

シンポジウム 先天股脱初期整復後の側方化

"いわゆる大腿骨頭側方化"についての文献的考察

著者: 植家毅 ,   高井康男 ,   榊原孝夫 ,   伊藤博一 ,   池田威 ,   舩橋建司

ページ範囲:P.601 - P.606

はじめに
 昭和57年7月,福岡市で開かれた第21回先天股脱研究会(小児股関節研究会)において,"初期整復後の側方化"が主題として取りあげられた.この主題に対して14の演題が寄せられ,それぞれ活発な討論が交わされたが,治療体系が必ずしも同一ではない各演者が"側方化"をどう考えているのかの一端がうかがわれて,興味深いものであった.
 今回,山室教授始め編集委員の先生方のご配慮によって,本誌においてシンポジウムとして,この主題が再度取りあげられることになった.学会の場で側方化が論じられるようになってほぼ20年を経た今日,極めて有意義な企画と考えられ,研究会の関係者の一人としても,衷心より謝意を表する次第である.

先天股脱における外側偏位の病態

著者: 岩崎勝郎 ,   池田定倫 ,   鈴木良平

ページ範囲:P.607 - P.613

はじめに
 先天股脱の初期整復後にみられる骨頭の非求心性は,外側偏位,側方化,亜脱臼,遺残性亜脱臼,偽整復などの名称でよばれているが,その意味するものが必ずしも同じとは限らず,使用法にいささかの混乱があることは確かである.本論文では整復後のX線像で骨頭の求心性が保持されていない状態をとりあえず外側偏位と一括して呼ぶことにする.それで当然のことながらこの中にはいろんな病態が含まれているが,今回は,この外側偏位を,行われた整復法,原因,自然経過などの面から分析してみたい.
 外側偏位の診断基準についても,必ずしも一定しておらず,内側関節裂隙の幅やCE角を指標とするものの他に,寺山ら15),植家ら16)は飯野法を使用し,山室ら18)は大腿骨骨幹端部上端の中点と坐骨外縁との間の距離を指標として用いており,松永ら5)も独自の基準を定めている.われわれは以上の判定法を参考にして,①CE角が0度以下であること,②頸部上端幅の2/3以上がParkin線より外側にあること,および③涙痕内縁と頸部上端内側との距離が健側に比べ3mm以上であることの3つの基準を作り(図1),両股関節伸展位X線像でこれらの内1つでも存在すれば外側偏位ありと判定した.

先天股脱初期整復治療後の骨頭の側方化について—自然経過例および保存的治療例の検討

著者: 松元信輔 ,   大石年秀 ,   藤井敏男 ,   姫野信吉

ページ範囲:P.615 - P.621

はじめに
 先天股脱の初期整復治療後にみられる骨頭の側方化は,その改善(骨頭位の求心位への安定化)の有無が良股発育への予後を左右する要因であり,これに対する治療は重要な問題である,しかし骨頭の側方化の原因については諸説述べられてはいるものの,充分な病態の解明はなされておらず,また,実際の治療においては,骨頭の側方化の自然改善の問題が治療方針の決定に際しても,治療結果の評価に際しても介入し,骨頭の側方化に対する治療法については,その定義や判定方法とともに明確性に欠けるのが現状である.そこで,このような骨頭の側方化に対する治療を考える上での問題点について,骨頭の側方化例,および,少数ではあるがこのような骨頭の側方化への保存的治療例の観察から,若干の検討を加えた.

先天股脱保存療法後に見られる大腿骨頭側方化の自然経過および治療方針—臼蓋唇の変化に注目して

著者: 清水信幸 ,   細谷徹 ,   坂井学 ,   西塔進 ,   高岡邦夫 ,   井上明生 ,   小野啓郎 ,   美延幸保 ,   門脇徹

ページ範囲:P.623 - P.632

 先天性股関節脱臼(以下,先天股脱)の治療成績を決定する二大因子が,①大腿骨頭および頸部に見られる阻血性変化に基づく変形と,②遺残亜脱臼から臼蓋形成不全に到る病態であることは,多くの研究者の業績により明らかである1〜6).近年,Pavlik bandを用いる治療法が先天股脱保存的治療の主流となり,ローレンツ法に基づく旧治療体系に見られた阻血性壊死を原因とする大腿骨頭変形は激減しており,故に,保存的治療後の一部症例に見られる遺残亜脱臼から臼蓋形成不全に到る病態の治療が,より一層重要となっている.
 乳幼児期に保存的に治療された先天股脱症例の大部分は,脱臼の整復後,臼蓋形成不全は急速に改善し,正常な股関節に成長する.しかし,症例の中には,脱臼の整復後いつまでも臼蓋形成不全が存在するものや,学童期前半には,正常範囲内の臼蓋発育と判断されたものが,学童期後半から思春期に急速に臼蓋形成不全が顕箸となるものなどが見られ,その予後を決定する因子を見出すことが重要である.

初期治療終了後の骨頭側方化の自然経過—放置最善説の根拠

著者: 坂口亮 ,   君塚葵 ,   田中豊孝 ,   永田善郎 ,   岩谷力 ,   原勇 ,   板垣敏明

ページ範囲:P.633 - P.638

はじめに
 先天股脱の初期治療が終って,子供が下肢平行位で自由に歩き回る頃に,X線上骨頭側方位がみられることが多い.このような状況に直面した場合,整形外科医師の態度は基本的に二つに分れる.その一つは,X線上の骨頭側方位を即遺残亜脱,そして将来の骨関節症に直結するものとして,それを防止するためには,できるだけ早い時期に徹底的改善策を施してその後の好ましい成長発育を導くべきであるという態度である.(方法として,装具の工夫など保存的なものと,各種骨盤骨切りを主とする補正手術など観血的のものとがあるが,その基盤となる理念は同じである.)これに対して別の姿勢は1,2歳代でみられるX線上の骨頭側方位は時期的な一過程とみて意に介さず,子供自身の自然好転を期して経過を看視するだけというものである.我々はもとより後者に属するので,現今の整形外科医師による装具や手術の濫用には反撥や抵抗を感じる.幸いこの問題についてシンポジウムの機会を与えられたので,我々の経験から生れた信条を述べたいと思う.

初期整復後の大腿骨頭側方化に対する治療方針

著者: 野村隆洋 ,   寺山和雄

ページ範囲:P.639 - P.645

はじめに
 先天股脱の初期治療終了後(観血整復を含む),下肢が平行位になって歩行を始めるようになってから,骨頭の側方化を生じる例は非常に多い.いちおうCE角が負になるものを側方化とみなすと,RB整復例では約3割に,徒手整復例では6割に,観血整復例では8割にも認められる.しかしその原因はいちようでなく放置しても自然に改善されるものから,何らかの追加手術を要するものまでさまざまであり,いちように論じることはできない.側方化の原因,予後および対策は,初期治療がいかに行われたかによってだいたい決まってくる.側方化を生じた例に対しては,経過観察のみか,手術を行うかどちらかであり,装具等の保存的治療はまったく行っていない.以下初期治療時の整復法別に,症例を呈示しながら側方化に対するわれわれの治療方針について述べる.

乳児先天股脱におけるOHT法および観血的整復術後の骨頭側方化について

著者: 大野恵一 ,   増田武志 ,   紺野拓志 ,   東輝彦 ,   高橋賢 ,   長谷川功 ,   松野丈夫

ページ範囲:P.647 - P.653

緒言
 乳児先天股脱に対する機能的療法,なかでもRiemenbügel(以下R. b.)による療法の普及により治療成績は著しく向上してきた.
 しかし,多くのR. b.整復率の報告1,5,8)をみても一般的に10〜20%の症例において整復不成功とされ,R. b.による整復の限界と思われる症例は少なからず存在する.このような症例に対してはOHT法や観血的整復術による整復が行われるが,整復前より存在する種々の整復障害因子は観血整復によっても完全に解決することは難しく整復後に問題を残す場合が多い.なかでも骨頭側方化は日常診療上しばしば遭遇するもので,我々はその対策の一つとして,股関節外転筋力の増強を意図した可動式開排装具(シコフミ装具)を用いている.

手術手技シリーズ 脊椎の手術・13

頸椎後縦靱帯骨化症,頸部脊椎骨軟骨症および頸部脊椎管狭窄症に対する後方侵襲法—Extensive (Wide) Laminectomyについて

著者: 宮崎和躬

ページ範囲:P.655 - P.663

はじめに
 頸椎症性脊髄症における椎弓切除術については,近藤5),Rogers8)をはじめ邦・外を問わず多数の報告がある.
 1961年にRogers8)は頸椎椎弓切除術についてcomplete laminectomyと言う言葉を用い,1973年Jenkins3)もRogersの言うcomplete laminectomyをextensive cervical laminectomyと記載し,1982年Epstein1)もextensive laminectomyとして症例を報告している.しかし,椎弓切除の範囲などについてextensive cervical laminectomyやwide laminectomyの定義は定かでない.

整形外科を育てた人達 第5回

Hugh Owen Thomas(1834-1891)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.664 - P.667

 英国の整形外科は二つの流れがある.その一は前回に述べたWilliam John Little(1810-1894)と次は今回のHugh Owen Thomasの流れで,Littleは神経系疾患等を多く扱っているが,Thomasは骨折,脱臼に大きな足跡を残し,bone setterより進展している.

臨床経験

大腿部に発生したextraskeletal mesenchymal chondrosarcomaの1例

著者: 須田曉 ,   菊地達之 ,   西川英樹 ,   白井康正 ,   金子仁

ページ範囲:P.669 - P.674

 軟部組織原発の軟骨性腫瘍の大部分は良性腫瘍か腫瘍類似疾患であり,軟骨肉腫の報告は極めて少ない.1959年Lichtenstein & Bernstein6)は,従来報告された軟骨性腫瘍と異なった病理学的所見,すなわち未分化な間葉織細胞と軟骨組織の小島からなる像を特徴とするものにmesenchymal chondrosarcomaと命名し,1973年Guccion4)は軟部発生例をextraskeletal mesenchymal chondrosarcomaの名称で10例の報告をしている.我々は極めて稀な大腿部に発生したextraskeletal mesenchymal chondrosarcomaの1例を経験し,その臨床病理学的検索をする機会を得たのでその概要を報告する.

脛骨下端に発生した骨内ガングリオンの1例

著者: 益子忠之 ,   佐々木敏之 ,   片平弦一郎

ページ範囲:P.675 - P.678

 骨内に生じたガングリオンは,稀なものとされているが,最近,外国及び本邦での症例の報告が増加してきている.我々も脛骨遠位端外側に発生した1例を経験したので,報告する.

脛骨慢性骨髄炎に続発した血管肉腫の1例

著者: 森田茂 ,   加藤実 ,   竹安正夫 ,   岩城徳行 ,   田尾茂

ページ範囲:P.679 - P.682

 慢性骨髄炎に続発する悪性腫瘍の報告はしばしばあるが,その大部分は癌腫である.今回我々は,慢性骨髄炎の難治性肉芽創より発生した血管肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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