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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科18巻8号

1983年07月発行

雑誌目次

視座

脚線美に思うこと

著者: 腰野富久

ページ範囲:P.685 - P.685

 近年では美人コンテストもしばしば行われ,またミニスカートも流行していることから,女性の脚線の美しさについて思い悩むことも多い.どうも「日本人の脚は曲がっている」ということを耳にするが,これは事実である.整形外科的表現で言えば,これはおもに内反膝や下腿が外側凸になっていることを示している.実際コーネル大学で脛骨骨切り術をやっていた当時,アメリカ人女性の脚を多く観察した経験がある.これを帰国後,観察してきた日本人女性の脚と比較してみると,脚線の形が異なっている印象をうけた.下肢の骨切り術を手掛けている関係で,これを細かく分析してみたくなるのが常である.下肢全体を長尺のX線像でみると,アメリカ人と比して日本人の大腿骨には,それほど差はないが,下腿骨には大きな差がみられるようである.
 まず第一に日本人の脛骨は内側顆の発育がやや不良で,関節面の高さは内側が低く(内側顆が低く外側顆が高い),また脛骨内反のものが多い.これは脛骨に内反膝となる要素が含まれていることを意味している.

論述

生体力学的にみた大腿骨頭無腐性壊死の進展について

著者: 上尾豊二 ,   山室隆夫 ,   中村孝志 ,   奥村秀雄 ,   清水彰 ,   堤定美

ページ範囲:P.686 - P.692

はじめに
 大腿骨頭無腐性壊死のレントゲン像を仔細に観察すると興味ある事象が認められる.それは,骨頭の壊死巣はこの部分への血流が断たれたための阻血性壊死であると広く認識されているにもかかわらず,そのレントゲン上で示される壊死範囲は,通常の血流支配領域に一致していないということである.図1はSLEに合併した大腿骨頭壊死であり,ステロイド投与も受けている.最初に股関節に症状が出てから約1年後に,レントゲン上の変化として骨頭頸部に帯状硬化像が出ている.ついで最終的にこの硬化像より中枢部は広範に壊死巣となっている,ところが,骨頭内の血管分布4,7)をみると,血管の閉塞がどれかの血管分枝に生じたものとすれば,閉塞範囲は明らかに壊死範囲に一致しない(図2).
 血管の中枢側にて,より広範な閉塞を生じたとも考えることはできるが,病理学的にみて壊死領域外での血管閉塞は観察されていない3)

前脊髄動脈症候群の治療—Adamkiewicz arteryへのcatheterization

著者: 川岸利光 ,   樋口雅章 ,   中村孝 ,   馬場久敏 ,   高橋啓介 ,   東野修治 ,   原田征行 ,   近江洋一 ,   杉木繁隆

ページ範囲:P.693 - P.701

はじめに
 脊髄循環障害に基づく前脊髄動脈症候群は1908年,Preobraschenski3)の記載以来,近年多くの報告をみている.本症候群の発生原因は不明なことが多いが,その臨床症状は特徴的であるので,診断は比較的容易である.しかし治療法に関してこれまで言及した報告は少ない.
 1977年以来,われわれは14例の前脊髄動脈症候群に対しselective spinal cord angiography(以下angiography)を施行後,catheterよりAdamkiewicz arteryに直接ウロキナーゼ,副腎皮質ステロイドを注入(以下catheterization)し,術後良好な成績が得られたので,症例を検討し,その有用性について若干の考察を加え報告する.

小児の成長に伴う脚長差とその予想方法

著者: 見松健太郎 ,   野上宏 ,   村地俊二 ,   下村勉 ,   渡辺敏枝

ページ範囲:P.703 - P.707

はじめに
 小児で下肢に脚長差のある症例では,大人になった場合どの程度差が拡大し,その際の歩行はどうかと問われることが多い.骨端部の障害程度が大きな場合には,脚長差の予想がとりわけ困難となる.特に切・離断等手術療法を選択する際には,正確な予想値が必要である.脚長差を予想する方法は種々提案されているが,このうち最近の方法について検討する機会を得た.

膝蓋軟骨軟化症における関節鏡像とレ線像との相関関係について

著者: 森雄二郎 ,   黒木良克 ,   山本龍二 ,   日野ひかる ,   藤下彰彦 ,   奥茂宏行

ページ範囲:P.709 - P.716

緒言
 近年本邦では若年者の膝痛の中で,従来少ないとされていた膝蓋軟骨軟化症が増加の傾向にあるが,この原因については議論されながらも推論の域を出ない.従って欧米ではすでに1960年から1970年代に多数の報告が認められたのに比較して,本邦での報告は今日まで非常に少なかった.本邦での膝蓋軟骨軟化症における概念は,小林の一連の報告1〜4)が基盤となり確立されつつあるが,欧米文献を含めても今なおその原因および治療について不明な点が多い疾患といえよう.
 我々は従来報告されているOuterbridge5),Insall6),Morscher7)および小林らの報告をもとに,臨床上本症と診断した患者に対し関節鏡検査を行い,我々の示す膝蓋軟骨の病変8)を有した場合にこれを膝蓋軟骨軟化症(Chondropathia patellae)と診断している.我々の経験では臨床所見より膝蓋軟骨病変の程度を推測することは難しく,軟骨破壊の程度と臨床症状の強さとの間には相関関係が認められなかった9).しかしレ線所見として得られるpatello-femoral (p-f) congruenceと膝蓋軟骨損傷の程度とは極めて良好な相関関係にあることが今回の検索で判明したので,本症診断におけるレ線像の有用性について報告する.

遅発性尺骨神経麻痺の検討

著者: 岡田正人 ,   山崎安朗 ,   東田紀彦 ,   村本潔 ,   西島雄一郎 ,   石野洋 ,   山本雅英 ,   佐々木雅仁 ,   谷和英 ,   玉田安彦 ,   日原聡 ,   石塚弘和

ページ範囲:P.717 - P.724

序言
 肘関節部において,尺骨神経が何等かの原因により障害され徐々に進行する麻痺は,1878年Panas18)によって報告され,Hunt8)によってtardyulnar palsyと命名された.著者らは長い期間きわめて些細な神経障害を繰り返しているうちに徐々に損傷されて起こるという水村15)の定義に従い診断した遅発性尺骨神経麻痺のうち,手術例24例について予後調査を行ったので報告し,尺骨神経病変の分類と予後,internal neurolysisの効果について若干の知見を得たので報告する.

脛骨粗面前方移動術を併用した脛骨高位骨切り術の成績

著者: 佐々木鉄人 ,   須々田幸一 ,   八木知徳 ,   門司順一 ,   引野講二 ,   長汐亮

ページ範囲:P.725 - P.733

はじめに
 変形性膝関節症(KOAと略す)に対する脛骨高位骨切り術(HTOと略す)は本邦においても広く普及しているが5,7,8,12,18),その長期成績の報告はほとんどみられない.
 著者らは1972年HTOを導入して以来現在まで,約150例の手術経験がありこれまで報告してきた13,15,16).著者らが行っているHTO手術の特徴は,大腿・膝蓋関節(PFと略す)に明らかな変性変化が存在する場合,Maquet,Bandiタイプの脛骨粗面の前方移動術(Ventralization)を同時に付加することである14,16,17).今回HTO手術後5年以上経過した症例を臨床調査し,特にVentralizationの効果を検討した.

境界領域

高濃縮フィブリノーゲンを使用した神経接合に関する実験的研究

著者: 光嶋勲 ,   松永若利 ,   波利井清紀

ページ範囲:P.735 - P.741

はじめに
 神経損傷に対する外科的修復法としては,神経縫合術,神経接合術(sutureless nerve union)などがある10)が,最近のマイクロサージャリーの進歩によりそれらの手技も,よりatraumaticな方向へと変化しつつある.縫合法を用いない神経接合法は,atraumaticな点において最も理想的手技であり2),従来多くの外科医がその臨床的使用に努力してきた.歴史的には,1940年Young等によりplasma clotを用いた実験的神経接合が行われ,Seddon等がこれを臨床的に使用した7).その後1958年まで多くの外科医により追試が行われ,炎症反応による接合部離開の危険性が指摘された10)
 その他の神経接合法としては,フィブリン膜で包む方法8),surgical tapeを用いる法3),組織接着剤であるmethyl-2-cyanoacrylateを用いる法5),凍結乾燥動脈を使用する法11),凍結乾燥静脈を使用する法4)などが報告された.また,非生物学的な物質としては,タンタルムチューブ12),シリコンチューブなど種々のものが報告されている.しかし,これらいずれの物質も接着力の弱さ,異物反応などのために臨床的に応用されるまでに至っていない.

パソコンによる有限要素解析—大腿筋膜張筋の作用について

著者: 吉岡裕樹 ,   森本一男 ,   司馬良一 ,   広畑和志 ,   瀬口靖幸

ページ範囲:P.743 - P.749

はじめに
 有限要素解析は,バイオメカニクスに広く使われる手段として定着したように思うが,今なお入力データの作成およびそのチェックには多大の時間と手間を要し,本解析利用のネックになっていることは否めない.ここに紹介するシステムはその欠点を大幅に解消するものである.16ビットのマイクロコンピューター,入力用にDigitizer,データ保存用に磁気カセットテープをそれぞれ用いている.
 本システムを股関節モデル実験に応用し,特に大腿筋膜張筋(以下筋膜張筋,ここでは腸脛靱帯も含めて扱うものとする)の作用を研究した.

整形外科を育てた人達 第6回

Francis Glisson(1596-1677)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.750 - P.753

 Glissonはくる病の発見者として我々整形外科医には知られているが,彼は17世紀の英国に於ける傑出した医学者であった.先ず彼の肩書より紹介すると,Cambridge大学の勅任教授でありRoyal Society設立当初よりの会員,又Royal College of Physiciansのメンバーでもあった.彼の誕生は1597年で,Englandの南西部のDorsetのRampishamで生れている.兄弟は9人で彼は2番目であった.大学進学はゆっくりとしていて,20歳でCambridgeのCaius Collegeに入学した.その後は彼は色々と回り道をしている.Caius Collegeを卒業後一時ギリシャ語の教師をしたが,1627年にはOxfordに転じ30歳で医学教育を受け始めた.その頃William Harveyが血液循環に関する論文を発表して医学界を大いに刺激したが,医学研究には先ず解剖学を知ることが大切であると論じているのにGlissonも教えられたのであろう.彼はその後再度Cambridgeに帰り1634年にやっと卒業している.この時彼は37歳であった.しかし彼は決して怠者ではなかった.医学の勉強も自分が納得できるまでゆっくりとやって来たのである.彼の能力は既に認められ卒業後2年で医学部の勅任教授になっている.

臨床経験

多発性骨髄腫の腰椎単純X線診断

著者: 谷本廣道 ,   田島宝

ページ範囲:P.755 - P.759

 従来,比較的稀な血液疾患と考えられていた多発性骨髄腫(以下,M. Mと略す)は,その臨床的特質から,腰背部痛を初発症状として整形外科を訪れることが多い.筆者らは,静岡済生会病院整形外科において,腰背部痛などを主訴として受診したM. M症例9例経験した.M. MのX線像として,頭蓋骨の打ち抜き像(punched-out-lesion)は,特徴的な所見であるが,その他の骨変化についての諸家の報告は,主観的要因が多く鑑別診断が困難な場合が少なくない.そこで今回M. M患者の腰椎単純X線にみられる椎体の形態的特微に注目し,形態計測して腰椎の骨変化に数量的な検索を加えたので報告する.

家族性高脂血症に伴う腱黄色腫の1例

著者: 後藤直史 ,   牧山友三郎 ,   長屋郁郎 ,   浅井富明 ,   衛藤義人 ,   西川彰二 ,   星野久泰 ,   近藤徹 ,   蟹江純一 ,   鈴木由昭 ,   新実光朗

ページ範囲:P.761 - P.764

 高脂血症は中年以上に臨床上高頻度に認められる所見であり,これに起因する障害も多いが,自他覚所見は極めて少ないのが普通である.その中で家族性高脂血症Friderichsen分類TypeⅡは,特徴的な他覚所見が早期から出現するため,その診断的価値も大きいと考えられる.今回我々は家族性高脂血症Friderichsen分類Type Ⅱaに伴うと思われる腱黄色腫の症例を経験し加療する機会を得たので若干の文献的考察を加え報告する.

片麻痺患者に合併した大腿骨頸部転子部骨折の歩行能力の回復程度

著者: 石川勝 ,   小林直人 ,   塚原哲夫 ,   大中正弘 ,   丸山俊章 ,   森義明 ,   藤巻悦夫 ,   上村正吉

ページ範囲:P.765 - P.768

 今回我々は片麻痺患者のリハ中に併発した大腿骨頸部骨折16例について調査し,その受傷側が麻痺側か,またその歩行能力の回復程度と骨折型,整復程度の良否ならびにその固定法との関係を調査し,手術適応の選択並びに手技の可否について反省点を述べ報告する.

掌蹠膿疱症に伴った仙腸関節炎の1例

著者: 清水克時 ,   四方実彦

ページ範囲:P.769 - P.771

 掌蹠膿疱症に伴う骨関節炎は,近年報告があいつぎ,独立した1つの症候群として認められつつある6).大部分の症例で骨関節炎は前胸壁,特に鎖骨周辺に見られ,これに脊椎炎7)や仙腸関節炎5,8)が合併することがときに見られる.最近我々は仙腸関節炎のみを主徴とし,鎖骨周囲病変を伴わない,稀な掌蹠膿疱症例を1例経験したので,その臨床所見,検査所見を中心に報告する.

いわゆる胸肋鎖骨間骨化症について

著者: 白土修 ,   依田有八郎 ,   佐久間隆 ,   後藤英司 ,   橋本友幸 ,   松野丈夫

ページ範囲:P.773 - P.777

 1978年園崎20)は,外観上,胸鎖関節および胸骨柄体部間関節に腫脹がみられ,X線上,同じ部位に異常骨形成をきたす疾患に対し「胸肋鎖骨間骨化症」と命名した.本症は,1974年同じく園崎19)が"左右対称的に鎖骨と第1肋骨との間に骨化をみた4症例"として発表したのが初めてであるが,以後報告の相次ぐ疾患である2〜5,7〜12,17,18,22〜26)
 近年,本症と皮膚科的疾患である掌蹠膿疱症(pustulosis palmaris et plantaris以下,P. P. P.と略す)との関係が注目されてきた1,6,21)が,その病態についての一致した見解はなく,またその疾患名ですら統一されていないのが現状である.今回,我々は本症と考えられる9症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

慢性膵炎に高度の膝関節破壊を合併した1例について

著者: 佐藤幸宏 ,   小野沢敏弘

ページ範囲:P.779 - P.783

 膵疾患に随伴する多関節炎,骨髄の脂肪壊死などは稀で,1872年Ponfickの報告以来,我々が渉猟し得た範囲では94の報告がある.そのうち関節症状についての記載のあるものは34報告39例にすぎない.
 最近我々は慢性膵炎に高度の左膝関節破壊を伴った稀な1症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

片側性特発性下腿外捻の治療経験

著者: 裏辻雅章 ,   武部恭一

ページ範囲:P.785 - P.788

 内反足や変形性膝関節症あるいは下腿の骨折などに伴った下腿の捻転に関しては多くの報告がある.しかし以上のような原因なしに下腿の外捻をきたす場合があり,Arditoら1)は,これを特発性脛骨外捻と報告している.今回我々は特発性下腿外捻と思われる症例に矯正骨切り術を行って満足すべき結果を得たので文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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