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シンポジウム 悪性軟部腫瘍の病理診断をめぐって
軟部悪性腫瘍の肉眼的特徴と組織像
著者: 下田忠和1 山下広1 石川栄世1 姥山勇二2
所属機関: 1東京慈恵会医科大学病理学教室 2国立札幌病院整形外科
ページ範囲:P.823 - P.830
文献購入ページに移動悪性軟部腫瘍(以下肉腫)の正確な病理組織学的診断が治療法の選択および予後の判定に大きな影響を与える.最近肉腫の病理組織診断に電子顕微鏡的観察,組織化学,免疫組織化学的手法1)が用いられるようになり多くの診断困難例が正確に診断されるようになってきている.しかし,これらは何れも補助的診断方法であり,これらのみで肉腫の組織診断が可能になるものではない.むしろ組織発生を知る上で重要な手掛りを与えている.このようなことから肉腫の診断は先ず正確な光顕的診断が重要であるが,このためには病理学的診断の基礎となる肉眼所見の詳細な観察が充分に行われる必要がある.肉腫には発生年齢,発生部位に特徴的なものがあり,ある程度診断の手掛りを得られるものもある.多くの肉腫は肉眼的には類似しており,個々の肉腫の肉眼的特微を詳細に記載した報告はほとんどみられない2,3).本誌面では種種の肉腫の肉眼像と組織像を対比しながら,正確な組織診断を行う上で手掛りとなるような肉眼像の特徴に検討を加えて述べていく.肉腫全般に亘って述べることはできないので,最も頻度の高く,かつ組織学的診断もときに問題となる脂肪肉腫と悪性線維性組織球腫(MFH)を中心にし,以下筋原性,血管原性腫瘍等,また脂肪肉腫とMFHについては繰り返す再発が臨床上大きな問題であるがこの点についても肉眼像,増殖・浸潤形式よりその相異について述べる.
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