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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科19巻1号

1984年01月発行

雑誌目次

巻頭言

第57回日本整形外科学会を開催するにあたって

著者: 松野誠夫

ページ範囲:P.1 - P.2

 第57回日本整形外科学会総会を6月22,23,24の3日間,札幌市に於いて開催できますことは会長と致しまして大変光栄に存じます.
 かえりみますと昭和36年,第35回日本整形外科学会総会を恩師,故島啓吾教授の会長のもとに開催いたしまして以来,実に23年の歳月が流れ,ここに再び私が主催させていただくことになりました.

視座

整形外科と社会

著者: 高松鶴吉

ページ範囲:P.3 - P.3

 私たちは一昨年,リハビリテーション交流セミナーを当地で開催した.恩師の天児先生にはその実行委員長になっていただき,その後も時々その会合でお目にかかる.先生はそこで最近の整形外科医のこの方面への関心の低さを嘆かれるのである.
 昔のことになるが,昭和30年,第28回日整会総会で,東京大学の高木教授は「脳性小児麻痺の治療とその効果」と題した宿題報告をされている.この内容を読むと,先生が社会的治療すなわち障害者に対する福祉法の設定,社会に対する啓蒙活動,あるいはシステムの整備などにも言及されていることがわかる.技術学のレベルをこえ包括的な視点から治療を論じておられるのである.事実,先生の業績は,社会的治療を含む巨大なものであった.

論述

血中補体値よりみたRAの予後の早期診断法

著者: 越智隆弘 ,   米増国雄 ,   岩瀬六郎 ,   津山研一郎 ,   太根康吉郎 ,   米田稔 ,   武田十四也 ,   小野啓郎

ページ範囲:P.4 - P.10

 慢性関節リウマチ(RA)は均一の疾患と言うより,各患者で臨床症状としての共通性はあっても,或る患者は治療に抵抗してどんどん紅織破壊が進むし,又,他の患者ではあまり症状が進行しないという経過は,臨床的に経験することである.これらのRA患者の組織破壊の予後を知る試みは欧米でも行われ,赤沈値やCRP値の高値が続くRA患者の手の組織破壊についての予後は悪い1),とか,CRP値が非常に高値を示す患者の予後は悪い4)などの報告がある.この文中に述べるが,前者の論文は正しいが何年も経過をみてはじめて予後を知り得る方法であり,後者の論文は必ずしも正しくない.
 我々は補体の第一亜成分であるClqの蛋白量(以下Clq値と略す)を調べてゆくうち,RAの患者の組織破壊の予後判定につながる結果に到った6)ので,それらの研究について述べてゆきたい.

高解像力CTによる脊髄腫瘍の診断

著者: 井須豊彦 ,   阿部弘 ,   宮坂和男 ,   竹井秀敏 ,   阿部悟 ,   岩崎喜信 ,   宝金清博 ,   都留美都雄 ,   藤谷正紀

ページ範囲:P.11 - P.19

はじめに
 脊髄腫瘍の診断には,従来,頸椎単純撮影,脊髄造影,血管造影等の検査が用いられてきたが,全身用CT scannerの登場により,これまで診断が困難であった腫瘍自体の描出が可能となり,しかも’非侵襲的に,横断面における情報が容易に得られるようになったことは大きな進歩であった.しかし,初期のCTでは,X線吸収値の非常に低い脂肪腫や6,9,12)X線吸収値の非常に高い石灰化髄膜腫12)が描出されるのみであり,軟部組織陰影個々の識別はかならずしも容易ではなく,plain CTにて,得られる情報は乏しかった6,12).最近,CTの分解能のめざましい向上により,軟部組織陰影の識別は容易となってきている.今回,我々は,高解像力CT(Siemens社Somatom 2)にて,経験した脊髄腫瘍に関して,とくに軟部組織陰影の描出能につき,検討を加えたので報告する.

指線維性腱鞘内(zone 2・3)における手指屈筋腱修復症例の検討

著者: 西島直城 ,   粟屋梧老

ページ範囲:P.21 - P.25

 No man's land(zone 2)における屈筋腱断裂に対する治療は,この10年間に,大きく変ってきた.この余裕のないfibro-osseous tunnel内では,腱の癒合と同時に周囲組織との癒着が必至であることから,損傷腱の直接の端々縫合は不可能とされ,Bunnell以来多くの人々によって遊離腱移植が行われてきた.しかし,1960年代になってLindsay6),Verdan10),Kleinert5)等により,厳しい条件付きで,この領域においても,一時的腱縫合(primary suture)が可能であると報告されてきた.さらにmicrosurgeryの導入,縫合材料の改良,腱の基礎的研究の成果8),技術の向上が相まって,一次的腱縫合によっても良い成績が得られるようになった.最近のこの領域に於ける私達の屈筋腱修復症例を検討し,その処置方法別に結果を比較した.

シンポジウム 関節鏡視下手術

関節鏡視下手術

著者: 池内宏

ページ範囲:P.27 - P.27

 関節鏡視下手術は小さな切開創から関節腔に関節鏡や手術器械を挿入して直視下に手術するので,後療法が容易で早期に社会復帰できる.そのためには関節鏡,手術器械の選択と,その操作の習得が必要である.関節鏡は視野角の大きなものはそれだけ球面収差が大きく,距離,形,大きさの判断に不利なことがあり,視向角も直視鏡,30度および70度前斜視鏡など,手術の目的によって選択が必要となる.また手術内容が高度化するにつれてテレビシステムを利用して助手の協力を得ることも必要になる.手術侵襲を小さく,関節構成体の損傷を少なくするためには小さな手術器械が望ましいが,目的を十分に達することが困難なことがあり,大きすぎると術野に到達させることが困難となる.現在,多くの手術器械が市販され,その選択に戸惑う程である.
 正確な診断のもとに,手術の適応,方法の決定を行い,実施に当っては術野の明視と,手術器械操作のための腔を確保しながら手術を進めることが基本である.関節腔内の紅織すべてが手術対象となるが,今回は主に滑膜,タナおよび半月板を中心として現在活躍中で好成績をあげておられる諸先生によって討論が行われた.滑膜切除術は基礎疾患によって再発は避けられないが,その対策に工夫が重ねられており,半月板についてはそれぞれが異なる器械で,挿入部位,手術操作などに工夫がこらされ,それらの成績ものべられた.鏡視下手術の現況を理解するために経験者,未経験者ともに参考になるものと思う.また,このように鏡視下手術について内容のある論文が掲載され,将来が一層楽しみである.手術成績の向上および今後の鏡視下手術の発展のために,手術経験の多い伊藤先生に敢えて診断法について依頼した.まず関節鏡診断学の習得から始めて,鏡視下手術の基本を容易にできるところから,愛護的に手術操作の習熟に進まれるよう期待したい.

高周波電流切除鏡による膝関節鏡視下手術の展開—滑膜切除術からその他の手術への適応の拡大

著者: 有富寛

ページ範囲:P.28 - P.35

緒言
 最近の関節鏡診断学の著しい進歩は関節鏡視下手術の進展及びその普及をうながし,その臨床成績も報告されはじめた.1972年以来,高周波電流切除鏡を用いて関節鏡視下手術を行ってきたが,その臨床的有用性についてこれまで度々報告してきた.
 今回,高周波電流切除鏡の構造,その後の改良及び術式を概説すると共に,慢性関節リウマチ,いわゆる膝関節水症などに対して行われた高周波電流切除鏡による滑膜切除術(以下SERと略す)を中心に,その他更に展開されたそれによる関節鏡視下手術についてもその適応と臨床成績について述べることにする.

外来鏡視下手術

著者: 藤沢義之 ,   塩見俊次 ,   三馬正幸 ,   増原建二

ページ範囲:P.37 - P.48

はじめに
 鏡視下手術の利点として挙げられることは,関節切開が小さくてすむこと,社会復帰が早く行えること,手術に対する不安感が少なくてすむこと,治療期間が短いため費用が安いことなどであるが,このなかでも,早期社会復帰が最大のmeritであろう.その意味では,従来の関節切開手術の際と同様に入院していたのでは,その期間は以前より短縮されたとはいえ,そのmeritが十分生かされしているとはいえない.
 外国では,外来手術として行われることが少なくないが,ただ,麻酔は全身麻酔で行われており,その点では,人手や費用の面で問題がある.一方,わが国では,脊椎麻酔や硬膜外麻酔がよく用いられているが,手術そのものは,外来にてほとんど行われていないのが現状である(表1)1〜8)

鏡視下半月板切除術の術式および術後成績の検討

著者: 守屋秀繁

ページ範囲:P.49 - P.54

はじめに
 1962年,渡辺によりバケツ柄状損傷に対し初めて行われた鏡視下半月板切除術は,その後,種々の手術手技の開発,進歩と共に,関節鏡,手術器具,最近ではビデオシステムの進歩と相まって,現在では世界的に一種のブームになっている.
 鏡視下半月板切除術は,創が小さく従って手術侵襲が小さい事や社会生活またはスポーツ活動への早期復帰などの他に,常に残った部分の半月板の損傷状態を確認しつつ切除を最小限に,しかも必要部分は充分に,かつ確実に行う事ができるなどの利点がある.さらに症例によっては,より短時間に簡単に切除術を遂行できる場合もある.しかしながら鏡視下半月板切除術を行うためには,充分な半月板病態に対する知識と診断技術を持ち更に手術操作にも習熟している事が必要であろう.さもなければ,やたらに長い手術時間を要したり,関節軟骨などを損傷してしまう結果となってしまう.従って何らかの事情により鏡視下切除を完遂できない場合は,躊躇無く関節切開を行い直視下に半月板切除術を行うべきであると考える.

関節鏡視下半月板切除術の手術成績

著者: 木村雅史 ,   宇田川英一 ,   白倉賢二 ,   浦野公一 ,   山本英之 ,   小林保一 ,   長瀬満夫

ページ範囲:P.55 - P.64

はじめに
 関節鏡視下半月板手術で好成績を得るには半月板異常の詳細な変化と他の関節構成体の異常を把握し,治療はその変化に応じた適切な術式を選択する必要がある.半月板を観察してその辺縁部が安定している場合はこれを温存して切除することが容易であり,また鏡視下半月板縫合の適応のある場合もあり,半月板機能を最大限に生かす術式の選択が可能である.Huckell4)(1965)の半月板切除術の遠隔成績は"Meniscectomy is not a benign procedure.5)と結論するほど不満足なものであった.鏡視下半月板切除術では部分切除およびrim leftとしての切除様式が大半を占め,これらは従来の全切除より変形性関節症変化を惹起する危険の少ないことが期待されるがそれは遠隔成績を待たねばならない.今回,我々は中間成績としての鏡視下半月板切除術の術後成績に検討を加え,合わせて本法の適応と術式の問題点についても言及したい.

膝関節鏡視下手術の為の診断法

著者: 伊藤一忠

ページ範囲:P.65 - P.71

緒言
 近年関節鏡検査8,9)は関節疾患の診断上必要不可欠な補助診断法へと発展し広く普及している.従来知られていなかった関節内病変も次々と解明され臨床的に有用であることが立証された.この発展・普及に伴って関節内病変を鏡視下に処理しようとする試みが多くのArthroscopistによって行われている.特に膝関節においては1959年渡辺式21号関節鏡の開発と膝関節鏡視法の確立以来急速に普及し,様々な関節鏡や手術用器具が試作・開発されると共に種々の鏡視下手術術式が開発されつつある.症例によっては劇的な効果が得られ,膝関節機能への影響も軽微であるため一種のブームとなっているが,未だ確立された治療法ではなく今後更にArthroscopist,光学・工学技術者による創意工夫によって手術用関節鏡,手術器具の開発や手術術式の確立および予後の判定などが要求される分野であり,現状ではこれらを念頭において詳細な鏡視診断を行い,その適応と術式をよく検討した上で施行するべきである.

関節鏡視下手術の検討

著者: 陳永振

ページ範囲:P.73 - P.78

はじめに
 膝内障における関節鏡の応用は重要な手段であり,最近になって次第に注目され,普及しつつある.いろいろな手術は鏡視下に行うことが可能になり,関節鏡専門医は関節切開による手術から鏡視下手術に移りかわりつつある.
 関節鏡視下手術は,渡辺15)により,1954年に関節鼠の摘出,1956年に滑膜に生じた有柄xanthomaの切除・摘出などが行われた.鏡視下半月板部分切除の第1例は,1962年に行われた.1970年池内12)が外側円板状メニスクスの細分全摘出を行ったのが最初である.O'Connor14)は1976年に手術用関節鏡を開発した.1970年代の後半から関節鏡はブームになって,アメリカを始め,各地で講習会が頻回に開かれ,関節鏡専門医が出現し,鏡視下手術は普及しつつある.

整形外科を育てた人達 第12回

Sir James Paget(1814-1899)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.80 - P.83

 骨の生理を研究し骨も生命があり刺激により構築に変化を起こすことを解明したのはJulius Wolff(1836-1902)であることは既に述べているが,骨の病理学を顕微鏡下に開拓したのは英国のJames Pagetである.又Pagetの名を冠した骨の疾患は今日も尚,我々整形外科医の研究の一つの目標になっている.
 さてJames Pagetは1814年にEnglandの南にあるHampshire州のYarmouthに生れた.ここは英国海峡に面した小さな町であるが,父は多数の商船を所有し,国王の船に食糧を供給する役もしていた.母は愛嬌があり,家事には熱心でよく働き,その上に多少不運なことがあっても決して動揺することがなかった.又女性らしく編物が上手で絵も仲々上手であった.兄弟姉妹は全部で16人もあり,彼は8番目であった.その中で兄のGeorge Pagetは特に秀才でGonvilleとCaius Collegeで医学を勉強して遂にCambridge大学の教授になっている.

手術手技シリーズ 脊椎の手術・18

頸椎椎管拡大術(服部法)の手技

著者: 河合伸也

ページ範囲:P.85 - P.93

緒言
 頸椎部の脊髄症に対して後方進入法による頸髄の除圧手術は古くから行われてきた.しかしながら術後成績が必ずしも優れず,前方進入法による除圧・固定が優先して考えられてきた.近年,手術器具の進歩によって後方進入法による除圧手術に際して,極めて愛護的な操作を行うことができるようになり,それに伴って術後成績も飛躍的に向上し,後方進入法による除圧手術の有用性が再認識されてきた.そのきっかけは桐田の広汎同時除圧椎弓切除術である.現在では後方進入法も前方進入法と同様の成績を得ることができ,それぞれの適応に従ってその両者をうまく使い分けていくことが最善の方法である.ただ椎弓切除による後方除圧手術では頸椎の後方支持組織をとり除くこととなり,頸椎の支持性の減弱を生ずることは否めないし,とくに若い年代に対する椎弓切除では術後の頸椎の変形はかなりの頻度で出現する.
 1971年服部は十分な後方除圧と共に構築的再建を同時に行い,術後の頸椎の支持性の減弱に対する危惧を少なくした"頸椎椎管拡大術"を考案した.その後山口大学整形外科ではこれまでに100余例の症例に頸椎椎管拡大術を施行し,その追跡調査を重ねて,優れた術後成績と頸椎の支持性の確保が得られている.

臨床経験

上位頸髄砂時計腫の3治験例

著者: 山田治基 ,   平林洌 ,   若野紘一 ,   泉田重雄 ,   戸谷重雄 ,   中村恒夫 ,   石名田洋一 ,   市原真仁

ページ範囲:P.95 - P.101

 脊髄砂時計腫は,その特徴ある形態からAntoni2)(1920)により命名されたが,腫瘍の存在部位から,その外科的侵襲法に工夫を要する点でも興味深い.今回われわれは,上位頸髄に発生した脊髄砂時計腫3例を経験したので若干の考按を加えて報告する.

膝蓋骨に発生した化膿性骨髄炎の2例

著者: 藤田雅章 ,   田口厚 ,   麻生英保 ,   山田正幸 ,   平田重則

ページ範囲:P.103 - P.107

 膝蓋骨は,人体のなかで最大の種子骨であり,この部の化膿性骨髄炎はきわめてまれとされている.最近2例の膝蓋骨骨髄炎を経験し,初期の診断に苦慮したが,予後は極めて良好だったので,若干の文献的考察も加えて報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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