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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科19巻12号

1984年12月発行

雑誌目次

視座

学会のありかたについて

著者: 棈松紀雄

ページ範囲:P.1313 - P.1313

 今年も6月の絶好の季節のもとに,札幌で盛大な日本整形外科学会が催された事は御同慶に堪えない次第です.ただ,今回,目を見張った事が一つあったので今後の為にやはり発言したかたの意図をも尊重して皆で考えるべきではないかと思う.それは評議員会の議題の中に会員の一人,これは札幌地区から出ておられるかたですが,そのかたが学会参加費の値上げを提案している.過去こういう生ぐさい話はあまりきかないわけですが,こんどの学会開催にあたり,1億何千万円かかる.今年は1万円ちょっと越えた参加費を徴収したが,それでも到底焼け石に水であるということを言っておられた.そして来年からはできるならば外国の学会みたいに参加費を5万円にでも6万円にでもして,それで自分達で学会を運営すべきではないかという発言でしたが,評議会最後の議題で,そう多くのディスカッションもなくすぐ終ったわけです.ところが翌日総会の席でやはり評議員の一人のOさんが,それを引きつぎ,昨日具体的に1億何千万円という数字が出たけれども,さて今までの学会長さんはいくらかかったか,ここで御披露願いたいということを発言しました.ところが学会長経験者は沢山おられましたが,皆さん黙して語らずという状態でした.

論述

慈大式人工膝関節の耐久性について

著者: 富田泰次 ,   室田景久 ,   神前智一 ,   穂苅行貴 ,   金尾豊 ,   杉山肇 ,   大谷卓也

ページ範囲:P.1314 - P.1321

はじめに
 慈大式蝶番型人工膝関節は,昭和37年大腿骨の巨細胞腫例に,アクリル樹脂製のものを用いたのが初めであるが,以後素材や構造に改良を加え,数回のモデルチェンジを経て,昭和47年にはユニバーサル型人工膝関節が完成され,今日に至っている3,7).ユニバーサル型人工膝関節は,図1の如く,ステンレス鋼製の長軸,蝶番関節で,軸受け部分にはHDP製のスリーブがはめ込まれており,摩擦を最小限にした,low-friction typeのものである.現在,著者らはこのtypeのものを単に慈大式人工膝関節と称している.
 昭和37年以降,使用した人工膝関節のtype別症例数は,表1の如くであるが,アクリル樹脂製のものは,17例中2例に折損を生じたため,ユニバーサル型で再置換しており,耐摩耗性に劣ることから現在では全く使用していない.今回は,ユニバーサル型のものについてのみ,その合併症,とくに折損について述べる.

四肢軟部腫瘍における超音波診断の役割

著者: 松本誠一 ,   川口智義 ,   網野勝久 ,   真鍋淳 ,   古屋光太郎 ,   和田成仁 ,   磯辺靖

ページ範囲:P.1323 - P.1334

はじめに
 超音波診断(以下Echo)は,現在臨床の様々な分野で用いられている検査法であり,その有用性は広く認められている.四肢軟部腫瘍の診断においても,本検査法を応用した報告は,いくつかみられる7,10).しかし,それらのほとんどは,腫瘍の性格をEcho画像から診断しようとしたものであり,その結果Echoの臨床応用上の価値は低いとの印象を与えてきた.しかし,我々は,本検査法を主に腫瘍の有無あるいは局在を知る診断手技として,その臨床的有効性を認めている.そこで本稿では再度Echoの臨床応用の可能性について検討を加える.

Extra-abdominal desmoid tumor 18症例の検討

著者: 藤内守 ,   長田大助 ,   青山茂樹 ,   西川洋三 ,   森川公一 ,   井形高明 ,   松森茂

ページ範囲:P.1335 - P.1344

 Extra-abdominal desmoid tumorは若年者の深部の筋,腱鞘より発生し,組織学的には良性であるが,局所浸潤傾向が強く,外科的治療に抵抗する腫瘍であり,手術治療を繰り返すことも少なくない.そして,再発ごとに罹患肢の機能障害が強く,終局においては,罹患肢の離切断が余儀なくされた症例も報告されている.しかしながら,頻回の再発を示すにもかかわらず組織学的に悪性変化をきたしたという報告はない.
 本腫瘍の報告は欧米においては比較的多くみられるが,本邦では症例報告のみが多く,まとまった報告は少ない.今回,私達は徳島大学整形外科,及びその関連病院より18症例のextra-abdominal desmoid tumorを収録し,検討する機会を得たので報告する.

Living bone graftの経験—術後経過と合併症について

著者: 末松典明 ,   平山隆三 ,   梅藤千秋 ,   井上謙一 ,   竹光義治

ページ範囲:P.1345 - P.1354

はじめに
 外傷後や骨腫瘍摘出後などの四肢の広範囲な骨欠損,皮膚,骨の同時欠損症例の修復再建には,困難を伴うことが多い.このような症例に対しては近年microsurgical techniqueを利用した血管柄付骨移植(living bone graft),free osteocutaneous flapが行われ良好な結果を得,確立された術式になってきている.しかし術後長期の経過や合併症についての報告は極めて少ない.我々が経験した症例につきこの点を中心に若干の考察を加えて報告する.

下腿複雑骨折の皮膚の扱い方について

著者: 河野稔彦 ,   横山孝 ,   瀬山清貴 ,   赤津博美 ,   土田義隆 ,   児島忠雄

ページ範囲:P.1355 - P.1364

はじめに
 下腿複雑骨折は,複雑骨折のなかでももっとも頻度が高く,日常遭遇する機会が多い.下腿は皮膚の血行が悪く,初期治療の創傷の処置が大切で,この適・不適が複雑骨折の予後を左右すると言っても過言ではない.
 複雑骨折は,一次的に開放創を閉鎖して感染の機会を減少させ,骨及び軟部組織を生理的状態に戻し,同時に骨接合術を行うことが望ましい.複雑骨折と言っても骨片によって皮膚が穿通された程度の軽いものから,骨・筋肉・皮膚の欠損を伴う重度損傷のものまで種々の程度のものがあり,その治療は困難な場合が多い.

生体力学的にみたペルテス病の発生—軟骨浮腫の仮定にたって

著者: 上尾豊二 ,   堤定美 ,   山室隆夫 ,   奥村秀雄

ページ範囲:P.1365 - P.1373

はじめに
 ペルテス病の原因の究明には,主に組織学的な所見よりの考察がなされ,そこでは骨頭内の壊死が広範にみられるところから,栄養血管の閉塞が病因であるとする考えが最も一般的である.そして,その血管閉塞をきたす原因としては,広義の外傷による動脈の狭窄9),滑膜炎に伴う関節内圧の増大による血流障害,関節軟骨の浮腫による骨頭栄養血管の閉塞等1)が考えられている.しかし,血管閉塞がペルテス病の一次的な病因であるならば,本来血管の豊富なメタフィージスの骨変化をどのように説明するのであろうか.また,骨端核の壊死性変化はしばしば外側より認められ,この部は栄養血管の進入部でもあるから,阻血性壊死のばあいには血管支配の末梢部より壊死が進展するという原則にも矛盾していることになる.
 ところで我々はペルテス病の初期において,骨変化を全く認めない段階において,股関節関節裂隙の拡大を認めることを経験する(図1-a,b).

手術手技シリーズ 脊椎の手術・25

胸椎および胸腰椎移行部 後縦靱帯骨化症,黄色靱帯骨化症の手術

著者: 酒匂崇 ,   森園良幸

ページ範囲:P.1375 - P.1381

はじめに
 黄色靱帯骨化(OYL)や後縦靱帯骨化(OPLL)により胸椎部の脊髄障害や神経障害の出現する事が知られるようになり,本症の病態の認識の深まりと共に手術症例が増加しつつある.手術は椎弓切除による除圧が広く行われている.骨化により脊柱管は高度の狭窄の状態にあり余裕空間に乏しいため,手術操作により易損性になった脊髄を損傷し麻痺の増悪を来す危険性が多くあり,エアードリルを使用しての愛護的な手術が絶対に必要である.この論文では著者らの行っている方法を述べ,観血的治療の問題点にも触れる.

整形外科を育てた人達 第22回

Albin Lambotte(1866-1955)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1382 - P.1385

 Albin Lambotteは骨折の手術の創始者の一人として日本でも広く知られているが,Belgiumの整形外科学会の初代会長として1921年に学会を設立したのでBelgiumの代表的な整形外科学者と言っても過言ではないと思う.

臨床経験

Salmonellaによる化膿性脊椎炎の1治験例

著者: 米澤幸平 ,   樋口雅章 ,   川岸利光 ,   中村孝 ,   金粕浩一 ,   沼田仁成 ,   高橋啓介 ,   藤田国政

ページ範囲:P.1387 - P.1391

 化膿性脊椎炎,脊椎カリエス,脊椎腫瘍の鑑別はしばしば困難である.最近,我々は術前脊椎カリエスと診断していたが,病巣部の培養よりSalmonellaが検出された化膿性脊椎炎の1症例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

稀な足部舟状骨骨折の治療経験

著者: 竹田谷寛 ,   奥田智 ,   清家重郷 ,   細見壮太郎

ページ範囲:P.1393 - P.1397

 足部舟状骨骨折は比較的まれな骨折である6,8,9).このうち舟状骨背側の剥離骨折は時々みられるが,体部の単独骨折は少ない.また他の骨折を合併する事もあり,頑固な障害を残すことも珍しくない.今回我々は足部舟状骨骨折8例を経験したので報告する.

Localized Hypertrophic Neuropathyの1例

著者: 浅井富明 ,   牧山友三郎 ,   長屋郁郎 ,   衛藤義人 ,   赤木滋 ,   鈴木由昭

ページ範囲:P.1399 - P.1402

 末梢神経の間質性肥厚性病変はDejerine-Sottas syndromeをはじめとして多数の疾患に認められる.しかし,いずれも病変部位は多発性であることが多く,単一の神経に限局して発生する間質性肥厚性病変はきわめて稀である.最近,われわれは24歳,女の腓骨神経に発生したlocalized hypertrophic neuropathy(限局性肥厚性神経症,以下LHNと略す)の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

サファイア・スクリューの臨床応用

著者: 浅田莞爾 ,   斧出安弘 ,   楠正敬 ,   吉田研二郎 ,   斎藤英雄 ,   飯田伊佐男 ,   安部治郎 ,   佐々木健陽 ,   田中直史 ,   坂本和彦 ,   島津晃

ページ範囲:P.1403 - P.1409

はじめに
 単結晶アルミナ・セラミック・スクリュー(サファイア・スクリュー)は京セラ(バイオセラム®)により開発され,整形外科領域における基礎的研究,臨床的応用が敷田12)らにより始められ,優れた生体親和性を有し,従来の金属スクリューを越える可能性を有する生体固定材料として広く本邦で利用されるに至っている.その高い生体親和性は蟹江6,7),Mckinney9)らの主として組織学的な実験検索により実証され,また現在までの種々の臨床応用を通じて確認されている3〜5).しかしその反面,種々の短所,欠点について論じられつつあるのも事実である.すなわちセラミックスであるがゆえの脆性,少ない弾性,生体との大きな弾性差,さらに脆性のために手術に際し注意深いとり扱いが必要であり,またceramic同志あるいは金属との直接接触するような併用の不可能などが大きな使用上の弱点として考えられる,したがって,大井,大西11)がのべているように当初,金属スクリューに代る生体材料として登場したサファイア・スクリューは現在では一般末梢骨の接合よりもむしろ生体内深部の骨接合,移植骨の固定,セラミックインプラントの固定など,独自の用途に使用されているのが現状である.当教室でも昭和55年以来サファイア・スクリューを主として骨固定材料として臨床に用いてきたので,今回短期的ではあるが,その臨床における実際,および使用経験を通じての問題点について報告する.

頸部神経芽細胞腫の1例

著者: 徳橋泰明 ,   保田勉 ,   佐藤雅人 ,   林泰秀

ページ範囲:P.1411 - P.1415

 神経芽細胞腫(neuroblastoma)は小児に好発する悪性腫瘍の1つであるが,頸部原発例は比較的まれとされている.今回,われわれは筋性斜頸と診断され,経過観察中のところ,実際にはまれな頸部原発の神経芽細胞腫であった1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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