臨床経験
切断肢再接着術後にmultiple organ failureを来した1例
著者:
土井一輝1
河合伸也1
中村修二1
前川剛志2
坂部武史2
所属機関:
1山口大学医学部整形外科学教室
2山口大学医学部麻酔科,集中治療部
ページ範囲:P.183 - P.187
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切断肢再接着術後におこってくる重篤な全身合併症としては,再接着術直後におこるreplantation toxemia17)と,その後,亜急性におこってくるDICとcrush syndrome9,14)が報告されている.特に,大腿切断再接着術後においては,crush syndromeの合併は必発であり文献上,報告9,14)の見られる症例は全例crush syndromeのために死亡している.腎不全の治療法が進歩した今日においては,crush syndromeの急性腎不全の診断・予防は困難でなく,致命率を高めている原因は,急性腎不全に続いておこる全身主要臓器の合併症の有無にあると考えられる.このcrush syndromeの末期状態をEiseman3)が複数の臓器が同時あるいは連続的に機能不全をおこしてくる状態に対して命名したmultiple organ failure4,16)としてとらえ,早期診断,早期治療を行えば,救命することは可能であり,更に近い将来,大腿切断の再接着も安全に行える時がくるものと思われる.
今回,報告する自験例は,再接着の目的は達し得なかったが,multiple organ failure(以下,MOFと略す)の治療には成功し救命しえたので,今だ,整形外科領域において報告の見られないMOFの概念と治療原則について,自験例の反省も含めて報告する.