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症例検討会 骨・軟部腫瘍13例
〔症例2〕右大腿遠位後面軟部腫瘍(Synovial Sarcoma)
著者: 磯辺靖1 川口智義1 網野勝久1 松本誠一1 真鍋淳1 北川知行2 町並陸生2 古屋光太郎3 荒井孝和3 和田成仁3
所属機関: 1癌研整形外科 2癌研整形病理 3東京医科歯科大学整形外科
ページ範囲:P.243 - P.246
文献購入ページに移動昭和56年8月,右大腿遠位後面の径2cmの腫瘤に気付くも放置していた.自発痛,圧痛はなかった.さらに同年10月,近医を受診し,腫瘍と診断されたが放置していたところ,腫瘤は次第に増大し,疼痛が出現するにいたり,昭和57年5月8日,当科を受診した.当科初診時,右大腿遠位後面に8×9cmの境界明瞭,弾性硬の腫瘤をふれた.局所熱感はあるが,圧痛,拍動は認めなかった.骨,皮膚との可動性が認められた.Xerographyでは腫瘍境界が描出されず,偏位した筋膜像のみが認められることから,筋肉内腫瘍であることが診断された.腫瘍内には網状の石灰化,あるいは骨形成がみられた(図2-1).超音波検査では,大腿後面に6.9cmの長軸径を有するhypoechoicな腫瘍像が認められた.穿刺細胞診はclass Vであった.血管造影では著明に濃染するが,膝窩動脈の偏位や壁の不整はみとめられない.CT検査では,二頭筋内に,石灰化を伴う腫瘤像が認められた(CT値40〜48H.U.).同年5月19日,広範切除術を施行した.切除材料でみると,腫瘍は二頭筋内に限局しており,近位は腫瘍から6cmの距離で,遠位は同筋の骨停止部で切除され,横方向にはいずれも筋膜あるいは腱組織で被包されていた.切除材料の割面の観察では,腫瘍は帯白黄土色充実性で割面膨隆を示し,弾性硬で,ほぼ全周にわたって偽被膜を有していた.
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