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論述
高濃縮フィブリノーゲン(Tisseel®)を使用した神経接合に関する実験的研究—第2報 軸索内輸送の測定による軸索伸長速度の計測
著者: 光嶋勲1 波利井清紀1 松林薫美1
所属機関: 1東京大学医学部形成外科学教室
ページ範囲:P.659 - P.664
文献購入ページに移動近年,分子生物学の進歩により細胞レベルの蛋白代謝能を測定することが可能になった.この技術は神経生化学の領域にも応用され,神経細胞で合成された蛋白が細胞骨格とともに軸索内を輸送される機構が解明されつつある.これは軸索内輸送(Axoplasmic transport)と命名され,神経細胞の代謝,軸索再生,末梢神経障害など多方面において利用されはじめている5).
さて近年,組織の生理的な接着を目的とした高濃縮フィブリノーゲン(Tisseel®)が開発され,すでに耳鼻科10),口腔外科7),整形外科11)などの領域において臨床手術への応用が検討されはじめている.われわれは,神経外科領域においてTisseel®の臨床応用を検討するために,これを用いた神経再生の状態を組織定量的に検索し,従来の縫合法によるコントロール群と比較してすでに報告した6).その結果,再生軸索の成長は縫合群とほぼ同レベルであり,高濃縮フィブリノーゲンに由来する瘢痕組織が接合部における再生軸索の伸長を障害する危険性は全く認められないことが解った.そこで今回は,軸索内輸送の経時的変化を観察することにより,接合部の再生軸索に及ぼす高濃縮フィブリノーゲンの影響を神経細胞の機能的な観点より検索し,若干の考察を加えて報告する.
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