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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科19巻8号

1984年08月発行

雑誌目次

視座

臨床長期成績の重要性

著者: 長屋郁郎

ページ範囲:P.855 - P.855

 最近,整形外科分野の学会研究会における研究発表は数えきれない数となり,その情報の交通整理に追われている.しかし,この多数の報告の中に,どの位内容のある研究があるのだろうか? 特に目立つのは欧米に比べ計画性のある腰をすえた臨床的研究が少ない点にあると思っている.
 医療は年々,生命の延長,社会環境の変化,医療技術の進歩による対象疾患の種類性質の変化とともに発展し,これとともに外科的治療の効果判定,手術適応,手術法の適否を決めるには長期成績の追及が必要となってきている.従来より,整形外科では成長,老化に直接関係する要因が多いことから長期的観点からの検討が行われており,先天股脱に代表される乳幼児の治療法の効果判定は思春期を越え成人まで20年以上の検討が一部で試みられていたが,追跡率が低く問題点も多かった.

論述

アルミナ・セラミック骨頭を用いた表面置換型人工股関節

著者: 浅田莞爾 ,   堀沢欣弘 ,   安部治郎 ,   斉藤英雄 ,   清水孝修 ,   佐々木健陽 ,   田中直史 ,   島津晃 ,   辰己真徳 ,   川口昭夫

ページ範囲:P.856 - P.865

はじめに
 当教室では1978年以来,1980年までWagner13)型のresurface prosthesisおよびI. C. LH.8)型のtotal hip arthroplastyを比較的骨頭条件の良い症例を選んで行ってきたが,現時点でのそれらの臨床成績は12例,14関節のうち4例4関節にlooseningを認めており,その部位は4例全例が骨頭部のloosening,臼蓋側のlooseningは1例のみであった.これらloosening例のうちでCharnley型人工股関節により再置換した症例の摘出大腿骨頭の組織像をみると人工骨頭に接した骨組織に著明な肉芽組織の増殖を認め,この肉芽組織中には異物反応と考えられる多核巨細胞を多く含んでいる(図8).これらの両タイプともに基本的には金属骨頭対H. D. P.ソケット型の人工股関節であり,骨組織との固着には骨セメントを使用している.

仙骨部腫瘍の外科療法について

著者: 大幸俊三 ,   鳥山貞宜 ,   ,  

ページ範囲:P.866 - P.874

はじめに
 仙骨に発生する腫瘍の外科療法は診断の遅延2,5,30)や解剖学的特殊性から極めて困難なため,しばしば,保存的治療に頼らざるを得なかった.しかし,最近の医学の進歩と技術の向上に伴い,早期発見,早期治療そして積極的外科療法が行われてきている.今回,これら仙骨腫瘍の外科療法の具体的な方法,合併症,予後について述べる.

脊柱後彎症に対する手術的治療法とその成績

著者: 大谷清 ,   米山芳夫 ,   相原忠彦 ,   田中昭彦 ,   藤井英治 ,   中井定明 ,   柴崎啓一 ,   千葉英史

ページ範囲:P.875 - P.884

はじめに
 日常臨床で脊柱後彎症患者に遭遇する機会は少ない.しかし,側彎症と比べた場合に,脊柱後彎のもたらす弊害は少なくなく,しかも重篤なものになり易い.なかんずく,脊髄麻痺は最も注目しなければならない合併症である.一方,後彎症に対する治療は手術的療法に委ねる場合が多いが,手術療法とて容易でないばかりか画一的にきめ難い.例えば脊柱後彎の最も重要な合併症である脊髄麻痺合併例に対して脊髄麻痺の原因を探求した上で,より効果的で安全な手術法の選択が望まれる.Metrizamide myelographyの普及により後彎と脊髄の関係についてより詳細な観察が可能となったことは幸いである.脊柱後彎症に対しては病態を十分把握した上で,個々の症例に応じた手術法を選択しなければならない.
 本稿では様々の病因と病態の脊柱後彎症に対する我々の手術経験とその成績を報告し,合わせて手術法の選択,適応に関する我々の見解を述べる.

手術手技シリーズ 脊椎の手術・22

頸椎の脱臼・骨折に対する手術手技

著者: 井形高明 ,   正木国弘 ,   村瀬正昭

ページ範囲:P.885 - P.895

 頸椎の脱臼骨折に対する治療の骨子が骨傷の整復固定による脊椎の再建と脊髄保護作用の確保にあり,脊髄障害の合併例には脊髄障害の加重防止と機能的障害の改善,合併症予防ならびにリハビリテーションの早期開始を両立しなければならない.これに対し,幾多の挑戦がなされ,関係領域の発展もあって,長足の進歩がみられているが,治療法の選択,とくに勧血的療法の適応についての議論は依然として絶えない.
 われわれは,本症に対する観血的療法は無選択的に行うべきではないと考えている.保存的療法を行うことにより,改善が得られないものに対してのみ手術を選択,適応している.すなわち,早期手術としては嵌合を伴った脱臼骨折や骨片転位のあるbursting fractureに対する整復固定術,残遺の脊髄圧迫障害を認める不全麻痺に対する除圧術,また,晩期手術としては不安定椎に対する固定術,脊椎変形やspondylosisの発展に伴った脊髄障害に対する脊髄除圧術など限られた範囲である.いずれもわれわれの本症に対するroutine treatment及び管理方式を併用し合併症の予防,局所の固定,ならびに術後管理に万全を期している.

整形外科を育てた人達 第18回

Vittorio Putti(1880-1940)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.896 - P.899

 今まで1年以上,独・英・米・仏の整形外科の開拓者達を記述して来たが,イタリヤの整形外科も軽視できない.イタリヤにはまずAntonius Scarpa(1747-1832)をはじめとし,Francesco Rizzoli(1809-1880)やAlessandro Codivilla(1861-1912)を忘れてはならないだろう.しかし,彼らはいずれも外科医として有名になった人達で整形外科の専門家としては必ずしも適当でないと言う人もあると思うが,整形外科の専門家として国際的に認められるのはVittorio Puttiであろう.彼はRizzoliの名を冠したBolognaのInstituto Ortopedico Rizzoliの教授でもあり,国際的に活躍し日本でも彼の名は広く知られているので,今回はまずVittorio Puttiを紹介することにした.

臨床経験

骨化を伴った悪性神経線維腫の1症例

著者: 宮内義純 ,   三井宜夫 ,   西山茂晴 ,   西川勝仁 ,   増原建二

ページ範囲:P.901 - P.905

 von Recklinghausen病は,皮下に多発する神経線維腫,café au lait spots,骨変化などを主徴とする系統疾患であり,神経線維腫が悪性化をきたすことはよく知られている.われわれは,同病を基礎疾患として発生したと考えられる骨化を伴った悪性神経線維腫の1例を経験したので,光顕的ならびに電顕的検索結果について報告する.

母指末節骨に発生したOsteoid osteomaの1例

著者: 多田博 ,   平山隆三 ,   竹光義治

ページ範囲:P.907 - P.910

 1935年Jaffe9)が骨に発生し,骨様組織を形成する良性腫瘍をosteoid osteomaと命名して以来,多くの報告を見るが,その発生部位としては,大腿骨・脛骨が過半数を占め5,6),手,殊に末節骨においては極めて稀であり,本邦では文献上4例の報告を見るに過ぎない.今回われわれは母指末節骨に発生したosteoid osteomaの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

脂肪腫による手根管症候群の1例

著者: 須藤容章 ,   石川浩三 ,   北村博之 ,   藤田仁 ,   岡田温 ,   雑賀興慶 ,   高橋健志郎

ページ範囲:P.911 - P.913

 一般に良性の神経外腫瘍によって神経が圧迫されて二次的に神経麻痺を起こすことは稀であると言われている1).最近,我々は神経外脂肪腫により発生した手根管症候群の1例を経験したので報告する.

単純型骨性合指症を合併した先天性絞扼輪症候群の1例

著者: 荻野利彦 ,   石井清一 ,   加藤貞利 ,   塩野寛

ページ範囲:P.915 - P.918

 上肢先天奇形の中で,合指症は多指症と並んで最も出現頻度の高い奇形の一つである.これら合指症の中には,短指や欠指などを伴わない単純型合指症10)の外に,acrocephalosyndactylyあるいは,先天性絞扼輪症候群の部分症状としての合指症,および短合指症等が含まれている.以上の各型の合指症の発現機序は,一般に異なっていると考えられている.発現機序の異なった二つの型の合指症が同一症例に合併する場合は,極めて稀である.今回,先天性絞扼輪症候群によるacrosyndactylyと単純型合指症が合併した症例を治療する機会を得たので,両奇形の合併の成立機序に考察を加えて報告する.

Achondroplasiaにみられたloose shoulderの1例

著者: 西山和男 ,   三枝憲成 ,   難波健二 ,   春日秀彦 ,   三笠元彦

ページ範囲:P.919 - P.922

 Achondroplasiaの合併症として,脊椎管狭窄による麻痺についてはしばしば報告されているが,いわゆるloose shoulderを合併した症例の報告はない.今回,我我はその1例を経験したので主に発生病態について考察を加えて報告する.

肩甲軋音症を伴った弾性線維腫の1例

著者: 北潔 ,   辻充男 ,   園田万史 ,   藤田久夫 ,   吉田憲一

ページ範囲:P.923 - P.926

 最近われわれは兵庫県加石川市居住者で右肩甲胸廓関節に弾発現象を来たした背部弾性線維種の1例を経験したので報告する.

股関節に発生したSynovial chondromatosisの5例

著者: 大塩至 ,   増田武志 ,   深沢雅則 ,   紺野拓志 ,   高橋賢

ページ範囲:P.927 - P.932

 Synovial chondromatosisは肘・膝関節に多く見られ股関節では比較的稀な疾患とされている.当科ではこれまで股関節のsynovial chondromatosisを5例経験している.これら5例を全例follow-upし得たので,本症を主に股関節症発症の有無の観点より検討し報告する.

高度な膝変形を合併したTumoral calcinosisの1例

著者: 山崎京子 ,   黒坂昌弘 ,   水野耕作 ,   宇野和子 ,   武部恭一 ,   広畑和志 ,   藤田拓男

ページ範囲:P.933 - P.939

 Tumoral calcinosis(腫瘤性石灰化症)は軟部組織への異常石灰沈着であるcalcinosisの特殊型で,本邦では極めて稀とされている.その上,この疾患では骨に異常をみることは殆んどないと述べられている.今回,我々は膝に特異な骨変形を生じた興味ある症例を経験し,これに矯正骨切術を施行したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

リンパ行性転移のみられた骨肉腫の1例

著者: 高田正三 ,   水野耕作 ,   松田俊雄 ,   清水富男 ,   前田昌穂 ,   武田善樹

ページ範囲:P.941 - P.945

 骨肉腫の転移様式としては血行性転移が主であり,リンパ行性転移は比較的稀とされている.今回われわれは,特異的な骨転移の様相を示し,剖検によりリンパ行性転移と確認された骨肉腫の1例を経験したので報告する.

距骨体部における矢状面での縦割れ骨折の経験

著者: 古村信一郎 ,   小野沢敏広 ,   末松典明 ,   内田幹也

ページ範囲:P.947 - P.950

 距骨骨折の発生頻度は,Coltart1)によると,全骨折中約1%であり,Sneppen及びBuhl8)によれば足関節骨折の約1%である.中でも距骨体部骨折の頻度は少なく,全骨折中約0.1%1)と報告されている.今回我々は,距骨体部骨折中でも成書2,4,9,10)に記載のない,内果骨折を伴った矢状面縦割れ骨折を経験したので,受傷機転,治療,阻血性壊死の可能性について検討した.

骨・軟部組織の肥大を伴う筋肉内血管腫の1例

著者: 中村信義 ,   川端秀彦 ,   河井秀夫 ,   露口雄一 ,   浜田秀樹

ページ範囲:P.951 - P.954

 皮膚血管腫に片側四肢過成長を伴う症例は,Klippel-Weber症候群として知られているが,我々は右短趾屈筋群の筋肉内血管腫に,骨・軟部組織の肥大を伴う症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.

足舟状骨に生じたnon-ossifying fibromaの1例

著者: 宮川俊平 ,   陶山哲夫 ,   冲永修二 ,   井口晶夫 ,   別所和也 ,   檜垣昇三

ページ範囲:P.955 - P.958

 Non-ossifying fibroma1〜3)は,若年者の長管骨,特に大腿骨,脛骨に好発する腫瘍であるが,今回われわれは,足舟状骨に生じたnon-ossifying fibromaの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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