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論述
軟部腫瘍の臨床診断における迅速穿刺細胞診の応用
著者: 川口智義1 網野勝久1 磯辺靖1 松本誠一1 真鍋淳1 都竹正文2 北川知行3 古屋光太郎4 和田成仁4 渕岡道行4
所属機関: 1癌研附属病院整形外科 2癌研附属病院細胞診断部 3癌研附属病院病理部 4東京医科歯科大学整形外科
ページ範囲:P.962 - P.975
文献購入ページに移動最近,患者に軟部腫瘍の認識が高まり,わずかな腫脹や小腫瘤を主訴として来院する事が多くなった.ちなみに昨年1年間に軟部腫瘍を心配して当院を受診した患者は約500例であり,そのうち半数は関節炎,ガングリオン,類上皮嚢腫,血管腫,リンパ管睡,脂肪腫など臨床診断の容易な例で治療対象から除外されている,すなわち残り242例が手術の対象となったが,そのうちには皮膚癌,デスモイド,隆起性皮膚線維肉腫各3例と28例の悪性軟部腫瘍例があった.軟部の腫瘤のうち皮下など浅在性の小病変に対しては,摘出生検術が行われたが,ある程度の大きさをもった腫瘤の良・悪性を的確かつ迅速に鑑別するのに最も威力を発揮したのは穿刺迅速細胞診であった.この穿刺迅速細胞診は,1980年2月から軟部腫瘍診療に際しての初診時検査として採用したもので,当初は細胞診の信頼性に不安があったため,生検術を併用せざるをえない例が多かった.しかし現在では,ほとんどの例で細胞診のみ,あるいは同時に得られた針生検診を併用して治療法を決定し術前に切開生検を行うことはむしろ稀になりつつある.そこで本稿では現在の軟部腫瘍診療においての,画像診断,穿刺細胞診,生検診らのかかわりを具体例で示し,迅速穿刺細胞診の臨床応用について紹介したい.
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