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論述
胸腰移行部椎間板ヘルニアに対する前方侵襲法
著者: 池田亀夫1 池田彬1
所属機関: 1慶応義塾大学医学部整形外科学教室
ページ範囲:P.5 - P.13
文献購入ページに移動胸部椎間板ヘルニアの報告は,Antoni(1931),ついでElsberot(1931)をもつて嚆矢とし,1964年までに欧米では126例の発表があるが,本邦では6例の報告をみるのみで,われわれの5例の自家経験を合せても僅々11例を算するにすぎない.
胸腰移行部椎間板ヘルニアは慢性進行性の経過を辿り,始め単なる知覚あるいは運動障害にすぎなかつたものが,遂には膀胱,直腸障害を併発し,高度の脊髄麻痺へと進展する,従つて早期に根治手術が要請される理で,幾多の手術療法が試みられてきた.しかし,従来の手術成績は丈献及び自家教室例の示すように屡々不良に終つている.この原因として,発生部位及びヘルニア自体の解剖学的特殊性に基づく侵襲や剔出の困難さ,さらに診断の遅延が挙げられる.就中,前者は従来一般に採用されてきた後方侵襲を踏襲する限り不可避的である。この不利を解決せんとしてCrafoordら(1958)は開胸後,窓あけ手術(Fenestration)を行ない,髄核のみ掻爬し,Seddon(1935),Hulme(1960)らは肋骨横突起切除により側方侵襲を試みたが,いずれも視野の狭小,剔出の不完全,術後再発の危険性,脊椎の不安定性,等の欠点を有する.
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