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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科2巻10号

1967年10月発行

雑誌目次

視座

骨腫瘍の診断と分類の困難性

著者: 池田亀夫

ページ範囲:P.983 - P.983

 癌が人間に知られてから既に3000年以上の歴史があるというが,現代の科学的癌学の発生はまだ50年をでない.最近,癌学の各分野における研究,開拓は瞠目に価する.骨腫瘍の開拓はこれより遅れて発足したが,最近の発展は実に目覚ましい.
 日本において骨腫瘍の登録制度が実施されてから既に約10年になんなんとする.整形外科医をはじめ,他科の医師の関心が高まるにつれ,いろいろと協同討議の場ももたれ,骨腫瘍の診断,治療面はかなり進歩したことは誠に好ましいことである.

論述

骨腫瘍の統計的観察—集計と概括

著者: 前山巌

ページ範囲:P.984 - P.992

はじめに
 骨腫瘍の登録制がわが国で採用されてちようど10年の歳月が流れた.
 北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国および西日本の各地区に設けられた骨腫瘍登録センターに寄せられた症例は,集計すると今では13,299例という多数に達している.

骨腫瘍由来培養株化細胞における電顕像とその問題点

著者: 高瀬武平 ,   井村慎一 ,   武田正典 ,   安土忠義

ページ範囲:P.993 - P.1003

まえがき
 電子顕微鏡の発達は近年めざましいものがあり,細胞をsubcellular level,さらにmolecular levelで解明することができるようになつた.さて色々な組織細胞の超微構造が明らかにされてきたが,未分化な細胞の超微構造上の特徴をとらえることは,はなはだ困難である.
 さて,Roux(1885)が初めて生体組織の体外培養に成功して以来,多くの研究者達により,正常組織およびヒト・動物腫瘍組織の培養が試みられ,L細胞,HeLa細胞,FL細胞,その他幾多の株化細胞の確立をみた.

骨腫瘍におけるArteriography

著者: 松野誠夫 ,   後藤守 ,   奥泉雅弘 ,   菊田圭彦 ,   稲田正範 ,   水野良純

ページ範囲:P.1004 - P.1014

はじめに
 動脈造影法は,1895年X線の発見とともに行なわれ,1950年代にほぼ完成したと述べても過言ではない.すなわち,血管内造影剤注入によるレ線撮影が,まず切断肢(Hascheck & Lindenthal 1895),摘出子宮(Freund 1904)および子宮筋腫(Sampson 1912)について試みられた.1927年Monizが人の内頸動脈より脳動脈造影に成功し,ついでDos Santos(1928)により腹部大動脈および四肢動脈系造影が行なわれるに及んで,肢体肉腫動脈造影所見の報告が,Dos Santos,Lamus,& Caldas(1931),斎藤・神川(1933)などによりなされている.そして造影剤の改良,連続撮影法の採用(Dos Santos 1950)およびその撮影器械の進歩によつて,1950年代にはほとんど身体全域の動脈造影が可能となり,種々な疾患の動脈造影所見が,諸家により報告されており,最近では脊椎疾患への応用もみられる.
 骨腫瘍の治療の際,少なくともその腫瘍の良性か否かの診断は不可欠であるが,適確な腫瘍種別の診断は必ずしも容易ではない.この有力な補助診断法として,動脈造影法の検査は重要である.骨腫瘍の診断に資する最も大切な動脈造影所見は何であるか,本法の意義とその限界について,われわれの経験例をもとに検討したいと思う.

臨床経験

先天性軟骨肉腫の1例

著者: 阿部光俊 ,   清水淳 ,   小林登 ,   奥村彰子

ページ範囲:P.1015 - P.1018

 先天性悪性腫瘍は元来稀なものであるが,Wilms腫瘍,神経芽細胞腫,腎混合腫瘍,網膜芽細胞腫等については比較的多くの交献が散見される.これに比べて四肢に原発した肉腫の発生はさらに稀である.Fahey1)(1953)は自験例およびそれまでの発表例2,3,4)18例について簡単に述べているが,このうちでは線維肉腫が最も多く,他に骨原性肉腫,脂肪肉腫,血管肉腫などの症例があつたと述べている.その後も軟部組織の先天性線維肉腫についてはStout5)(1962)4例,原6)(1966)1例等の発表があるが,先天性軟骨肉腫に関する文献は著者が渉猟した限りでは見出せなかつた.
 われわれは最近いろいろな奇形を合併した先天性上腕骨軟骨肉腫を経験したので報告する.

第3腰椎椎体血管腫の全剔治験例

著者: 木住野喜義 ,   平林洌 ,   宮本建 ,   栗山栄

ページ範囲:P.1020 - P.1025

 各種の脊椎疾患に対してできるかぎりその機能を温存し,あるいは再建を企てるところに一名機能外科といわれる整形外科の面目躍如たるものがある.この意味で椎体完全置換の達成のもつ意義はきわめて大きい.
 一方,椎体血管腫は出血性と脊髄愛護の面より,直接侵襲が不可能と考えられ,従来,椎弓切除による除圧と放射線照射による姑息的療法がとられてきた.しかし,これのみでは将来,病的骨折による脊髄圧迫麻痺を防止する手段とはならない.いきおい根治的治療が必要とされる.

中手骨に発生したと思われる血管腫の1治験例

著者: 東成昭 ,   段亮一 ,   樺山資臣 ,   酒匂崇 ,   児玉国秀

ページ範囲:P.1025 - P.1027

 骨の血管腫は脊椎および頭蓋骨に多く,他の骨に発生することは少ないといわれている.最近,われわれは中手骨に発生したと思われる血管腫を1例経験し,放射線治療によつて好結果をえたので報告する.

デュピィトレン拘縮様変形を初発症状とした血管肉腫の1例

著者: 高田聰 ,   阿部光俊 ,   池田重雄 ,   清水淳 ,   御巫清允

ページ範囲:P.1028 - P.1031

 最近,右手のDupuytren拘縮様変形を初発症状とした患者が約5年の経過の後angiosarcomaと診断され,前腕部で切断術を行なつたが全身転移のため,死亡した症例を経験したので報告する.

汎発対称性に発生した黄色腫の症例

著者: 土橋善蔵

ページ範囲:P.1032 - P.1035

 1835年RayerによりはじめてPlaques Jaunatres des Paupiersとして報告されて以来,黄色腫は皮膚科領域を主に,整形科領域においても少なからず発表せられているが,われわれが最近経験した症例は両側膝関節部および両側肩関節部に対称的に発生し,高度に発育し,著明な骨変化を伴つた点興味深いと考え報告する.

多発性結節性黄色腫の2例

著者: 新野徳 ,   豊島義彦

ページ範囲:P.1037 - P.1041

 黄色腫は1835年Rayerにより初めて眼瞼黄色斑として報告され,1896年SmithによつてXanthomaと呼称されている.黄色腫は肝臓その他の新陳代謝障害から血液中にコレステリンが増加し,結合組織細胞,血管内皮細胞,血管外膜細胞などがこれを摂取して黄色腫細胞を生じ,これが黄色腫を形成すると考えられている.本症は皮膚ことに眼瞼に生ずるものが多く,扁平なものと腫瘤状のものがあり,しばしば両者の併発をみることがある.皮膚に生じた黄色腫についてはかなりの報告をみるが,腱,腱鞘,骨に生じた症例は少なく,本邦では18例にすぎない.この中,アキレス腱に発生したものはこの第1例を含めて12例しか報告されておらず,全体の黄色腫発生例数に比してその割合は非常に少ない.
 われわれは,眼瞼,両側手指伸筋腱,両側肘頭部,両膝蓋靱帯ならびに両側アキレス腱に発生した1例と,両側手指背側,両側肘頭部,両側膝蓋靱帯ならびに両側趾背側に発生した1例を経験したので報告する.

股関節に発生した色素性絨毛結節性滑液膜炎の1例

著者: 井川誠司 ,   小島伸介 ,   菅正隆

ページ範囲:P.1042 - P.1046

 1941年Jaffeらがpigmented villonodular synovitis色素性絨毛結節性滑液膜炎と命名した疾患は,一般に単関節性で,膝関節にみることが多く,股関節に発症することは極めて稀とされている.欧米でも1965年までに17例,本邦では1例を見るに過ぎない.また股関節に発症した場合は,膝関節例とことなつて,すべての例に骨破壊を伴うことも興味ある問題でる.
 本症の病因については,炎症説,腫瘍説その他の諸説があつて,現在なお意見の一致をみていないことは申すまでもない.

興味あるFibrous cortical defectと考えられる症例について

著者: 北川敏夫 ,   浅山滉

ページ範囲:P.1046 - P.1048

 線維性嚢腫性骨疾患にはFibrous cortical defect,nonosteogenic fibroma,monostotic fibrous dysplasia,solitary bone cystなどいろいろの疾患がある.
 JaffeによればFibrous cortical defectは多くは大腿骨骨幹部の遠位部に生じ,組織学的には骨膜より発生したと思われる線維性結合織よりなつており,時に比較的小な多核巨細胞がみられる.Non-osteogenic fibromaは病変は骨皮質のみにとどまらず骨髄へと広がり,疼痛その他臨床症候を示すことがあり,組織学的には結合織細胞を主体とし,血管新生や多核巨細胞あるいはリポイドを含む泡状細胞が出現する.骨形成はない.今回われわれは成人の脛骨骨皮質内に生じたX線学的,肉眼的にFibrous cortical defectと考えられた症例で組織学的に結合織細胞,結合織線維の中に石灰化不充分な骨梁の著明にみられた症例を経験したので,この例について述べる.

上腕部に発生したdesmoidの1例

著者: 関本諦 ,   今井清勝

ページ範囲:P.1050 - P.1054

 desmoidは1832年,Macfarlaneが腹壁線維腫の2例を報告して以来,種々の定義づけがなされてきたが,近年,Stoutのいうfibromatosisの範疇に加えられる傾向にある.
 本来,desmoidは主に腹壁筋,腱膜組織に発生するが,その頻度は稀であり,腹壁外に発生するもの,すなわち,extra-abdominal desmoidはさらに稀である.

指末節骨にみられたEpidermoid(Epithelial)Cystの1例

著者: 平沼晃 ,   萩原信義

ページ範囲:P.1055 - P.1057

 Epidermoid cystあるいはEpithelial cystは,通常,手や指の掌側面の軟部組織内にみられるものであり,1855年Wernherが初めて記載して以来,さほど珍しいものではないが本嚢腫が指骨内に見出された報告は極めて稀であり,内外の文献上39例を数えるにすぎない.
 私は最近,本嚢腫の1例を経験したので報告するとともに,現在までに発表されている本嚢腫に関する文献を検討して総括的な考察を試みたい.

エオジン好性細胞骨肉芽腫の予後について

著者: 山田収 ,   岩尾進 ,   手島宰

ページ範囲:P.1058 - P.1062

 Eosinophilic Granuloma(以下EGと略記す)は1927年Finziが小児頭蓋骨に発生した1例を報告し,本邦においては,高木氏が昭和25年脛骨に発生したEGを報告して以来,多数の報告がなされ,1954年CompereはEGに起因したCalvé扁平椎の4例を報告して以来,EGはCalvé扁平椎の重要な原因の一つであると認められている2).本邦においては昭和40年得津氏等は第4腰椎のCalvé扁平椎を組織学的に検索し,Calvé扁平椎の原因をEGと診断した9)
 われわれは昭和32年大腿骨に発生したEGについて報告し,さらに昭和36年新らたに経験した2例を加え,その経過について報告したが,当時の調査成績では長管骨,扁平骨に発生したEGは完全に治療していたが,脊椎に発生した扁平椎には明らかな回復の徴候は認められなかつた11).したがつてわれわれは第1例の報告以来すでに9年を経過したので,最近報告した1例を加え7),予後調査を行ない,若干の知見を得たので報告する.

脊髄横断麻痺を呈した骨髄腫の1剖検例

著者: 添田勝教 ,   村岡修 ,   三浦英男

ページ範囲:P.1064 - P.1067

 骨髄種は形質細胞系細胞より構成され,腫瘍増殖様式は肉腫と白血病との中間的性格を備えているものと理解されている1).本症の主要症状はほぼ確立された観があるが2)3)4),現在も所見の追加がなされており,したがつてその病型も種々で本症の診断は必ずしも容易でないと考えられる.
 われわれは臨床的に腰痛を主訴とし,硬膜外悪性腫瘍の診断のもとに経過を観察し,剖検にて"び慢性骨髄腫"であつた症例を経験したので報告する.

ホルモン療法後3年を経過した前立腺癌骨転移症例

著者: 中島広志 ,   浅山滉 ,   松井美房 ,   吉見忍

ページ範囲:P.1068 - P.1070

 治療開始後3年を経過した前立腺癌骨転移の1例を経験したので,その臨床症状,治療経過および現症について報告する.

一米国小児病院におけるNeuroblastoma96例の統計的報告—とくに骨転移について

著者: 小泉正明 ,   三杉和章

ページ範囲:P.1071 - P.1080

緒言
 NeuroblastomaおよびGanglioneuroblastomaは脳腫瘍と白血病を除き小児期において最も多い悪性腫瘍である.この腫瘍は一般に早期に転移をおこして悪性の経過をとることが普通であるが,一部の例においては広範な転移があるにもかかわらず進行がとまり,未分化な神経芽細胞から分化のすすんだ神経細胞に変化することも知られている5)6).このように頻度の多いこと,予想外の臨床経過をとること,組織学的に極めて変化の多い像を示すことなどの理由から数多くの研究がなされている.
 われわれは米国オハイオ州コロンブス市の小児病院において1945年より1966年2月までに取扱つた96例の症例について,臨床歴,病理材料およびレ線写真について検討する機会をもつた.そしてすでに指摘されていることではあるがこの腫瘍の初発症状が極めて変化に富んでいて,しばしば四肢の症状を中心としたいわゆる整形外科的な主訴をもつて来院している事実を改めて印象づけられた11)12)13).本報告は骨転移を中心として両腫瘍の症状,診断,病理組織像および予後についてまとめたものである.

「臨床経験」に対するComment

著者: 前山巌

ページ範囲:P.1018 - P.1019

 もともと軟骨肉腫は,成熟した軟骨細胞の様相を示す特定の腫瘍として,骨肉腫より独立させられたものであるが,そのような概念で軟骨肉腫を考えていると,どうもピッタリしない組織像に遭遇することがあつて,はなはだ困惑する.
 1959年LichtensteinおよびBernsteinはこのような特殊な軟骨性腫瘍を分けて,
 1.poorly differentiated (mesenchymal) chondroid tumor
 2.mesenchymal chondrosarcoma developing in multicentric skeletal foci
 3.solitary chondroblastic sarcoma
 4.multicentric chondroblastic sarcoma
 5.atypical chondromyxoid fibroma
の5群を掲げている.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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