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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科2巻11号

1967年11月発行

雑誌目次

視座

脊椎カリエスの治療

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.1083 - P.1084

 今日,結核が斜陽疾患となつたことはだれしもが認めるところで,とくに二次結核においてそれが顕著で,骨関節結核もごたぶんに漏れない.たとえば,慶大病院整形外科においては6,7年前の集計でも第2次世界大戦前の1/100に激減し,今日では1/200あるいは1/300となつていると推定される.
 かつて結核が国民病といわれた時代に,脊椎カリエスは肺結核,肋膜炎,結核性腹膜炎に次いで結核性疾患中その発生頻度は第4位にあり,他の骨関節結核の総和よりもその発生頻度は大であつた.今日,国立村山療養所においてそのことがはつきり観取される.

論述

変形性股関節症の手術的療法

著者: 藤本憲司 ,   寺山和雄 ,   田口靖夫

ページ範囲:P.1085 - P.1095

まえがき
 著者の一人,藤本は第17回日本医学会総会において,変形性関節症に関するシンポジウムの司会を担当する機会を与えられた.この機会に現在わが国において一般に行なわれている変形性股関節症に対する手術的療法の治療成績を検討し,その適応を明らかにすることが必要と考えた.そこで,本症の成因と病理学的研究のほかに,Voss手術あるいはそれをmodifyした筋切離術を伊丹教授に,骨切り術を上野助教授に,骨頭切除—転子下骨切り術を小谷教授に,関節固定術を河野教授にそれぞれお願いして,その治療成績を発表していただいた.時間の関係で,displacement osteotomyを主としてやつておられる島(啓)教授,臼蓋形成術と筋切離術の併用を行なつておられる伊藤(鉄)教授,その他の方々に発表をお願いできなかつたのは残念であつた.このシンポジウムにおいて,天児教授は「提示された症例のX線像をよくみると,どういう患者には,どのような手術をすればよいかということが大体わかつたような気がする」と発言された.著者らも股関節症に対する手術的療法の適応についての一応のめやすが得られたと考えている.
 本稿では,シンポジウムの報告内容を参考とし,信州大学整形外科で治療を行なつた症例の中間成績について検討し,各種の手術的療法の適応についてのわれわれの見解ならびに今後の問題点について論及する.

一次性副甲状腺機能亢進症

著者: Jacques-André Lièvre ,   七川歓次

ページ範囲:P.1097 - P.1105

 日本の医師の皆さんに副甲状腺機能亢進症のお話しをすることは,私にとつて非常な光栄であるとともにきびしい試練でもあります.
 私の専門のリウマチ病に属する日常の疾患,たとえば多発関節炎については,日本の方達の意見や仕事について存じておりますが,副甲状腺機能亢進症に関しては事情が違います.

境界領域

同種移植組織拒否反応の免疫細胞学

著者: 花岡正男

ページ範囲:P.1106 - P.1116

まえがき
 マウスなど哺乳類の同種動物間で皮膚を移植すると,ほぼ10日前後で移植片は排除(reject)される.さらにその同じ動物に,同じdonor(または近交系動物であれば同系動物)の皮膚を再び移植すると,5〜6日後に排除されてしまう.この際,第2回目の移植を,第1回目のそれより離れたところに行なつても,その反応に変りはない.また,第2回目に,第1回目のdonor(またはdonorの系)と異なる個体の皮膚を同種移植しても,前記のごとき生着期間の短縮は起らない.さらに,この反応は同種皮膚に限らず,角膜など特殊の組織を除いたどの組織または細胞に対してもみられる.これらの所見は個体の同種移植における拒否反応が,特異性をもつ全身反応で,第2回目には反応の捉進がみられることを示しており,それが免疫反応であることが分る.すなわち,雑系動物の固体間(一卵性双生児を除く)あるいは近交系動物の系の間のそれぞれの細胞に,抗原性の差があるということになる.

診療の経験から

脊椎分離症・辷り症に関する問題点

著者: 森崎直木

ページ範囲:P.1117 - P.1131

 Bonnの産婦人科医Kilian, H. F.32)が1853年,はじめてSpondylolisthesis,脊椎辷り症を命名記載し,1881年同じく産婦人科医WarschauのNeugebauer, F. L.45)は本症の原因がPars interarticularisの離断,すなわら,Spondylolysis,脊椎分離症にあることを記載した.おそらく,骨盤産道の狭少による分娩障害から,産婦人科医の注意をひいたものであろう.その後,解剖学者,人類学者,あるいはレントゲン学者の報告がつづき,整形外科医が本症に注目するようになつたのは,1920年以後のようである1)9)20)30)55)57)66)67)70).以来,今日に到るまで,多数の報告が内外の整形外科医によつてなされ,Glorieux, P.21)らBrocher, J. E. W.7),Taillard, W.63)によるすぐれた成書もみられる.
 しかし,われわれが日常,腰痛などを主訴とする患者から,レ線上,しばしば発見される本症には,その発症の機転,主訴や症状と,レ線像の因果関係,ひいては治療法の点などで釈然としない多くの点を含んでいる.

手術手技

大腿骨骨体部骨折の手術的療法

著者: 柏木大治 ,   桜井修

ページ範囲:P.1133 - P.1137

緒言
 大腿骨は,その生理学的ならびに解剖学的な特徴からみて,骨折に対しても,正確なかつ速かな再建を図らなければ,機能的障害が大きい.
 従来,大腿骨骨体部骨折の治療は手術的に取扱うことは侵襲が大きすぎるとして,保存的療法が好まれていたようであつたが,最近の手技,器械,ならびに全身管理の進歩に基き,適応を選んでむしろ積極的に手術を行なうべきと考えられる.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう〔4〕

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   前山巌

ページ範囲:P.1138 - P.1144

症例1
 A:これは比較的定型的なエックス線像で,ご覧になれば大体の診断はすぐおつきになると思いますが,第1図にみるように,大転子部に境界のはつきりした透明なsoap bubble appearanceを呈した,吸収巣がみられます.これで,まず念頭にうかぶのは,良性軟骨芽腫benign chondroblastomaか巨細胞腫giant cell tumorの両者でしようが,皆さん,いかがでしよう.
 B:年齢は?

臨床経験

頸椎後縦靱帯骨化の8症例

著者: 下村裕 ,   福田真輔 ,   大田寛

ページ範囲:P.1145 - P.1153

はじめに
 頸椎の後縦靱帯石灰化ないし骨化については1960年,月本1)が脊髄圧迫症状を呈した脊椎管内仮骨の剖検例を報告し,さらに1961年,鈴木2)らが頸椎椎体後縁と明らかに境界を有する本体不明な均等棒状陰影についての7症例を報告して以来,逐次報告例数も増加している.
 1962年寺山3)らは同様な異常陰影のある症例の剖検所見を発表し,その陰影は後縦靱帯の骨化であることを確認してこれを「頸椎後縦靱帯骨化症」と命名した.続いて寺山10)らは本症6症例を記載して,本症を椎間板脱出との関連においてその発生病理を理解しようとした.

習慣性肩関節前方脱臼の2,3の手術法の経験

著者: 松葉健 ,   八木明夫 ,   村瀬鎮雄 ,   木島英夫

ページ範囲:P.1154 - P.1158

習慣性肩関節脱臼の手術法は,おおよそのところ3つ分けることができる.
I.肩甲下筋の位置移動法
 位置移動により上腕を内旋し,過度外転を防ぎ,また上腕骨頭を臼に圧抵せんとするもの.

原発性副甲状腺機能亢進症の1例

著者: 生田義和 ,   馬場逸志 ,   川西太司 ,   岩崎肇 ,   笹尾哲郎

ページ範囲:P.1159 - P.1163

 原発性副甲状腺機能亢進症は,副甲状腺の腺腫によるものが多く,副甲状腺ホルモンの過剰分泌の結果,臨床的に骨の脱灰,血清カルシウムの増加,腎臓の変化の3つを主体とした症状を呈してくる.
 われわれは最近,定型的な副甲状腺機能亢進症に対し,頸部腫瘤の剔出を行ない,その後の経過を観察する機会を得たのでここに報告する.

装具・器械

われわれの試作した前腕電動義手について

著者: 玉井達二 ,   米満弘之 ,   北川敏夫 ,   本田五男 ,   鍋島敏 ,   牧野輝次 ,   桐原征雄 ,   佐藤昌康 ,   鬼木泰博 ,   緒方甫 ,   徳田明見

ページ範囲:P.1164 - P.1169

はじめに
 私たちは先輩諸氏の努力によつて作られた今までの義手の状態から,より実用的な義手を作りたいと考え,電気を力源とした駆動義手の試作を始めた.
 駆動義手作製の試みは古く,第1表に示すようなものを文献上見ることができるが,電動義手はいまだ実用上満足するものはない,といつても過言ではない.

海外だより

韓国における整形外科の現況について

著者: 禹濟仁

ページ範囲:P.1170 - P.1172

 韓国での整形外科が,一般外科(General Surgery)から完全に分離,独立して,新しい学問として目ざましい発展をきたしたのは,第二次世界大戦後であり,特に1950年勃発した韓国動乱により,アメリカから持続的援助がありましたが,その時戦争外科(War Surgery)すなわちTraumatic Surgery(外傷外科)が急速に発達し始め,この方面の研究には先進国の教えによつて特別なる考慮と研究が必要であることを痛切にしかも身近かに感じ,その結果1956年整形外科学会の創立を見たのであります.ですから約10年の短い歴史を持つているので,その内容が,目立つて新しい所があるのでもなく,ただ長い歴史を誇る他国の学会の業績を熱心に追求し,それを臨床に応用する程度でありますが,時には韓国固有の,そして症例の比較的多い疾患に対する治療方針には,多少とも独創性があることを指摘したいのであります.
 整形外科の発達といたしましては,学会創立以前では,整形外科は一般外科の一分科として,いわゆる四肢外科という名の下に教育されておつたために,充実した専門的教育は全然不可能であり,重要視せられなかつた学問であることは,事実でした.私自身20年前の学生時代を顧るに,一般外科の講義が長びき,四肢外科の講義では外科各論で重要なところだけ抜いて,数時間聞いただけでした.

学会印象記

第23回カナダ整形外科学会に出席して

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1173 - P.1176

 カナダは本年1967年で独立100年を迎えることになつた.これを記念して万国博(Expo.)をMontrealで開催し,この機会にカナダ整形外科学会も開催することにし,外国からも本年は少し招待をしようということになたらしい.それで私にも,やつてこないかと招聘を受けた.私を指名してくれたのはDr. Favreauである.Dr. Favreauとのそもそもの出合いは,10年前のバルセロナのSICOTの席上で私が関節形成術の映画を説明した際,最後まで熱心に聞いてくれ,色々讃辞を述べてくれたし,その後も文通を重ね,教室の50周年のお祝いの時には,丁重な祝辞をよせてこられた.そんな関係で,今回同氏の招待でカナダに行くことになつた.ちようど今はExpo.で日本の旅行斡旋業者に頼んでもホテルの予約は困難と言つてきたがDr. Favreauが何もかも用意してくれた.

紹介

J. -A. Lièvre教授の横顔

著者: 森崎直木

ページ範囲:P.1096 - P.1096

 次の副甲状腺機能亢進症の論文は,本年5月第11回日本リウマチ学会の特別講演として,J. -A. Lièvre教授にお話いただいたときの草稿を阪大整形外科七川歓次助教授にお願いして翻訳していただき,Lièvre教授のお許しを得て掲載するものである.
 J. -A. Lièvre教授は私が会長として,七川助教授のご紹介でお呼びして,ご来日いただき,この特別講演のほかシンポジウムにも参加を願った関係から,ここに簡単にご紹介申し上げたい.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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