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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科2巻12号

1967年12月発行

雑誌目次

視座

異物の使用とその開発に思う

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.1179 - P.1179

 私が人工骨頭を使用しはじめてからすでに15年を経過します.当時,私は,こんなに大きな異物を人体内へ埋蔵してよいものだろうかと心配しました.私の作つた人工骨頭は合成樹脂で被包してありますが,合成樹脂は人体組織と相当によい親和性のあることを動物実験で証明してあつたとはいいながら,人工骨頭はなんといつても大きいですから,使用にあたつては随分,心配し,慎重な態度をとつたつもりであります.
 しかし,心配するほどのこともなく,人工骨頭が異物として有害に働いた症例をしりません.それのみでなく,人工骨頭の脚部が骨髄腔へ刺入されている部分では周囲に骨が新生し,周囲組織と実によく親和します.

論述

先天股脱非観血的治療時の遺残性亜脱臼の予後

著者: 坂口亮 ,   立石昭夫 ,   黒川高秀 ,   小出清一

ページ範囲:P.1180 - P.1190

はじめに
 先天股脱非観血的治療法の成績,特に遺残性亜脱臼の予後については,当教室からすでに3年前,蓮江らが調査報告をした7).非観血的整復を受け5年以上(平均10.2年)を経過した300例509関節についてレ線計測を行なつた結果,21.2%に遺残性亜脱臼を認めた.また計測値を推計学的に処理し,治療終了時に将来の予後を知るレ線計測上の指標を出した.今回われわれは,飯野教授主管の「反復放射線曝射の影響」の全国調査の一環としてアンケート調査を行なつたのを機に,古い症例の来診を求め,さらに調査を進めることができた.前回の調査結果と重複するところは省略して,特に今回得られた問題について考えてみたい.

新生児期における先天性股関節脱臼について(第1部)

著者: 山室隆夫

ページ範囲:P.1191 - P.1201

はじめに
 先天性股関節脱臼がない国といえば少し大げさであるが,整形外科医を悩ますような治療の困難な先天股脱の症例が事実上ほとんどみられない国があるということを,著者は1961年にスウェーデンへ行くまではまつたく予想だにしていなかつた.スウェーデンにはCE角でその名を知られるWiberg(1939)や,治療成績の判定基準として,今も多く引用されているSeverin(1941)らによる先天股脱についての多くの優れた研究があることからも判るように,以前には治療の困難な症例が数多くあつたものと思われる.それが20年後には他国に先んじてこの難問題をほとんど解決してしまつたなどとは,初めは到底信じることができなかつた.著者はvon Rosenの家庭に寄宿した1年間,徹底的に疑いの眼を以てvon Rosenらの仕事を批判しようと努めた.しかし,署者の滞在した1年間の内ではvon Rosenのクニックの外来やカンファランスなどのあらゆる機会を通じても,治療の困難な乳幼児期の先天股脱は1例もみつけることができなかつた.もちろん,ギプス固定や手術の症例はまつたくなかつた.たまたまWibergのクリニックで生後数ヵ月で入国して来た外国人の子供に先天股脱がみつかり,ギプス固定を行なうことになつたが,classic Orthopedicsがあるというので若い整形外科医や医学生が見学のために大勢集まつて来たのを今も印象深く想い出す.

高度の下肢長差の治療について

著者: R. Merle D'Aubigné ,   菅野卓郎

ページ範囲:P.1202 - P.1204

 われわれが高度の脚長差のある患者5例に対して行なつた一次的ないし二次的大腿骨等長化手術の術式を紹介したい.
 本手術は一般に一次的に行なうことが可能で,術後経過が従来の方法に比べて比較的短かいということから患者ならびに家族に対する諸種の負担が軽減されるものと考える.しかしこの種の手術には常にその危険性を考慮し,慎重な態度でのぞまなくてはならない.

境界領域

脳性麻痺の病理

著者: 松山春郎

ページ範囲:P.1205 - P.1214

 脳性麻痺とは臨床的概念であるから,これを病理解剖学的に一括して述べることは困難である.ここでは発育中の脳組織に生じたなんらかの異常の結果,臨床的に運動機能の障害を中軸とした種々雑多の症状を残した症例を取り扱うことにする.
 この病因を出産とそれをさかいとして,その前後の3時期にわけて述べることにするが,われわれが病理解剖で取り扱う症例では,その病理像から,加えられた傷害が,一つ以上の時期にわかれて重複して起つたと考えられるものもある.

診療の経験から

われわれの神経縫合法の実際

著者: 諸富武文 ,   岡崎清二 ,   川上登 ,   水田早苗 ,   根本元

ページ範囲:P.1215 - P.1221

緒言
 神経縫合法には古くから色々の方法が考案されてはいるが(第1図),一般には予後の芳しからぬ手術の一つと考えられており,このためこの先入観に支配されおろそかに取扱われ,最も大切な早期の薬物療法や新鮮時の手術的処置が不充分な場合が多いようである.その結果,萎縮や変形が高度となり,数ヵ月も経たのちに初めてわれわれの外来を訪れるというケースが多い.
 この点に鑑みわれわれの教室では,数年来行なつてきている末梢神経麻痺の治療に関する研究2)4)6)7)の一環として,神経縫合法についても独自の方法を開発し,すでに基礎的実験や臨床成績について,種々の学会および雑誌に発表してきたところである.今回は既報の成績とは別に,実際に神経切断麻痺と思われる症例に遭遇した場合にわれわれの教室ではどのような処置を行なつているか,あるいはどのようにして手術を行なうかという実際上の手技についてのべ,多少の考察を加えた.

手術手技

大腿骨下端部骨折の手術

著者: 嶋良宗

ページ範囲:P.1222 - P.1228

はじめに
 大腿骨下端部骨折は,大腿骨骨幹部骨折より,その発生頻度は少ないが,最近の交通事故や労働災害などの激増によつて,増加する傾向にある.この骨折の治療は,通常,困難で,適切な治療方針を指示し,かつ,実行しなければ,後に,変形治癒,仮関節や,膝関節の機能障害を残す場合がしばしばである.この部分の骨折の合併症として注意しなければならないことは,骨折片による,血管,神経の損傷や膝関節上嚢部(suprapatellar pouch)の癒着,大腿四頭筋,M. articularis genuなどの損傷によつておこる,膝関節の高度の拘縮や,顆部関節内骨折では,将来,2次性膝関節骨関節炎を惹起してくるなど,膝の内外反,慢性関節水腫,関節側方動揺性など,多くの障害をおこす可能性が十分にある.
 それゆえ,これら合併症を最少限にくい止め,より早く骨癒合を完成させるように工夫し,早期に膝関節運動練習を行ない,膝関節拘縮や強直がおこらないようにすることが,この骨折を治療する上に,いつも頭に入れておかなければならない最も重要な点であるとともに,また困難な点でもある.

臨床経験

半月板の脂肪化生によると思われる興味ある弾撥膝症例

著者: 辻陽雄 ,   篠原寛休 ,   上原朗

ページ範囲:P.1230 - P.1234

 弾撥膝を主症状とした興味ある外側半月板障害例に遭遇し,手術所見,ならびに組織学的諸所見より,従来報告せられたごとき,Hoffa病,半月板ガングリオンなどとは,明らかに異なる稀有なる一例を経験したので,いささかの病理発生学的考察を加えて報告する.

陳旧性先天股脱における骨切り後の関節強直について

著者: 吉沢英造

ページ範囲:P.1235 - P.1244

はじめに
 英国においてMcMurray(1935)およびMalkin(1936)が変形性股関節症に対する一手術法として,いわゆるproximal femoral osteotomyをそれぞれ独立した論文として発表した.これが変形性股関節症に対し本格的に行なわれた骨切り術の最初である.McMurrayは大転子下端より小転子上端に向かい約40°の角度で骨切りを行ない,中枢骨片を内転させると同時に末梢骨片を内方に移動し臼蓋下縁につき当て,末梢骨片上端で体重の一部を支えようとしている.その後Osborne & Fahrni(1950),McFarland(1954),Wardle(1955),Campbell & Jackson(1956),Adam & Spence(1958),Nissen(1960),Robins & Piggot(1960),Nicoll & Holden(1961)ら多くの人々により追試がなされ,いずれも好結果を得ている.さらにPauwels(1951)が股関節を力学的な面から解析し,股関節症病因の解明に努め,筋張力を加味し,関節の適合性を改善するような骨切りの必要性を説いて以来,種々なる転子間骨切り術が盛んに行なわれるようになつた.

頸椎前面の異常骨棘形成による嚥下障害の3症例

著者: 土屋恒篤

ページ範囲:P.1245 - P.1248

 脊椎の骨棘形成は,椎間板変性にともなつて発生する軟骨の退行変性の結果であることは一般に認められている.このような変性から起る頸腕痛および腰痛は整形外科医が日常経験するところであるが,頸椎の変性による咽喉頭の異常感や嚥下障害の症例に遭遇することは少ない.
 さらに食道の外からの圧迫で嚥下障害を起すものは,食道周囲組織の腫瘍や外傷によることが多く,頸椎前面の骨棘によることは比較的稀なものと考えられている.

高圧酸素療法ならびに観血的治療を行なつたIdiopatic aseptic bone necrosisの1例

著者: 斎藤博臣 ,   松永等 ,   松本道太郎 ,   安藤正孝

ページ範囲:P.1249 - P.1251

 大腿骨骨頭Idiopatic aseptic necrosisについては,1925年Haenisch,1935年Freundによつて報告がなされており,従来,非常に少ない疾患であると考えられてきたが,1959年頃を境にして,Teinturierの11例,Costeらの100例,Patterson,Bickelらによる52例,極く最近におけるR. Merle D'Aubignéらの150例など,数多くの報告が見られるようになつた.しかし本邦においては未だ報告例も少数であり,稀な疾患と思われる.われわれは最近,両大腿骨骨頭に発生したIdiopatic asepti cnecrosisと思われる症例を経験し,観血的治療ならびに高圧酸素治療を試み,いささかの知見を得たので文献的考察を加えて報告する.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう〔5〕

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   野口朝生

ページ範囲:P.1252 - P.1255

 A:それでは,レントゲン写真からして面白い経過をたどつた例を申し上げます.この方は60歳の男の方で,昭和39年11月16日,急激な右股関節部痛,右下肢運動障害を主訴といたしまして佐野厚生病院に来院,レ線検査の結果(第1図),Pathologische Frakturと診断され入院,加療いたしました.ある事情から保存的に治療を行ない,経過を観察いたしましたところ,腫瘍が膨大の傾向を示してきましたので(第2図),昭和41年1月8日にBiopsyをいたしまして病理学的検査をいたしました.これはあとでお目にかけます.その後もなおTumorは増大の傾向を示し,Biopsy後6ヵ月のレ線写真がこれ(第3図)であります.

検査法

肩関節造影法

著者: 高岸直人 ,   山田元久

ページ範囲:P.1256 - P.1264

 肩関節造影法は,棘上筋,棘下筋,小円筋,肩甲下筋の4つの筋よりなるいわゆるRotator-Cuff腱板の断裂の診断を確定するために主として行なわれてきたが,その他,上腕二頭筋長頭腱断裂,肩関節硬着に対して,また,われわれは弾擁肩の弾撥部位の決定に本法を利用している.
 本法は肩関節疾患に対する先駆者Codman(1934)が,棘上筋の不全断裂に対して関節腔内に造影剤を注入して診断をしうることを述べたが,実際に行なつたのはOberholzerで,彼は肩関節脱臼の研究に本法を利用している.Lindblom(1939)とPalmerは本法を腱板断裂の診断に始めて応用したが,以後Frostad(1942),Kernwein(1957),Naviaser(1962)などの研究が報告されている.本邦においては,肩関節造影の研究は極めて少ない.われわれは昭和37年以来,本法について研究を行ない,昭和39年,中部日本整形災害外科7巻1号にその大略を発表したが,今度,さらに研究を続け,得るところがあつたので,実施方法,所見をここに述べる.

学会印象記

第80回米国整形外科学会に出席して

著者: 天児民和

ページ範囲:P.1265 - P.1269

 私は本年6月18〜23日までMontrealで開催せられた建国百年記念のカナダ整形外科学会に招かれて出席した.この会の終了後6月25〜29日までAOA(American Orthopaedic Association)の総会がVirginia州HotspringのHomesteadで行なわれるので,そちらの方にも出席してはどうかと米国側の2,3の人達から日本出発直前に勧誘された.地図を開いてみてもVirginia州のHotspringの位置を示したものは余程大きな地図でないと書いてない.そこで早速AOAの本年度の会長Compere, San FranciscoのHaldemann, New yorkのHoworthらに連絡したところちようど本年は80周年に当るので是非出席するようにという手紙をいただき,学会の事務所から正式の招待状まで送つていただいた.そこでMontrealの学会が終了した翌日,Montrealから飛行機でNewYorkに飛び,New YorkからPiedmont Aviationという小さなローカル線の飛行機でHotspringに飛んだ.HotspringはVirginia州の中央部にあり約300m前後の山の上を切り開いた飛行場がある.ちようど航空母艦の上に着陸するようにこの山頂の飛行場に降りた時は少々驚いた.そこから自動車で約40分走るとHomesteadという大きなホテルがある.

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基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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