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論述
新生児期における先天性股関節脱臼について(第1部)
著者: 山室隆夫1
所属機関: 1京都大学医学部整形外科
ページ範囲:P.1191 - P.1201
文献購入ページに移動先天性股関節脱臼がない国といえば少し大げさであるが,整形外科医を悩ますような治療の困難な先天股脱の症例が事実上ほとんどみられない国があるということを,著者は1961年にスウェーデンへ行くまではまつたく予想だにしていなかつた.スウェーデンにはCE角でその名を知られるWiberg(1939)や,治療成績の判定基準として,今も多く引用されているSeverin(1941)らによる先天股脱についての多くの優れた研究があることからも判るように,以前には治療の困難な症例が数多くあつたものと思われる.それが20年後には他国に先んじてこの難問題をほとんど解決してしまつたなどとは,初めは到底信じることができなかつた.著者はvon Rosenの家庭に寄宿した1年間,徹底的に疑いの眼を以てvon Rosenらの仕事を批判しようと努めた.しかし,署者の滞在した1年間の内ではvon Rosenのクニックの外来やカンファランスなどのあらゆる機会を通じても,治療の困難な乳幼児期の先天股脱は1例もみつけることができなかつた.もちろん,ギプス固定や手術の症例はまつたくなかつた.たまたまWibergのクリニックで生後数ヵ月で入国して来た外国人の子供に先天股脱がみつかり,ギプス固定を行なうことになつたが,classic Orthopedicsがあるというので若い整形外科医や医学生が見学のために大勢集まつて来たのを今も印象深く想い出す.
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