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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科2巻4号

1967年04月発行

雑誌目次

巻頭言

第40回日本整形外科学会総会について

著者: 上田文男

ページ範囲:P.363 - P.363

 第17回日本医学会とその分科会として第40回日本整形外科学会総会とが名古屋市に於て同時に開催されることになり不肖上田が分科会長の重責を果すことになりました.昭和32年に松丸寛会長が第30回本会総会を当市において主宰されてから10星霜,その間2千名から4千名へと会員数は倍加し,当時を回想し本会の発展した現状を観る時誠に感慨深いものがあります.今回の総会開催に当り何にか新しい趣向を出したいとかねてから念願してまいりましたが前述のように日本医学会と同時に開催されるため会期の1日短縮,希望学会場の獲得難等々多くの制約をうけたため私の構想を充分実現し得ないのは遺憾の極であります.従つて編集部より総会の特徴を書けとの注文ですが,特筆すべき企画もありません.ただ2,3の点について述べることにします.

論述

四肢悪性腫瘍に対する制癌剤動脈内持続注入後の腫瘍細胞変化の光顕ならびに電顕的追跡

著者: 増田元彦 ,   福間久俊 ,   石川春律 ,   大江浩 ,   入部兼一郎 ,   篠原典夫

ページ範囲:P.365 - P.369

 四肢に発生した悪性腫瘍に対し,罹患肢の切断や関節離断術などの根治的手術を行なう前に,腫瘍を栄養する主幹動脈内に制癌剤の持続注入を施行し,転移防止,ひいては治癒率の向上を企図してきたが,その症例数は昭和38年以来昭和41年10月迄に28例に達している.これらの症例につき,制癌剤の効果判定,更には制癌剤に対する腫瘍細胞の感受性の評価判定の方法として、注入前後の組織像の変化を比較対照し,光学顕微鏡的観察を行なつてきたが,今回そのうちの4症例につき電子顕微鏡学的観察を併せ行なつたので報告する.
 制癌剤としてはエンドキサン,メトトレキセート,クロモマイシンA3及びSなどで,これらの薬剤を単独または併用し,10日ないし2週間の使用期間を目標として使用した.

シンポジウム 関節リウマチの治療

整形外科の立場・総論

著者: 児玉俊夫

ページ範囲:P.371 - P.380

まえがき
 すべての学問の領域でもそうであろうが,慢性関節リウマチの本態の研究や新しい治療の開拓なども,階段的に進んでいる.そして世界各国で同じようなことを考え,試み始めることが少くない.
 この総説では,本疾患の最近の動向を広い範囲にわたつて紹介してみたい.したがつて個々の項目では皮相的になりがちになるのはやむえない.必要な方は原著を参照していただきたい.

整形外科の立場・手の変形

著者: 津下健哉 ,   真田義男 ,   山河剛 ,   本山豪霊

ページ範囲:P.381 - P.388

いとぐち
 リウマチ患者の諸関節,ことに手や足の関節に種々の変形がおこることはよく知られている.これらの変形は滑膜や滑膜下の炎症を一次的原因とし,これによる滑液の関節内貯溜は関節嚢の拡張,弛緩を招き,同時にリウマチ性肉芽による関節軟骨の破壊を伴つてloose jointを形成する.
 また,腱周囲の滑膜にも同様にリウマチ性炎症による肥厚がおこり,これにもとづく腱の機械的圧迫は腱の栄養障害を来し,さらに腱組織自体へのリウマチ性肉芽の侵入もみられて腱の弛張や自然断裂の原因となる.

内科の立場

著者: 佐々木智也

ページ範囲:P.389 - P.394

はじめに
 筆者はこの題を与えられてはなはだ困惑している.そして困惑はシンポジウムとして取り上げている本質的な問題に通じているように思えるので,まずその点から論を進めて行きたいと思う.

温泉療法(附・理学療法)

著者: 矢野良一 ,   時枝正昭

ページ範囲:P.395 - P.403

はじめに
 慢性関節リウマチ(以下RA)の治療にとつて理学療法が極めて重要であることは,内外のリウマチ研究諸家のひとしく認めるところである.ことに温泉療法については,その適応中リウマチ疾患が王座を占めるといわれる.
 RAの理療に属する主なものは,温泉療法,水治療法,電気療法,光線療法,マッサージなどであるが,アメリカなど温泉の少ない国においてはむしろ水治療法などが重要視されており,リハビテーション医学の成果のかげにかくれて,温泉療法の効果が等閑視される傾向すら生じている.ただしアメリカ人は欧州の温泉地へ治療に行つている.日本は有数の温泉国であり,また後述するごとく温泉は淡水と異なつたすぐれた数多くの医治効果を有するところから,本邦ではRAに対してもつと積極的に有効な利用がなされるべきであろう.そして温泉を新しいリハビリテーション医学の中で生かすべきことは,当科の多年の経験によつて明らかであることを断言する.本稿においては,われわれの従来の著述とおもむきを変え,後述の如く,多くの写真をもつて実施法に重点を指向した.

境界領域

関節滑液膜の炎症—生検の立場から

著者: 三友善夫

ページ範囲:P.405 - P.413

はじめに
 近年,関節疾患は欧米に於てとみに増加の傾向があり,United States Public Health Serviceの統計によると,1949年の関節疾患の患者数10,845,000に対して1965年ではおよそ40,000,000以上の関節疾患の患者が存在すると推定され,60才以上の老年層では85%以上のものが何らかの関節疾患を有していると言われる.我が国でも平均寿命の延長とともに労働年令がのび,関節疾患が老人病の対象の1つとして関心と注目を少しずつもたれている.また剖検や生検の材料をみても関節疾患に遭遇する機会が増加しているように思われる.
 本文では最近10年間(1956-1966)に東京医科歯科大学中央臨床検査部病理検査室で検索した生検材料および手術材料を中心として,関節を構成する組織に見出される病変の中で,非腫瘍性病変,なかでも関節滑液膜にみられる炎症性病変をとり上げて病理組織学的検討を加え,同時に臨床検査材料を臨床病理学的に分析し,さらに関節に見出される炎症性病変をよりよく理解するために関節の構造の年令的変化についても言及した.

対談

脊髄外科とともに37年—岩原寅猪教授にきく

著者: 津山直一

ページ範囲:P.414 - P.425

 津山 きようは臨床整形外科の企画で,岩原先生に,こうやつてひざをまじえてお話しを伺えることは,私としては非常にうれしく思います.さきほどの編集長のお話で,何でも気楽に先生からお話しを伺うようにということだつたので,私もそのつもりで,かみしも脱いで遠慮なくお話しを聞きたいと思つております.
 先生のお名前ですが,岩原寅猪とおつしやるのは,土佐の坂本竜馬を思い出させるのですが,高知県にはやはりそういうお名前が多いんでございますか.

診療の経験から

慢性骨髄炎の治療について

著者: 嶋良宗

ページ範囲:P.435 - P.442

 慢性骨髄炎をいかにして早く治癒せしめ得られるかと,その治療方法に関する試みは,古くからいろいろとなされてきた.現今,一般に行なわれている方法としては,病巣掻爬,skin dressingや薬液の局所注入,抗生物質の全身投与などであるが,このような治療を施しても再発の杞憂は去らず,なお,長期間の治療法を必要とするのが現状である.そこで,教室では,積極的病巣の掻爬と切除を行ない,かつ,病巣部に対しては,強力,かつ,確実な洗滌を施こし,病的産物をできるだけ速やかに排除し,骨髄炎をより短期間に,より的確に治癒せしめる目的で,局所持統洗滌法に着目し,これに対して,いろいろな改良を加えて,好成績を挙げることができたので,ここにその治療方針の概略を記したが,骨髄炎治療の一助ともなれば,幸である.

手術手技

脛骨幹部骨折の治療

著者: 天児民和 ,   杉岡洋一

ページ範囲:P.443 - P.451

 脛骨々幹部骨折は頻度の高い骨折である.また治療技術の良否によりその成績にも大きな差違がある.更に軟部組織が少ないことは骨折治癒には不利であるが手術操作は甚だ容易である.それで手術が多く行われるがその術式は多く,選択に迷うし,また日々新しい技術が開発せられているのも事実である.
 観血的骨接合術の目的は,確実な整復と固定により自然治癒機序を助け治療日数の短縮,関節の拘縮,骨筋肉の萎縮を防止し早期に社会復帰させることであり,その為多くの手術法,固定機具が登場し,批判されて来た.しかし,骨折の種類・部位・術者の経験・手術室の設備により最も適当な方法が選ばれるべきで,例えばKüntscher髄内固定法が優れているが,その目的をよく理解して確実に原法に忠実に手術すべきでこれにはある程度の設備が必要である.これを余りに簡易化すると充分な効果が挙らない.昭和34〜37年間に当教室で取扱つた106例,112下腿の脛骨々幹部骨折があるが各種の術式を試みたのでその手術法の変遷と成績を紹介したいと思う.その例数は皮下骨折42例,(46下腿),開放骨折39例,(40下腿),仮関節及遷延治癒骨折25例,(26下腿)である(第1表).

臨床経験

頸肩腕痛のレ線学的観察—頸椎レ線像を中心に

著者: 山口重嘉

ページ範囲:P.453 - P.455

まえがき
 項頸部より肩,更に上肢にかけての疼痛という問題については色々な解釈があり,その病因,診断には必ずしも統一した見解は得られていない様である.例えば頸部脊椎症,頸部骨軟骨症,頸肩腕症候群,斜角筋症候群,肋鎖症候鮮,過外転症候群,等と各研究者により原因の検索と表現がなされているが,その各々についても判然としない点が少くない.又,肩関節を中心に痛みがあり,その運動制限,特に上肢の外転外旋が侵されるものを対象とする50肩症候群については,その誘因に心因性,体質性要因もゆるがせに出来ず,叉頸椎柱,肩関節周辺の疾患のひとつの現われとして或いは関連痛,反射痛の現われとして受けとられる可能性も多分にある.著者は先ず解明の足がかりとして,これら愁訴をもつて来診した患者の頸椎レ線を検索して検討を試みたので報告する.

検査法

椎間板造影法

著者: 平林洌 ,   河野通隆

ページ範囲:P.459 - P.469

いとぐち
 起立・歩行する人類にとつて,脊椎は重い頭部を支え体軸となり,且つ大きな運動を要求される.殊に頸椎・腰椎は胸椎に比べ運動性が大きく,日夜慢性刺激をうけている.脊椎の支持性・運動性のうち椎間板のもつ役割は大きく,衝撃吸収という大事な仕事をしている.裏を返えしていえば,頸・腰椎の慢性刺激はこの部の椎間板に対して慢性外傷として働らき,年齢性変化を加えて頸部においては頸・項部痛,肩こり等頸部症候群の発症,腰部では腰痛,坐骨神経痛等,整形外科外来患者の大きな部分を占める愁訴となつて現われる.
 われわれは椎間板変性を基盤とし,現われ方を異にする一連の病態を「椎間板症」として一括してきた.

海外だより

アメリカ手の外科学会に出席して

著者: 山内裕雄

ページ範囲:P.470 - P.471

 第23回American Socienty for Surgery of the HandはAmerican Academy of Orthopaedic Surgeryの学会に先んじて,同じSan Francisco. Jack Tar Hotelで1月13・14の両日開催された.会長はテネシーのDr. Eylerであり,会場は丁度前回日本手の外科学会の行なわれた,品川プリンスホテルのそれとほぼ同じか少し大きい位であつたが,超満員の盛況てあつた.
 学会そのものは大変なごやかであり,演説時間も長く両日で,演題は24題のみであり,相手に理解させようとする努力が,内容にも,スライドにも充分払われていて,かえつて日本の学会よりもわかり易い位であつたが一面,研修会的な一般演説もあつたけど,何か「Neues」がなくてはといつた日本的(?)な期待がかなり外れたものも中には相当あつた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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