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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科2巻5号

1967年05月発行

雑誌目次

シンポジウム Ewing腫瘍とその周辺

はじめに

著者: 小谷勉

ページ範囲:P.481 - P.482

 司会(小谷) 只今より,"Ewing腫瘍とその周辺"と題しまして,シンポジアムをはじめさせていただきます.私,大阪市立大学整形外科の小谷でございます.どうかよろしくお願いいたします.時間が限られておりますので,ご発言・ご討議は,演者の方々のお話しが全部すみましてからお願いしたいと思います.
 はじめに,ちよつと"いとぐち"としまして,つぎの言葉をお目にかけたいと思います.

いわゆるEwing肉腫の臨床と病理の接点

著者: 赤星義彦 ,   浜島義博

ページ範囲:P.483 - P.495

 赤星 それではシンポジウムの皮切りをやらしていただきます.
 Ewing肉腫の本態を追究するには,剖検例の新鮮標本から得られた病理組織所見と,その症例の臨床像,臨床経過とを対比しながら除外すべきものを取り除いて,その集積から帰納的に解明して行くのが最も確実な方法と考えられますが,私どもはとりあえず,現在の時点でEwing肉腫と思われる症例に遭遇した場合,どのような点で臨床と病理が連繋し,協力して行くべきかを考えながら,私どもが経験した症例を中心に検討を加えました.

Ewing骨肉腫の放射線治療における問題

著者: 浜田政彦

ページ範囲:P.497 - P.498

 1921年James Ewing記載のendotheliales Myeloma,diffuse MyelomaはSchinzによつてEwing骨肉腫と命名されて以来,この疾患は診断および治療において放射線科を悩まして来た.ユーイング骨肉腫の治療はゼミノーム,ウィルムス,悪性リンパ肉腫などと同様放射線感受性が最も高いとされながら,放射線治療では根治困難な疾患として今日まで残されている.

Ewing肉腫の臨床的検討

著者: 前山巌

ページ範囲:P.499 - P.504

 Ewing肉腫に関する混乱は,1921年Ewingが骨の"diffuse endothelioma"として発表し,骨髄のangioendothelioma或は血管周囲のリンパ管内皮に由来するという見解を採つて以来,ConnorやOberling等の末分化細網肉腫という説,或いはWillis等の転移性腫瘍就中神経芽腫の間違いであろうとする説の他,種々雑多の病因論の簇出によるもので,之に加えて比較的定型的と考えられた臨床像やエックス線所見が必ずしも決定的診断価値を有しないことが痛感されるに至つたからである.
 このような混乱をきたした現在,Ewing肉腫の本態乃至はその存在を見究める一段階として,これまでEwing肉腫と考えられた症例を多数蒐めて,それぞれの臨床所見,エックス線像或はその治療経過とともに,それぞれの組織像や剖検所見にも再検討を加えて,一つのentityの存在を確認することが望まれる.

Ewing肉腫の病理組織学的検討

著者: 佐野量造

ページ範囲:P.505 - P.508

 Ewing肉腫の解明に当たりまして只今前山博士により臨床方面の詳細な報告がなされました.このアンケートに基きまして全国大学及び病院の皆様より多数の病理材料が送付され.それを検討する機会を得ましたことをここに厚く御礼申し上げます.
 検討しました材料は,臨床診断,病理診断共にEwing肉腫の診断がなされたもの生検42,剖検14の計56例であります.われわれの今回の目的は,病理学的に独立したEwing腫瘍なるものの存在を追究することにありました.それで56例の材料をわれわれの組織判定で整理しますと,その結果は第1表の如くになりました.

骨髄細網肉腫とEwing腫瘍の病理

著者: 小島瑞

ページ範囲:P.509 - P.516

 ご承知の如く,Ewing腫瘍は極めて稀な腫瘍でありまして,私自身僅かなしかも断片的な経験しか持合せておりません。それで,Ewing腫瘍とは一体どんなものか,そうしてどういつた組織学的特徴があつたら自信をもつてEwing腫瘍と断定してよいものか,これが私の年来の願望でありました.今回本腫瘍のシンポジアムの演者に御指名頂きましたのを機会に,初めて可成り多数の剖検材料を一度に観察することが出来ました.そして,Ewing腫瘍はやはり存在するものであるということ,そして可成り顕著な組織学的特徴を示すものであるということを確めることができましたので,既に云い古された所見の数々ではありますが,再確認の意味で申し述べる次第であります.
 骨髄性細網肉腫もまたEwing腫瘍に劣らず稀な腫瘍でありまして,赤崎先生の1952年の御報告では剖検例1例,生検例1例が紹介されているに過ぎません.Ewing腫瘍の本態に関する問題の中で,Ewing腫瘍と骨髄性細網肉腫との関係が最も大きな問題の一つとされておりますことから,今回Ewing腫瘍と共に骨髄性細網肉腫の実態,特に組織学的特徴を把握すべく努めてみました.

発言1/発言2

著者: 太田邦夫 ,   赤崎兼義

ページ範囲:P.517 - P.518

 Ewing tumorの概念が日本に入つてきましたのは,原著の出た1921年から少しおくれてJames Ewingの"Neoplastic Diseases"という本の出た1924年頃ではないか,と思います.1928年にフランスのOberlingがそれはReticulum cell sarcomaであるということを云い出しましたので,何分リンパ性細網肉腫を注目しかかつたばかりの日本の病理学者はかなり困つたのじやないか,と思います.
 1936年頃に東大でEwing腫瘍らしい1例があり,これをOberlingとEwingに送つて,意見を求めたところ,Oberlingは骨の細網肉腫,EwingはEwing腫瘍と診断し,それならば両者は同じものかという感をうけたようでした.現在では,共に珍しいが,異つたものと考えられています.又私自身,東京医歯大で2例ばかりそれかと思う症例を見ましたが,1例は骨周囲に主病巣があり,Lauren Ackermanに見せましたらAngiosarcomaではないかと申し,仲々むずかしいものだと考えたのを覚えております.

DISCUSSION

著者: 松野誠夫 ,   浜島義博 ,   赤星義彦 ,   北川敏夫 ,   小島瑞 ,   三井貞三 ,   前山巌 ,   太田邦夫

ページ範囲:P.518 - P.520

 松野(北大整形外科) いろいろ臨床的に,あるいは病理学的に面白い症例を見せて頂きまして,非常に参考になつたのでございますが,2,3特に病理の先生方にお伺いしたいと思います.
 私共腫瘍を臨床的には扱つておるわけでございますが,これを分類いたしますと,先程前山先生とか,あるいは佐野先生がおつしやいましたように,私のところではいわゆるEwing肉腫に特有な臨床所見,あるいはレントゲン所見がないというのが事実であります.これは私共第35回の日本整形外科学会のシンポジウムで,腫瘍診断ということでちよつと話がございましたが,非常に多くの例を調べましても,やはり特有なものがなかつたのでございます.

骨肉腫の治療および予後

はじめに

著者: 小谷勉

ページ範囲:P.531 - P.533

 司会(小谷) 私,司会を命ぜられました大阪市立大学・整形外科の小谷でございます.まずこの日本癌治療学会におきまして,当主題をご採択いただきました陣内会長に,深く敬意を表しますと同時に感謝をいたしたいと存じます.
 シンポジアムを始めます前に,その「いとぐち」としまして,全国の大学・国公立病院整形外科に,悪性骨腫瘍の手術症例に関するアンケートをさしあげ,そのご回答をいただいておりますので,それをお見せいたします.なお,この席を借りまして,ご協力いただいた先生方に深く感謝いたします.

四肢悪性腫瘍の制癌剤局所灌流療法

著者: 阿部光俊

ページ範囲:P.534 - P.539

 われわれの教室では四肢の骨肉腫にたいして,以下のごとき方針で治療を行ないます.患者を発見したら,小形の人工心肺(小形DeBakey型ポンプ(流量50〜800ml/min)および塩化ビニール製直立二重円筒型酸素化装置(回路容量600ml))を用いてNitromin(NMO)5mg/kgまたはMitomycin C(MMC)1mg/kgによる患肢の局所灌流を30分ないし1時間行ない,2週後患肢を原則として切断しますが,時に原病巣が限局性,発育緩慢で,解剖学的に広範囲切除術が可能なら,切断せずに切除するものもあります.その後,全身状態の回復を待つて,肺転移予防策としてMMCによる気管支動脈動注法を1年以内に数回実施します1)2).われわれの行なつている動注法はMahajan & Clifftonカテーテルを股動脈より逆行性に胸部大働脈に挿入し,カテーテルの尖端が第4胸椎の高さに達するようにして,カテーテルの先についている上下のCuffを膨らませ,大動脈の血行を一時的に遮断します.両Cuffの中間よりMMC 0.6mg/kgを注入し,上のCuffを直ちに縮小させ,10数分後,下のCuffも脱気します.気管支動脈は両Cuffの間から分枝しているので,同動脈内のMMCは非常に高濃度の状態で肺に達し,これが肺の微細転移巣に有効に働らくことを期待するわけです.

悪性骨腫瘍にたいする制癌剤動脈内挿管投与と手術との併用療法

著者: 赤星義彦

ページ範囲:P.539 - P.549

いとぐち
 悪性骨腫瘍の多くは切断,関節離断ないし剔出術によつて局所腫瘍を完全に除去することが可能であるにかかわらず,肺転移をきたして早晩死の転帰をとるものが80%以上を占めている.ことに骨肉腫では前山によると5年生存率6.1%,死亡確認72例の平均超生率は術後9.6ヵ月であり,三木らの報告でも1年未満に55%が死亡し5年生存率5.7%が挙げられている.わたくしどもの教室で切断術が施行された34例(昭和37年以前)の切断後平均超生率は10.8ヵ月で1年以内に70.6%,2年以内に88.2%が死亡しており全く悲惨な予後を示している.
 このことからみれば,臨床的に骨肉腫の診断を下し根治手術を行なう時期には,すでに大部分の症例で腫瘍細胞が流血中に游出し,肺転移を形成する条件が具つていると推定される.したがつて肺転移の形成を抑制し延命を期待するためには,局所腫瘍の制圧,切除と同時に制癌剤その他の全身的療法を併用する必要がある.

発言1

著者: 増田元彦

ページ範囲:P.549 - P.553

 骨肉腫の治療及び予後
 九大整形外科においては,昭和38年より昭和41年11月まで28例の四肢悪性腫瘍にたいし,制癌剤の動脈内持続注入を行なつてきた.これらの症例の大部分は,この注入療法のあと切断術或は広範切除術などの根治的手術が行なわれたが,大腿骨上部の骨肉腫,坐骨の軟骨肉腫にたいしては,注入療法後手術は行なわず,放射線療法が行なわれた.症例の内訳は骨肉腫14例,軟骨肉腫4例,線維肉腫2例,Ewing肉腫,骨髄腫,再発を繰返した骨巨細胞腫及び骨転移癌の各1例,皮膚癌2例,悪性神経鞘腫および再発したDesmoid Tumorの各1例である.使用した制癌剤とその一日注入量は,Endoxan 100〜300mg,Chromomycin A3 0.5mg,Chromomycin S 5mg,Mitomycin C 2〜4mgおよびMethotrexate 5〜40mgであり,これらの薬剤を一剤二剤あるいは三剤を併用した.Methotrexateはその拮抗剤Citrovorum factorと併用している.
 注入持続期間は7〜14日が最も多く,最長のものは28日である.

発言2

著者: 藤本憲司

ページ範囲:P.553 - P.553

 局所灌流療法は,理諭的には非常に魅力ある方法ですので,われわれの教室でも以前からいろいろ研究しております.すなわち四肢の灌流に適した小型の灌流装置の開発,漏出を最少限にするための分割止血法の考案,腫瘍を移植した動物での種々の実験などを行なつて,本療法の手技の改善に努めております.しかしながら臨床例につきましては,どうもはつきりとした効果が現われないうらみがあります.さきほど阿部先生も最近はあまり成績がよくないといわれましたが,さきに演説されたお二人もいつておられましたように,局所灌流や動注をやると腫瘍細胞は,大部分Nekroseを起すが,なおかなりの腫瘍細胞が残つている.しかもこの残つた腫瘍細胞が増殖します.こういうようなわけで,非常に魅力的な方法ですが,まだまだ不完全であります.
 われわれの教室でも最近動注療法も始めております.これは持続的に注入できるという点がすてがたいものと思います.しかし両者とも,さきに発表されたお二人の話をききましても,転移を防ぐ力が弱いということでどうもすつきりしない.これにはいろいろ免疫学的な問題も考慮に入つてきますが,まだその点は十分解明されていません.

骨の悪性腫瘍にたいする放射線療法の効果

著者: 前山巌

ページ範囲:P.557 - P.564


 骨に発生する悪性腫瘍は大別して原発性のものと続発性のものとがあり,それぞれ異つた起源を有する各種の細胞に由来しているので,これらの腫瘍細胞の放射線感受性もその程度に相違があり,そのいかんによつてそれぞれの骨腫瘍にたいする放射線治療の効果が大きく左右されることはいうまでもない.
 一般に,骨髄系の細胞に由来するプラスマ細胞腫すなわち骨髄腫や,細網肉腫あるいはなおその起源についてはかなりの問題点を残しているユーイング肉腫等,所謂円形細胞肉腫に含まれる一群の腫瘍は,最も著しい放射線感受性を示す代表的な原発性骨腫瘍であり,一方,骨芽細胞や軟骨細胞よりなる骨肉腫や軟骨肉腫は,従来,放射線治療に最も強い抵抗を示すものの一つとして挙げられている.

長期生存骨肉腫の治療に関する検討

著者: 青池勇雄

ページ範囲:P.565 - P.569

I.骨原性肉腫の5年以上の生存率
 整形外科学会では昭和31年から,骨腫瘍の登録制を実施していて,昭和40年末で骨肉腫は1520例登録されました.その内訳は骨原性肉腫が1187例,軟骨肉腫が183例,線維肉腫が150例であります.悪性度の甚だ高い骨原性肉腫が骨肉腫の約2/3を占めていることは骨原性肉腫の治療が最も大切であることを示しております.
 そこで昭和31年から昭和36年10月までの間に登録された骨原性肉腫446例について,その予後を調査しました.(本年4月に整形外科学会研修会で発表した資料は昭和35年までのものである.)

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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