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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科2巻7号

1967年07月発行

雑誌目次

視座

変形性股関節症

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.681 - P.681

 変形性股関節症がどのようにして発生し,進展してゆくかということを知るために,150例について調査を行なつた.これは非常な努力を要する仕事であつたが,本症の本体を知る上に大きな収獲があつた.この研究によつて股関節症の原因と進展の様相がかなり明瞭になつてきた.
 本症の大部分は,今までに考えられていたように,臼蓋形成不全に基づいて発生するが,乳幼児期に先股脱としての治療を受けていないものが数多くみられた.臼蓋形成不全が永く存在していると高率に関節症が発生する.発症は30歳台から50歳台にかけておこるが,一度発生すると比較的急速に3年ないし5年の経過をもつて進展してゆく.これには骨の老化が深い関係をもつていると思われる.しかし,骨はなお旺盛な回復能力をもつているのであるから,ここに治療への希望が残されている.このたび調査した症例のなかには,自然治癒の経過をとったものがあつた.

論述

骨血流測定法

著者: 河端正也

ページ範囲:P.682 - P.688

 信頼しうる骨血流測定法を臨床面に応用できれば,特に整形外科分野においてその利用価値ははなはだ大きい.しかし,果して完全な定量性を有する方法が,現在までに確立されているかどうかについて,研究,臨床の両分野にわたって検討し,さらにその将来性について,以下,順を追って論述してみたい.
 歴史的にみると,現在までに軟部組織において開発されてきた血流検査法のほとんどすべてが,骨組織にも試みられてきたことがわかり,この事実は驚嘆に値する.

進行性筋ヂストロフィー症の自然経過

著者: 小林晶 ,   徳永純一 ,   岩本皓 ,   大城徹

ページ範囲:P.689 - P.696

はじめに
 進行性筋ヂストロフィー症(以下DMPと略す)に関しては,近時,整形外科領域においても取扱う機会が増加しているが,その成因に関してはもちろん,治療についても確立されたものは何一つない.一方,本症がいかなる経過をたどるかについても,本邦では,呉,沖中,三好らの報告をみるのみで,外国においてもWalton,Beckerの記述がみられるだけである.われわれは,在来,等閑に附されていた本症の経過,いわばnatural courseとでもいうべきものに興味をもち,その調査を行なつたが,以下,その結果を報告する.

乳幼児先天股脱の治療

著者: 坂口亮

ページ範囲:P.697 - P.707

はじめに
 先天股脱治療の歴史の上で,A. Lorenzはとにかく一つの山をなしている.彼は,まず脱臼骨頭を整復して,これを一定期間固定しておけば,関節機構が修復され治癒するとの考えを打建て,具体的方法として,槓杆作用を応用して,寛骨臼の後壁をこえて瞬間的に骨頭を整復し,これを保つのに90°屈曲,90°外転のいわゆるLorenz肢位を用いた.非観血的治療体系ができ上り,Hippocrates以来不治とされたこの疾患が治るようになつたと喧伝されもした4).ところが,それら症例の後年の成績が当初の期待ほどのものではないことが知られるに至り,批判や反省が起こつてきた.方法上「一気に整復すること」と,「非生理的肢位で長く固定すること」が不成績の最大の原因とみなされ,そこに種々の工夫が集中した.たくさんの類似の工夫が考え出されたが,そのうちに,運動をさせながら治していこうという,Lorenzの原法からは大きく飛躍した機能的治療法も行なわれ出した.

境界領域

Ochronotic Arthropathyについて—特に病理組織変化を中心に

著者: 広畑和志 ,   小林郁雄

ページ範囲:P.709 - P.718

いとぐち
 アルカプトン尿症は遺伝性代謝疾患であり,ochronosisあるいはochronotic arthropathyの病名はそれに引き続いておこつた,いわば,変化した結合織の状態に対してつけられたものである.
 O'Brienらの広汎な文献的考察によれば,1584年Scriboniusのアルカプトン尿症の最初の記載からVirchow(1866年)のochronosisの命名を経て1963年までの間に世界35ヵ国から,これらの疾患の604例が報告されている.本邦でもAbeら,池内,山本らの代表的なものを含めて,約20数例が報告されているが,比較的珍しい疾患の一つである.アルカプトン尿の出現に関しては,すでに多くの生化学的研究によつて明らかにされているごとく,tyrosine,phenylalanineの中間代謝産物であるhomogentisic acidの分解酵素のhomogentisic acid oxidase(homogentisicase)(La Du)の欠如によることは一致した見解となつている.

診療の経験から

脊椎カリエスの手術的療法

著者: 高瀬武平 ,   井村慎一

ページ範囲:P.719 - P.725

まえがき
 最近,脊椎カリエス患者は以前に比し,抗結核剤および治療法の進歩により,漸減の傾向にあるとはいえ,なお長期間膿瘍や瘻孔のみられるものにかなり遭遇する.われわれは昭和28年以来,手術的方針を採用した脊椎カリエス140例について検討を試みるとともに,手術時期の選択の必要性,また,いかなる考慮が必要であるか,さらにその他の問題点につき言及してみたい.

手術手技

脳性麻痺に対する手術的療法—主として下肢に対する手術について

著者: 深瀬宏

ページ範囲:P.743 - P.754

はじめに
 脳性麻痺の治療の根底をなすものはGeneral Rehabilitationである.その目的は筋バラソスの回復による異常姿勢,四肢変形の矯正と随意運動の獲得である.このRehabilitationの効果を増すために手術的療法もまた重要な手段であり,症例を選べば顕著な効果を得ることもできる.しかし手術的療法は,病型,知能,積極性,障害部位により極めて多様であり,その成績にも大きな差がある.
 脳性麻痺は分娩時前後における諸種の原因によって惹起される脳の障害に続発する中枢性の運動機能障害を主徴とする疾患であり,中枢神経または末稍部に対して手術が行なわれているが,中枢神経に対する侵襲は主として全身の筋緊張の減弱を目的としている.末稍部に対する手術は,局部の筋緊張の減弱,変形の矯正を目的としている.中枢神経に対する手術は極めて限られた症例に対して行なわれているにすぎない.またその手術成績もなお満足できることは少ないのが現状であろう.一方,末稍すなわち筋腱,神経,骨関節に対する侵襲は比較的容易であり,侵襲度も適度に加減することもできるし,また,かなり積極的な手術も行なうことができる.著者の手術施行例は昭和38年12月以来,昭和41年9月までの間に91例,239肢に及んでいる.

臨床経験

遠位橈尺関節の外傷性障害について

著者: 内西兼一郎

ページ範囲:P.755 - P.760

はじめに
 手関節および前腕,さらには肘関節部にうけた打撲,捻挫,脱臼,骨折などの種々の外傷にさいして,遠位橈尺関節の損傷の有無は,その予後に重大な影響を及ぼすものである.
 しかるに,確実なる診断方法がなく,正しい取扱いかたが未だ決定されていない今日では,なおざりにされ,積極的に加療されていない感がある.

膝関節樹枝状脂肪腫と大腿骨下端細網肉腫の併存症例

著者: 橋爪信晴

ページ範囲:P.761 - P.766

はじめに
 膝関節腔内脂肪腫は極めて稀な疾患で,わたくしの集計によれば欧米にてもLewin(1958),Anda(1960)らの数例を見るのみで,わが国では最近20年間に3例の症例報告を数えるのみである.なおその中でもいわゆる樹枝状脂肪腫は稀なものとされている.わたくしは最近弾撥症状をきたした膝関節の外側半月板に附着する樹枝状脂肪腫と大腿骨外顆部に発生した細網肉腫との併存する例を経験したので報告する.

Post-traumatische Acroosteolyseの2例

著者: 松葉健 ,   山下恵代 ,   今村恵 ,   町田英夫

ページ範囲:P.767 - P.771

はじめに
 Werder20)は,2回にわたつて肩関節部に外傷をうけ,その後,鎖骨肩峰端にOsteolyseをみた症例を1950年にPost-traumatische Osteolyseとして初めて報告した.以来,欧州で現在までに数例20),1),16),15),8),5),14),18),21),17),13),3),9)の報告をみるにすぎない.本邦では田辺21)らの1例をみるのみで,比較的稀なものとされる.われわれは最近,本症の2例を経験したので報告する.

いわゆるPseudospondylolisthesis(Junghanns)の症例検討

著者: 小泉正夫 ,   半谷清治

ページ範囲:P.772 - P.776

まえがき
 1930年Junghannsは関節突起間部の分離がなくて.椎体椎弓を含めた脊椎が全体として前方に辷つている.すなわちSpondylolisthesis ohne Spalte im Zwischengelenkstūckを報じ,分離辷り症とは根本的に異なるものであることを強調して,これをPseudospondylolisthesisと命名した.
 その後,臨床例として1935年Friedl,1937年Güntzらの報告があり,最近ではMacnabの22例,Cuveland,Eufingerの30例の報告がみられる.本邦では1950年棈松の3例,桐田の4例を初めとして,吉川(1958)の39例,森川(1959)の17例,真鍋(1961)の7例の報告例を見るが,われわれの教室においても腰痛患者の中にしばしば発見されるので,最近の症例23例について種々検索を行なつたので報告する.

装具・器械

P.T.B.免荷歩行ギプスの試み

著者: 鳥巣岳彦 ,   光安元夫 ,   松本道太郎 ,   松永等 ,   原武郎 ,   松本義康

ページ範囲:P.777 - P.782

 近年,medical rehabilitationの概念の目覚しい普及によつて,骨折治療に占める後療法の役割がいよいよ重要視されてきた.しかし,われわれ整形外科医にとつては,骨折の治療に後療法という一つの区切りを設けることなく,骨折の癒合が完成した時には,すでに機能においても完全に回復していることが理想であることは論を待たない.われわれはその理想に一歩近づくべく,最近進歩した義肢学の理論をギプス包帯法に応用した「P.T.B.免荷歩行ギプス包帯法」を考案し,その実地応用に2年間の経験を積みかさねた結果,用うべき方法であると確信しうるに至つたので,この新しい歩行ギプス包帯法をここにご紹介し,ご批判を仰ぐとともにご追試をお願いする次第である.

検査法

骨標本の病理組織学的作り方

著者: 金子仁

ページ範囲:P.783 - P.789

はじめに
 骨標本の組織作製法といつても,一般組織のそれと別段異るものではない.
 ただ脱灰を要することと,脱灰後も組織が緻密であるため薄切しにくいということが他の組織と異る点である.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう〔2〕

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   安部光俊

ページ範囲:P.790 - P.794

 A:この方は25歳の男性です.昭和33年に右膝窩部の腫瘤に気付いて,開業医を訪れ,それを取つて貰つたんですが,間もなく同じところが腫れてきて,翌年,都立豊島病院で再び摘出術を受けました.その当時のレ線写真ですが,非常に面白い変化があります.第1図のように膝窩部に長径4cmぐらいの楕円形の腫瘍陰影が後部関節嚢に密着していて,その中に小豆大ないし粟粒大,円形の石灰化が20数コ見られます.第2図は豊島病院で摘出した腫瘍です.一見,線維腫のようですが,割つて見ますと,3〜5mm大の軟骨あるいはその石灰化したようなものが点々と散在しています.第2図の下のほうは関節嚢についていた部分です.
 B:取つたのはどこですか.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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