icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科2巻8号

1967年08月発行

雑誌目次

視座

論文の標題と文献情報

著者: 天児民和

ページ範囲:P.801 - P.801

 私は新着雑誌の論文に一応目を通してこれを分類してパンチカードで所謂文献カードを自分で作つている.このような仕事をするのは,一応,最近の文献に目を通したいためと,必要な文献を簡単により出せるようにするためである.最近のように,雑誌の数も多くなり,世界各国から送られてくるこれらの雑誌は,少し油断をすると,机の上に堆く積まれてしまう.しかし多くの論文を読みながらいつも痛切に感ずるのは,論文の標題の選び方である.論文の標題を読んで,この論文には一体何が書いてあるか想像もできない標題もあるし,標題と内容が非常にくい違つている論文もある.またその反対に,余りに詳しい標題を出しすぎたと思われるものも少なくない.そんな話を私の部屋に遊びにくる新聞記者に言つたら,新聞社で一番頭のいる仕事は記事の見出しである,簡単で人をひきつけ,しかも記事の内容が一応予想できるような見出しをつけることは大変な仕事である,と話していた.しかも新聞の場合はゆつくり考える時間的余裕もなく,速戦即決で決めなければならない.その点,学術論文は自分の書いた論文を何回も読みなおして総括と結論を整理しおもむろに考えれば,よい題が浮んでくるものと思う.

シンポジウム 脳性麻痺

社会的問題

著者: 小池文英

ページ範囲:P.802 - P.809

はじめに
 私に与えられた課題は脳性麻痺(以下CPと称する)の"社会的問題"であるが,この社会的問題ということばは2様にとれるであろう.すなわち,1人のCP児のもつ諸問題—医学的,教育的,心理的,社会的,職業的な諸種の問題のうちから,社会的な問題だけを抽出して考察する,という立場と,もう一つはもつと広義の立場からCPの問題を考察する,すなわち,個々のCP児の診断と治療という臨床的な立場を離れて,いわば巨視的な角度からCPの問題を眺めてみる,という立場である.
 本篇においては,前者の立場をとることは,むしろ適切とは思われないので,後者の立場をとることとした.すなわち,CPの出題を医学的面をも含めて1つの社会的問題として考察してみることとする.

治療の問題点—上肢について

著者: 伊藤鉄夫

ページ範囲:P.810 - P.818

 脳性麻痺による上肢の障害はQuadriplegia,Diplegia,Hemiplegia例にみられるのであるが,Quadriplegiaでは全身の麻痺が高度で,医療の対象にはならない.したがつて手の麻痺の治療の意義も少ない.Diplegiaでは.手の症状が比較的軽いものが多く,主として装具療法と機能訓練が行なわれる.Hemiplegia spasticaでは一側上肢が強くおかされるものであつて,治療の意義も大きく,機能訓練,装具療法,手術療法の対象として注目されている.小児のHemiplegia spasticaは,多くの場合,脳の炎症によつて後天性に発生するものであるが,脳の炎症例が減少した今口では,小児のHemiplegia spasticaは次第に減少してゆき,他方,脳卒中による老人の症例が増加する傾向がみられる。上肢痙性麻痺に対しては,今日までに,多くの人によつて種々の治療法が根気強く行なわれてきたのであるが,その努力に比して得られた効果ははなはだ少ない。本症の治療に当つては,その病理をよく理解し,治療の成績には,症例に応じて,それぞれ一定の限度があることを十分に知つておく必要がある.

治療の問題点—下肢について

著者: 五味重春

ページ範囲:P.819 - P.828

まえがき
 上に述べた主題について,編集子より依頼を受けたが,脳性小児麻痺(以下C. P.と略す)の身体的機能障害のうち,歩行障害は大きな問題である.というのはすでに発表したように整肢療護園退園C. P. 313名(短期母子入園幼少C. P. 154名を含む)のなかで,46%が歩行不能か因難であるという事実が,これを物語つている.
 またC. P.の病型別(A. A. C. P分類)に歩行機能をみると,年長C. P.児159名のうち,歩行不能または困難なものが,痙直型では39%,アテトーゼ型では66%となつている.

論述

肩関節習慣性脱臼の綜説と発生に関する解剖学的素因

著者: 片山良亮

ページ範囲:P.829 - P.844

 習慣性脱臼という言葉は,従来日本では,recurrent dislocationとhabitual dislocationを併せた意味に使用しているが,著者は日本でもrecurrent dislocationを反復脱臼,habitual dislocationを狭義の習慣性脱臼と呼び,両者を区別するのが臨床上,便利ではないかと思う.そうして,両者を併せ広義の習慣性脱臼というものをもうけるのがよいのではあるまいか.それで,まず最初に肩関節脱臼の分類について述べる.

カンファレンス

第10回日本手の外科学会—症例討論会と手術供覧

著者: 伊藤鉄夫 ,   津山直一 ,   津下健哉 ,   佐藤孝三 ,   諸富武文 ,   田島達也 ,   丸毛英二 ,   難波雄哉 ,   高岸直人 ,   江川常一 ,   南条文昭 ,   朝田健 ,   藤原朗 ,   上羽康夫 ,   小野村敏信 ,   ,  

ページ範囲:P.845 - P.854

症例1
 伊藤(司会) それでは第1例から始めます.
 小野村 第1例の病歴を読みます.この症例は30歳の男子であります.主訴は左手の運動および知覚障害であります.

境界領域

Hyperbaric oxygenationの実際

著者: 重藤脩

ページ範囲:P.855 - P.860

はじめに
 海の底に深く潜つたとき手を摺りむいても,血はこびりついて流れることはない.水圧で押さえつけられているからである.50〜60mとしだいに深いところに潜つていくと,大気中に含まれている酸素,炭酸ガス,窒素ガスの分圧はそれぞれ増加する,そこには大気圧下では考えられない酸素中毒,炭酸ガス中毒,窒素酔いinert gas narcosisなどがある.
 逆に高圧環境から常圧へもどるとき(減圧),呼吸・循環系を介して体に溶けこんでいたガスが気泡化して特殊の障害をおこす.それを減圧症decompression sicknessという.

診療の経験から

慢性化膿性骨髄炎に対する局所灌流療法の経験

著者: 服部奨 ,   小山正信 ,   松井達 ,   河合伸也

ページ範囲:P.861 - P.866

まえがき
 慢性化膿性骨髄炎に対する治療には,幾多先人のすぐれた業績があり,また各種抗生物質の出現にもかかわらず,本疾患の治療は現在においてもなかなか困難な問題である.
 わたくしどもは局所に対する手術的操作と同時に創の浄化と抗生物質を局所により効果的に作用せしめるという理念に基づいてGoldman(1960年)によつて始められた閉鎖性局所灌流療法を行ない,術後まだ日が浅いが,一応,初期の目的を達し,満足すべき結果をえているので,少数例の経験ではあるが,わたくしどもの経験をのべ,本法について若干検討を加えてみたいと思う.

手術手技

切断術直後義肢装着法

著者: 松本義康 ,   太田良実 ,   赤津隆 ,   松永等 ,   松本道太郎 ,   安藤正孝 ,   岩切劯 ,   鳥巣岳彦 ,   斉藤博臣 ,   原武郎

ページ範囲:P.867 - P.872

 術直後義肢装着法とは,下肢切断術直後に,手術室で切断端にギプス包帯を巻き,これに仮義肢を装着して,できれば手術の翌日に患者を起立,歩行せしめて,できるだけ治療期間を短縮させようとする,積極的な切断治療の方法である.
 この方法を体系づけたのは,ポーランドのWeissで,1963年のことである.

臨床経験

胸椎椎体血管腫の全剔治験例

著者: 福田宏明

ページ範囲:P.873 - P.878

 脊椎に発生する血管腫はSchmorlの屍体検索によれば,約10%に発見されるといわれるが,臨床症状を呈してわれわれの目に触れるものは極めて稀とされている.従来,症状を呈した脊椎血管腫に対する治療は,レ線照射,除圧手術などすべて姑息的であり,出血のため病巣に直達して根治手術を行なうことは不可能とされていた。最近,私は進行性の脊髄圧迫症状を呈した第10胸椎椎体血管腫の開胸,前方侵襲による全剔の治験を得たので報告する.脊椎外科の日進月歩する今日,たとえ進行性脊髄圧迫症状を呈するものであつても,良性であるはずの椎体血管腫には病巣にメスを加えることが合理的と考えたゆえんである.諸家の御批判を仰ぎたい.

検査法

整形外科疾患における超音波検査法

著者: 和賀井敏夫 ,   青木虎吉 ,   数井英雄 ,   三枝清純 ,   瀬戸英武

ページ範囲:P.879 - P.886

 超音波の医学的応用の研究は,近年著しく発展をみ,整形外科領域においても,その応用が研究されるようになつてきた.
 この超音波の応用は整形外科領域においても他の医学分野と同様に,広義の治療的応用と診断的応用に大別される.このうち治療的応用はその歴史も古く,約40年前より考えられ始めたものである.原理はいわゆる一般に超音波治療といわれる周波数800〜3,000Kc,音強度1〜3W/cm2という強力超音波を用いて,主として神経,筋の慢性炎症性疾患の治療が行なわれてきた,一方,診断的応用は治療的応用に比べれば,その方法論が最も進歩した形のものであるだけに,その研究の歴史は比較的新しく,超音波検査の原理を応用し軟部組織,骨腫瘍の補助的診断が試みられてきた.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら