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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科2巻9号

1967年09月発行

雑誌目次

追悼

水町四郎先生遺影・略歴

ページ範囲:P.889 - P.890

明治38年11月3日 出生
大正15年3月 第一高等学校卒業

水町四郎君をおくる

著者: 岩原寅猪

ページ範囲:P.890 - P.891

 立秋の声を聞いたばかりだというのに人の世の秋は深い.
 水町君は忽焉として逝つた.

すいちょうさん

著者: 天児民和

ページ範囲:P.891 - P.891

 関東労災病院長水町博士が亡くなられたいう話を聞いて私は驚いた.実は私は8月4日欧米旅行から教室に帰つてきた.帰つてくると水町さんからの手紙が私を待つていた.その内容は第2回パラプレジア学会を10月に開催したいということと会員に泌尿器科の専門家をもう少し入るように勧誘したいということである.早速私は万事水町博士にお願いすると返事を書いた.その返事が到着したと思われる頃にこの悲報に接したわけである.
 我々は水町博士をすいちようさんと呼んでいた.長い間の交際というより彼と私は大学こそ異なるが卒業年次は同じである.同じように整形外科に志し,まだ極めて専門家の少なかつた時代から一緒に勉強してきた.それだけにすいちようさんと呼べる親しい間柄でもあつた.彼は何でもやりたい意欲が非常に強かつた.戦争中は臨時東京第三陸軍病院,今日の相模原国立病院の前身であるが,そこで四肢戦傷患者の訓練を始めた.今日で言うリハビリテーションである.

水町四郎先生を悼む

著者: 土屋弘吉

ページ範囲:P.892 - P.892

 昭和42年8月14日早朝,先生は関東労災病院の一室で永遠の眠りに就かれた.先生のお顔は,永い病床生活のやつれも少なく,静かな平安をたたえた,柔しい美しいお顔であつた.先生の62年の御生涯は,張り詰めた.満を持した,激しい気魄の連続であつたが,静かに眠る先生のお顔は,「もうこれで終つたよ」とでも話しかげておられるかのように,大悟に徹した聖人のような深い安らぎがお見うけされた.
 数年前から階段の昇降の際など呼吸促迫の御様子が見られ,最近は時々人院治療を必要とするような状態となられたが,先生は中央や地方の各種審議会,委員会などに関係しておられ,少しも公的生活の手を抜こうとなさらなかつた.周囲からの進言も大方却けられ,最後まで頑張り通されたのは,執念といつてよい程の先生の責任感であつたろうと思う.今秋に子定されている日本パラプレジア学会会長や災害医学会の鞭打ち損傷のシンポジウムの座長のお仕事については,亡くなられる直前までいろいろ気を配つたり指示を出したりしておられた.せめてこの二つの仕事が無事に終るまで御健在でいて頂きたかつたのにと残念でたまらない.

視座

物知らざれば発見多し

著者: 佐藤孝三

ページ範囲:P.893 - P.893

 「物知らざれば発見多し」とは,私の恩師である故高木憲次先生が教室員に対してしばしばいわれた言葉である.この言葉を高木先生が自身でつくられたのか,あるいは有名な言葉を引用されたのか,私は寡聞にして知らない.しかしこの言葉は医学に携わる者にとつてなかなか意味深い言葉だと思つている.
 高木先生はこの言葉を,教室の抄読会や研究会などでポツンといわれるのであつたが,そのときに私が受けた感じでは,「まだ検討が足りませんね.当人は新らしいことや珍らしいことを述べているつもりでしようが,これと同類のことがすでにやられています.知らないということは強いかも知れないが,知つている者にとつてはナンセンスですよ」と,医学の道の厳しさを教えて下さつたように思う.

論述

脊髄損傷患者におけるリハビリテーションの心理社会的側面

著者: 高口真一郎 ,   松本朝栄 ,   長島弘明 ,   坂根正純

ページ範囲:P.894 - P.899

はじめに
 全体的な患者の管理の概念としてのリハビリテーション(以下リハ.と略す)は,心身になんらかの障害をもつものに対して,発病や受傷の当初から,その障害を可能な限り除くとともに,彼の身体的・心理的・村会的および職業的能力を最大限度に引き出そうとする過程であつて;単に理学療法,作業療法あるいは特殊な医学の専門分野と同一視すべきでない.すなわちリハ.においては,身体的回復のいろいろな面は全リハ.過程中の1つの面にすぎないと考える.
 さて,医療における医師の心理的働きかけは,①直接心身相関という経路を通つて(これが狭義の心身症つまり狭義のPSD(Psychosomaticdisease)に相当する),そして②間接に身体的治療に対する積極的な協力や動機づけという経路によつて,身体的症状や病変の改善に結びつく場合が考えられるとともに,さらに③社会的適応というような心理学的に評価されるべき面にも影響を及ぼすことが考えられる.リハ.においては,上記②,③はリハ.の心理社会的問題として重要である1),註1).というのは,リハ.では身体的症状や病変の改善という基準のほかに,心理社会的な評価の基準をも必要としており,そしてこれら両者によつて具体的な社会復帰が可能となるからである。

通風症200例の追跡調査成績と診断基準について

著者: 吉野良平 ,   七川歓次 ,   前田晃 ,   辻本正記 ,   高橋貞雄 ,   小瀬弘一 ,   小松原良雄

ページ範囲:P.900 - P.906

いとぐち
 欧米においては,成人における下肢の疼痛性関節炎を見れば,まず痛風を疑えといわれるほど痛風症は一般的な疾患で,関節炎クリニックにおける全患者の4〜5%を占めるという(Hench).ところが,わが国ではここ10年ほど前までは比較的稀な疾患とされていた.しかし最近数年間に,痛風患者に遭遇する機会が目立つて多くなり,本症に対する関心もとみに高まつてきた.したがつて痛風症を念頭に置くのあまり,安易に本症の診断が下される場合も少なくない.
 痛風症の診断に関しては,まだ一定した基準もなく,各人によつて,いろいろの診断基準が設けられている.したがつて本症の特徴的な所見,あるいは臨床症状,その経過などの総合によつて最終的診断を下しているのが現状である.しかし実際の忙しい日常診療に際しては,2,3の比較的特徴的な症状に注目して,当初,一応の診断を下し,その後,精細な検査や,経過をみながら確定診断にいたる場合も多いことかと思われる.

亜急性関節リウマチについて

著者: 七川歓次 ,   前田晃 ,   辻本正記 ,   高橋貞雄

ページ範囲:P.907 - P.914

 慢性関節リウマチと診断され,治療をうけていた症例が,何ヵ月あるいは何年かの経過を経て,まつたく障害を残さずに治癒していることがある.一方,扁桃炎後の急性多発関節炎が長びいて,リウマチ熱よりも慢性関節リウマチの様相を呈してくるが,結局は一定期間後に完全治癒する症例もある.リウマチ性疾患の治療にたずさわる医師は,多少ともこのような良性の経過をたどる多発関節炎を経験している.この良性多発関節炎に注目したRavaultら(1950)は,その病状を分析し,これを成人の亜急性関節リウマチ(Rhumatisme articulaire subaigu de l'adulte)と名付けて,リウマチ熱および慢性関節リウマチから分離した.彼らは数年後,症例の追跡を行なつて,その診断の妥当性を確めている.Ravault et al.(1958),de Sèze(1954)はこの疾患の臨床像が,急性関節リウマチ(リウマチ熱)と慢性関節リウマチの中間的存在であるため,その輪郭の判然としない難点を認めながらも,こういう診断の枠を設けることの実際的な便宜と,リウマチ性関節炎の原因を考える上での意義を強調している.

特発性大腿骨頭無腐性壊死について

著者: 鶴田登代志 ,   三井貞三 ,   向井智志

ページ範囲:P.915 - P.925

 成人に見られる大腿骨頭の特発性無腐性壊死は欧米ではSèze(1960)1),Mankin(1962)2),Serre(1962)3),Patterson(1964)4),D'Aubigné(1965)5)およびCoste(1966)6)などのそれぞれ20例から200例におよぶ報告があるが,奇妙なことにはD'Aubigné5)も指摘しているように,この病的状態はここ10年周に特に多く発症していて,それ以前には極めて稀な疾患であつた.本邦においてはなお数少ない疾患とみなしうるが,最近その症例が散見されるようになり7)〜13),さらにいくつかの全身的異常(ステロイド大量投与14)15),慢性関節リウマチ7)15)16),全身性エリテマトーデス17))に合併した成人大腿骨頭無腐性壊死が報告され,次第にこの病的状態の重要性に注目されるようになつてきた.
 現在までの本邦での特発性大腿骨頭無腐性壊死の報告例を第1表に,またステロイド投与後に発生した無腐性壊死症例を第2表に対比した.最近,当教室で経験した特発性壊死の2症例の概略を述べ,本症の臨床,病理解剖学,病因および治療について論述する.なお種々の全身的異常に合併した無腐性壊死例については次の機会に報告する予定である.

診療の経験から

腰部椎間板造影法の合併症

著者: 池田亀夫 ,   高橋惇 ,   石井良章 ,   土方貞久 ,   城所靖郎

ページ範囲:P.926 - P.935

はじめに
 整形外科領域において,腰痛患者の占める数ははなはだ多いが,その診断と適切な治療となると今日なお多くの問題がある.
 椎間板造影法は,これらの問題の解決に果す役割は大きく,われわれは腰痛の正しい診断と,適切な治療のために1962年以後,椎間板造影法Discographyを補助診断法として採用し,その目的をかなり達していると考えているが,一方,この検査法が与える障害についても常にこころしている.そして本法の採用後5年を経た最近,数例の特異な経過をとる症例を経験したため,検討を加えたいと思う.

カンファレンス

骨腫瘍—これはなんでしよう〔3〕

著者: 骨腫瘍症例検討会 ,   安部光俊

ページ範囲:P.936 - P.940

 A:この方は57歳男性で,1964年8月に腰が痛くなり翌月,某病院で60Coを5400γかけたのですが,その後もlumbagoがとれないので,1966年5月,都立豊島病院を訪れた方です。

手術手技

骨接合用の新しい圧迫金属板

著者: 玉井達二 ,   星子亘 ,   木村修 ,   林泰夫 ,   上野直道 ,   尾方克巳 ,   本田五郎

ページ範囲:P.941 - P.946

はじめに
 1923年Keyは膝関節結核についてCompression Arthrodesisを行ない,そののちCharnley(1948)らの推奨もあつて,現在では結核のみならずCharcot Jointなどについても圧迫関節癒着術はしばしば用いられている.一方Müllerは1958年以来,骨折治療に際してはCompression Plate Fixationを行なつており,本邦では宮城教授が長管状骨骨折に対する接合術のroutineな方法として採用している.特に仮関節形成の症例にはその優秀性を発揮すると述べておられる.
 Compression Plate Fixationに用いる圧迫器およびその附属品は,いろいろ市販されているが,いずれもこれらの圧迫器を装着するためには余分の一孔を必要とする(第1図).その結果,軟部組織や骨組織への手術侵襲はこれまでのPlateFixationの場合よりもやや大きくなると考えられる.このような器具を必要とせず,手術侵襲も大きくならないで,しかも骨圧迫接合が可能,という方法はないものかと私どもは考えた.

臨床経験

Marfan症候群の2例

著者: 高槻先歩 ,   立川富也 ,   小菅弘

ページ範囲:P.947 - P.954

 指趾が異常に長く,同時に心臓血管系・眼の異常を伴ういわゆるMarfan症候群は,1896年Marfanがはじめて報告したものである.彼は当時,四肢ことに指趾の細長い先天奇形の1例(5歳,女児)をdolichcstenoméliaと命名した.その後,1902年になつてAchardは18歳女の1例をarachnodactylieとして報告し,同年Méryは本症の脊柱変形について,また1903年Duboisは先天股脱の合併例を記載した22).その後,欧米での報告は400例を越えるといわれている(Wilner & Finby36)).
 本邦では明治31年の河本の報告が最初である(丸山による15)).その後,主に眼科・小児科・内科領域から発表され,すでに100例を越えているが,整形外科領域で精査されたのは比較的少ない.われわれは最近,本症の2例を経験したので報告する.

膝関節メニスクス損傷について

著者: 新野徳 ,   松岡一元 ,   井手正敏 ,   田中晴人 ,   片山幸俊 ,   手束昭胤

ページ範囲:P.955 - P.960

 メニスクスの損傷が膝内障の原因の大半を占めているところから,その損傷形態に関しては古くから研究が行なわれ,本邦でも天児教授の報告を初めとして内外に数多くの報告がみられる.ことにLewinはメニスクスの機能として24もの数多くをあげており,損傷の機序に関しても膝関節の機能および構造が複雑であるために,現在でもまだかなりの問題が残されている.
 メニスクスはその前後の脚で脛骨顆関節面中央部に固定されているが,その辺縁はかなりの可動性をもち,関節面に体重が負荷された場合には,大腿骨顆に吸着して大腿骨顆と共にずり動くものとされている.

肘関節における遊離小体摘出後の予後調査

著者: 山本三希雄 ,   茂手木三男 ,   田中昭 ,   番場哲司

ページ範囲:P.961 - P.966

はじめに
 関節遊離体の観血的治療は1558年,A. Paréが膝関節遊離体に摘出術を施行し,著明なる機能改善をみて以来,数多く試みられた.その後,肘関節の離断性骨軟骨炎,骨軟骨腫症にも摘出術が盛んに試みられた.しかしその発生原因についてはなお明らかでないためもあつてその手術時期,手術方法,術後の予後などについてはなお論議の的となつている.
 わが教室においても茂手木らが第291回東京地方会にて62例の関節遊離体の統計的検索結果を報告したが,摘出後の経過についてはなお問題点のあることを指摘した.そこで肘関節部遊離体について,その遠隔成績を調べるとともに,多角的な検索を行なつたのでここに報告する.

Thiemann病について

著者: 井上禎三 ,   栗原章

ページ範囲:P.967 - P.973

 1909年,両側手指,足趾の骨端軟骨を侵す遺伝性疾患につき,Thiemannが最初に発表し,その後Fleischner,Kloiberら諸家により追加報告され,Avascnlar necrosisの範疇に加えられているが,わが国では,いまだ遺伝関係の明らかなものは見られない.教室で,1960年に糖尿病患者を発端者とする本疾患の一家系を認め,整形外科13巻に発走し,その後,1962年.愛知県西尾市で,肘内障発作を主訴として来院した女子工員を発端者とする一家系,さらに1964年,教室において,両側肘関節骨軟骨腫症で入院加療した女工員をそれぞれThiemann病と診断しえたのでここに一括,報告する.

装具・器械

股関節強直者の生活動作改善のための2,3の補助器試作について

著者: 河路渡 ,   宮崎通城 ,   佐久間功一 ,   長谷川愫 ,   向後博 ,   祖父江年婁人

ページ範囲:P.974 - P.979

いとぐち
 種々の股関節疾患のうち,私たちの教室では一定度以上病変の進行した股関節結核や,重症な変形性股関節症に対し,持続的な無痛の支持性を与え,日常の作業能力を増進させる関節固定術を有用な手術法の一つとして行なつてきた.昭和26年以来,上記疾患に対し股関節固定術の行なわれた症例は120例に達している.
 今回,これらの患者の中,81名について術後の状態を直接検診またはアンケートにより調査し,さらに日常生活の種々の不便を改善するために便器その他2,3の補助装具を試作し,患者に試用しているので報告する.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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