論述
特発性大腿骨頭無腐性壊死について
著者:
鶴田登代志1
三井貞三1
向井智志1
所属機関:
1三重県立大学医学部整形外科学教室
ページ範囲:P.915 - P.925
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成人に見られる大腿骨頭の特発性無腐性壊死は欧米ではSèze(1960)1),Mankin(1962)2),Serre(1962)3),Patterson(1964)4),D'Aubigné(1965)5)およびCoste(1966)6)などのそれぞれ20例から200例におよぶ報告があるが,奇妙なことにはD'Aubigné5)も指摘しているように,この病的状態はここ10年周に特に多く発症していて,それ以前には極めて稀な疾患であつた.本邦においてはなお数少ない疾患とみなしうるが,最近その症例が散見されるようになり7)〜13),さらにいくつかの全身的異常(ステロイド大量投与14)15),慢性関節リウマチ7)15)16),全身性エリテマトーデス17))に合併した成人大腿骨頭無腐性壊死が報告され,次第にこの病的状態の重要性に注目されるようになつてきた.
現在までの本邦での特発性大腿骨頭無腐性壊死の報告例を第1表に,またステロイド投与後に発生した無腐性壊死症例を第2表に対比した.最近,当教室で経験した特発性壊死の2症例の概略を述べ,本症の臨床,病理解剖学,病因および治療について論述する.なお種々の全身的異常に合併した無腐性壊死例については次の機会に報告する予定である.