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雑誌目次

雑誌文献

臨床整形外科20巻7号

1985年07月発行

雑誌目次

視座

整形外科とスポーツ医学

著者: 高沢晴夫

ページ範囲:P.795 - P.795

 昭和59年に日本整形外科学会にスポーツ委員会が設けられたことは画期的なことといえる.スポーツ医学に対する対応が今ほど整形外科にとって重要となってきた時期はないのではないだろうか.
 スポーツといえば以前は少数のスポーツ選手が行うものであって,一般の人達にとっては観る楽しみはあっても,行うということはまったく無縁なものであった.そのため,スポーツ医学も専ら,選手の記録向上のための研究であり,選手の外傷・障害の治療が主であった.わが国の整形外科でも,昭和の初め頃すでにスポーツ医学に積極的に取り組んでいるところがあったが,やはりスポーツ選手の外傷・障害の治療や統計的観察などの報告が多かった.

論述

悪性軟部腫瘍の肺転移

著者: 姥山勇二 ,   後藤守 ,   山脇慎也 ,   井須和男 ,   小六哲司 ,   山城勝重 ,   宮川明

ページ範囲:P.796 - P.805

 抄録:我々が扱った170例の悪性軟部腫瘍から肺転移の病態を検討した.肺転移の大半は原発巣の初回治療から2年以内に出現し,1年以内で死亡する.胸部X線像からみた肺転移巣の増殖形態には,腫瘍の大きさと数との増殖関係から,multiple nodular type,massive type,mixed type,の3つに分類される.このtypeと組織型や予後に明らかな関連性がみられた.肺転移巣の発育進展様式には,肺内転移,肺表面転移,胸膜転移の3つの異なった様式がみられる.肺表面および胸膜転移巣は胸部X線像にて病巣早期から発見することは難しくその検索にはCTが有用である.肺表面および胸膜転移巣は血胸や胸膜炎などの重篤な続発症を生じ易く予後に大きな影響をもたらすので,肺転移の診断・治療にあたってはこれらの病巣の有無を把握しておくことが重要である.

踵骨疲労骨折の検討

著者: 松井達也 ,   菊地臣一 ,   蓮江光男 ,   梅ケ枝健一

ページ範囲:P.806 - P.813

 抄録:踵骨疲労骨折の3例と同時に,X線像では疲労骨折と鑑別不可能な外傷性骨折7例を経験した.これらの症例に対して臨床的,X線学的に比較検討した.結果は以下の通りである.1)踵骨部に痛みを訴える例の原因の一つとして踵骨疲労骨折が存在することに留意すべきである.2)踵骨疲労骨折のX線像の特徴は隆起部の帯状硬化像である.この所見は症状出現後2〜3週間で認められることが多い.3)外傷性踵骨骨折でも疲労骨折と類似したX線変化を呈することがある.4)踵骨疲労骨折の発生には反復する体重負荷が大きく関与していると思われる.5)踵骨疲労骨折の治療には特別な処置は必要ない.

先天性内反足に対するLichtblau手術の中期成績

著者: 門司順一 ,   佐々木鉄人 ,   菅野吉一 ,   飯坂英雄 ,   加藤哲也 ,   須々田幸一

ページ範囲:P.815 - P.821

 抄録:先天性内反足における内外骨性支柱の不均衡による前足部内転変形を解決するため,Lichtblauの踵骨頭切除術を初回軟部組織解離術と合併(初回群38例59足),追加手術と合併(追加群25例27足)に行い,約6年後の成績について臨床的・X線学的に検討した.
 臨床的な足形態は良く矯正されており,前足部内転の遺残も少なかった.しかし,踵立方関節のremodelingは約半数のものにしか得られておらず,追加例では約45%に狭小化,不整などの異常所見を認め,一方初回群では約50%のものに立方骨の背側亜脱臼を認めた.また踵骨頭切除により踵骨は距骨に対して前方辷りを生じており,下腿三頭筋のlever armは減少する結果となっていた.

シンポジウム 骨巨細胞腫の診断と治療

骨巨細胞腫の診断

著者: 笠原勝幸 ,   山室隆夫 ,   琴浦良彦 ,   濱島義博

ページ範囲:P.823 - P.828

 抄録:骨巨細胞腫は,組織像において一様の比率で多核巨細胞と単核細胞(基質細胞)が散在する特徴あるパターンを形成するが,この像は特異的ではなく,他の多くの類縁疾患にも近似した組織像が認められる.従って組織診断に際しては広い範囲に特徴ある組織像を認める必要があり,一部分に限局している場合は他の疾患も考慮しなければならない.1940年にJaffeにより骨巨細胞腫は,一疾病単位として成立したが,pathogenesisは不明で,組織像も特異的でない為,臨床所見を加えたclinical entityとして成立した.この為,骨巨細胞腫の診断には年齢,解剖学的局在,などの臨床所見およびX線像,シンチグラムなどの臨床検査も重要である.骨巨細胞腫の診断を更に明確にするには,腫瘍細胞の性格と起源を検索し,明らかにする必要があると思われる.

骨巨細胞腫の免疫組織学的検索

著者: 桑原竹一郎 ,   丸山孝士 ,   梅田透 ,   保高英二 ,   高田典彦 ,   井上駿一

ページ範囲:P.829 - P.835

 抄録:臨床的に骨巨細胞を良性,Aggressive,悪性に分類し骨肉腫,MFHを加え,免疫組織学的検索を行った.方法はABC法でホルマリン固定後の手術材料を用い,抗Vimentin,抗Actin,抗F-XIIIR,抗Laminin,抗F-XIIIA,抗α1-antitrypsin,抗α1-antichymotrypsin,抗lysozymeの染色を行った.
 良性骨巨細胞腫の間質を構成する線維芽細胞,筋線維芽細胞はF-XIIIA陽性.組織球様細胞はα1-antichymotrypsin陽性.各症例で構成細胞成分の割合に差がみられた.

骨巨細胞腫の非定型組織像と鑑別診断

著者: 松野丈夫 ,   佐々木鉄人 ,   三浪明男 ,   八木知徳 ,   加藤博之 ,   薄井正道

ページ範囲:P.837 - P.849

 抄録:骨巨細胞腫(Giant cell tumor of bone)は,Jaffeらが組織学的概念を確立して以来,その定型像に関しては諸家の一致をみているが,骨巨細胞腫は定型像以外に"aneurysmal bone cyst様","fibroxanthoma様","類骨・骨形成"など種々の非定型像を示す.そしてこれらの非定型像は症例によっては腫瘍組織の大部分を占めることも多く,aneurysmal bone cyst,benign fibrous histiocytoma,malignant fibrous histiocytomaなどとの鑑別に難渋することが少なくない.著者は,いかに非定型像が大半を占めていても,組織の一部分に骨巨細胞腫の定型像を認めれば,その症例は骨巨細胞腫として診断すべきと考える.
 悪性巨細胞腫に関しては,著者は,真の悪性巨細胞腫は極めて稀であり,従来悪性巨細胞腫とされていた,良性の組織像のまま転移した例や,放射線治療後悪性化した例はその範疇に含むべきではないと考える.

膝周辺の骨巨細胞腫の治療—準切除術について

著者: 竹山信成 ,   檜垣昇三 ,   三輪隆 ,   小島達自 ,   飯島卓夫 ,   阿部光俊 ,   立石昭夫 ,   仲田実生

ページ範囲:P.851 - P.857

 抄録:骨巨細胞腫の治療に掻爬と骨移植では局所再発率が高く,切除では治癒するが機能的予後が不良である.膝周辺の腫瘍に対して再発率の減少と関節機能の温存を目的として,切除と掻爬術,いわゆる準切除術と自家骨移植を行った.準切除術の適応は病巣が偏側性であり,一側の骨皮質は健常で,関節面に接した部分に若干の正常骨が残っていることである.方法は,関節面に接した部分のみを掻爬して関節軟骨を温存し十分に海綿骨を充填する.関節面以外の部分は膨隆している骨皮質を含めて健常部から切除し,腸骨から採取した骨を移植する.症例は22例で,平均術後観察期間は8年で,局所再発を生じたのは2例である.2年以上経過症例は21例で,局所再発率は9.5%である.術後の膝関節可動域について,再発例の2例を除いた20例中15例(75%)が屈曲120°以上可能で機能的予後も良好である.準切除術と自家骨移植術は膝周辺の大部分の骨巨細胞腫の症例に適応がある.

膝周辺に発生した骨巨細胞腫に対する治療

著者: 川野壽 ,   矢作宏 ,   水谷正昭 ,   大幸俊三 ,   鳥山貞宜

ページ範囲:P.859 - P.865

 抄録:1957年以降,経験した骨巨細胞腫59例のうち,膝関節周辺に発生した33例の予後調査を行った.このうち,22例にその膝関節の機能を評価した.〈結果〉(1)再発は,単純な掻爬,骨移植によるものが最も多かった.準切除あるいは広範囲掻爬による再発はなかった.(2)当科初診,手術による再発率は13%であった.(3)脛骨近位端に発生したものの再発率が高かった.(4)約80%に術後,膝関節可動域が正常に回復した.(5)現在のところ,再発のくりかえしが必ずしも悪性化につながっていない.以上より,膝関節周辺に発生した骨巨細胞腫に対しては,air drillを用いた,準切除あるいは広範囲掻爬による徹底した廓清により十分治療できると考える.

骨巨細胞腫治療成績の比較—特に凍結手術症例について

著者: 高田典彦 ,   保高英二 ,   梅田透 ,   井上駿一 ,   松井宣夫 ,   石井猛

ページ範囲:P.867 - P.871

 抄録:骨巨細胞腫は関節近傍に好発する為,広範切除後の再構築がむずかしく術後関節機能低下をきたす可能性もある.そのため,我々は1972年以後,骨巨細胞腫の手術方法として準広範切除を行い,関節軟骨直下のみは掻爬手術にとどめ,cryosurgeryの導入により残存微小腫瘍細胞のcryonecrosisを期待し局所再発の可能性を最小限にし,関節機能温存を図った.昭和33年以降,我々の治療した骨巨細胞腫66例につき,治療法の変遷に従う治療成績について比較検討した.(結果)単純掻爬例では8/14(57%)の局所再発をみた.広範切除群では2/12(17%)の局所再発をみた.Cryosurgery導入群では2/35(5%)の局成再発であり,術後遷延感染症1例をみたが骨癒合の遅延例はない.また術後変形治癒1例,変形性関節症2例をみた.(結論)骨巨細胞腫の手術療法としては準広範切除に加えて関節軟骨直下のみcryosurgeryの導入により関節機能を保ちつつ局所再発を予防可能である.

骨巨細胞腫57例の経験から

著者: 川口智義 ,   網野勝久 ,   松本誠一 ,   真鍋淳 ,   多湖光宗 ,   和田成仁 ,   古屋光太郎 ,   磯辺靖

ページ範囲:P.873 - P.881

 抄録:骨巨細胞腫57例の治療とその結果を反省し治療選択の指標について検討した.四肢骨病巣は意図する手術が行い易い部位であるが局所再発率は15%,転移率は2%であった.四肢骨病巣で掻爬,ブロック切除いずれを選ぶかは組織学的所見よりも臨床所見(増大速度,X線所見,腫瘍の広がり)により決定するのが実際的である.しかし組織所見で悪性の線維成分の多い時にはより広範な切除を行う方がよい.躯幹骨(仙骨,骨盤,脊椎)病巣では初回の徹底した病巣切除が必要で,そのためには腫瘍部周囲の灌流動静脈を充分結紮することが大切である.術前放射線治療には止血効果があるが,凍結,腸骨動脈駆血,レーザーに止血効果は期待できない.しかし凍結手術には腫瘍壁のmicroscopicな病巣を致死する効果がある.再建術についてみると,ブロック切除後の再建法は部位,年齢,職業などによりある程度決定される.

整形外科を育てた人達 第28回

Geh. Hofrat Prof. Dr. Fritz Lange(1864-1952)

著者: 天児民和

ページ範囲:P.882 - P.885

 私が整形外科の勉強を開始したのは1930年であった.その頃整形外科の教科書は少なく最も広く読まれていたのはFritz Langeの「Lehrbuch der Orthopaedie」で,JenaのGustav Fischerから初版を1914年に出したが,私が入手したのは第3版で1928年版であった.この著書は札幌医大名誉教授の河邨文一郎氏の御尊父の河邨百合人先生が日本語に訳して出版せられたので日本で最も有名な教科書であり,著者であるFritz Langeはドイツの整形外科学界でHoffaよりは後輩であるが大先達の一人である.その自叙伝「Ein Leben für die Orthopädie」を読むと整形外科学を医学の一分科として独立させ,大学に講座を新設するのに如何に苦労し,努力したかを知ることができた.

臨床経験

神経内Ganglionによると思われる肩棘下筋麻痺の1例

著者: 臼井康雄 ,   原田義昭 ,   水野耕作 ,   広畑和志

ページ範囲:P.887 - P.891

 抄録:肩甲上神経麻痺と棘下筋単独の萎縮の原因がganglionによるものと診断された症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
 症例 33歳,男性.職業:釘打ち工.主訴:右肩甲部痛および肩甲部筋萎縮.現病歴:昭和55年夏頃より,しばしば右肩甲部に激痛を感じていた.右棘下筋の萎縮が著明であるため本院を受診した.筋電図所見:棘上筋には異常はなく,棘下筋にのみdenervationの所見がみられた.肩甲上神経棘下筋枝の不全麻痺と診断して昭和58年7月手術を施行した.手術所見:手術により,肩甲骨spinoglenoid notchにganglionをみい出した.この嚢胞により肩甲上神経が圧迫されて棘下筋萎縮を生じたものと思われた.嚢胞摘出後の経過は良好である.

Diastematomyeliaを合併した腰椎部Epidermoid cystの1例

著者: 岩下靖史 ,   三河義弘 ,   四方實彦 ,   山室隆夫 ,   小堀真 ,   高橋寛

ページ範囲:P.893 - P.897

 抄録:第5腰椎部にdiastematomyeliaを有し第4,5腰椎部にepidermoid cystを合併した症例を経験したので報告する.患者は,53歳の男.主訴は,両下肢知覚障害,陰萎.昭和34年腰痛が出現し,昭和35年近医にて椎間板ヘルニアの診断のもとに手術を受け軽快.昭和55年頃より両下肢知覚障害をきたし,その後膀胱直腸障害,陰萎も出現.昭和58年京大整形外科入院.諸検査の結査,馬尾神経腫瘍の診断のもとに第3腰椎より第1仙椎に至る椎弓切除を施行.第4,5腰椎部epidermoid cyst,第5腰椎部にdiastematomyeliaを認めた.Diastematomyeliaにepidermoid cystもしくは,dermoid cystを合併したものは欧米に10例本邦において2例の報告を見るのみで極めて稀なものと思われる.発生病理としてepidermoid cystがinoculationに起因する可能性は否定できないまでも,Bremerの副神経腸管説にしたがいdiastematomyeliaと同時に先天的に発生したと考えるのが妥当と思われた.以上,発生病理としてBremerの説を紹介し文献的考察を加え報告する.

種子骨嵌入を伴う第1足指IP関節背側脱臼の1例

著者: 大井憲二 ,   浅井浩 ,   金郁喆 ,   松井英司

ページ範囲:P.899 - P.902

 抄録:種子骨嵌入を伴う第1足指IP関節背側脱臼はきわめて稀なものであるが,最近,我々は本疾患の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
 症例は42歳男性.フェンスをとびこえて着地した際,左第1足指を強く背屈されその直後より疼痛と変形を生じ近医を受診,左第1足指IP関節背側脱臼,種子骨嵌入と診断された.徒手整復術を反復施行されたが,種子骨の整復不能のため,昭和58年9月27日当科を紹介された.X線写真の所見より左第1足指IP関節種子骨嵌入と診断し手術を行った.内側側正中切開にて進入し関節腔を展開すると種子骨が嵌入しているのが確認された.Volar plateの中枢側は完全に切断され末梢側も高度に挫滅されていた.種子骨を摘出しvolar plateを修復した.経過は良好であり,術後11カ月の現在,疼痛や腫脹なくスポーツも可能である.

基本情報

臨床整形外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1286

印刷版ISSN 0557-0433

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